「明るい高齢者雇用」

第18回 転職でノイローゼ―適応の難しさ痛感―

(「週刊 労働新聞」第2164号・1997年8月11日掲載)

 

 今回は異業種への転職事例を紹介しよう。

 高齢者が転職する場合、自分が育った職場、即ち同業種への転職は必ずしも保障されない。異業種への転職ということも念頭に置かなければならない。

 某大手輸送機械メーカーから食品化学工場の工場長へ出向したC氏を紹介しよう。C氏は工業高校を出て以来製造技術一筋。出向決定当時は53歳であり、現場の課長であったという。転職先は惣菜メーカーで、資本金1億円、従業員250人程度の企業である。

 求人企業側がC氏を採用するかにつき迷った点は、まず異業種で、それも大手企業出身の者が、会社に溶け込めるかということであった。お役人出身者が民間企業に移った場合、判断事項の多さに戸惑い(要するに判断力すら無いということ、さらには責任をとるという態度が長年に亘って欠落していること)、またそのスピードに全くついて行けないこと等から、カルチャーショックを受け、仕事が手につかなくなる、ノイローゼにすらなるという例が非常に多い。20年、30年の間、およそ何をしてきたのか、実は何も仕事をしていなかったのではないかという疑問をもたれる確率が50%以上に及ぶという。民間企業においても、大手企業出身者が中堅中小企業で仕事ができないことを露呈するというケースが役人出身者ほどではないが、よくあるといってよい。求人企業の社長が、大手の人、しかも異業種からの転換で、会社に溶け込めるのかと疑問に思うのも無理からぬところである。

 また、中堅中小企業はオーナー企業が多いから、オーナーたる社長の価値観によって採用の成否が決まるといってよい。この求人企業においても、家族構成の中で子供がいないということが懸念事項となった。この社長は、子供がいない人物は部下を指導するのに適切でないのではないかと迷ったというのである。

 さて、採用決定のポイントは何といってもC氏の若々しいルックス、態度であり、また前向きな気持ち、即ち中小企業で適当に時間を過ごすのではなく、今までの経験を生かしてやりたかったことを実現するという、まさに前向きな気持ちがあったことにあると採用を決断した社長は語っている。

 いってみれば達成意欲が旺盛であるということである。この意欲は先に述べた向上心と直結するものであるが、それがあればこそ若々しいルックス、態度といったものにもつながろう。

 それはいうまでもなく、若い時から健康に意を用いるということだけでなく、様々なことに関心を持ち精神的な刺激を求め続けることでもある。

 頑迷さを取り除き、過ちは直ちに正す姿勢、そして視力を維持すること、とにかく歩くことなどがその具体策となるが、出向先においてもその若さを維持し、同時に若い人と付き合っていくとなれば、若さをマネージメントする意識と行動がことのほか重要となるのである。

 この人物のケースは、転職後1年半経った現在、高い評価を得ているということから、まさに成功例といえるが、やはり高齢者になっても心身共に若さを保つということが秘訣であろう。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第21回】サービス業は教育業でなければならない(1995年7月18日)

 

 これからはサービス産業が拡大していく。

 なぜサービス産業は需要があるか。一般には、社会が多元化して自分一人では生きていけないから、手際よくやってくれる人が必要になってくる、と言われている。

 私は、知識社会、知的社会という時代になってきたことと関係があると思う。人間は知識・知能が高まるにつれ、多くの人が晩年を思い浮かべ、さらには自分の死に際を想起しながら生きるようになっていた。それは極限での孤独を意味する。つまり、生きている間に多くの人と接触したいという集団欲が刺激されてくる。連帯したいという気持ちが強くなる。ここに、サービス産業の基盤がある。

 自動販売機で買うより、喫茶店でコーヒーを飲みたい、人と接触したいと思う人が大勢いる。高齢化社会になればなるほど、老後を意識する時間が長ければ長いほど、サービス産業は成長する。

 ただ、サービス産業は製造業ほど儲からないということを念頭におくこと。サービス産業は機械任せにすることができず、人手を必要とするからだ。連帯心を満足させる、触れ合いをもつ、安堵させるという世界は、対人技術である。対人技術だから省人化できない。ロボットに「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と言わせても成り立たない世界だ。

 低生産性、低収益性の中で、ひたすら対人技術を磨くことにサービス業の中心がある。つまりどんなサービス産業も、教育産業、教育事業でなければならないということだ。教育を持続的に展開し、均一の品質と臨機応変を保障し続けることに、常に配慮しなければサービス産業は成長しない。

 

 

第8回 『仕事で人は成長する』 (2)
自分がキラリと輝く生き方

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生が出版で読者に伝えたい思いは、次のことでしょう。

 

 「読者の心が温まり、自分を高めるヒントになれば嬉しい」

 「チャンスはいつも、あなたの前を行ったり来たりしている」

 

 前回7月31日号に続いて、本号も表題の本から、このような環境下でも、ビジネスパーソンが生き抜くヒントになる言葉を選びました。

 

 

  • 進化する女性、退化する男性

 

 「男性は退化し、女性は進化していると言われている。

 

 第1に、ほとんどの企業の入社試験で、上位の成績を占めるのは女性である。

 

 第2に、女性は自己投資に余念がない。キャリアアップの有料の研修を自費で受けるのも、女性が圧倒的に多い。男性は身銭を切って研修を受ける人は少ない。

 また、いつまでも輝いていたいために、美しくあろうとすることに貪欲で、スポーツジム、ヨガ、岩盤浴、マッサージなどの情報収集にも余念がない。

 

 第3に、女性の方が情報交換の時間を持つことに積極的である。男性は成果主義によって仕事に追われ、情報交換が途絶えがちになっているという。

 

 第4に、女性はそれなりのポジションが少ないために、チャンスを得ようとキャリアアップを常に心がけているが、男性は意識的・集中的にも勉強しない。

 

 このように意欲を持った女性が、残念ながら管理職として伸びていないのは、言うまでもなく、日本が男社会であるということが背景にある。しかし、そのほかに、子どもを産み育てる性として、女性に本来的に備わっている特長が、原因していると思われる。

 

 そこでは当然のことながら、庇護、つまり自らを守る、自己愛という防衛意識が非常に強くなる。

 その結果として、仕事を他人に渡さず、自分で取り込んでしまうのである。ということは、とりもなおさず、マネジメント力を失うということにつながる。マネジメント力とは、牽制と互助を前提とするが、自分で仕事を取り込んでしまうと、その必要もなくなってしまう。

 

 そこに実は、女性の管理職が数多く現出しないという根本理由があるように思われる。

 これを打破するためには、女性が仕事を他人に任せること。そして、指揮・監督する手腕を身につける必要があるように思えてならない」

 

 このことは、管理職として成長するためには、男性にも欠かせないことと言えます。

 

 

  • 教養の有無で差がつく時代になる

 

 「温故知新という言葉をご存知の方は多いだろう。昔の事柄を研究・吟味して、新しい知識や見解を得ることをいう。『論語』に出てくる言葉である。時代がどんどん進歩し変化していく時代、私たちの目はとかく未来へ向けられがちだが、その目を確かなものにするためには、古い時代を振り返ってみることも必要だ。

 

 とくに古典と言われる書物、絵画、音楽、趣味、嗜好などは、長い年月残ってきたという一事を以ってしても、触れてみる価値がある。そしてそのような価値を、自分のものにすることが、すなわち『教養を積む』ということである。

 

 頭脳がものをいうソフト化時代は、仕事の能力が際立っていれば、一定の業績を収めることができる。しかし、これからの心の時代においては、人の心に触れることのできる人でなければ、良い結果は得られなくなる。

 そのためには教養を積んで心を養っておかないと、心の栄養失調になってしまう。

 

 爆笑問題の太田光さんが最も影響を受けた人物として挙げている亀井勝一郎氏。彼は、

 『若い男性は教養程度が低くなったので、目立つものしか心かれない。発見する能力を失ったのだ。女性もまた、教養程度が低くなったので、目立つようにしか化粧しない』

と言っているが、耳が痛い人もいるのではないだろうか」

 

 

  • 「他者評価」を高める正々堂々

 

 「評価には、客観的と主観的な評価があり、別の視点として、自己評価と他者評価がある。

 成果主義時代の評価は他者評価が軸となるから、個人としては他人にできるだけ高く評価してもらえるように、成果をアピールしたほうがいい。

 そのためのポイントは2つある。

 

 第1のポイントは、たしかな実力を何か一つでいいから、身に付けておくことである。

 ちょっとやそっとでは代わりが見つからないスキル・内容で、仕事に役立つものがいい。

 それを自分の売りにする。そのためには、『彼はこういうことができる』と第三者が見て評価できるように、それを外部に表出することを忘れてはいけない。

 

 第2のポイントは、正々堂々としていること。

 人は他人を評価するとき、いくつかのモノサシ(損得・親疎・上下・適否……など)を持っている。

 だからこそ、全方位的にあらゆる人に好印象を与えるつもりで振る舞うのである。それがいろいろなモノサシによい影響を及ぼす。といって、何もおもねたり、迎合する必要はない。

 

 そういう振る舞いになると、おのずとすること・・・・は限定されてくる。善意とか、明るさ、公平さ、勤勉さ、正直さといったことしかできない。それでいい。極端な話、あなたが『職場で1番、正々堂々としている人』のレッテルが貼られれば、それだけで十分である。

 

 容易に代替えの利かないスキルと、全方位的な好印象。

 この二つが他者評価を高める武器となる。あと大切なことはブレないことである。360度評価の時代、とくにリーダーになればなるほど、これらが求められる」

 

 

  • まず感じる! それから考える!

 

 「私たちは『わかっている』という言い方をよくする。『わかっている』と相手から言われると、『理解しているのだな』と思ってしまうが、ここで安心してはいけない。聞いてわかっているのと、見てわかっているのとでは、理解度に天地の差があるからだ。

 

 私は1日に300枚くらいの仕事上の書類を読んでいる。読めば、『なるほど』と思う。しかし、それだけではダメだと思って、弁護士や秘書と打ち合わせをする。直に会って打ち合わせするのだが、その場にいなければ電話で打ち合わせる。

 そうやって書類を読んで、理解したことを補強する。

 

 しかし、それだけではまだ不十分である。 やはりクライアントとの打ち合わせの場に出ることだ。仕事は常に現場主義だと信じている。

 なぜかというと、頭で理解するほかに、五感でも理解しなければ正しい判断ができないからだ。

 

 現場には、目に見える情景、耳に聞こえる音、鼻が感じるにおい、肌や味覚まで迫るものがある。そういうものが大切な判断材料だ。五感を働かすには現場に立ち会う以外に方法はない。

 

 〝Don’t think,feel “ という言葉がある。『考えるな、感じろ』ということだ。

 私は、『仕事は、まず感じて、それから考える』を求めている。これをクリアするには、現場に出ることが必須になってくる」

 

 

  • 想定の範囲内に未来はある

 

 「未来予測というものは当たらない、と思っている人が多いようだが、詳しく調べてみると、案外当たっている。ここまで文明が進歩してくると、どんな未来も、誰かが想定した範囲内に収まると言ってよいと思う。

 

 その意味では未来を予測することは、なかなか楽しい。

 

 ピーター・ドラッカーは、近未来を予測して言い当てるのがうまかった人だが、彼の未来予測に、

  『今後の企業はフラットな組織に変わっていくだろう』

というのがある。これは既にそうなりつつある。社長から平社員までの階層が少なくなってきた。

 

 なぜなら、情報共有の結果、みんながそれぞれの立場で考える必要が出てきたからである。

 昔は考える人と実行する人が分かれていたが、今はそれでは対応が遅れてしまう。

 組織はフラットになっていかざるを得ないわけである。

 

 未来を見通すには、現在をつぶさに観察して、洞察して推理力を働かせることだ。そして近未来を予測してみる。

  『想定の範囲内』と言えない人は、現在の情報に疎く、また近未来に対して洞察も推察もしていないということになる。想定することがなぜ大切かというと、自分の能力と情報知識を動員することで、未来を見通すことができるからである。

 

 未来を見通すということは、『こうであったらいいな』という夢を語ることではなく、現在と地続きのなかで、自分がどこに位置し、何をするかを考えることだ。

 

 ドラッカーが、『近未来は現在に必ず萌芽ほうががある』と言ったのは至言である」

 

 

  • 決断と責任の修羅場をくぐりなさい

 

 「大正から昭和前期に活躍した経済学者・河合栄治郎は次のように言っている。

 『われわれを成長させるものは、人生における悪戦苦闘である』

 ビジネスの世界で一定の業績を挙げた人は、たぶんこの言葉にうなずくはずだ。要するに成功した人は、みんな修羅場をくぐっているのである。

 

 修羅場をくぐるとは、場数を踏み、時には矢玉に当たってみることだ。

 

 場数を踏むとは、実務で求められる能力の判断力・決断力・実行力をつけるチャンスを多く味わってみることである。

 またビジネスの矢玉とは、『責任を取る』ということである。

 この2つを数多く経験するのが、ビジネスにおける修羅場をくぐるということになる。

 

 成長したいと思うなら、『自分探しをする』などとのんきなことを言っていないで、目の前の現実にどんどんぶつかってみることである」

 

 

 『1勝9敗』(新潮文庫)の著書があるユニクロのオーナー・柳井正さんは、上記にあるように、数多くの修羅場をくぐって、場数を踏み、矢玉に当たってきました。

 

 そして絶えず、今でも、仮説・現場・検証を繰り返しながら、挑戦し続けているのです。

 それらの体験・経験から、胆力が生まれ、判断力・決断力・実行力を磨いてきたのでしょう。

 柳井さんは言っています。

 

 「どんな仕事の失敗も、挑戦し続ける人間の勲章だ」と。

                                 

次回は9月25日(金)に掲載いたします 

 

「明るい高齢者雇用」

第17回 キャリア総合化へ―新たな「道」を開拓―

(「週刊 労働新聞」第2163号・1997年8月4日掲載)

 

 B氏は中卒で就職し、一念発起して高校に入学、さらに国立大学を卒業した信念の人である。この経歴からも同氏は向上心の固まりであるといえるが、高齢になって海外で職を得るには、自立心・連帯心・向上心が日本企業で勤務する以上に要求されることは言うまでもない。

 また、管理部門系ではあるが2度のタイ赴任で合弁会社の設立から工場立ち上げ等の十分な経験もB氏の転職に極めて役立った。とりわけタイ語の能力が現地の文部省検定試験を持っているほど高レベルにあると同時に、これを習得する努力を続けてきたことが、タイの工場責任者として現地・現場に馴染む能力を有する裏付けとなっている。現地に溶け込む姿勢こそが、海外に限らず明るい高齢者雇用の必要条件であることを示している。

 さて「国際化」は、現地人とのコミュニケーションが十分にできて初めて可能である。超然として、英語あるいは日本語で現地人に話し続けるといった姿勢は、結局はコミュニケーション不足となり、喜怒哀楽を共にしない存在として相手にされないことになる。なぜならばコミュニケーションは相手の話をよく聞くことに始まるからである。B氏がタイ語能力について正式な資格を有しているということは彼の向上心の反映でもあるが、そのことが結局は現地工場を的確に運営することに大いに役立ったのはいうまでもない。

 B氏は、60歳まではM化学からの在籍出向であったため、本人の年収(現在は1,000万円強)に影響しなかったが、60歳以降はS工業に転籍し、年収800万円となったという。結局のところ、本人の旺盛な向上心といった資質によるところが大であるが、それを可能にする土壌もまた大切である。この場合、M化学の人事部が当人の定年前の出向に積極的であったこともB氏が新しい職場を得たことに寄与しているだろう。明るい高齢者雇用は、本人の資質のみならず、企業をはじめ周囲の支援があってこそ可能になる。活躍の場をグローバルに捉えて海外へ飛び出すことは、語学の問題から万人に通ずる訳ではないが、B氏の場合は若い年代からの体験と柔軟な思考力が大きくプラスした例である。

 B氏の例にみるように、出向の効用は少なくない。請われて出向先に赴くのであれば、まずもって本人の活躍の場が確保されているからである。社内で閑職に留まり、鬱々として退職まで過ごすのか、新たな機会を捉えて転身を図るのか、答えは明白であろう。能力に「定年」はないのである。

 何かと後ろ向きな印象を与えがちな出向を、もっと見直すべきであろう。そのためには本人の意識の喚起、すなわち自分のキャリア形成の場が社内のあるのか社外にあるのかを定年がちらつく前の段階で考慮に入れておくことが重要である。一方、会社側としては社員が出向を積極的に受け入れる土壌を作るために、キャリアを積む過程で常に選択肢を複数持てる環境作りを制度として設ける必要がある。労働市場が未発達な日本において相場観を持つのは容易ではないが、一定の年齢に達するまでに、いかに有益な経験を積むかが出向の成否を分けるような気がしてならない。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第20回】分社経営のポイント(1995年6月19日)

 

 分社経営は権限分配の極みである。

 組織は目標を実現するためにある。それには絶えざる活性化が必要だ。活性化は競争原理を激化させることだが、競争しながらお互いに助け合わなければならないという難しさがある。分社経営は、うまく機能すればその役割を果たす。

 権限を委譲するにあたっては、その前提としてホウレンソウ(報告・連絡・相談)というタテの意思疎通をシステムとして確立すること。またヨコの意思疎通の仕組みとして、合議制の充実をはかることが大切だ。

 社長は、分社の社長に予め期待値(経営目標)を決め、提示しなくてはいけない。それで競争原理を機能させる。全分社を競わせ、目標を達成することによって充実感を体感させるシステムである。分社政策をとるときは、本社社長の支配権を忘れないこと。特に人事権、解任権を堅持しなければならない。したがって分社の株式の3分の2以上持つことが不可欠だ。できることならキーとなる分社は100%の株式を保有すること。

 分社の社長に株を持たせないとやる気が起こらない、というのは一見正論のように聞こえるが、惑わされてはいけない。株による支配権の確保を十分に意識する必要がある。

 また、経理担当者に意を用いること。本社ですべての経理をやっているところもあるが、それでは分社意識が希薄化する。分社ごとに経理担当者を配置した方がいい。

 分社する部門は自立できる部門、一定のスピードで走れる部門でなくてはならない。今は力不足だが分社したらうまくいくだろう、という考えは間違いだ。走る能力がある部門を分社したら、もっと速く走れるようになる。

 

 

「中国の最新諸事情」
第8回 世界的大企業が詐欺に遭う

 

高井・岡芹法律事務所
上海代表処 顧問・中国律師 沈 佳歓

 

 最近中国の面白いニュースを紹介します。先月中国IT企業最大手のテンセントが3人の詐欺師によって、多額の金銭を騙しとられたことが明らかになりました。
 ことの発端は、中国の最大手IT企業「テンセント」が調味料業界の大手「老干媽」を起訴し、仮差押をしたことです。その理由は、テンセントと老干媽の間で去年から締結していたインターネットCM契約で約定したCM料金が振り込まれていないことでした。テンセントの訴状の中には、その一年間被告のために、数多くCMを作成、ネット上大量の関連商品を販売したにもかかわらず、被告が約定した報酬金おおよそ1600万元(日本円に換算して2億4000万円ほど)が一切支払われていないことが書かれていました。

 非常に明白な事実で争いのない案件とみんな思っていましたが、話が思わぬ展開を見せました。
 実際、裁判での「老干媽」の反論理由は実に簡単で、シンプルです。今まで一度もテンセントにCM依頼どころか、業務連絡をしたことすらないというのです。
 審判を進めると、テンセントが騙されたことが発覚しました。しかも、調べによると、テンセントを騙したのが学歴、技術、特別な権利など何ももってない中年3人組だったのです。その目的は莫大な契約金ではなく、テンセントが運営しているネットゲーム内の課金道具だそうです。ゲーム内の架空の物のために、中国最大手の2社を巻き込んだ詐欺ということで、瞬く間にネット上で話題沸騰となりました。 

 一般人としては笑って済ませるような話ですが、弁護士の私から見れば、数千名以上の弁護士を擁する現在世界屈指のIT会社が、3名の民間人にこんなに簡単に騙されたことは、蟻が象を倒したみたいに感じられます。教訓として覚えておかなければなりませんね。

 

 

第7回 『仕事で人は成長する』(1)
自分がキラリと輝く生き方

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生が、かんき出版で4冊目に書かれたのが、本書『仕事で人は成長する』です。

 

 今回の新型コロナウイルスによる雇用状況は、解雇等見込み者数が39,059人になり、(令和2年7月22日現在集計分 厚労省職業安定局雇用政策課 政策調整係)、毎週増加しています。

 

 また、リモートワークは新型コロナ終息後も、働き方改革の一つの選択肢として残る可能性が増えました。その結果として、オフィスが縮小され、社員の居場所も雇用形態も新時代を迎える可能性が増しました。

 

 新型コロナウイルスとは直接関係なく、大手金融機関を始め大企業も、次々と人員削減を発表しています。

 

 このような環境下で、「どのようなビジネスパーソンが生き抜けるのか?」のヒントになるのが本書ではないかと、あらためて思えました。

 

 本書は、ビジネスパーソンとして、人間として、成長するために必要な力を下記の5つに分けて、取り上げています。

 

 「仕事の質を高める力」

 「自分を高める力」

 「人を巻き込む力」

 「時代の流れを読む力」

 「リーダーとしての力」

 

 自分の資質を磨き、能力を高めるために、なにをすべきか?

 仕事を、自分自身の人生におけるキャリアデザインの面から捉える参考になります。

 

 本号も表題の本から、【高井語録】を集めていきます。

 

  • 仕事で差がつく簡単な理由

 「成功した人・評価の高い人と、成功しなかった人・評価の低い人との差は紙一重である。

 たしかに結果からみると、両者の間には、天と地ほどの隔たりがあることが多いが、もともとはそんなに差はなかったと思われる。

 なぜなら、スキルという能力の差ではなく、心の持ちようという量りがたい差が原因だからである。

 

 失敗する人や評価が低い人は、仕事に関して執着心が不足し、あきらめが早いケースが多い。

 完成に90%超えるまで前進しながら、

 『だいたいできたから、これでいい』

 という〝だいたい病“のクセがでる人か、

 『もうだめだ』

 という〝敵前逃亡病“のクセがでる人である。

 

 本来、仕事というものは、最後の10%弱が一番手を抜けないところである。とくに始末が悪いのが、〝だいたい病“の人。自分に甘い点数を付けやすいから、反省がない。だからいつまでも成長しない。そういう人に限って、

 『自分の能力が活かされていない』

 と、上司や回りの人のせいにする。

 

 成功する人や評価の高い人は、最後の数%をやり切り、さらに120%の完成度をめざすから、仕事で磨かれ、成長する。120%とは、相手の期待値を上回る仕事をする人である。そこには満足を超えて感動が生まれる。そうなると、その他大勢と違ってキラリと輝く存在になる」

 

  • 自分をブランド化させる

 「ブランドの本質は、『約束』ということである。ブランドものに人が集まるのは、その製品がいつも変わらぬ価値を備えていると信じられるからだ。信じる理由は、ブランドがその価値を約束してくれているからである。人々はそこに『かけがえのなさ』を感じる。

 

 あなたも、そのような人になることを目指せばいい。

 

 『自分をブランド化させる』という発想で、個人のブランドイメージができてくれば、その自分自身のイメージを裏切れないとの気持ちが出てくる。だれでも必死にそのイメージを守ろうとする。

 その努力が、あなた自身をも成長させるのだ。

 

 これまでは過去の実績が評価の対象だったが、変化の激しい時代は、過去の実績だけを見ても正しい判断はできない。『ブランド力』の重要性が増してきている。

 

 では、どうやって自分のブランドイメージをつくるか。

 

 仕事の中身や個人の資質によって違ってくるが、『安心感』と『満足感』がブランドづくりのキーワードになるだろう。この2つをどうやって相手に与えられるかを、徹底的に考えることだ。

 

 私の場合は、決して空約束をしない。法律の仕事は、簡単に約束できない世界だからだ。だが、同時に依頼者を不安がらせないことも、弁護士の大きな役割であると思っているので、それなりの方法をとる。

 

 絶対ではないにしても、まず解決の道筋を示すようにしている。具体的に道筋を示しながら、

『この峠を乗り越えれば、いつごろには穏やかな平野を展望できますよ』

といった言い方をする。不安感というのは、先行き不透明なときに起きるから、曲がりなりにも展望が開ければ安心感が得られる。

 

 次に、

 『私も一緒に登りますよ』

 と付け加えれば、依頼者は安心感と同時に満足感が得られる。

 この2つを持ってもらうことで、『かけがえのない存在』と評価されることになる。

 

 これが、いわば私のブランドということになる」

 

  • 挫折しない目標の立て方

 「目標設定は活力を生む源泉でもある。目標を持つと行動が始まる。行動が始まると一日が充実する。逆に目標を持たないと、知らないうちに人はいい加減になっていく。

 

 また、目標を持つと人は成長する。目標に向かって邁進することが成長につながる。そんなときに素晴らしいアイデアが生まれたり、新しい情報や知識を吸収する力も出てきたりする。

 

 さらに言えば、目標は人を強くしてくれる。つらい出来事や困難にぶつかったようなとき、くじけてしまう人と頑張れる人に分かれるが、目標があれば乗り切る勇気が生まれて頑張ることができる。

 

 では、どうやって目標を持つか。

 それには自分の好きなことを目標にすればいい。ただし、以下の条件がつく。

 ・まず世の中に役に立つこと 

 ・自分を成長させること 

 ・周りの人を幸せにすること

 

 この3つの条件をクリアすれば、後はどんなことでもいい。目標に向かって努力することは、楽しい作業であるはずだが、途中で挫折してしまう人が少なくない。

 

 挫折しないための方法はいくつかある。

  1つは、目標を鮮明にする

  目標は単なる夢でも願望でもない。具体的な着地点を持ったものだ。それを鮮明にさせて
  おかないと、少しも目標へ近づけない。それで挫折してしまうのだ。

 

  1つは、タイムミリットを設ける

  目標はどんなときでも、はっきりと期限を設ける必要がある。期限を決めない目標では、
  『目標を持っている』とは言えない。期限のない目標は、淡い願望に過ぎない。

 

  1つは、目標は必ず紙に書き出す

  頭のなかにあっても目標は目標だが、紙に書き出すのと書き出さないのとでは、達成意欲
  に大きな差が出てくる。書き出す人はよく目標を達成し、書き出さない人は十中八九ダメ
  と思っていい。そのくらい書き出すことは大切だ。

 

  もう一つ加えれば、分相応より大きめの目標がいい

  そのほうが自分の成長につながるからだ。『大きすぎて達成できないのでは……』という心
  配は無用。まじめに正しく考えて前記の条件をクリアした目標なら、大きすぎることは決し
  てない。安心して目標に向かって突き進んでいけばいい」

 

  • 能力を拡大させる考え方

  「ビジネスを効率的に進めていくうえで、きわめて重要な考え方が、『選択と集中』である。

 そのポイントは、次の3点である。

 

  ・やることとやらないことを決める

  ・捨てるものはさっさ・・と捨てる

  ・集中すべきものに専念する

 

 ふだん忘れているが、私たちの生活は『絶えざる選択の積み重ね』によって成り立っている。

 朝目覚めたときから夜眠るまで、何かの選択をしている。その選択の適否によって、人生は大きく変わってくる。

 

 たとえば、食べ物の選択は体調に影響し、人生に大きな影響を及ぼしてくる。お金持ちになるのも、お金に苦労するのも、自らの選択が大きく作用しているはずだ。その意味では、人間に与えられた最高の特権が、『選択』ともいえる。

 

 だが、この選択をほとんど利用しない人がいる。

 また、誤った選択をしてしまう人もいる。

 

 せっかく正しい選択をしても、集中しない人がいる。

 

 適切な選択を行い、極度の集中力を発揮したら、誰もが信じられないほどのキラリと輝く能力を発揮する。人に潜在能力があるとよく言われるが、それを引き出すのは、『選択と集中』によると考えることができる。

 ガンジーの次の言葉と合わせて考えれば、誰にでも、こういうことも起きて不思議ではない。 

 

 『ひとりの人に可能なことは、万人に可能だと私は信じている』 (ガンジー) 」

 

  • 中途半端な仕事人の小理屈こりくつは信用されない

 「幕末の動乱期に活躍した勝海舟に、次の言葉がある。

 『小理屈で諦めてしまうからダメなんだ。世間は生きている。理屈は死んでいる。死んでいるものが、生きているものに勝つことなど、到底できることじゃない』

 

 物事は中途半端にしてはダメだ。何かを始めて経過がうまくいかないと、すぐ諦めてしまう人がいる。そういう人は、『やめることを正当化する理屈』を必ず言う。もっともらしい理屈が山ほど出てくる。そんな人に限って良い成果が挙げられない。

 

 徹底性という精神は、日本人には欠けているところがある。必要性は認めながら、なかなか徹底してやろうとはしない。そのくせ始めてしまうと、今度はなかなかやめようとはしない。だから過去の大きな変革も、外圧によらねばできなかった。

 

 徹底してやり抜くということは、一方で、先に進めなくなったとき、きびすを返してさっさと撤退することでもある。織田信長は、徹底することにけていたが、逃げ足も速かった。このスピード感が、いまの日本社会には欠けている」

 

  • 自分が自分にだまされる

 「自己啓発のポイントは、小さなことから始めるのがいい。

 最初から大げさなことを考える必要はない。問題は継続できるかどうかということ。

 

 継続の試みとして、たとえば『日本経済新聞の【私の履歴書】だけは1年間読む』と決めることをお勧めしたい。決めたらそれを続ける。クセになって、読まないと気持ちが悪いというくらいまで続けること。それができれば、あなたは小さな成功を経験したことになる。

 

 一度決めたことを継続できないのは、自分の行動に対し疑念や迷いが生じるからだ。

 『こんなことして何になる』

 気が乗らないときは、必ずこんな疑問が出る。そういうときは、

 『決めたことだから』

 ということでいい。決めたことは一種の目標だから、それへ向かってひたすら努力をする。やり遂げるには理屈はいらない。

 

 理屈のほとんどは怠け心から発する。これを称して古人は、

 『怠け者の舌だけは怠けない』

 と言った。まさにその通りで、『ほかにやりたいことが出てきた』など、『やらない』ための言い訳が山ほど出てくる。不思議なのは、どれももっともらしく感じられること。それで自分が自分にだまされる。

 

 怠け心を克服するには、試練をゲームのように楽しむクセをつけるといい。ゲームと言うのは意図的に試練をつくって、どちらがそれをうまく克服するかを競うものだ。

 ルールとは試練が姿を変えたものに他ならない。それでいてゲームが楽しいのは、試練を克服することが楽しいからだ。この原理を実生活にも取り入れてみればいい。

 

 継続性を奪うものは、怠け心のほかに、突然訪れる状況の変化もある。いわゆるピンチである。そういうときは対処できないと思うかもしれない。だが、ひとつ良い考えがある。それは、『時にゆだねる』ことだ。

 

 一時的に中断を余儀なくされても、柔軟に事実を受け入れ、またしぶとく始める決心を固めればいい。継続を、あまりマニアックに考えないこと。継続は断続でもいいのである」

 

  • 威張っている人は終わった人

 「『春風を持って人に接し、秋霜を持って自らを慎む』

これは江戸後期の儒学者・佐藤一斎の言葉である。他人に優しく、自分に厳しくあれという教え。

 

 しかし、実行となると意外と難しい。いざ人に接すると、自慢したり威張ったりしてしまう。だが、自己成長のためには、これは一番よくない。

 

 なぜかというと、人の成長は「他人によるところ」が大きいからである。もし周囲に他人がいなければ、成長の契機がつかめない。

 それなのになぜ威張るのか。

 

 謙虚さを見失って、自分を高いところにおいてしまうからである。高いところから見下ろすと、威張るしかなくなる。『バカは高いところに登りたがる』とはそいう意味である。

 

 どんな形であれ、威張っている人を見たら、『終わった人』と思って間違いない。

 なぜなら威張るということは、『過去自慢』にほかならないからである。過去のものだから、道行く人はあまり見ようとはしない。だから、自分から声を大きくして見られることを促しているのだ。

 

 威張る人とは、自分から成長を断念した人と言える。成長していくためには、学ぶ姿勢と同時に謙虚さがどうしても必要だが、それがないのだから、成長するはずがない。

 気を付けたいことは、誰でもこのような人間になるということである」

 

 次回は8月28日(金)に掲載いたします。

「明るい高齢者雇用」

第16回 キャリア総合化へ―新たな「道」を開拓―

(「週刊 労働新聞」第2162号・1997年7月28日掲載)

 

 次に紹介するB氏の事例は、もともと従業員5,000人の大手化学メーカー国際部所属の男性(58歳)が、従業員100人余のコンピューター部品製造メーカーのタイ工場責任者として出向したケースである。B氏は、かつて2度、7年間にわたりタイに赴任した経験を生かし、また永住を考えるほどのタイへの思い入れから、60歳定年後には出向先に転籍し、現地責任者として勤務し続ける予定と聞く。

 B氏は昭和12年11月生まれであるから、間もなく60歳を迎えようとしている。昭和28年に中学卒業と同時にM造船所に溶接工として入社し、併せて同社の技術学校へ入学した。昭和32年に同社を退職して県立高校へ転入、昭和34年には国立大学経済学部に入学し、昭和38年に同大学を卒業後、前期の大手化学メーカーM化学に入社したのである。同社九州工場の経営企画を振り出しに、東京本社調査部、事業開発部などで経営資料の作成・事業調査・新製品開発の経済性計算等、一貫して経営企画、調査畑の業務に従事した。

 昭和49年6月から昭和52年2月までの2年9ヵ月間、同社のタイの合弁会社(繊維紙加工剤製造)に現地法人社長として赴任し、会社設立から工場建設までを担当したという。

 その後本社に帰任し、経理部門・営業部門等で部長に昇進したが、平成3年6月にふたたび上記とは別のタイの合弁会社(樹脂関連の製造業)に社長として赴任し、前回同様設立から担当して、4年2ヵ月を同地で勤務することとなった。平成7年7月以降は、本社国際部に在籍し、東南アジア合弁会社管理関係の業務を担当していたという経歴の持ち主である。

 出向先である日本S工業株式会社は、コンピューター用精密部品等の製造を事業内容として1961年に設立し、現在資本金5,000万円、年商36億円、従業員125人。典型的な大手企業の下請会社で、岡山県に工場があるが、大手メーカーの工場海外移転に伴い既にタイで合弁工場を稼働中である。280人のタイ人労働者と日本人の現地会長副社長および3人の技術者で運営している同社は、副社長を補佐し工場全般を管理する工場長として、海外工場の管理職経験者でタイ語を話せる人を求めていた。

 B氏は55歳の時に役職定年を迎え、既にラインの長ではなくなっていたが、会社の社外出向施策と本人の2度赴任したタイへの強い愛着から、定年60歳以降の再雇用を含め、タイで働く仕事を探したいとしていた。平成7年にタイから帰任した直後から人事部門へその旨を申し出て、すぐに日本S工業のタイ工場責任者として出向することになった。

 中小製造業の海外移転が増加するなか、工場長経験者は引き合いが多いと聞く。ことにB氏のように実際に海外への赴任経験があり、かつ国内でも多面的なキャリアを積んだとなればなおさらのことであろう。このことは今盛んに言われる“複線型人事”の先の「キャリアの総合化」の重要性を物語る。管理職は管理職として、専門職は専門職としてその領域を固めるのではなく、一定の年齢に達したならば、それまでのキャリアを棚卸して、さらに別の途を準備することが必要となるのである。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第19回】著者は年功序列よりも実力を評価されることを望んでいる(1995年5月18日)

 

 リクルートが7,000人を対象に調査した結果によると、「独立して仕事をしてみたい」と答えた人は42%超。その内4分の1は「すぐにでも独立したい」か「近いうちに独立したい」と答えた。

 日本の経済は沈没の方向に向っている。このことは社長フォーラムで論証し続けてきたとおりだ。国に対する信頼が失われ、同時に企業に対する信頼も失われつつある。

 企業も成長が止まる、衰退が始まる、社員数がどんどん減る。企業とともに歩んでいけば自分も小さくなっていく、という不安感、焦燥感。その一方で、しかし人間である以上、自律心、向上心を持っている。それ故に独立志願が強くなる。

 皆さんの会社の社員100人中42人が独立したいと思っている。専務が、あるいは営業部長が独立するかもしれない。社長は、この調査結果を意識して経営にあたらないといけない。

 再就職するとしたら、半数強が「年俸制の会社を希望」という記事がある。富国生命が20歳~59歳のサラリーマン500人を対象に行った調査結果だ。

 これまで日本的経営として特徴づけられてきた制度の崩壊を目の当たりにしたサラリーマンたちが、意外にしたたかな考えを持って変化に対応している様子が読み取れる。

 例えば、年俸制が導入された場合、自分の年収が「減る」と見るのはわずか6%弱。「同じくらい」が約半数の53%を占めるものの、「増える」が40%にものぼり、自負(うぬぼれ)のほどをうかがわせる。

 再就職するとしたら、「年功序列の会社」(42%)よりも「年俸制の会社を希望」(52%)の方が多い。自分の実力を正当に評価される企業で働きたいという風潮が強いのだ。年俸制の会社の方が若者たちに歓迎される。これは独立志願が4割強いるのと同じこと。社員にどのようにしてやり甲斐という希望を与えるかが、企業経営者の課題となる。

 

 

「中国の最新諸事情」
第7回 6月から続く豪雨

 

高井・岡芹法律事務所
上海代表処 顧問・中国律師 沈 佳歓

 

 中国では最近大雨が続いています。

 中国国営の宣伝部によると“四川省が80年ぶりの大雨に遇いました”、“その大雨の影響で各地域を合わせて、既に1000万人以上が被害に遭っています”。“数十年ぶりの大型豪雨に苦しんでいる、中国南部地域を中心に26の省、市、自治区を直撃し、甚大な水害をもたらしています”などの報道が相次いでいます。

 6月24日、中国人民日報も“雨が傾くように降り続く”という題を記事にし、6月に入って、豪雨により各地で洪水災害対応レベルをⅣ(最高級)まで切り上げました。

 問題は、その“未曾有”“歴史級”と言われる雨がまだ降り続いていることにあります。6月2日から、ほぼ毎日雨が降っていて、今日(7月3日)まで、一切止む兆しがありません。統計によれば、既に家や建物9300軒が崩壊し、直接的な経済損失だけで241億元(4000億円)に達しました。

 こうした中に、国外メディアから中国水利の奇跡と言われたあの三峡ダムが決壊危機に迫るのではないかという心配の声がまた上がってきました。

 三峡ダムは、中国のみならず、世界最大の水力発電ダムであり、全長は570kmにも及びます(東京から大阪までの距離は550kmです)。年間発電力はおおよそ1000億kwhで、この一つのダムで中国の年間総発電量の5分の1を占めます。

 三峡ダムに纏わる不祥事の声は、竣工当時から出ていました。設計ミスとか、欠陥工事などの見解は後を絶ちません。一定期間ごとに、カレンダーを巡る度に、ネットや外国メディアにより提起されてきました。2009年から10年間の間ずっと、本当に暇な人達です。まさに「隣の芝生は青い」ならぬ、「となりのダムは脆い」という発想です。

 こういうノストラダムス達に言いたいのは、時代は変わったということです。机上の空論からは何にも生み出せません。もちろん、私はテクノロジー至上主義者ではありません。自然に絶対勝つ、何も絶対に発生しない、というようなことは言いません。形あるものはいずれ崩れるでしょう、想定外の災害に遭遇したダムは今まで以上危険に曝されているでしょう。しかし、中国の政府、中国の人民達は必ず全力を尽くして、最善の方法でこの困難を乗り越えるでしょう。今までのように、これからも同じように。

 

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