2011年4月8日のアーカイブ

20110408.JPG(2011年4月6日 朝6:59 東京都千代田区 北の丸公園にて撮影)

 

 2011年3月31日読売新聞1面記事は、「東電は、電力を安定的に供給し続けなくてはならない義務を負っており、法的整理に踏み切ることは難しく、法的整理をすれば、債権者が同じように扱われるため、損害賠償が十分に行われない可能性もある。さらに、東電が発行している約5兆円(10年12月末)に上る社債の価値も大きく下落しかねず、金融市場が混乱する懸念もある。東電の資金繰りは今後、厳しくなることが予想されるため、国の管理下で再生を図るべきだとの議論が出てきた。」と報じています。

 また同記事は、「玄葉国家戦略相も29日、東電国有化について『様々な議論が当然ありうる』と述べている。」とも報じています。

 

 東電の今後について考える重要なポイントとして、

(1)電力を継続・安定して供給しなければならない国および国民らに対する義務
(2)廃炉の措置(およそ20kmか30kmの範囲が、人の住めない無人地帯になる可能性がある)
(3)巨額の債務処理

 等があげられますが、これらを鑑みると、国有化の途しか残されていないというのが大筋でしょう。しかし、私は、その意見に必ずしも賛成していません。

 

 前回述べたとおり、私はチッソの労使案件に数年間携わっておりましたが、水俣病問題については全く関与しておりませんでした。しかし、公害である水俣病に伴う債務処理問題について、新聞紙面等で拝察し、大いに関心を持ちつづけてきました。また、私どもの事務所では最近、一部上場企業から、アスベスト訴訟を受任しております。このアスベスト訴訟においては、国が長期間にわたってアスベストの生産・輸入・販売を、法律等を作成し推進してきたという事実があるにも拘わらず、元従業員あるいは元従業員の家族等近隣住民から、当該企業にアスベスト被害を受けたとして損害賠償訴訟を受け続けていますが、これに対し、司法は、国において、すなわち立法・行政において責任を負うべきであるという主張に対し、国すなわち立法・行政が、アスベストの使用を称揚していたという態度に一顧だにしないという法的見解を、一貫して取り続けています。私は、このような司法当局の態度は、正義に反するものであり、基本的には立法により解決するべきものだと確信しています。さらに、JALが巨額債務から、事実上の倒産という事態となったことについても、私はJALの労使関係に関与していることから、このことについてマスコミ報道に注目していましたが、結論としては、JALを一時的に国有化するということで落ち着いたのだと、私は判断しています。
▶ JNC株式会社(旧チッソ株式会社)ウェブサイトはこちら
▶ 日本航空株式会社ウェブサイトはこちら

 

 そして、東電の今回の致命的な経営施策のあり方は、もはや如何ともし難く、国が関わりを持つことは避けがたいでしょう。しかし、国有化はスピード感を欠くことになり、国難に十分耐えられないでしょう。

 東電の株価は大幅に下落していますが、今後も下落に次ぐ下落となると予測しています。これは、元はと言えば東電自体が原子力発電の安全性に関して謙虚とは到底言えない態度を取り続けた結果と言わねばならないと思います。東電のこの態度の具体例は改めて述べる機会がありますが、それらをも念頭において、東電の取り扱いにつき、基本方針は、次のようなものであると私は考えています。

 

  • 迅速果敢に処理することを大前提にすることがまず必要です。その上で、上記のポイント等を解決することが必要です。
  • 福島第一原発、第二原発を含めて、その事故に伴う対策費用と、補償額は、3兆円ないし30兆円と見込まれていると言われています。もちろん、誰も正確な数字は分からないのですが、その半ばにあるとする16兆5000億円は、覚悟しなければならないと思います。そうなれば、東電にこの額の支払能力がないことは明らかであり、東電は法的整理の手続きに入ることになりますが、供配電事業を円滑に維持するには、東電において、新たなる企業体、すなわち、「新東電」を設立して、それに継続させるのが一番現実的な方法だと思います。このことは従業員の継承の視点からだけしても、十分に理解されるところでしょう。 
  • 廃炉に伴う費用、それに伴う無人地帯の損害補償等々、諸々の補償額の総額は巨額になりますが、基本的に東電は、地域自治体・住民に、長年に亘って様々なコミットメントをしているからには、この費用の負担、損害賠償等に公正・公平・公明に対応することは不可能でしょう。東電では、しがらみを断ち切れないので、それは新東電によるしかないと思います。
    ちなみに、福島第一原発事故は、原子力損害賠償法3条但書にいう「異常な巨大な天災地変」に当たらず、東電が補償責任を免れるとすれば、国民(納税者)感情その他の政治的要因が絡み、困難な事態が生じるでしょう。したがって、東電はすべてを擲って補償し消滅しますが、その実質は第二会社(新東電)として取り組むべき課題とすることがベストと思料します。
  • 尚、5兆円に上るとされる社債についても、これを履行しなければ、すなわち履行期通りにそれを果たさなければ、東電を除いた8電力の今後の事業計画、すなわち資金調達計画が不可能に陥って、日本の電力事業は惨憺たる結果になると思われます。それ故、東電では、この社債問題についても対応できないと思います。

 

 以上、申し上げたことから分かる通り、新東電を設立して、これに供配電事業を引き継ぐことが、迅速な解決方法として賢明な策と思われます。その具体策としては、下記の通りです。

(1) 資本に関する対策を決める

  1. 現資本は100%減資します
  2. 金融債権に関しては90%放棄10%資本化します(但し、議決権なし)
  3. 政府は第三者割当として一定の株式(返還優先株)引受け経営に関わる
    等々。

(2) 新東電設立の様々な要件を決める

  1. とりわけ、経営陣が極めて大切です
    外部からの起用を主とし東電からの参加は必要最低限にとどめます
    また人格・識見・手腕・力量においてまさに優れた者を選ぶために政治家に左右されない選任委員会にて十分に検討を行う必要があります 単に肩書きだけで選んではいけないということです
    ※私は、会長か社長かは分かりませんが、真の長となる人を、1人、推薦する用意があります。
     その方は、新東電について、構想力を持っている人物です。その人のもとで、経営陣を固めるべきでしょう!!
  2. 新東電は東電から福島第一・第二原発を除くすべての事業を譲り受けますが社債も文字通り減額しないで引き受けるものとします
    等々。

(3) 被害補償を行うことについて方針を決める

  1. 処理機関 原資 健康被害対策等を定めなければなりません
  2. 補償基準等 補償に関する方針・判定基準を設定した上で補償資金に不足があった場合は政府が低利融資することが必要でしょう 但し、最低の資金額と最大の資金額とを予め計算しこれを公表しなければなりません
    等々。

(4) 新東電の上場を目指す

  • 上場の時期については当然のことながら新東電の経営が軌道に乗り相当の事業価値が生じたときに行いますがなるべく早期に行わなければなりません
    そして売却代金を様々な融資金・出資金に充当することを予め定めなければなりません
    等々。

(5) 特別法による措置

  • 1~4の具体策が現実化されるには特別法による措置を要する事項もあるでしょう
    減資、事業譲渡に関し、総会決議を不要とすること
    等々。

 これらの具体策の検討は、法務省、裁判所等を含めた有識者の会で、タイムリミットを具体的に定めて、国民と国会に約束し、早急に策定・立案されなければなりません。

高井・岡芹法律事務所
会長弁護士 高井 伸夫 

<次回に続く>

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