「明るい高齢者雇用」

第42回 国家試験に挑戦―衰える心身機能:東京美装が訓練校

「週刊 労働新聞」第2189号・1998年2月9日掲載)

 

 高齢になると、労働意欲に対してフィジカルアクティビティ(身体的能力)・スキル(技能)が衰えていくのは必然のことである。トヨタの事例に続き、企業側の職場の環境、道具、設備の改善により中高年労働者が重要な戦力となっている企業をご紹介しよう。

 東京美装興業(株)は、ビルの設備・清掃・警備・運営支援サービス・商品販売の5つを提供するビルメンテナンスの総合管理業者として、創立40周年を迎えた現在、従業員7000名余を抱える企業に発展している。そしてこの5つの業務を支えるために、人材育成、研究開発、事業開発の3つの支柱を確立する一方、ビルの管理のみならず、運営即ちビルマネジメントに新しい扉を開こうとしている。今回は、臼杵繁取締役人事部長と前川甲陽技術開発センター長のお二人への取材を基に、同社の「明るい高齢者雇用」をご紹介しよう。なお、参考として同社技術開発案正田浩三氏が(財)労働科学研究所の協力を得て行った科学的調査をまとめた資料を使用させて頂いた。

 東京美装興業には現在60歳以上の従業員が約600人在籍している。60歳定年制度を採用しているが、本人の意思と健康診断の結果で65歳までの継続雇用が可能なのである。定年に達した者のうち、約85%が継続雇用を希望し、嘱託社員となる。ちなみに、継続雇用者の一部に高年齢者多数雇用奨励金が助成されているが、平成10年度より制度が改定され、削減される方向にある。

 ビルメンテナンス業の災害の発生率は建設業、製造業よりも高い。これは、中高年者が多いという事実によることが第1の理由として挙げられ、中途採用者が多いことによる経験不足が続く。そこで東京美装興業では、業務災害を防ぎ貴重な人材の安全を確保して、人手不足を解消し、高齢者にも働きやすい職場を作り上げている。

 高齢者の清掃中の災害では転倒、特に床洗浄中の転倒事故が約半数を占める。例えば転倒し骨折すれば休養期待が3カ月にもなってしまう。貴重な人材が職場に復帰できなければ人手不足に拍車がかかる。そこで、滑り転倒を解消するため、作業手法を洗浄によるメンテナンスからドライメンテナンスへ移行しようと労働作業環境の整備に努めている。

 作業者に分かりやすく扱いやすい機械化を図ることも作業環境整備の1つである。加齢によって作業能率が落ちるのは避け難いことである。例えば早朝限られた時間内に定められた作業を終えることがなかなか難しくなる。そこで同社は、昭和53年より東京と認定の事業内訓練校を設置し、技能向上訓練を通じて従業員の技能向上を促進させている。高齢者も積極的にビルクリーニング技能士という国家試験に挑戦し、有資格者はすでに300人を超えている

 清掃業務の完全機械化は難しい。もちろん能力の個人差は著しい。そこで、作業者、特に高齢者にとって使いにくい機械・器具を見直し、小型で軽い、安全で使いやすい製品の採用と安全教育を行っている。

 次回は、精神面から中高年労働者を支え、企業体として一丸となる同社の状況をみてみよう。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第44回>企業経営に必要な「空気」づくりを

(1998年1月13日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 サッカーW杯日本代表チームの岡田武史監督の心の支えになった本は山本七平の『空気の研究』だったという。

 刑事訴訟法は刑事裁判の手続きで、民事訴訟より厳格な証拠を要求する裁判手続きだが、後に東京大学の総長になった刑事訴訟法の平野竜一先生は「裁判に勝つのは法廷の空気がどちらを味方しているかで決まる」と述べていた。「証拠」ではなく「空気」だというのだ。

 中国の方言にも「お白州で決まるのではなく、村で決まる」とある。村の空気で決まるというのだ。

 企業経営で忘れてならないのはこの「空気」。だが、経営者は空気だけに頼ってはいけない。細かいデータを踏まえた空気づくりが大切。うまく経営の出来ない経営者はこの空気づくり下手だ。空気とは「勝ちムード」である。

 そして経営者は、数字を忘れてはいけない。それが細かいデータである。その上で、会社が伸びているとか、発展しているとか、よその会社よりよくなっているとか、回復基調にあるとかいったような、空気づくりを念頭に置かなければならない。

「明るい高齢者雇用」

第41回 老若男女が協働―衰える心身機能:人にやさしい自動化で

「週刊 労働新聞」第2188号・1998年2月2日掲載)

 

 トヨタ自動車は人と機械の共存を徹底して追求する生産現場作りを心掛けている。物作り、即ち車作りはあくまでも人が主体、人が主役のライン作りを目指し、自動化も、まず人がした方がよい作業と、機械に任せる作業とに分け、人と共存できる自動化を徹底して追求する。自動化はインライン化、メカニカル化が機構をシンプルにし、作業者にとって分かり易く扱い易い仕組みにするという基本方針で対処しているのである。人が主役であることは高齢者にとってより望まれるスタイルである。人が行う方がよい作業と機械に任せる作業とに区分けすることは、肉体的なあるいは精神的な能力の低下を否定できない高齢者にとって必要不可欠であろうし、作業者にとって分かり易く扱い易い仕組みにすることもまた、高齢者雇用には不可欠な手順といってよい。

 白水宏典取締役(当時)は1993年4月21日付中日新聞で既に、「若い人が体力を競って車をつくるのではなく、老若男女だれもが参加できるラインが理想」と述べていた。そして現在トヨタは“AWD6P/J”と銘打ち、次代を見据えた労働作業環境への改革に取り組んでいる。具体的には「チーム活動による魅力ある組立ショップ造り」を実現しようというもの。AWD6P/Jとは、Aging&Work Development 6 Programs Projectという意味である。Aging―加齢―に対する労働作業環境の対応に意図的・積極的に取り組むということだ。働く人すべてが60歳になっても生き生きと働ける魅力ある職場作りを目指す。

 さて、6 Programs Projectとは何かということになるが、順に述べていこう。(Ⅰ)意欲・意義…ラインで働く人のやる気を喚起する。ニューワーキングプランの策定、(Ⅱ)疲労…最小限の疲労で最大限の回復を得るシステムの提案、(Ⅲ)体力…自助努力を基本としながらも、体力を自覚・維持する雰囲気づくり、(Ⅳ)道具・装置…適切な対策が立てられていない負担の高い作業を改善するための道具・装置の開発、導入、(Ⅴ)温熱環境…温熱環境で疲労を助長せず、個人(工程、年齢、性別、etc)に適応した空調システムの実現、(Ⅵ)疾病防止…手指部の疾病を減少させる

 以上のような具体的なテーマを設定し、各部門からの参画を得て、これらの問題の改革に取り組んでいる。トヨタは巨大企業として世界に進出する、まさに日本を代表する企業であるが、代表的企業なるがゆえに、今後その立場を維持するためには高齢者雇用の問題、高齢者作業のありよう、工場環境の問題について極めて積極的に研究しているのである。そのことはトヨタ自動車だけの問題ではない。およそ日本の代表的企業が、この問題に積極的に取り組み、研究開発をしていかなければ日本の製造業の未来はない。

 さらに敢えて付け加えれば、トヨタ自動車はAWD6P/Jに取り組むに当たって独善に陥ることのないよう、(財)労働科学研究所の指導を仰いでいるとも聞く。トヨタ自動車の姿勢は誠に賞賛に値するものといってよい。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第43回>年頭教書は「販売即経営」プラスもう1つの柱を

(1997年12月9日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 社長の仕事そして年頭の挨拶は自分で作らないといけない。秘書や総務が作った文章を読むようではダメ。自分の言葉で挨拶できないような人は社長の資格がない。それには、血となり肉となった経営方針、経営理念が大切だということである。

 そのとき社長として何か1つの柱を立てること。

 私がコンサルをしているある会社は来年20年目を迎える。新しい、次なる20年に向けて会社の構造をしっかり作り上げようと相談を受けている。来年はまず、そのための地ならしをする初年度であり、新しい取引先を集中的に開拓すべき年である。営業基盤の強化、新技術体制、コンピュータライゼーション等々、会社の構造をしっかり作り上げ、次なる20年のために地ならしをする準備期間である。

 皆さんも「販売即経営」という従来の思想に加え、もう1つ柱となる思想を確立しなければいけない。

 どの企業も時代に合った企業への切り替え戦略を社長のテーマにしないといけない。「来年はこうする」、「こうしたい」を、できるだけ1点に焦点を合わせて、企業をより時代に合わせる戦略行動を目指さないといけない。

 そのために幹部の人事をどうするか、投資のための資金調達をどうするか、あるいは提携先との関係づくりをどうするか、という、人・モノ・金についての具体的な実践方策を明示することだ。これが経営の基盤づくり、安定に不可欠だ。

 「統一的な刺激は数少なくても、散漫で数多い刺激に勝つ」とよく話しているが、そのために年頭教書をきちんと発表することが大切だ。

 社長個人の立場から言うと、「世代交代」「継承」がテーマになるだろう。これを従来以上に真剣に考えないといけない。株式公開、自社株の譲渡または分割を、社長として考えないといけない年である。買収、合併、売却も考えないといけない年だし、地域貢献、社会貢献の推進もいよいよ考えないといけない。今までのように成り行き・事なかれ・その場しのぎの経営は限界に来ている。

 対外的な問題として心がけないといけないことは何か。それは、銀行の貸し渋り対策は十分か、取引先の倒産対策は十分か、そして仕事の急減対策は十分か、ということ。

 ここまでを社長が毎年、年始めに明らかにしないといけない。

 

「明るい高齢者雇用」

第40回 完全自動化を拒否―衰える心身機能:適切なトヨタの歩み

「週刊 労働新聞」第2187号・1998年1月26日掲載)

 

 トヨタ自動車(株)の白水宏典氏が常務取締役に就任した時、第2の創業期の基礎作りに役立ちたいとの抱負を述べ、その具体的な方策として、高齢化を受け身で捉えるのではなく、自ら活性化を図り次世代への掛け橋として第2の基礎作りに役立ちたいという考えを示している。

 役員の就任挨拶で高齢者雇用の問題に触れた事例は寡聞にして知らない。白水氏が初めてである。これはトヨタ自動車が日本の先進企業としてひたむきに努力していることの具体的な裏付けの1つであろう。

 さて、その白水氏に平成9年9月11日にお会いした。先の豊富に関連してご質問したところ、企業における高齢者のあるべき姿の象徴として、この春、NHKの日曜インタビューで将棋の米長邦夫9段が先輩棋士のあり方を語ったことを引用された。米長9段は若い棋士たちと一緒になって将棋を打つ時に、「若い人を引っ張っていく」という気概でないと高齢の棋士とし十分な働きはできないという。即ち「若い人に混じって」とか、「若い人の中で」といった気分ではだめだということである。勝負の世界で自らを磨き、かつ次代を築く棋士を育てるには、このような積極的な姿勢が不可欠であろう。企業においても、単に先人としてではなく、まさに若いものの指導者という気持ちが高齢者自身になければ、明るい高齢者雇用は実現しないということである。

 そんな考えから白水氏は、トヨタ自動車はかねてから満55歳になると職場でお祝い会をするのが慣例であったが、それを廃止したというのである。なぜならば、そのお祝い会をした翌日から隠居という気分に陥るから、むしろ明るい高齢者雇用の弊害となると判断したのである。お祝い会を廃止した結果、55歳といった壁は自然に薄まり、55歳以上になってもなお第一線ではつらつと働くということになる。

 トヨタ自動車においても当然現場の自動化は推進されている。しかしこの自動化は、度が過ぎると機械が人間を隷属させていくことになる。そこで白水氏は完全自動化に疑問を持ち、いつも人間が機械の主人になり、機械の面倒を見るという立場に立って主体的な労働が展開されるべきとの思いから、完全自動化を拒否したという。

 高齢者雇用になると一層この点が大事となってくる。機械に使われる存在となれば、精神的な瑞々しさが失われている高齢者にとっては、まさに人間は機械の道具と化してしまうことになる。人間の瑞々しさは主体的な工夫があって、即ち創意工夫、頭を使うという状況があって初めて可能だからである。明るい高齢者雇用には、完全自動化はむしろ弊害が多いという指摘も適切なものとして耳を傾けた。

 次回は、海外生産の拡大、国内需要の伸び悩み、そして若年層の製造業離れのなか、トヨタ自動車が、訪れつつある高齢社会を見据えたライン作りのために、環境・道具・設備の改善・管理等の面から中高年作業者に望ましい作業環境を研究するプロジェクトを機能させているという状況の一端をご紹介しよう。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第42回>営業のコツは、他社が参入できないようにすること

(1997年11月18日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 昔、近江商人が越中富山の薬売りに「あんな高い山を越えてわざわざ薬を売りに来るのはご苦労でしょうね」と言った。すると越中富山の薬売りは「あの山がもっと高ければ商売はもっと楽です」と答えたという話がある。それは競争相手が少なくなるからである。近江商人は物理的な山の高さを言ったが、越中富山の薬売りは「参入障壁の高さ」として言ったわけだ。これが商売のコツだ。

 営業のありとあらゆることが障壁づくりだ。セールスマン教育もその1つ。障壁づくりが営業のコツである。他社が参入しにくくすること。それが何かを問い続けること。それによって障壁が築かれる。

 その時に改良しよう、という発想では絶対にダメ。改良はすぐに真似される。改良型ではなく、根本的な所から問い続けなければならない。

 私は弁護士とは何か、弁護士業務とは何かを問い続けてやっている。専門家になることは誰でもわかる。しかし、単なる専門家ではなく、一流の専門家になること。そのためには信用だ。信用を高めるにはどうすればいいかを考え、そしてまた自分自身でも実行することだ。第1は勉強すること。第2は勉強したことを発表すること。先見性のあるテーマに取り組むことだ。

 会社のよい評判を、良質ともに今の10倍ぐらいに拡張して伝えよ。どんな小さな話でもいいから、よい話を遠くまで広めること。得意先との会合でよい話をする。そのうち心を打った1つの話をお得意さんは他の人に話をしてくれる。

 新しい仕事を始めるにも、新しい顧客を獲得するにも、今は情報化時代だ。この厳しい時代に、よい評判は価値がある。会社の評判、社員の評判、技術の評判、商品の評判、研究開発活動の評判など、何でもいい。いい話をどんどんすること。

 どの企業もサポーターに支えられて営業するのである。だから今まで1つだった良い話をこれからはその10倍発掘して伝えること。

 

「明るい高齢者雇用」

第39回 人材選別の時代に―衰える心身機能:“ゆとり職場”が前提

(「週刊 労働新聞」第2186号・1998年1月19日掲載)

 

明るい高齢者雇用を具現化するには高齢者に対する信頼感を醸成することが重要だ。高齢者に対する不信感は何に由来するかを見極めなければならない。スピードが遅い、敏捷性に欠けるといった心身に対する不安感を打ち砕くには、経験値あるいは判断力といったものに期待する以外にない。そうなると、高齢者の絶えざる選別が必要となってくる。有能な高齢者と有能でない高齢者との格差を是認していかねばならないということである。言ってみれば、一律定年延長といった処置ではなく、一定の能力を有することが高齢者雇用を保証する途であることを明示すべきである。その結果、高齢者は自覚的な態度をとり、結局自信を持てるようになる。高齢者が自信を持てると自ずから職場は明るくなり、当該高齢者にとっても明るい高齢者雇用となろう。

さて、高齢者自信が持っている能力を十分発揮させるためには、①サポートの在り方も問題になるし、②心身機能維持のための労働条件の改善が望まれることでもあるが、③これらの基本は高齢者の身体面や精神面での負担の軽減である。労働回復力の低下や瞬発力の低下という心身機能面での中高年の特徴に留意するならば、作業スピードを含めた作業場面でゆとりを持たせること等への配慮は重要となる。例えば、(1)作業余裕の形成、(2)作業方式の変更、(3)人事・労務管理における中高年に対する配慮の重視、といったものが大切となる。

そこで、この点について、日本の代表的企業の1つであるトヨタ自動車組立作業での中高年対策の取組みを紹介してみよう。

従来の自動車の組立作業は、ラインは1本の長大なもので、しかも自動化が高度に進むことで「機械に使われる」「自動車をつくっているという実感がわかない」「休憩時間も少なく、深夜勤務もある」というようなことから若年離れ、職務満足感に乏しい作業の代表とみなされてきた。そこで、トヨタでは、(1)作業員の動機づけを重視した完結工程、(2)身体的負担の軽減、(3)人と共存する自動化機械(分かり易く、扱い易く、人と助け合う自動化機器)、(4)作業環境の向上(静かで、明るい快適な作業ゾーン)という4つの組立作業での理念を90年代初頭に掲げている。現在、作業が作業員のリズムに合致するように、また働く意欲が増すような取組みを、中高年対策として重点的に行うように、モデル的にトライしている。

それは以下の6つの課題からなっている。(1)働く人の意欲の喚起、(2)使いやすい道具・装置による改善、(3)披露の少ない作業形態の検討、(4)組立作業の特性に合った温熱環境の構築、(5)組立作業に必要な体力づくり、(6)疾病防止の徹底強化、の重点課題である。

トヨタの取組みは、中高年の組立作業員をターゲットとする取組みのなかで60歳になってもいきいきと働ける組立ラインをめざしており、これは若年者や女性への対応にもつながるものとなっている。

そこで、次回からはトヨタの実態をチェックしながら、「明るい高齢者雇用」を始めている中小企業の事例をも紹介していくことにしよう。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第41回>社員のストレス解消策を急げ!お客様からのクレームに注意せよ!

(1997年10月14日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 企業の問題で最近多くなったのは自殺と放火。私が担当している会社も2社が新聞に出た。いずれも社員による放火が起きた。

 このような事件は、実力主義、成果主義で落伍する社員のフラストレーションが高揚して起こる。彼らの健康管理も大切だ。傷ついた社員が極めて罪の重い犯罪を起こしてしまう。殺人罪は3年以上の懲役から死刑までだが、放火は5年以上の懲役から死刑までと、放火は殺人罪よりも重い罪である。公共危険罪だから刑罰は非常に重くなっている。そういった重い犯罪を大企業の社員がやり出す時代になった。

 私は「上手に人を辞めさせたい」という本の中で、実力主義、成果主義ではフラストレーションが溜まる、と書いたが、まさにそれが現象として明確になった。社員のストレス解消策を積極的に行ない、気配りすることも経営の課題として大切である。

 手法は色々あるが、社員の異常な言動についてお客様から投書してもらうのが1つ。社員の異常な言動についてのクレームがあったら、慎重かつ果敢に対処する。上司や同僚の前では真面目でも、お客様の前で異常な行動をとっている者がいる。

 第2は、社員が精神科医と電話で匿名で相談するシステムを作り、社員の配偶者からの相談も受け付けるようにすること。たとえ匿名でも社員が電話したら会社にわかるから本人は絶対に相談しない。配偶者を通せば自分だとわからない安心感が生れ、率直に相談する。

 今、まさに精神健康管理が大事。自殺、喧嘩、放火などの様々な現象が、中小、零細、微粒子企業ではなく、一流企業で起きているのが問題なのである。企業は精神力の弱いものを抱えている以上、どこでも起こり得ることだ。

 それにはまず、社長は優しい言葉をかけたくない人にも時々は優しい言葉をかけないといけない。幼稚園で子供を成長させる方法として、声をかけることが第一に挙げられている。社長が目線を合わさないことが2か月もつつけば、自殺するか放火するかと言う時代になってきた。

 

「明るい高齢者雇用」

第38回 人間性重視の職場を―衰える心身機能:企業努力も不可欠

(「週刊 労働新聞」第2185号・1998年1月12日掲載)

 

これまで述べてきたような高齢者であるがゆえの社会的、肉体的、精神的な制約をクリアし、様々な機能を維持するための方策として、どのような視点があるのか。

現代では、仕事がソフト化し、判断・意思決定、点検・検査、監視などの精神的な機能を発揮することが求められている。一方、身体的な作業能力を必要としない仕事はないのだから、判断力などの機能を充分果たすためにも、身体的機能は重要となる。高齢者は少しでも眼や耳などの働きの低下を遅くするような努力を怠るべきではないし、それをサポートする企業側の種々の対策も必要となる。

また、病気になると気力面でも弱気になりがちとなる。高齢者には心身の「健康」が特に大切となろう。作業関連疾患やストレス関連疾患といわれる高血圧や糖尿病などの成人病は、仕事に関連した要因により発症したり進んだりすることが判ってきている。つまり、これらの成人病の予防には、仕事の仕方、職場の組織や作業環境も考慮しなければならないということになる。

生産性の点からも、後に紹介するトヨタ自動車(株)の白水宏典常務取締役は次のように語っている。「工場では、作業が定時終了の時にはトラブルが少なく、ラインは止まることなく完全生産稼働ができます。しかし、残業を要請される日には、稼働時間が長くなるので人も機械も連続運転で疲れが出て効率が悪くなるのです。そこでこれまで定時と残業の間には労働時間の関係から休憩がなかったのを、例外として、思い切って『品質チェックタイム』という名目でラインを止めることにしました。休止する時間を設けることで、ラインの総合稼働率が向上しました」。

空白の時間を設けて作業者を緊張から解き放つことにより、生産性を上げることに成功したこの例は、作業条件にストレス緩和策を講ずる必要のあることの1つの証左であろう。

働きやすい職場づくりが高齢者の職務満足や意欲づくりの保証となる。活力ある国民経済の維持発展のためにも、また、中高年者が自らのQOLQuality of Life…生活及び人生の質)を高めるためにも「中高年が働きやすい職場づくり」「高齢者が生活しやすい社会づくり」は避けることはできない。さらには、この中高年齢層をターゲットとした「働きやすい職場づくり」こそが若年者をはじめ職場の人たちにとっての働きやすい職場づくりに通じ、組織や社会の活性化をもたらすものと考えられる。高齢化社会における職場環境づくりはこのような「より人間らしい仕事や職場づくり」を推進する以外にない。

さて、今後の中高年問題を考える際には、中高年の労働能力の活用こそ高齢化社会における国民経済の活力を維持する途でもあり、急速に進行しつつある高度情報通信技術はそのような労働環境を実現する上で役立つ可能性を大いにもっていることに留意する必要がある。こうした技術基盤のうえに労働環境の整備や労働条件を中心とした労働生活の質(quality of working life)の向上を目指すことが今後の高齢化社会において欠くことができないものとなっているのである。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第40回>「迅速・スピード・時間」を意識した経営を

(1997年8月20日)

 

※本稿は1997年当時の講演を元に2004年に編集されたものです。

 「アジル経営(敏速経営)」の話をしてもう3年ぐらいになる。それから1年ほど前に「ドッグイヤー経営」という話をした。これは、犬の1年は人間の7年に値するから、今までの7倍速で仕事をしなければならないということだ。

 「考えるだけで実行しない」姿勢では経営は乗り切れない時代。つまり決断力を要請することが経営には不可欠だ。迅速な決断が経営体力を強める。的確な判断力・決断力を持った人を経営者に据えなければやっていけない時代だ。

 限られた時間に倒産から遠ざかるためには、一目散でなくてはいけない。ぼんやり時間を空費することは許されない。時間を意識しなければならなくなったのは、社会が委縮し、破たんに向かっている状況が反映されているからだ。右肩上がりの時には「安全だからゆっくりでもいい」という意識だったが、今はもうゆったり気分ではいられない。「一刻も早く安全な地帯に行きたい」という気持ちが時間を意識させているのだ。

 危機感が募っている消費者の心をつかむためには安全地帯に導くこと。消費者や一般市民がたくさんの防護策を講じるには、時間が必要になる。これが時間の大切さを意識していることになる。

 例えば、写真の現像が15分でできると保証すれば大当たりするだろう。時間に余裕が出来、安全が買えるなら少しぐらい高くても人は集まってくる。

 有能な人とは、何でも短時間で仕上げる人である。早く用件を済ませることで残りの時間をほかに使えるから、より安全な地帯に行ける。危険の淵から遠ざかることができる。それが時間を意識するということである。

 お客様を待たせるのは絶対ダメ。電話でもあまり待たされると切りたくなる。不安感、危機感が社会的に蔓延しているのである。

 経営の中で切迫感、焦燥感を与えるのは、社長の決済が遅いところから始まる。社長の決済は即日決済を旨としなければならない。何日考えても意味がない。私は即日決済だ。即時の判断力、決断力が要求されるが、それができない人は社長を辞めるべきである。

 何も社長だけ努力しろというのではない。営業部長、資材部長、経理部長も迅速決済をしなければ、この苦しい時期を乗り切ることはできない。後回しにせず「今」を心がけよ。少々間違っても何もしないよりはいい。

 最近はやっているのがCEO。会長が最高経営責任者になるシステム。社長は最高執行責任者、会長は最高経営責任者というシステムが日本でも取り入れられている。会長が考え、社長が実行する。これはアジル経営にとって好都合のシステムだ。会長が方針を示せば社長は考えずに実行できる。

 これからは鋭角的に経営政策を展開しなければならない。葛藤、矛盾、軋轢、煩悶を乗り越えてこそ、競争場裡で初めてイニシアチブをとることができる。そうなると、考える人と実行する人とを別にした方がいい。これからの経営はCEO(最高経営責任者)が当たる。この人が経営戦略を決定し、経営政策を鋭角的にCOO(最高執行責任者)に実行せしめる。

 

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