高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第37回>絶対的な評価基準はない~社長の主観を明確にする以外にない~(1997年5月21日)

 

 人事と人件費の問題にメスを入れる時に、いつも遭遇するのは評価の問題だ。経営者は、いかに正しく評価するかを考え、それを見直し続ける努力を惜しまないこと。それが企業の発展と共に、浮揚感、上昇感を与えることにもつながる。評価の問題が一番難しいのだ。

 足腰の時代はスピードで評価できた。手先の時代はスピードと手際の良さ、即ち品質で評価できた。商業・サービス業の口先の時代は売上げという数字で決着がついた。

 ところがソフト化の時代となると非常に評価が難しい。評価する人の感じ方、考え方、思い方によって評価が左右されるからだ。

 主観で評価するためには八方美人ではダメ。経営者の個性によって評価されるということを社内に浸透させること。そして主観性を明確にすることだ。モノサシをはっきりさせて評価基準を社内に透徹する。社長がモノサシを明確に定めること。それを明確に語り続けること。

 年功序列給は年を重ねるごとに雪ダルマ方式に賃金が増えるシステム。一方、年俸制は下がる人もあれば上がる人もいるという世界を作ることである。各人が成果を上げ、そして企業の業績が上がれば給料も上がるというシステムだ。

 ただし年俸制は評価基準の明確化が一層求められる。ソフト化の時代になったがゆえに、管理職の評価基準が非常に難しい。社長は、企業のソフト化の要請に応じた管理職のマネージメント力を判定する数値的なモノサシを持たなければならない。モノサシを明確にし、それがなぜわが社に必要かを語らなければならない。

 

「明るい高齢者雇用」

第33回 5タイプから選択―60歳代の職業生活:自分自身に答え聴け

(「週刊 労働新聞」第2179号・1997年12月1日掲載)

 

 今回は「ライフスタイル選好型」の実例を紹介するべく、まずは教師となって憧れを実現した丁氏について語っていこう。大学の先生の定年は極めて遅い。即ち70歳を定年とする大学が今もってたくさんある。丁氏はある東京の、短大から大学に昇格した大学に国際経済の専攻の教授としてスカウトされた。本人は、自ら今もって一番幸せな人と言っているが、それは若くして就職した企業において決して恵まれなかった人生であったからである。スポットライトが当たらなかった人物が今、若い女性に取り囲まれて、生き生きと仕事をしているのである。当人も極めて前向きであったことがこのような喜びを与えていると言ってよい。例えば大学教授に転職するに当たって、休暇を取りアメリカに短期自主留学をし、レポートを作成し、また抗議プランをまとめ上げたという人物である。即ち自費で留学までして、次の仕事に備えたのである。

 (ホ)長期就業型

 何の仕事であれ、長期に仕事を持ちたいという願望を実現するタイプである。これは、家庭の事情により働き続けなければならないとか、あるいは働くこと自体が趣味であるといった人物によくあるケースである。

 以上、ここまで高齢者雇用のタイプを5つに分けて見てきたが、これらのチャレンジ型、エキスパート型、リカバリーショット型、ライフスタイル選好型、長期就業型のどれに自分を当てはめていくかを40歳代の後半から見極めることが肝要だということである。つまり、高齢者になる前から一体自分はどこに値打ちがあり、またどんな生き方を望むかを自分自身に良く問い、自分自身の答えを聴き続けることが必要なのである。

 これまでの総括として、海外生活の期間が長かった戊氏に登場してもらおう。イギリスのロンドンにある日本のセカンダリースクールの舎監に就任した戊氏は、子供から慕われるというまさに若々しい世界で活躍している。それも本人が望んで赴いたということである。まさに若返るには若い人と接触することが必要であるが、学校の舎監というのはそれにうってつけの仕事であり、そして子供たちに慕われているとなれば、なおさら幸せな第2の人生が保障されているということである。

 チャップリンは、老後を過ごすための条件として、「好奇心」と「健康」と「すこしばかりのお金」を挙げたが、戊氏は若者に対応できるに足る若さをなお保持していることが成功の因となった。

 さて、明るい高齢者雇用にとって、何よりも健康であることが大切であることはいうまでもない。次回からは、高齢者の就業に影響を及ぼす精神的、肉体的な健康の意味について、労働科学の視点から分析してみたいと考えている。高齢になったからといって、一概に身体の機能が衰えるというものでもないだろうし、経験の蓄積によってむしろ向上する能力もあるのではないか。個人差も大きく、気持ちのあり様、日頃の行動スタンスによっても異なるだろう。心身共に若さを保ち、生き生きと働き続ける「秘訣」を、労働科学の専門家の分析に基づき述べてみたい。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第36回>これからは「人事と人件費」の時代 「抜擢と淘汰」の時代(1997年3月19日)

 

 これからの最大の経営課題は「人事と人件費」である。事業計画も人事問題に焦点を合わせたものでなければ意味がない。

 人事の本質は、優秀な者を引き立て、かつ無能な者を辞めさせることだ。引き立てる方は誰でもできる。ところが日本にはダメな者を辞めさせる仕組みがない。だから自社でつくるしかない。

 人件費の課題は、端的に言えば生きたお金を使えということ。つまり成果のあがらない者には報酬を払わないことである。

 要するに、実力主義・成果主義の時代に生き残るために、コア(核)になる人材の確保をいかに進めるかということだ。同業他社から引き抜かれそうな人間を何人抱えているか。社員100人ならば2人、いや3人は欲しい。社内で価値があるだけでなく、業界で価値ある人材を確保するのが人材・人事の時代ということである。

 そしてさらに、淘汰をすすめる人事でなくてはならない。そしてそれが企業の浮揚感、社員の上昇感とを実現できることが企業のコンセプトとなるから、人員削減や人件費削減も、この浮揚感、上昇感を与える手続きとして理解しないと本末転倒になる。

 今は水増しで10人のうち4~5人が管理職になっている。これを2人まで落とす。そのプロセスが人材含み損清算の手続きである。

 もうひとつは組織のフラット化だ。社長から平社員まで4段階以内にする、というLess Than Fourの思想を日本でも取り入れること。これはソフト化時代に対応してのこと。ソフト化時代には頭脳労働がメインとなり、知恵、情感、意思、といったものが価値ある時代になる。

 頭脳は個々の能力格差が大きい。その差の大きさは意欲によって決定的に左右されるため、自由、フレキシビリティのある世界が必要である。

 規模の小さい中堅・中小企業はもともと階層化されていないところが多いから、人材さえ確保されればフラット化できる。組織の複雑な大企業より迅速に対応できる利点がある。企業には人は少なくていい。3人分の仕事をしてくれる人に切り替えていくことが今後の課題だ。

 

「明るい高齢者雇用」

第32回 失敗体験をバネに―60歳代の職業生活:”裏キャリ”も駆使

(「週刊 労働新聞」第2178号・1997年11月24日掲載)

 

 前回に引き続いて、高齢者の雇用のタイプを、その実例をもとに考えていきたい。今回は高齢になって花開くケースと、人生における夢を実現するケースを紹介する。

 (ハ)リカバリーショット型

 30年、40年の職業人としての人生において、挫折感を味わうこと一再ならずという人物が、思いがけず高齢者雇用の場において花咲き、実らせるということもある。まさに明るい高齢者雇用を実現するのである。それには、裏のキャリアとか失敗体験をバネに、第2の仕事人生を切り拓くという状況で構築される場合が多い。そこでは、新分野が大方であるので、出向経験があるとか、あるいは彼が専門としてきた仕事以外の脇の仕事に従事したことがあるとかいった裏のキャリア、即ち本筋の経験でないものを駆使して仕事をする、生きる、ケースが多い。限界体験・失敗といった苦しい思いをしたことが、この時初めて生きてくるケースも極めて多い。

 人生後半労働で三段跳びした丙氏について述べよう。丙氏は繊維の仕事を長年務めていたものであるが、子会社に移った時に、人員整理という限界体験をした。そこで初めて総務部の仕事を学んだのである。さらに、畑違いの電気メーカーの総務を任され、そして日本を代表するある大きな会計事務所に移って、総務部長に就任したのである。人生後半労働の三段跳び、スリークッションであった。即ち人員整理を実行し、またそのことにより関連会社の総務部に勤め、最終的には会計事務所に勤めることになったのである。それは、1つには先に述べた通り限界体験をしたということであるが、実は人柄に優れていたということである。明るい高齢者雇用を実現する本人の資質として、能力・意欲・人柄が必要である。能力が要求されることは言うまでもないことであるが、意欲が求められるのは、まさに求めてこそ与えられる世界であるからである。そしてなぜ人柄が必要かといえば、「年下の者と仲間になる」ことが、高齢者雇用における明るさを発揮する第一の要素と言ってよいからである。もちろん、能力・意欲・人柄が共に前向きな存在であることが問われるが、とりわけ人柄には前向きな明るさが大切だということである。

 三段跳びのリカバリーもまさに本人の人柄のよさの賜物であった。

 (ニ)ライフスタイル選好型

 自分の個性や特技との適合、または独自のライフスタイルの選択といった視点から雇用の場を見つけて、明るい高齢者雇用を実現しているグループもある。個性を生かす・特技を生かす・趣味を生かす・信条人生観を尊ぶ、といった世界にライフスタイル型がある。要するに「自分に生きる」ということである。例えば教師になりたいと少年時代から数十年夢見てきたところ、高齢になって初めて、教師の場が与えられ活躍する、まさに仕事に励むということを初めて体験・体感することになったのは、その事例であろう。人生における憧れを実現し得たというライフスタイル型として、まさに充実した明るい高齢者雇用となるのである。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

第35回>オンリーワン企業を目指せ(1997年2月26日)

 

 経営に求められるのは「緻密さ」「勇気(勇敢さ)」そして「スピード」である。

 本物の経営者は今日のことだけ考えていてはいけない。今日のことを考えるのは部下にもできる。経営者は先のことを絶えず考える姿勢でいるべきである。そのためには時間に余裕を持つこと。職場から離れて勉強する場と時間を持つことだ。

 真の経営者とは、常に将来を見据え、事業構造の変革を絶えず考え、実行していかなければならない。

 今、中途半端な半死半生の企業が山のようにある。決して伸びているとはいえない企業ばかりである。「なるほど、伸びているな」と思えるのは東京でも数えるほどしかない。大阪ではさらに少ない。あとは皆、半健康体、半病人体で、健康体の企業はほとんどないのが現状だ。

 5年経ったら現在の企業の2分の1はなくなるだろう。10年経てば8割はなくなると考えて間違いないだろう。そこで生き残るためにはオンリーワン企業を目指すことだ。

 5~6年前に「最初に潰れない企業になるには」という話をし、その次に「最後に潰れる企業になるには」という話をしたが、これからは「オンリーワン」が新しいキーワードである。最後まで潰れないためには、たった1つしかない企業を目指すことだ。

 アメリカではあらゆるものがランクづけされているが、日本でもこれからはランキングの時代を意識しなければならない。どんな小さな世界でもいいからトップになることだ。トップになれば生き残れる。

 

「明るい高齢者雇用」

第31回 「背中の力」で勝負―60歳代の職業生活:生きる人脈、経験

(「週刊 労働新聞」第2177号・1997年11月17日掲載)

 

 高齢者雇用として成功するには、自分の目標・生き方をなるべく早い時期から明確に意識しなければならない。そこで、高齢者雇用の現実のタイプを分類してみよう。

 (イ)チャレンジ型

 外に機会を求め、重要な役割を担って活躍する型である。それには、人材として評価される総合能力を持ちあわせていなければならないし、キャリアが新しい仕事にマッチするということも必要である。もちろんこのチャレンジ型が可能であるのは、充分余力がある者でなければならないことになる。そこでは当然、健康問題を克服するだけでなく、若々しさが必要ということにもなり、さらに言えば、親の七光りではないが、今までの人生の軌跡の中で、背中を活用できるだけの実績、人間関係を構築していかなければならない

 一例を紹介しよう。甲氏は北陸地方の出身者であるが、高卒で日本の代表的なある商社に勤めたところ、支店長まで昇りつめた。しかし、その学歴と部下の不祥事により、出世の限界を感じていたところ、そば屋チェーンから転職のお話をいただいた。新分野ではあるが、仕事の類似性があった。商社においては、産元機能、即ち部材問屋機能があるが、チェーン店の展開において、その産元機能で覚えた知識・システムを生かすことができるということである。

 転職に当たって、一番気掛かりだったのは奥様の意向だったが、奥様も転職を快諾した。「あなたはせんべい屋の息子なんだから、そば屋に勤めても別におかしくない」という言葉で本当にほっとしたということである。

 チャレンジ型においてとかく問題になるのは、配偶者の意向である。配偶者が企業ブランドにとらわれている、あるいは冒険に逡巡するとチャレンジする機会を失うが、この場合は、夫人の言葉に半ば励まされて、チャレンジを決意したということである。

 このそば屋チェーンは、結局店頭公開するに至り本人は社長まで勤めたが、もちろんそれは『背中の力』が大いに役に立ったことは言うまでもない。小麦粉の手当てで、食材の手当てに商社に勤めていた知識・体験、さらに人脈が役に立ったし、またシステム作りに当たっても、その知識が役に立った。また、海外出店という大胆な企ても可能になったし、ベンチャーキャピタルや政府系銀行とのつながりも新しく開拓できた。言ってみれば、商社で身に付いた『背中の力』が大いに役に立ったのである。

 (ロ)エキスパート型

 例えば乙氏のケースがこれに当たる。乙氏はニューヨーク支店で法務部門の責任者であったのだが、日本の代表的な製鋼会社が当時まだ珍しかった法務部を設けることになった際に、その経験を買われ責任者として引き抜かれた。その条件として65歳までの雇用も保障された。すなわち、このタイプは専門的な知識・経験を生かし、即戦力として機能するということになる。従来のキャリアの延長線上にあるパターンだが、それだけでは足りない。別の職場ということになれば様々な新しい環境に遭遇するから、応用性・弾力性が不可欠な要素となる。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第34回>日本経済の弱点・企業の弱点・我々の弱点(1997年2月5日)

 

 日本経済に限らず、世界経済にはもう陽は昇らない。エネルギー資源の枯渇の不安にさらされているからだ。資本主義経済は、地球にある資源を開発という名のもとに枯渇させていく。エネルギー資源は絶えず発掘されているが、世界経済が拡大するほどには発掘されていない。

 そうすると自然に人類の英知で調整作用が始まる。「経済の拡大は新たな資源発掘の限度内に」という意識が地球人を取り巻く。そして拡大生産にブレーキがかかり、世界経済が冷えていく。発展途上国の発展スピードが速くなればなるほど、先進国の経済は冷えていく。それゆえ企業は容易に成長しない。

 そして日本経済は、人件費が世界一高いというトンチンカンな政策を打ってしまったが故に厳しい状態にある。早くこの危険の淵から逃げ出さなければならない。今のままのスピードでは、危険の淵に臨む方向になっていく。

 しかし、日本はスピードに乗りきれない。なぜなら、日本人は失敗が許されない国民性であり、変化を嫌うからである。しかもノーリスク・エクスペクティッド・ハイリターンで、日本人は全く危険を負わずに高い報酬だけを夢見ている。

 現代は、エコノミー・オブ・スケールからエコノミー・オブ・スピードの時代へと大変化した。

 GEのウェルチ会長は、日本企業の優れた経営特質を評価しつつも、最大のウイークポイントとして改革のスピードの遅さを指摘した。

 ドッグ・イヤーの感覚で経営しなければならない。今までの7倍のスピードで経営して初めて生き残っていける時代になっているのだ。

 

「明るい高齢者雇用」

第30回  “高評価”は諦めて―60歳代の職業生活:興味・関心の領域で

(「週刊 労働新聞」第2176号・1997年11月10日掲載)

 

 前回御紹介した横倉馨氏は、中高年人材と企業とのマッチングに当たり“キャプラン((株)キャリアプランニングセンター)紹介10則”を挙げている。高齢者雇用にとっても示唆に富む、そのいくつかの切り口に触れてみたい。

 「求職者に目線を合わせ、キャリアの裏を読め」、高齢者も同様に勝負の分かれめは、“キャリアの裏”即ち、キャリアの背景・中身であろう。履歴書に綴られる○○会社取締役もしくは部長といった肩書きよりも、そのポジション・職位において(もしくはそこに至るまでに)仕事を通じ何を生み出し変革し成してきたのか、を語れることが重要である。

 「すべての時間が“情報”につながる。蓄積の厚みと再生の柔軟さがマッチングの鍵」、とりわけ高齢者にとっては後段の“再生の柔軟さ”こそがキーワードであろう。変化を恐れず、むしろ変化を楽しんでいくぐらいの心と頭の柔らかさの保持が不可欠である。

 「“紹介”の成立はゴールではなくスタート」、転身は第二の就社の始まりでは断じてない。いかにみずみずしい気持ちを持って新たなスタートラインに立てるか、横倉氏の言葉を借りれば熟成した自己による後半労働の幕開けなのである。

 さて、明るい高齢者雇用のより良い実現に向けては、個人の寄らば大樹のカゲといった価値観を抜本的に自主思想へと転換しなければならないことが基本となる。

 50歳代の中高年は、未だ生き方を選択できる年代である。即ちライフプラン型という選択、具体的に言えば、第一線から引き下がり、従来のキャリアから離れた第二の人生をあえて選択することも当然可能な年代であるが、それだけではなくて、キャリアプラン型、即ち従来のキャリアを生かしてもう一つ仕事をこなしていこうとの姿勢を選択することも可能な年代なのである。言ってみれば、もう一つ仕事をこなしていくという夢を実現するには、50歳代から取り組まなければ、大半のものは成功しないと言ってよい。

 60歳代になると、期待と現実のギャップは余りにも大きくなり、キャリアプラン型の人生を送ることは、いよいよ困難になってくると言えよう。職業生活においても、50歳代に比して60歳代となれば主観的価値、個々人の趣味・興味・関心といったものに重点を置いた職業生活を送っていかなければならない。職業人としての生き方を求めず、人間としての生き方を求めるといったことになろう。例えば、自分の趣味に生きて一人で悦に入るといった生き方が、60歳代の大方の者にとって現実的に可能な道となるのである。それは自分の余力の程度を自覚して、大いなる報酬とか高い身分とか思い役割にこだわらず、自分の興味・関心を持ち得る領域で自分の存在感を味わっていくという生き方であるし、また社会的な存在として生きること、即ちボランタリーに打ち込み社会との連帯の中で存在感を味わい続けるという世界なのである。

 要するに、客観的に高く評価される、あるいは客観的に然るべく遇されるということは半ば諦めなければならないのが、60歳代の高齢者の実情なのである。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第33回>育成機能のない評価制度は凶器になる(1996年11月21日)

 

 評価制度は単に格付けするだけではなく、「育成する」という意識がなくてはうまく機能しない。

 実力主義は結果重視型になりがちだが、評価においては、努力、人間性、気配りなど、プロセスを重視することが必要だ。人間性をないがしろにする評価では人の活性化はできない。この意識がないと、とかく「結果さえよければいい」という、手段を選ばずの世界に陥る。育成機能のない評価制度は、恐ろしい凶器となる。

 風土刷新を掲げつつ、原生な秩序づけを成果主義とともに同時並行的に推進することだ。

 そして評価基準と評価結果は必ず明確にすること。とくに評価基準は、まずは管理職者に期首に公表しなければならない。評価がオープンでないために、評価する側の真剣さが低下する。また評価される側が、一般的能力ではなく特殊な能力を求められるならば、自分はどんな能力が欠けているのかわからない、といった弊害も生じかねない。

 評価で格差をつけたら反発が起きるという心配は無用である。やってみると案外アッケラカンと進む。ざっくばらんにホンネでやる評価、そういう時代である。

 マネジメントとは自分自身の働きではなく、部下にやる気を起こさせる働きかけであり、部下が他人を手助けしたいという気持ちを湧き上がらせる力である。

 そこで評価による育成テーマは、社員によってターゲットの絞り方を変える。「君はこれだよ」とズケッと言う。そのうえで「だから、こうしろよ」と1つ2つ付け加えればいい。評価のときだけではなく、つねに現実の業務を通じて評価結果に照らし合わせた指導育成をはかることが大切だ。こうなると「人材育成」の世界が実践できる。

 

「明るい高齢者雇用」

第29回 能力と責任重視へ―めざすべき社会:エイジレスに転換を

(「週刊 労働新聞」第2175号・1997年11月3日掲載)

 

※本稿は1997年連載当時のまま掲載しております。

 21世紀は創造を超える超高齢化社会になると言われているが、そこでは当然新しい社会システムを作り上げる必要に迫られるし、また雇用システムも転換せざるを得まい。しかしそれは一朝一夕で成し得るものではなく、当然ロングランの課題となろう。

 社会全体の構造は次の如く変化するだろう。

 第一には、仕事の分配は現在、年齢階層別に行われているが、仕事階層別、即ちそれぞれの仕事に要求される能力・責任に耐えられる者が、これに配置される社会となっていかざるをえない。要するに能力階層別社会であり“エイジレス”社会であるが、好むと好まざるとに拘らず、それを良しとする社会風土となるであろう。

 また高齢である者も働く経済生活においては、国民年金・企業年金という世界から、今後は個人年金を中心とした社会への移行が必要であるし、また仕事に対する報酬をより強く意識する社会へと変質していくだろう。言い換えれば、「企業が労働者の生活を保証するのではなく、労働者は、その生活を自ら担保していかなければならない時代になり」何人も人生を自分で設計しなければならないという当然な課題に直面することになろう。

 価値観は、企業から与えられた課題を達成し、そしてリタイアメントするという現状から、生涯学習を旨として自己に課題を課し、自己責任でこれを達成していくという姿勢が尊ばれよう。即ち自己表現をより充実させようという意欲と行動が、国民全体に強くなるだろう。

 さて、このような社会全体に関するロングランの課題とは別に、高齢者雇用に関する当面の課題を明らかにしなければならない。高齢者雇用のシステムが未整備・未成熟であることは否定すべくもなく、個人ベースによって明るい高齢者雇用を実現していかなければならない時代である。

 ここで既に十数年高齢者雇用の現場に携わってこられた横倉馨氏を御紹介したい。氏は、繊維畑の海外業務をメーンに商社マン30年余のキャリアを重ねた後、経営管理者を中心に45歳以上の斡旋が6割を超える人材バンク(株)キャリアプランニングセンター(昭和57年1月設立、以下キャプランと略)の代表を創業以来務めてこられた(一昨年6月より会長職、現在は相談役)。

 高齢者雇用に対する社会的関心が高まるずっと以前より、この分野の草分け的存在として、まさに“獣道をバイパスへ”と切り拓いてこられた先駆者である。現在横倉氏は労働省・通産省およびその外郭で、中高年の雇用と能力開発に関わる数々の懇談会・研究会の専門委員を歴任されている。また中高年人材と企業とのマッチングを軸としたキャプランの活動は、登録者(求職者)には個別カウンセリングから能力開発の研修まで提供し、企業に対しても研究会組織を通じた事例交流から中高年人材のスムーズな導入受け容れ・より良い能力発揮を目指した職務開発および支援態勢作りといった社内整備に至るまでのコンサルティングと、そのサービス内容はかなり踏み込んだものとなっている。

 

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