高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第34回>日本経済の弱点・企業の弱点・我々の弱点(1997年2月5日)

 

 日本経済に限らず、世界経済にはもう陽は昇らない。エネルギー資源の枯渇の不安にさらされているからだ。資本主義経済は、地球にある資源を開発という名のもとに枯渇させていく。エネルギー資源は絶えず発掘されているが、世界経済が拡大するほどには発掘されていない。

 そうすると自然に人類の英知で調整作用が始まる。「経済の拡大は新たな資源発掘の限度内に」という意識が地球人を取り巻く。そして拡大生産にブレーキがかかり、世界経済が冷えていく。発展途上国の発展スピードが速くなればなるほど、先進国の経済は冷えていく。それゆえ企業は容易に成長しない。

 そして日本経済は、人件費が世界一高いというトンチンカンな政策を打ってしまったが故に厳しい状態にある。早くこの危険の淵から逃げ出さなければならない。今のままのスピードでは、危険の淵に臨む方向になっていく。

 しかし、日本はスピードに乗りきれない。なぜなら、日本人は失敗が許されない国民性であり、変化を嫌うからである。しかもノーリスク・エクスペクティッド・ハイリターンで、日本人は全く危険を負わずに高い報酬だけを夢見ている。

 現代は、エコノミー・オブ・スケールからエコノミー・オブ・スピードの時代へと大変化した。

 GEのウェルチ会長は、日本企業の優れた経営特質を評価しつつも、最大のウイークポイントとして改革のスピードの遅さを指摘した。

 ドッグ・イヤーの感覚で経営しなければならない。今までの7倍のスピードで経営して初めて生き残っていける時代になっているのだ。

 

「明るい高齢者雇用」

第30回  “高評価”は諦めて―60歳代の職業生活:興味・関心の領域で

(「週刊 労働新聞」第2176号・1997年11月10日掲載)

 

 前回御紹介した横倉馨氏は、中高年人材と企業とのマッチングに当たり“キャプラン((株)キャリアプランニングセンター)紹介10則”を挙げている。高齢者雇用にとっても示唆に富む、そのいくつかの切り口に触れてみたい。

 「求職者に目線を合わせ、キャリアの裏を読め」、高齢者も同様に勝負の分かれめは、“キャリアの裏”即ち、キャリアの背景・中身であろう。履歴書に綴られる○○会社取締役もしくは部長といった肩書きよりも、そのポジション・職位において(もしくはそこに至るまでに)仕事を通じ何を生み出し変革し成してきたのか、を語れることが重要である。

 「すべての時間が“情報”につながる。蓄積の厚みと再生の柔軟さがマッチングの鍵」、とりわけ高齢者にとっては後段の“再生の柔軟さ”こそがキーワードであろう。変化を恐れず、むしろ変化を楽しんでいくぐらいの心と頭の柔らかさの保持が不可欠である。

 「“紹介”の成立はゴールではなくスタート」、転身は第二の就社の始まりでは断じてない。いかにみずみずしい気持ちを持って新たなスタートラインに立てるか、横倉氏の言葉を借りれば熟成した自己による後半労働の幕開けなのである。

 さて、明るい高齢者雇用のより良い実現に向けては、個人の寄らば大樹のカゲといった価値観を抜本的に自主思想へと転換しなければならないことが基本となる。

 50歳代の中高年は、未だ生き方を選択できる年代である。即ちライフプラン型という選択、具体的に言えば、第一線から引き下がり、従来のキャリアから離れた第二の人生をあえて選択することも当然可能な年代であるが、それだけではなくて、キャリアプラン型、即ち従来のキャリアを生かしてもう一つ仕事をこなしていこうとの姿勢を選択することも可能な年代なのである。言ってみれば、もう一つ仕事をこなしていくという夢を実現するには、50歳代から取り組まなければ、大半のものは成功しないと言ってよい。

 60歳代になると、期待と現実のギャップは余りにも大きくなり、キャリアプラン型の人生を送ることは、いよいよ困難になってくると言えよう。職業生活においても、50歳代に比して60歳代となれば主観的価値、個々人の趣味・興味・関心といったものに重点を置いた職業生活を送っていかなければならない。職業人としての生き方を求めず、人間としての生き方を求めるといったことになろう。例えば、自分の趣味に生きて一人で悦に入るといった生き方が、60歳代の大方の者にとって現実的に可能な道となるのである。それは自分の余力の程度を自覚して、大いなる報酬とか高い身分とか思い役割にこだわらず、自分の興味・関心を持ち得る領域で自分の存在感を味わっていくという生き方であるし、また社会的な存在として生きること、即ちボランタリーに打ち込み社会との連帯の中で存在感を味わい続けるという世界なのである。

 要するに、客観的に高く評価される、あるいは客観的に然るべく遇されるということは半ば諦めなければならないのが、60歳代の高齢者の実情なのである。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第33回>育成機能のない評価制度は凶器になる(1996年11月21日)

 

 評価制度は単に格付けするだけではなく、「育成する」という意識がなくてはうまく機能しない。

 実力主義は結果重視型になりがちだが、評価においては、努力、人間性、気配りなど、プロセスを重視することが必要だ。人間性をないがしろにする評価では人の活性化はできない。この意識がないと、とかく「結果さえよければいい」という、手段を選ばずの世界に陥る。育成機能のない評価制度は、恐ろしい凶器となる。

 風土刷新を掲げつつ、原生な秩序づけを成果主義とともに同時並行的に推進することだ。

 そして評価基準と評価結果は必ず明確にすること。とくに評価基準は、まずは管理職者に期首に公表しなければならない。評価がオープンでないために、評価する側の真剣さが低下する。また評価される側が、一般的能力ではなく特殊な能力を求められるならば、自分はどんな能力が欠けているのかわからない、といった弊害も生じかねない。

 評価で格差をつけたら反発が起きるという心配は無用である。やってみると案外アッケラカンと進む。ざっくばらんにホンネでやる評価、そういう時代である。

 マネジメントとは自分自身の働きではなく、部下にやる気を起こさせる働きかけであり、部下が他人を手助けしたいという気持ちを湧き上がらせる力である。

 そこで評価による育成テーマは、社員によってターゲットの絞り方を変える。「君はこれだよ」とズケッと言う。そのうえで「だから、こうしろよ」と1つ2つ付け加えればいい。評価のときだけではなく、つねに現実の業務を通じて評価結果に照らし合わせた指導育成をはかることが大切だ。こうなると「人材育成」の世界が実践できる。

 

「明るい高齢者雇用」

第29回 能力と責任重視へ―めざすべき社会:エイジレスに転換を

(「週刊 労働新聞」第2175号・1997年11月3日掲載)

 

※本稿は1997年連載当時のまま掲載しております。

 21世紀は創造を超える超高齢化社会になると言われているが、そこでは当然新しい社会システムを作り上げる必要に迫られるし、また雇用システムも転換せざるを得まい。しかしそれは一朝一夕で成し得るものではなく、当然ロングランの課題となろう。

 社会全体の構造は次の如く変化するだろう。

 第一には、仕事の分配は現在、年齢階層別に行われているが、仕事階層別、即ちそれぞれの仕事に要求される能力・責任に耐えられる者が、これに配置される社会となっていかざるをえない。要するに能力階層別社会であり“エイジレス”社会であるが、好むと好まざるとに拘らず、それを良しとする社会風土となるであろう。

 また高齢である者も働く経済生活においては、国民年金・企業年金という世界から、今後は個人年金を中心とした社会への移行が必要であるし、また仕事に対する報酬をより強く意識する社会へと変質していくだろう。言い換えれば、「企業が労働者の生活を保証するのではなく、労働者は、その生活を自ら担保していかなければならない時代になり」何人も人生を自分で設計しなければならないという当然な課題に直面することになろう。

 価値観は、企業から与えられた課題を達成し、そしてリタイアメントするという現状から、生涯学習を旨として自己に課題を課し、自己責任でこれを達成していくという姿勢が尊ばれよう。即ち自己表現をより充実させようという意欲と行動が、国民全体に強くなるだろう。

 さて、このような社会全体に関するロングランの課題とは別に、高齢者雇用に関する当面の課題を明らかにしなければならない。高齢者雇用のシステムが未整備・未成熟であることは否定すべくもなく、個人ベースによって明るい高齢者雇用を実現していかなければならない時代である。

 ここで既に十数年高齢者雇用の現場に携わってこられた横倉馨氏を御紹介したい。氏は、繊維畑の海外業務をメーンに商社マン30年余のキャリアを重ねた後、経営管理者を中心に45歳以上の斡旋が6割を超える人材バンク(株)キャリアプランニングセンター(昭和57年1月設立、以下キャプランと略)の代表を創業以来務めてこられた(一昨年6月より会長職、現在は相談役)。

 高齢者雇用に対する社会的関心が高まるずっと以前より、この分野の草分け的存在として、まさに“獣道をバイパスへ”と切り拓いてこられた先駆者である。現在横倉氏は労働省・通産省およびその外郭で、中高年の雇用と能力開発に関わる数々の懇談会・研究会の専門委員を歴任されている。また中高年人材と企業とのマッチングを軸としたキャプランの活動は、登録者(求職者)には個別カウンセリングから能力開発の研修まで提供し、企業に対しても研究会組織を通じた事例交流から中高年人材のスムーズな導入受け容れ・より良い能力発揮を目指した職務開発および支援態勢作りといった社内整備に至るまでのコンサルティングと、そのサービス内容はかなり踏み込んだものとなっている。

 

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

<第32回>人を上手に辞めさせる(1996年10月24日)

 

 人を上手に辞めさせることについて、管理職ユニオンの資料『第2回職場いじめ110番 相談カルテ』にそのヒントがある。これは先日、TVでも放映された。

 管理職ユニオンには、辞めさせられるかもしれないと自覚する人が自分の保険のために加入し駆け込む。超一流企業の人もいる。この「110番」には5日間で1,032人から電話があったそうだ。そのうちユニオンに加入したのは200人だったとか。

 このカルテの第1項目に「自殺の場合のチェックマーク」とある。

 「処遇上、人間関係上の差別・嫌がらせ」の項目の筆頭に「仕事を与えない」がある。仕事がないことが苦痛(イジメ)になる。この本質を考えることがポイントだ。仕事がない状態にすることがイジメになる。仕事があってこそ満足感がある。

 つまり雇用関係を解消する方法のひとつは、企業に対する不満感を醸成することだが、それには、①仕事を減らす、重要な仕事から外す ②賃金を低くする(直接的過ぎて、あまりいい方法ではない) ③人間関係を遮断する、この3つがある。

 そこで、人を上手に辞めさせるにはこの3つの手続きを少し、あくまでもほんの少し始めてから、「実は辞めてもらいたい」と言うのが一番効果的なやり方だ。3つのことが充分な状況にあって辞めてもらいたいというのでは成功しない。

 特に人間関係を遮断するには、口をきく回数を少なくする、目線を合わせる回数を少なくする、という方法をとる。

 雇用関係は、代理が許されない人と人の契約関係だから人間関係といえる。人間関係は、思いを伝える/伝わるというコミュニケーションによって維持される。だから、従来と比べて何となく口をきく回数が減ったとなると、人間関係が希薄化する、雇用関係が希薄化する、結合の絆が細くなる、というプロセスになる。

 しかも重要な仕事が与えられない、あるいは減ったとなると、人間になる機会が減ることになる。人は仕事・労働を通じてこそ人間になる。手・足・口・頭、特に仕事で頭を使うということは人間的な能力を活性化させることだから、その機会が質量ともに低下するとなると、ここで働くことの意味を失う、という心理状態になる。

 そして引導をわたす。決断を迫る。「残念だが君を引き受ける職場がないから新天地を切り拓いてほしい。この際、勇退してもらいたい。ついてはこれこれの条件をつける……」といった話の切り出し方をする。その前段として上記の3つの手続きを踏む。

 雇用関係が解消されるということは、「首切り」という言葉のとおり、死に近いものを意味する。人間として付き合ってもらえなくなるということだ。

 管理職ユニオンがここまで踏み込んで分析しているのだから、まして私たち経営者はもっと考えることが必要であろう。

「明るい高齢者雇用」

第28回 独立開業も選択肢―自己実現の理想型に― 

(「週刊 労働新聞」第2174号・1997年10月27日掲載)

 

 企業の高齢者雇用の現状とありうべき方向性をデータを基に概観したが、今回は少し違った視点でこの問題を考えてみたい。

 国民金融公庫総合研究所編「新規開業白書」は毎年様々な観点で新規開業の状況を分析しているが、その中でも新規開業者に占める中高年齢者(45歳以上)の割合が増加しているというデータは注目されてよい。独立開業はだれでも一度は夢見るりそうであろうが、実際にそれを実現している中高年齢者が少なくないようである。91年には24.4%だった新規開業者に占める割合が、96年には34.6%と10ポイント以上上昇している。昨今のベンチャーブームの中では、その話題が比較的若年層に集中しているようだが、中高年齢者の新規開業が着実に増加し、今や3人に1人が45歳以上、平均年齢も40.4歳となっている。

 さらに、下図はそれらの新規開業の目的を尋ねた結果だが、「自分の能力を発揮したい」「定年がない」という理由が上位にきている。企業による雇用の継続が期待できない中で自己実現の機会を求め、年齢による制約に縛られずに仕事をしたいという意思が見て取れよう。これらの結果は、開業分野を元の勤務先との関係で見ると一層明らかになる。商品・サービスと市場・販売先が同じといういわゆる「分社型」が52%、市場・販売先は同じだが商品やサービスが異なるという「絞り込み型」が19%、商品は同じで販売先が異なるという「専門知識活用型」が10%と、約8割が何らかの形で、従前の仕事との関連性を持っている。中高年齢者であれば当然ともいえようが、知識や経験、人脈等を存分に生かして、その延長線上で自分のキャリアを花開かせようとする姿である。

 自身の雇用が企業に保障されないとなれば、また、働く場が与えられてもそれが意に沿わないものであるならば、このような独立開業がむしろ奨励されるべきかもしれない。キャリアを全うしようとする姿こそ自己実現の理想像といえる気がしてならないからである。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

第31回>実力主義になればなるほど組織性が失われる(1996年9月19日)

 

 実力主義になればなるほど個人主義的、自己中心的な、手段を選ばずの世界になる。企業たる意味は、10人、20人、100人が組織として活動するところにある。

 まず第1に考えなければいけないことは、組織の本質は「助け合い」だということである。互助の体系化・制度化・規範化である。体系化・制度化とは誰の指導のもとで仕事をするか、ということであり、規範化とはルールに違反したら懲罰がくる、ということ。

 連帯心を刺激するシステムこそ、実力主義成功のポイントだ。

 その実践策は、まず経営者自ら社員と「目を合わせる」こと。アイコンタクトである。疎通性と連帯性を強める努力が必要。目線が合わないのは疎通性の欠如である。

 それと挨拶。「おはようございます」、「ご苦労様です」、「お疲れさま」、「いってらっしゃい」、「ただいま」。挨拶を全社員に実行せよ。ここから人間的な結合、信頼関係が始まる。中小企業なら目も声も届きやすい。だから中小企業の時代なのだ。必然、企業は小型化する。

 実践策の第2は、結果オーライだけに陥らないようにプロセスを重視する、即ち手段を選びコンプライアンスを重視すること。実力主義はとかく結果主義になりがちだ。結果主義は企業の社会性を失う。実力主義なるがゆえにプロセス重視を掲げなければならない。仕事のプロセスを大切にするように絶えず企業風土の刷新に意を用いよ。

 仕事のプロセスだけでなく教育のプロセスも重視しなければならない。教育の中心課題は、自律心を高める、連帯心を強める(アイコンタクトもその1つ)、向上心を強める(目標をつねに新しく高く与えつづける)こと。

 実力主義にも弊害はある。その最たるものが「結果主義」。勝てば官軍の世界だ。そうならないように様々な工夫が不可欠だ。

 時に慢心する者が出る。これは実力主義における深刻な課題だ。鼻をへし折ると辞めかねない。ではどうやるか。

 ひとつは陰叱り。「○○君、君の成績は立派なものだけど、△△君が言っていたが(実は社長が言っている)、これこれの批判があるから注意しなさい」と陰から欠点を指摘する形をとる。ささやく。

 それで効かなかったら第三者から言わせる。「社長も困っていたよ。かばいきれないことが時々あるって」。これをまずは満座ではやらない。1対1で言う。

 満座でやるときは固有名詞は言わない。「お客様の声だが、電話の切り方が乱暴だ、応対が横柄だと。お互いに注意しましょう」と言う。

 なるべく口頭でやるのがいい。しかし最後には文書で叱る。ここまでくると辞める。なぜ文書は最後かというと「詞は飛び、書は残る」からだ。

 

「明るい高齢者雇用」

第27回 柔軟な就業機会を―一律処遇の必要なし― 

(「週刊 労働新聞」第2173号・1997年10月20日掲載)

 

 前回に引き続き、企業の高齢者雇用の実相を見てみたい。「高年齢者就業実態調査」は今後2年程度の間に高齢者の雇用を増やす意向の有無とその理由を聞いているが、増やすと回答したのは僅か10.7%に過ぎず、前回調査(1992年)に比べて8.5ポイント低下している。一方、増やす予定のない企業が39.4%と、こちらは逆に15.5ポイントの大幅増となった。その理由としては、「高年齢労働者に適した仕事がないから」「若年・中年層の採用で人手は充足できるから」が上位に挙げられている。

 前回述べたが高齢者の雇用は将来的に不可避といえる。増やさないと回答した経営者は時代認識を欠いていると言わざるを得ない。今こと強い危機感を持ち、高齢者の雇用機会の確保、開発に取り組まなければ企業の永続発展はやがておぼつかなくなるであろう。

 他方、高齢者自身の意識はどうであろうか。総理府が行った「勤労意識に関する調査」では、6割弱が65歳位まで、あるいは働ける限りずっとと回答している。まさに類稀な勤勉性であると言えるが、働く理由もまた多様である。図は各年齢層毎に就業理由を尋ねたものだが、生活を維持するためというのは当然としても、年齢の上昇と共に健康維持や生きがい、社会参加へとそのウエートが変化している。また、複数回答で聞いた「熟年ライフに関する調査」でも生計費を得るためという回答が60歳代前半層では60.1%であるのに、60歳代後半層では34.7%である。

 これらの結果は高齢者の雇用の在り方を考える際の重要な視点となる。すなわち必ずしも高齢者を一律に処遇する必要はなく、本人の思考に応じて、正規雇用や賃金の多寡に拘らない柔軟な就業機会を創出する余地が十分にあるということである。働く理由は、実は個人差であって年齢差ではない。体力の衰え等に配慮する必要はあろうが、ことさらに年齢で区別することはなく、むしろ当然のごとく高齢者が職場にいるという状態を実現する方策がもっと検討されてよい。

高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第30回】信用・人脈・情熱~経営強化に必要な3要素~(1996年7月17日)

 

 経営者として必要な要素は様々あるが、経営強化に必要な3つの要素について述べたい。この3要素は「人事の時代」にあって、その人間が優秀であるかダメであるかの判断基準として考慮すべき点でもある。

 ひとつは信用。信用は迅速な応答より生ずる。即時の対応、俊敏かつ緻密な経営が、ホンモノの経営をつくる。信用経営である。

 信用とは、「人の言を用いる」と書く。言がなければ信は生まれない。ただしその言は的確であり、バランス感覚と精神力に満ちていること。後退的な言は用いてはならない。マイナス状況をプラスに変える創意が必要だ。

 前進的、開拓的、前向き、未来志向的を基本とする意見を述べ、その場その場において創意工夫ができ、状況を構築できる力、そこからプラス思考が出てくる。

 言はまた、実現されなければならない。実現することによって「信頼」=その言に頼られる存在となる。その言を成す、実らせる=「誠実」に至ることが大切だ。

 2つ目は人脈。人と人との結合。契約関係ではなく、淡くとも信頼関係での結合が大切である。

 そのとき「人脈定年」対策を考えること。歳をとると友人・知人がだんだん少なくなってくる。人脈定年の克服策は、若い人と付きあうことだ。その場合、信頼だけでなく尊敬、人望が付け加わらないと人脈として形成されない。単なる友達関係では年長者はうるさがられるだけ。尊敬、人望の根源は「実績をあげる」ということに尽きる。

 3つ目は情熱。人一倍勉強する、新しいものをつかむ、社長自ら体を張って朝早くから夜遅くまで働く。これが情熱である。

 その逆は成り行き経営、その場しのぎ経営、ことなかれ経営。みんな倒産する。

 

「明るい高齢者雇用」

第26回 大企業は研究不足―自社活用の努力を― 

(「週刊 労働新聞」第2172号・1997年10月13日掲載)

 

 ここで高齢者の雇用環境を、いくつかのデータをもとに概観してみたい。わが国の高齢化は世界に比類ない速度で進み、21世紀初頭には労働力人口の約5人に1人が60歳以上の高齢者になると見込まれている。図の通り1996年の労働人口は6,711万人で、このうち、60歳未満が5,830万人を占めている。仮に、将来にわたって現在と同程度の経済規模が維持され、その生産性も不変であると想定するなら、2015年には65歳未満の全労働力人口を充てたとしても既に70万人程度及ばず、2025年にはさらに65歳以上の約半数、400万人を加えてようやく現在の60歳未満の労働力人口と同規模になるのである。

 もちろん、このように単純な計算で労働力を云々することはできない。技術革新は間違いなく進み、従って多くの産業分野で労働生産性の向上がみられるはずである。しかしながら、少なくとも各企業においては、現在と同じ従業員の年齢構成を維持することは、若年労働力が大幅に減少することからも困難であると言ってよい。高齢者を雇用することはまさに歴史的必然なのである。

 しかるに各企業の高齢者雇用の現状はどうか。労働省「高年齢者就業実態調査」(平成8年)によると、55歳以上の常用労働者の割合は従業員数30人未満の企業では19.1%であるのに対し、5,000人以上の企業では8.9%と、規模が大きくなる程その割合が少ない。60~69歳層でその差が甚だしく、零細企業の9.1%に対して大手企業は1.3%と7.8ポイントも開く。

 別の調査によれば、従業員数5,000人以上の企業のうち転籍出向制度があるのが4割以上、また、半数以上が早期退職優遇制度を設けている。大手企業での転身の救助や進路選択の一環という、働き続ける意欲のある高齢者を自社で雇用しないシステムが果たして今後とも維持されるべきなのか。大手企業における高齢者の活用について、その研究不足が指摘されなければならない。

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