高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第19回】著者は年功序列よりも実力を評価されることを望んでいる(1995年5月18日)

 

 リクルートが7,000人を対象に調査した結果によると、「独立して仕事をしてみたい」と答えた人は42%超。その内4分の1は「すぐにでも独立したい」か「近いうちに独立したい」と答えた。

 日本の経済は沈没の方向に向っている。このことは社長フォーラムで論証し続けてきたとおりだ。国に対する信頼が失われ、同時に企業に対する信頼も失われつつある。

 企業も成長が止まる、衰退が始まる、社員数がどんどん減る。企業とともに歩んでいけば自分も小さくなっていく、という不安感、焦燥感。その一方で、しかし人間である以上、自律心、向上心を持っている。それ故に独立志願が強くなる。

 皆さんの会社の社員100人中42人が独立したいと思っている。専務が、あるいは営業部長が独立するかもしれない。社長は、この調査結果を意識して経営にあたらないといけない。

 再就職するとしたら、半数強が「年俸制の会社を希望」という記事がある。富国生命が20歳~59歳のサラリーマン500人を対象に行った調査結果だ。

 これまで日本的経営として特徴づけられてきた制度の崩壊を目の当たりにしたサラリーマンたちが、意外にしたたかな考えを持って変化に対応している様子が読み取れる。

 例えば、年俸制が導入された場合、自分の年収が「減る」と見るのはわずか6%弱。「同じくらい」が約半数の53%を占めるものの、「増える」が40%にものぼり、自負(うぬぼれ)のほどをうかがわせる。

 再就職するとしたら、「年功序列の会社」(42%)よりも「年俸制の会社を希望」(52%)の方が多い。自分の実力を正当に評価される企業で働きたいという風潮が強いのだ。年俸制の会社の方が若者たちに歓迎される。これは独立志願が4割強いるのと同じこと。社員にどのようにしてやり甲斐という希望を与えるかが、企業経営者の課題となる。

 

 

「中国の最新諸事情」
第7回 6月から続く豪雨

 

高井・岡芹法律事務所
上海代表処 顧問・中国律師 沈 佳歓

 

 中国では最近大雨が続いています。

 中国国営の宣伝部によると“四川省が80年ぶりの大雨に遇いました”、“その大雨の影響で各地域を合わせて、既に1000万人以上が被害に遭っています”。“数十年ぶりの大型豪雨に苦しんでいる、中国南部地域を中心に26の省、市、自治区を直撃し、甚大な水害をもたらしています”などの報道が相次いでいます。

 6月24日、中国人民日報も“雨が傾くように降り続く”という題を記事にし、6月に入って、豪雨により各地で洪水災害対応レベルをⅣ(最高級)まで切り上げました。

 問題は、その“未曾有”“歴史級”と言われる雨がまだ降り続いていることにあります。6月2日から、ほぼ毎日雨が降っていて、今日(7月3日)まで、一切止む兆しがありません。統計によれば、既に家や建物9300軒が崩壊し、直接的な経済損失だけで241億元(4000億円)に達しました。

 こうした中に、国外メディアから中国水利の奇跡と言われたあの三峡ダムが決壊危機に迫るのではないかという心配の声がまた上がってきました。

 三峡ダムは、中国のみならず、世界最大の水力発電ダムであり、全長は570kmにも及びます(東京から大阪までの距離は550kmです)。年間発電力はおおよそ1000億kwhで、この一つのダムで中国の年間総発電量の5分の1を占めます。

 三峡ダムに纏わる不祥事の声は、竣工当時から出ていました。設計ミスとか、欠陥工事などの見解は後を絶ちません。一定期間ごとに、カレンダーを巡る度に、ネットや外国メディアにより提起されてきました。2009年から10年間の間ずっと、本当に暇な人達です。まさに「隣の芝生は青い」ならぬ、「となりのダムは脆い」という発想です。

 こういうノストラダムス達に言いたいのは、時代は変わったということです。机上の空論からは何にも生み出せません。もちろん、私はテクノロジー至上主義者ではありません。自然に絶対勝つ、何も絶対に発生しない、というようなことは言いません。形あるものはいずれ崩れるでしょう、想定外の災害に遭遇したダムは今まで以上危険に曝されているでしょう。しかし、中国の政府、中国の人民達は必ず全力を尽くして、最善の方法でこの困難を乗り越えるでしょう。今までのように、これからも同じように。

 

 

第6回 『3分間 社長塾』(2)
スピード判断力をつける

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生の本業はもちろん弁護士ですが、皆さまご存知のように、経営の合理化や改革・再建に50年以上の実績をお持ちの方です。

 とくに社長・経営幹部向けの講演や指導は、「半歩先を読み、問題点を的確に指摘し、解決への方向性を具体的に説く」として定評があります。ズバリ本質をつかむ先見性と実践対策を、新鮮さに溢れた分かりやすい言葉で語られることで、83歳になられた現在でも、相談者が後を絶ちません。

 

 前回5月29日号に続いて、本号も表題の本から、とくに社長の戒めとなる言葉を選びました。

 

社長の戒め・8つの言葉

 

➀ 社長はもっと優しさを表現しなさい

  「経済縮小の時代は、経営者だけでなく社員にとっても厳しい時代だ。従来の仕事の質と量では通用せず、成果を上げなければ降給や降格、時には解雇という現実にも直面させられる。

 社員の能力や働きぶりをシビアに評価するのは社長の役割だ。

 ただ、厳しいだけでは組織はまとまらない。社員は血の通わないロボットではない。

 社長が厳しさと同時に、優しさを発揮することで、人間的なつながりが形成され、本当の意味で強い組織になっていく。

 

 レイモンド・チャンドラーの名作『プレイバック』に、

 『タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない』

 という有名なセリフがあるが、これを社長用にアレンジするなら、

 『厳しくなければ経営できない。優しくなければ経営する資格がない』

 といったところだろうか。

 

 経営環境が厳しくなると、シビアな面ばかりを強調したくなるが、過酷な時代だからこそ、社長は優しさをいかに表現していくかが、大事なポイントになる」

 

➁ ケチな社長は嫌われる。ケチらない社長は経営に失敗する

 「社長は基本的にケチであるべきだ。

 コスト感覚のない社長に経営者は務まらない。 

 ただ「うちの社長はケチだ」というイメージが定着すると、社員の士気は上がらない。ケチという印象を社員に与えずに、いかにコストを切り詰めるか。それが社長の腕の見せ所である。

 

 会社に長年貢献した社員の円満退社が決まり、会社でちょっとした送別会を開いてあげることになったとしよう。出席するのは十数人の社員。あなたはどんな送別会を開くだろうか。

 どうせ身内の会なのだから、近所のレストランで1人5000円程度でいいと考える社長は、おそらく社員からケチのレッテルを貼られてしまうだろう。

 このようなときは、思い切って一流レストランで1万円程度の予算でやる。それで辞めていく社員に喜んでもらえ、残る社員の励みになるのなら高い出費ではない。

 

 大切なのは、そこからいかにコストを下げるかだ。

 1万円の予算を想定しているときは、幹事に7000円から交渉してもらう。それで一人9500円になれば500円の節約になる。この500円を『たかが500円』と笑う社長は、経営者には向いていない。おそらく社内のいたるところにムダな500円が落ちており、いずれ自分の首を絞める結果になるだろう。

 社長に必要なのは、『生き金/死に金』の感覚だ。ケチだと思われたら、5000円を使ってもすべてが『死に金』になる。

 

 また社員に気前がいいという印象を与ても、9500円で済むところ1万円かけていたら、500円が『死に金』だ。一方、気前がいいという印象を与ながら500円を節約できれば、使った9500円も、節約した500円も『生き金』に変わる。

 この『生き金/死に金』の感覚がない社長は、『生き金』をケチって企業の活力を失わせ、また逆に、『死に金』を積み重ねて、経営を圧迫させることになる。

 

③社長は異世代の人脈を持て

  「いずれの年代の社長も、世代のかなり離れた上と下の人脈を持ちなさいと伝えたい。

 自分が若い20代の社長なら40・50歳代の、自分が50歳の社長なら75歳の長老から30・40代の人物と親交を持つことだ。

 とくに40代を過ぎると、人間は体力の衰えを感じ始め、年齢を重ねるとともに考え方が保守的になる。そうならないためにも、意識して年下の人物と付き合わないといけない。若い人の得意分野である新しい価値観、新しい発想と交わるために……。

 

 ご自分のアドレス帳に、世代のまったく違う知り合いの名前が、2割以下なら黄色信号、1割以下なら赤信号と認識してもらいたい。

 そんな危険信号がついた社長は、意識して若い人と付き合っていただきたい。

 

 自分で勉強会を開いて若い人を集めてもいいし、若い経営者のいるベンチャー企業に商談を持ちかけてみるのもいい。身近なところで自社の若い従業員と会話の機会をつくったり、自分の息子や娘さんに新商品のアイデアを聞いたりするだけでも、新しい価値観に触れられるはずだ」

 

④社長は「えらい人」になりなさい

  「関西地方では『えらい』という言葉を二つの意味で使う。

 一つは文字通り『偉い』という意味。もう一つが『しんどい』という意味だ。

 私は名古屋の出身なので、幼い頃から自然に二つの意味を関連付けて考えていた。

   誰に教わることなく、しんどいことをするから偉い人なのだと。

 

 ところが、上京後、東京では『えらい』を『しんどい』という意味で使わないことを知って驚いた。辞書で調べてみても、『偉』と言う漢字は、優れている、大きいという意味があるだけで、しんどい、疲れたという意味ではなかった。

 それでも『しんどいことする人=偉い人』という信念は、今も変わらない。

 

 多くの社長は、社長になるまでに『えらい』状況を経験している。しかし、偉くなってから『えらい』仕事を続けている社長は少ない。

 社員が尊敬するのは、自ら汗を流す社長だ。現場にも出て、頭も使い、トラブルがあれば体を張って会社を守る。みんなが躊躇(ちゅうちょ)するようなしんどい仕事を積極的に買って出てこそ、本当の敬意を持ってもらえる」

 

➄ 数々の「み」から自分を守れ

 「社長は成功すればするほど、対峙しなくてはならないものが現れる。それは数々の『み』だ

 妬(ねた)み、嫉(そね)み、恨(うら)みつらみ、やっかみ……。

 実際にこれらの『み』の被害にあって、悔しい思いをした社長も多いはずだ。

 

 これらを極力避けるには、感謝の気持ちを常に表すことが大切だ。レベルの低い社長は、物事がうまくいくと自分の手柄にし、妬み、嫉みを買う。一方、失敗すると周囲の責任にし、恨みつらみを買ってしまう。

 社長は成功したときこそ周囲に感謝の意を示し、失敗したときは謙虚に自分の非を認めなくてはいけない。

 感謝のできない社長は、たとえ自分が正しくても、余計な荷物を背負わされることになる。

 

 つまらないことに煩わらされないためにも、常日頃から、『ありがとう』の気持ちを周りに示す習慣を身につけたい」

 

⑥社長は心理学を学びなさい

 「社長が学ばなくてはいけないものは、経済学でもマーケティング理論でもない。

 相手の心を読む心理学だ。

 つねに相手の心理を読む眼力が必要とされるし、相手の心を動かす力も求められる。

 社長はあらゆる面で〝心の達人“でなければならない。

 そこで、とくに実践していただきたいのもが3つある。

 

 第1に、社員の心をつかむために、「勝てば官軍、負ければ賊軍」に徹する。勝つということは、社会に貢献し、実績を残すことだ。

 利益を上げるために、ときに社長は社員に厳しい要求をすることがある。厳しさを突きつけられて喜ぶ社員はおそらくいないだろう。ただ、改革に結果が伴えば、批判は称賛に様変わりする。

 会社の利益が上がって、それが自分たちの給与に反映されれば、抵抗する社員も黙って社長についていく。

 

 第2に、「引くことを知る」である。

 社長になるような人は、元来押しが強く、簡単に引かない肝の据わったタイプが多い。それは良いことだが、引くことを知らずに損をしてしまうこともある。

 強く推したいなら、あえて一度引くことも大切だ。相手が誘い水に乗ったところで、再び押すのもいいし、まだ押すタイミングではないと判断して、時が満ちるのを待つ手もある。いずれにせよ押し一辺倒では、相手の心理的抵抗は強くなって、ますます押しづらくなることを覚えておこう。

 

 第3に、『社長らしく身なりを整える』ということだ。

 見た目と経営能力に直接の相関関係はない。しかし、アメリカで行われた心理実験で、外見のいい人物は能力も高く評価されやすいことがわかったそうだ。

 滅多に会わない顧客や取引先に、外見で能力不足の印象を一度与えてしまうと、あとで挽回するのは困難だ。もちろん恰好さえ良ければいいというものではないのは当然。なにより中身の充実が大切だ。業績を上げて、社長が自信を持てば自ずと軽さが消え、貫禄がにじみ出てくる」

 

⑦社長は常に自己評価を怠るな

 「社長は常にフレッシュであろうと努力しなければいけない。もし、自分に賞味期限が来たことを悟ったら、いさぎよく後継者に会社を託す覚悟も必要だ。

 ただ、オーナー社長の場合は見極めが難しい。

 

 では、自分の引き際を自分で決めるにはどうすればいいのか。

 そこで重要になってくるのが、第二者評価、第三者評価だ。

 

 自分で自分を評価するのは、第一者評価。

  ステークスホルダーの評価が、第二者評価。株主・顧客・従業員・取引先などの評価だ。

 ただ、ステークスホルダーは自分の立場から評価してしまうのが難点だ。

 顧客から見れば、商品やサービスを安く提供してくれる人がよい社長。

 従業員から見れば、給与や待遇の面で優遇してくれるのがよい社長。

 それも評価の一つであるが、公正な評価にはほど遠い。

 

 いちばん良いのは、社外取締役や社外監査役といった第三者に評価してもらうことだ。

 この人にダメ出しされたなら納得できるという人を、きちんと選んでおけば、それが自己評価の参考になる。

 それが社長が最前線で長く活躍するコツである」

 

⑧後継者選びにはシビアな眼を持ちなさい

 「経営者の最後の仕事は、事業承継といえる。

 あくまでも次期社長選びは、温情ではなく、『利益を出せる経営能力を身につけているかどうか』―この一点が、もっとも重要な判断基準となる。

 もし本気で息子や腹心に後を継がせたいと思っているなら、継がせる前に、徹底的に一人前の経営者に鍛え上げなければならない。それができなければ会社を譲るべきではない。それが社員やその家族の生活を預かり、また社会に貢献している会社の社長としての責任である。

 

 では、どんな後継者教育をすればいいのか。

 創業社長と比べて二世が頼りなく見えるのは、経験に裏打ちされた確固たる自信を持っていないからだ。自信がない人は決断も遅いし、周囲を不安にさせる。自信をつけさせるためには、修羅場を経験させるのがいちばんだ。たとえば……

 ・親の手の届く世界の外に放り出す

 ・実力主義の企業でゼロから働かせる

 ・赤字の子会社、不採算部門の責任者にさせる

 こういう地べたを這いずり回るような経験をさせ、その困難を克服してこそ、次の社長としての自信がつくのである。

 

 ところが、多くの経営者は逆の方法で自信をつけさせようとする。彼らもそれに気づいているから、実績をいくら積んだところで、自分の実力でつかんだものでないという不安にさいなまれる。

 息子が複数いるなら、厳正に判断して優秀な人材を選ぶ。劣る方をトップにすえると、その会社はいずれ割れてしまう危険性がある。

 

 息子の後継者教育に成功しなかったら、無理して息子に継がせてはいけない。ホールディング・カンパニー(持ち株会社)を設立して、息子をそこの社長にするといいい。株は息子に、経営は信頼できる経営幹部に、という後継オーナーと後継社長に分けてしまうことである。

 ここは心を鬼にして、シビアな眼を持たなければならない」

 

次回は7月31日(金)に掲載いたします。 

「明るい高齢者雇用」

第15回 出向先で骨埋める―56歳の転身で大成功―

(「週刊 労働新聞」第2161号・1997年7月21日掲載)

 

 前回触れた出向成功者A氏の出向までの経緯と出向後の状況を詳しく紹介したい。A氏は出向当時56歳ではあったが、今回はキャリアが優先されて、転職への道が開かれたのである。当電気メーカーでは55歳で役職定年制を敷いており、当人の元気度、やる気、キャリア等が斟酌されずに、一律に役割、仕事領域が変更されるシステムになっているから、まだまだ最前線で活躍したいと思っているA氏には誠に寂しい処遇であった。この様な役職定年制は、このメーカーに限らず日本の多くの企業が採用しているが、いってみれば役職をはずされるということは窓際族と言われても仕方のない処遇であるからである。

 まさに人間の味が発行する成熟の時代に、彼は熟す機会を逸して人生を終えようとするのであるから、寂しさは一入のことであろう。A氏はその様な現状に対する活路を外に求めた。かつての工場勤務時代に購入した家が甲県にあったことが、出向を決意し易くした1つの動機でもあった。言ってみれば配置転換、転勤といった経験がない者には、高齢になればなるほど転職自体に心理的な抵抗感が強くなるのであるが、A氏は本社勤務だけでなく工場勤務の経験があったことが、有意義に機能したのである。

 A氏は出向後、生産管理のキャリアを生かし、現在生産工場に取り組んでいるという。出向先企業は、それまで外部のコンサルタント会社を入れて生産性改善に取り組んでいたが、成果を上げることはできなかった。それが今回、A氏を受け容れたことにより、着々と成果を上げているという。今の時代はどのような分野にもコンサルタント業務は存在するが、大半のコンサルタントは能力がないといってよい。企業の中で一人前の能力を発揮できない者が問う秘策としてコンサルタントを開業している例が多いからである。また、新卒者の就職人気企業ランキングでは大手コンサルティング・ファームがしばしば登場するが、経験のないものがコンサルタントとして活躍できるものかどうか、首を傾けざるを得ない。実績を上げられるコンサルタント(指導者)が必要であるが、それはA氏の様に品質管理、生産管理体験を長年に亘って体験し、苦労を重ね責任を背負ってきた者によって初めて可能であろう。

 それだけではなく、A氏には出向先と波長、つまり水が合ったということであろう。現在までわずか一年足らずであるが、「困ったときのAさん頼み」と言われる程の高い評価を得ている。本人は家も建て直し、甲県に骨を埋めるつもりで元気一杯に働いている。60歳までは勤務することができ、それ以降の雇用も本人の力次第で確保されるというのである。

 さて、A氏は生産管理の世界で出向・転職を実らせた。彼は現場で働いた経験もあり、工場長としてまとめ役も経験した中で専門的知識を培ってきたことにより、成功した例であろう。長い勤労生活において専門的体験、知識等々を会得するように努力し続けることが、明るい高齢者雇用の途の基本であることを知るのである。出稼ぎ根性を持たず、名実ともに出向先の一員として新しい職場に骨を埋める姿勢が必要であることは言うまでもない。

 

1.『弁護士の営業戦略』発売のお知らせ

 

 

 私が執筆いたしました『弁護士の営業戦略―「顧問契約」を極めることが営業の真髄』が2020年5月28日に株式会社民事法研究会より刊行されました。

 2017年刊行『弁護士の経営戦略』、2018年刊行『弁護士の情報戦略』に続く、「弁護士の戦略シリーズ」第3巻かつ最終巻となる今作では、顧問契約に焦点を絞って、57年の弁護士生活と47年の事務所経営を通じて私が得た知見を述べています。

 


<目次>

第1章 顧問契約とは何か
第2章 顧問契約の獲得
第3章 顧問契約の継続
第4章 顧問契約を超えて

 

 本書では、顧問契約とはどういったものか、依頼者は顧問契約に何を求めているのか、弁護士は顧問契約を結んだらどういったサービスを提供すべきかのかという顧問契約の性質について、一般社会・依頼者・弁護士の多角的な視点から解説したうえで、顧問契約を獲得し、継続するための方策や、それらを突き詰めた先に得られる依頼者との信頼関係、弁護士として辿り着く到達点について、筆者の経験を基に詳細に書き記しています。

 弁護士のみならず、士業の方は、本書を読めば、顧問契約の何たるかを理解していただけるものと思います。

 また、弁護士に依頼する側である企業の方も、本書を読んで、弁護士と顧問契約を結ぶことで得られるメリットや弁護士が顧問契約について抱いている思いを正しく理解していただくことで、今後、顧問弁護士とより良い信頼関係を築き、最高のサービスを受けられるようになるでしょう。(はしがきより抜粋)


 

 一般書店、Amazon、民事法研究会HPよりお買い求めいただけます。

 ぜひ購入をご検討くださいますようお願い申し上げます。

 

 

2.「弁護士戦略シリーズ」【全3巻セット】発売のお知らせ

 

 

 上記1の通り、『弁護士の営業戦略』の刊行により、『弁護士の経営戦略』『弁護士の情報戦略』と続いた「弁護士の戦略シリーズ」が完結いたしました。

 これを記念して、同シリーズ全3巻セットが発売となりましたので、お知らせいたします。

 


<目次>

『弁護士の経営戦略―「営業力」が信用・信頼をつなぐ』

第1章 信用をつくる営業力とは何か
第2章 信頼される弁護士力とは何か
第3章 安心を与える事務所力とは何か
第4章 仕事を楽しむ人間力とは何か

 

『弁護士の情報戦略―「新説」創造力が信用を生み出す』

序章 弁護士の情報戦略とは何か
第1章 弁護士技術上の新説
第2章 法律上の新説
第3章 事務所経営上の新説
第4章 人間力上の新説


 

民事法研究会HPよりお買い求めいただけます。

ぜひ購入をご検討くださいますようお願い申し上げます。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第18回】経営内紛と株主代表訴訟(1995年3月17日)

 

 同族の内紛は他人同士のケンカより激しい。

 兄弟の序列が確立しているとか万世一系がよいのだが、現実には、愚兄賢弟で争いが起きる。承継問題で、よく長男と次男に株を分けることが行われるが、原則として兄弟を同じ企業で働かせてはいけない。長男は往々にして親に対して反抗的であり、次男は協調的である。次男は兄貴に対して対抗的だから「敵の敵は味方」になるわけだ。強打宇井一貴に会社を相続させることは親父を中にしてケンカが始まる。

 株主代表訴訟は、株主が監査役に対して会社に損害を与えた役員の責任の追及を促すシステムだ。監査役が行動を起こさなかった場合、株主は訴訟が提起できる。公開会社、未公開会社にかかわらず留意が必要。

 さて、中小企業では本来の意味で株主代表訴訟がなされている例は少ない。起こり得るとすれば経営権の争奪戦のひとつの手段として使われる。経営内部に内紛があるとき使われる可能性があるのだ。

 経営判断の是非が問われる。経営結果の責任を問うのではない。経営判断にミスがあったから責任を問う、という世界だ。ミスがあったかなかったか、ということが課題になる。いまは何をやるにも成功率は従来と比べて格段に低くなっているから、経営判断のミスをつきやすいのだ。

 だから、経営判断の妥当性を裏付ける資料を絶えず整えておくことが大切になる。専門家の意見を聞くのが一番いい。その内容を書面で残すこと。そしてその書面について公証役場に行って確定日付をとればなおいい。

 株主代表訴訟では、監査役が極めて重要な役割を演じる。なぜ監査役は責任を問わなかったか、が重要な課題になるわけだ。

 監査役に閑職意識をもたせてはいけない。飾り物にしてはならない。むしろ勉強家を配置する。そして人柄のよい人を置くことが大事だ。監査役が同時に株主の場合は要注意だ。ひとたび会社と諍いが起これば、一番訴訟を起こしやすい人物になるからだ。

 

 

「中国の最新諸事情」
第6回 民法典の誕生

 

高井・岡芹法律事務所
上海代表処 顧問・中国律師 沈 佳歓

 

 最近、中国において最も熱い話題は<民法典>です。

 2020年5月28日,中国で開会された第十三期全国人民代表大会三次会議で《中華人民共和国民法典》が審議され、可決されました。これは我が国初の民法法典です。2021年1月1日に施行される見通しです。

 <民法典>は、中国現行の婚姻法、契約法、担保法など数多くの法律を整理し、体系化を図ったものです。編纂が何度も失敗し、数十年が経過しました。その過程の中で、計画経済秩序から市場経済秩序、毛沢東から習近平、たくさんの変化と移転を経て、中国特有の事情をめぐり試行錯誤を何度も試みた結果、ようやく一つの法律として固まりました。

 民法典は物権、契約、継続、相続など7編1260条から成り、一個人から社会生活の隅々までの規定を含み、まさに、これからの中国の社会生活の百科事典とも呼べるシロモノであります。

 今回この場を借りて、民法典の中の注目条例一つを紹介しましょう。

 

 離婚に「クーリングオフ期間」

 現在、コロナウイルスの蔓延で外出できず、夫婦が一日中家の中に居て、些細なことで喧嘩をし、双方の感情に亀裂が入り、結果離婚まで発展するケースが増えているそうです。いわゆる「コロナ離婚」というものです。

 当局の調べによると、今年に入って上海をはじめ、深圳など都市の離婚率が急増しています。そのせいで、離婚申請を受ける民政局はすでに、何か月先まで予約が満ぱい状態だそうです。

 その矢先に、今回の民法典の中に離婚冷却期という概念が設けられました。簡単に説明すると、仮に夫婦双方が合意で協議離婚を民政局に申請したとしても、離婚の効力が発効するのは30日以後です。その間、どちらかが後悔し、離婚したくなくなったら、その申請を撤回できるという内容です。もちろん、「コロナ離婚」を食い止めるだけの目的で、この条文を設けたわけではありません。人々の幸せを守るために、衝動的な離婚という悲劇の減少を狙った条項で、為政者の善意が感じられます。

 最初の狙いこそよかったのですが、この条文にパブリックコメントを募集すると、各方面から猛反発をまねきました。 主な意見として「合意離婚なのに、それすら自由にできないの?」と文句を言う人がいれば、「衝動的な結婚は自由なのに、衝動的な離婚には厳しいんだ、まるで入場料だけ集めて、あとで勝手にしろというような悪徳商売だね」と皮肉を言う人もいます。

 私の意見として、結婚、離婚、再婚というのは人の自由です。この制度によって、本来できた協議離婚が一方の撤回により、訴訟離婚に転じせざるを得なくなりました。裁判所の負担が何倍も重くなることを置いたとしても、離婚裁判は大体結審まで時間がかかります(中国実務では最短1年)。その長い間に当事者双方、精神的にも、金銭的にも大きなダメージが受けることになりますし、仮に一方が譲って仮面夫婦になって、婚姻を維持したとしても、当事者の幸せにはならないでしょう。

 そのような結果にならないように、祈るばかりであります。

 

 

第5回 『3分間 社長塾』(1)
スピード判断力をつける

 

(前)株式会社かんき出版 社長
コトづくり研究会 代表
境 健一郎

 

 高井伸夫先生が、かんき出版で3冊目に書かれたのが『3分間社長塾』。

 多くの社長や社長を目指す人、中間管理職の人たちから「何度も読み返している」と評判になっている本です。

 

 「デキる社長」と「デキない社長」の差が生じる原因はいくつもありますが、共通して言える大きな要因は、「判断力の差」だ、と本書では言っています。

 さらに、瞬時に情報が世界中にいきわたる現在、すべてに、ますますスピードが最重要視されるようになりました。

 だから、判断力があるだけではダメで、「スピード判断力」でなければ価値がない、と言い切っています。

 

 では、デキない社長は、

  なぜ、判断が遅いのか? 

  なぜ、間違ってしまうのか?

  そしてなぜ、行動も遅いのか? 

 

 その原因は次の3つであると指摘しています。

  一つは、自分の価値観・判断基準が定まらない。

  一つは、視野が狭い。

  一つは、自分にとらわれすぎる。

 

 したがってスピード判断力をつけるには、この三つの原因を潰していけばいい。

 本書には、その潰し方のヒントになることが書いてあります。

 ここから【高井語録】を集めていきます。

 

 なお、先生が塾長をした勉強会の一つに、10年で100回以上続いた人気の『社長フォーラム』があります。本書は、そのフォーラムで特に評判の良かった話をもとに書かれたものです。受講された社長の会社のほとんどが、「大黒字になった」と言われています。

 

  • 考えるよりスピード。スピードをもって結論を実行に移す

 「人間には誰にも迷いが生じる。

 『迷ったら原点に戻れ』

 『迷ったら原理原則に戻れ』

 

 創業経営者なら、どういう会社をつくろうとしたのか。何を大事にして会社を起こしたのか。

 継承経営者なら、この会社の原点は何だったのか。

 人間として、社会人として、やってはならないことは何なのかを思い起こすと、すぅーと目の前の霧が消えていくことが多い。

 

 先手必勝の時代だ。

 先行したヤマト運輸に他の宅配業者はなかなか追いつかない。

 コンビニのセブン-イレブンにしても同じだ。

 

 お客さまのニーズは極めて移り気である。その変化に対応するためには、普段からスピードを意識することである。

 仮説を立てたらすぐ実行。後で検証しながら改善・改良していけばいいのだ。これは社長だけでなく、すべての組織でそのようにスピード化させなければいけない。

 

 スピード判断力を意識できない会社に、明るい未来は訪れない」

 

  • 価値判断の優先順位を決めておく

 「決断は迅速に歯切れよく。これがビジネスという戦場で勝ち残るための秘訣なのだ。

 だが、いざというとき迷いが生じてしまうのはなぜか。

 それは自分の価値判断基準をあいまいにしたまま、その場しのぎで判断しようとするからだ。

 

 例えば、次のケースを考えてみよう。

 新規事業がうまくいかず、赤字の額が脹らんだ。しかし、社会的に意義のある事業だし、いま撤退すると売り上げが下がってしまう。この事業は長年の夢だっただけに、あきらめたくない・・・・・・。

 

 この問題の論点をざっと上げると、次のようになる。

  ・利益が出るのか、損をもたらすのか(損得)

  ・社会的に見て正しいのか、ただしくないのか(正邪)

  ・続けるべきなのか、撤収すべきなのか(存廃)

  ・ことは大きいか、小さいか(大小)

  ・感情を優先すべきか、理屈を優先すべきか(情理)

 

 このように、一つの問題もさまざまな角度から検証できるが、難しいのは、それぞれの価値が衝突する場合だ。経営の現場では、

 『損だが正しい』

 『撤退すべきだが売り上げが下がる』

 というように、ある決断を下せば他の価値判断基準が満たされないことがたびたび起こる。社長があれこれ迷う原因もここにあるのだ。

 

 いま挙げた他にも、経営における価値判断基準にはさまざまなものがある。

 強弱、善悪、和戦、親疎、公私……。

 

 これらの価値のうち何を優先するか、問題が発生するたびに考えていれば、迷うのも当然だ。

 だから歯切れ良い決断を下すためには、価値判断基準を事前に決めておくことだ。

 

 たとえば最初から「損益」を第一に考えると決めておけば、たとえほかの価値判断基準を満たさなくても、スムーズに決断を下すことができるはずだ。

 ただ、判断すべき価値は、時代によって変化するという点には気をつけたい。

 

 では、いま重要な価値判断基準とは何なのか。それは次の3つである。

 ・正邪……ルールに沿っているかどうか

 ・善悪……社会的に良いことをしているかどうか

 ・顧客……お客様に満足していただけることになるかどうか

 

 あなたの判断基準は本当に明確か」

 

  • 商談は3回以内に道筋をつけろ

 「『相手の元に100回通って契約を取った』と自慢げに話す営業マンがいる。確かに、石にかじりついてでも、という精神力には感服する。

 

 しかし、一つの契約を取るのに100回も通っているようでは、仕事は非効率。

 私は3回交渉しても商談が進展しなければ、撤退も選択肢に入れることをすすめている。

 

 3回以内で話をまとめるには、事前の準備と、1回目の訪問に気を配ることが重要だ。

 

 アポイントが取れたら、まず面会していただくことについて礼状を出す。そして初めての面談の二日ほど前に、今回の商談で検討していただきたい内容を書面で送る。この2つをしっかりやれば、こちらの誠意や熱意の大部分は、事前に伝えておくことができる。

 

 そして1回目の訪問では、事前に書面でいろいろ要望を伝えていたとしても、あえてこちらの薦める点を1点に絞って話を進め、あとは柔軟に対応する。

 最初からあれやこれやと要求すると、相手との間に壁ができるばかりだ。譲る姿勢があることを示せば、相手との距離もグッと近くなって、交渉もスムーズに進むはずだ。

 たいていは2回目の交渉でまとまる。

 

 2回目も状況が思わしくなければ、3回目は別の角度から攻めてみる。こちらの味方になってくれる第三者を連れて行ったり、条件をガラリと変えてみたりするといった方法で、1回目、2回目とは違うアプローチをする。

 

 それで進展がなければ、商談は失敗に終わる確率が高い」

 

  • リーダーシップにカリスマ性を加えろ

 「経営者のなかには、

 『リーダーシップのある社長がよい社長だ』

 と信じている人がいる。しかし、それだけではまだ不足だ。

 リーダーシップのある社長は、難局においても素早い決断を下すことができる反面、その強引さゆえに批判を受ける。

 

 リーダーシップのある社長がいる会社でも、社員の3割くらいは何らかの不平不満を持っているのが普通だ。そんな不平不満を弱めさせる力、放棄させる力。それがカリスマ性だ。

 

 カリスマ性のある社長は、同じような決断を下しても、慕われ尊敬される。社員にとってはまさに憧れの対象なのである。

 ただし、カリスマ社長になるには、いくつかの条件がある。

 

 まず第1に、軸足が定まっていること。価値判断基準がふらふらしているようでは、社員はついてこない。

 

 第2に、どんな質問や課題がきても、きちんと答えられることが大切だ。たとえ分からないことがあっても、電話1本で事実関係を確かめることができる人脈を持っている。あるいは、すぐに何にでも応えられる腹心がそばにいるなど、あの社長に聞けば、解決の糸口が見つかると思わせることだ。

 

 第3に、カリスマを作る条件として忘れていけないのは、社長が醸(かも)し出す〝不思議さ“だ。

 知り合いの社長は、会社設立以来、毎朝7時に出社し、深夜2時まで残業して帰るという生活をしている。それなのに疲れた顔は一切見せずに、毎日違うスーツをピシッと着こなしている。

 社員はその姿を見て、「いつ寝ているのか?」と驚き、その超人ぶりに畏敬の念をいだくようになったそうだ。

 

 平凡からカリスマは生まれない。不思議さは、どんなことでもかまわない。この人はすごいと思わせることだ」

 

  • 儲けたければ知性・感性を磨け

 「いま顧客の判断基準は、快か不快か。面白いか面白くないか――。つまり自分のかゆい所を掻(か)いてもらえるかどうかが、財布のひもを緩める基準になる。

 保険業界で常にトップ10に入っているようなセールスマンたちは、ほとんどが次のように話す。

 『アポを取って60分の時間をもらっても、最初の50分は世間話に費やす』

 およそ保険に関係のないことで相手を喜ばせる。これを続けると、こちらから保険の営業をしなくても、保険に入ってくれたり、人を紹介してくれたりするようになるという。

 

 では相手のかゆいところを、どう見極めるのか。これは理詰めではなく、相手が何を考えているかを感じる力、つまり感性が豊かであることを要求される。

 ビジネスは相手があって初めて成り立つもの。儲けたければ、相手の気持ちを考え、思い、感じることが何よりも大切なのである。

 

 知性・感性の時代は、理論だけで人は動かない。

 『理に動く理(り)道(どう)、知に動く知動(ちどう)という言葉は辞書にない。感情で人が動く感動という言葉があるのみ』だ。

 安いから買ってくれる、品質がいいから人気が出る、という理屈だけでは通用しない」

 

  • 稼げる仕組みづくりは、すぐそばにある

 「あなたの会社には、『名物』と呼べるものはあるだろうか。

 社員でもいい。商品でもサービスでも、とにかくお客様の目を引いて、一度は買ってみたい、試してみたいと思われる特長があると、それが業績回復の起爆剤になる。

 もしなければ、自分たちでつくればいい。

 

 私はあるスーパーの再建をお手伝いすることになった。そのとき各店舗の店長に、

 『ジャンル別に名物商品を3つ作ってください』

 とお願いした。たとえば、青果売り場なら産地直送のナス、総菜売り場なら揚げたてのコロッケといった具合だ。最初は各店舗に名物が1つあるかないかの状態だったが、各売り場に3つできるようになると、客足が戻ってきた。

 

 次にお願いしたのが、

 『それぞれ名物店員になってください』

 ということだった。

 

 魚のことなら何でも知っている。レジを打つスピードが速い。いつもニコニコしている……など、なんでもいいから個性を出してお客様に顔を覚えてもらう。

 各店員がそれを心がけることで、お客様とのつながりが太くなり、一時落ち込んでいた売り上げも安定して増えていった。

 

 このように身近にあるものから、名物商品や名物サービス、名物社員を意図的に作れば、業績不振から抜け出すことも可能だ」

 

  • 社長自らが営業のパイプを総点検せよ  

 「全国規模のあるメーカーの経営再建をお手伝いをしたが、業績悪化の原因は営業パイプの劣化だった。

 

 パイプが壊れた原因のひとつは、押し込み販売だった。そこで私は、全役員に担当の営業所を割り当てて、押し込み・押し売りのチェックを徹底的にやってもらった。いわばパイプの総点検だ。

 

 さらに一度失った信頼を回復するため、全役員に担当の販売店や代理店を回ってもらった。

 一度や二度ではない。黒字化するまで、何度でもだ。

 パイプが細くなって行きづらいという販売店があれば、とくに重点的に訪問してもらった。苦情やお叱りに役員が現場で耳を傾けてこそ、信頼回復の足がかりができるし、営業がいかに会社にとって重要なものかが自覚できる。

 

 役員の外回りは社員教育にもつながる。自分の上司が必死に駆けずり回っている姿を見て、社員は営業の厳しさを学ぶ。研修を100回受けさせるより、役員と一緒に頭を下げて回ったほうがずっと効果的だ。

 

 また同時に、役員にはそれぞれの担当営業所で、新しいパイプを作ることもお願いした。つねに新規開拓し、新しいパイプを敷設することで、企業は安定的に成長していける。

 ほかに改善した箇所もあったが、こうした一連の営業改革で、そのメーカーは1年で赤字をほぼ解消できた。黒字化の原動力になったのは、やはり営業力の強化だった」

 

次回は6月26日(金)に掲載いたします。

「明るい高齢者雇用」

第14回 45歳から転身準備―新たな挑戦めざし―

(「週刊 労働新聞」第2160号・1997年7月14日掲載)

 

 戦後誕生した人たちが50歳を超えた。まさに団塊の世代が高齢者となる時代を迎えつつある。間もなく高齢者雇用問題は一気に噴出するであろう。中高年雇用の問題は、単に将来不足する労働力といった問題ではなく、国家財政との絡みがいよいよ加速度的に激しくなるだろう。高齢者雇用を進めなければ、逼迫した年金財政の危機は到底回避できない。現在14.6%の65歳以上の高齢者の比率が、2010年には21%、2025年には27.4%、2050年には23.3%になると、国立社会保障人口問題研究所は推定している。年金支給開始年齢が引き上げられると、60~64歳の労政年金受給者120万人はいわば失業者となる。仮に、年金支給開始年齢が67歳になれば、実に数百万人もの雇用の場を開発しなければならないことになる。少子化の進行も対岸の火事と言えない状態であるから、労働力、特に社会の基礎を支える労働力として、高齢者を活躍させなければならなくなる。高齢者を楽隠居させるには、国家財政的にも、また若者達にも荷が重すぎる。このような追い詰められた状況が、高齢者雇用に「深刻さ」の影を落とし、「暗い」イメージを引きずったものとなる。そのような状況下で、高齢者の雇用を開拓していくことは、まさにパイロットとしての明るい高齢者雇用の実像を紹介することから可能になろう。この項で紹介する人たちを見習い、またそれを踏み台として、高齢者雇用の場を広く深くしよう。明るい高齢者雇用の具体的な事例、成功例を紹介しながら、どの様な留意点が大切であるかを様々な観点から論じていくことにしたい。

 さて、今多くの斡旋機関によって大企業から資本関係のない中小企業への出向が進められている。すなわち大企業の賃金を保障されながら中小企業に雇用の場を見つけるというシステムである。出向という言葉は、官庁から民間へ、大企業から中小企業へ、親会社から子会社へ移るということから、一般に左遷、都落ちの響きがある。本人も意気阻喪することがあるようであるが、これを新しい世界への挑戦、自己能力の発見の場、労働寿命の延長の足掛かりとして捉え、思考の転換を図り、生き生きとした毎日をどう創造するかといったテーマを自身に課していくことで意欲、生きがいが生まれ、人生観、世界観まで変えることになる。そして高齢者雇用の全体を明るくすることにもつながるのである。

 長年習得した技術、経験を生かした人、異業種への転換を決意した人など、いくつかの出向成功例を紹介することにする。

 某大手電気メーカーに在籍したA氏は、品質管理・生産管理などを担当していたが、本社東京の某弱電メーカーの技術管理室長として甲県にある工場へ出向することになった。55歳を超えると転職は難しさを増す。統計上からいえば55歳を境に急激に有効求人倍率が下落するからである。具体的には、50~54歳では0.6倍だが、55~59歳のは0.2倍になってしまうのである。その意味では、いざその時になって準備をするのではなく、45歳から決心して転身を図ることに取り組まねば、およそ成功はおぼつかないと言えよう。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第17回】営業社長の心得、営業部長の心得、営業マンの心得(1995年2月24日)

 

 社長にとって「営業マンは分身である」というスタンスで取り組まなければ、社長業は務まらない。分身であるから、営業部隊と共感しなければならない。共に感じ共に悩むという姿勢がないと、統率者、営業部隊長として務まらない。

 営業部長は営業マンにとって鵜匠であり、また羊飼いでなければならない。営業部長は、企業の存続発展のために営業マンが利益をあげることを目標にしているが、そのためには営業部員を育成する気持ちがなければならない。育成概念、育成感覚がないと営業部長は成功しない。それだけではない。即戦即決即利益の鵜匠である。3年後5年後までは待てない。

 営業マンの心得は、基本2カ条。1つは、自社の商品をよく勉強すること。少なくとも、まずはお客様から「商品を知らない営業マンだ」と指摘されない程度には勉強すること。商品の長所とともに短所も知ることが大切である。そして、絶えざる勉強によって商品開発への提案につなげる営業マンが優秀な営業マンである。

 2つ目は、お客様に好意をもつこと。松下幸之助氏は「お客様に好かれよ」と言った。言うは易く行うは難し。媚びになる。媚びになっては営業にならない。だから私は「お客様を好きになれ」と言っている。

 この2つがあれば、営業の本質である「合意の形成」に的確に近づきうる。営業とは、「偶然を必然にし奇跡を平常化すること」とは何回も言ってきたが、それはこの2つがあってこそ初めて実現できるのだ。

 また営業部長は、部下の弁解に耳を傾けても理解してはいけない。弁解とグチは限りなくある。弁解を「理解」したら創意工夫が始まらない。営業はとかくエクスキューズを言う。例えば、今年の冬は暖かいから売れない、問屋が納めてくれないなど。だからどうする、ということが何もない。エクスキューズを許してはいけない。これを認めないことが営業のポイントになる。

 

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