ドイツと東電との意見交換会


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(2011年4月13日 朝7:11 東京都千代田区三番町にてパンジーやサクラソウなど春の花数々)

  

 さて、前回はチェルノブイリ原発事故について述べましたが、今回はドイツからの助言と東電の態度を巡る話を取り上げたいと思います。

  環境大国であるドイツは、原発に対する関心も非常に強く、以前から、原発を巡る論議が大きく取り上げられています。

  『巨大地震が原発を襲う チェルノブイリ事故も地震で起こった』(船瀬俊介著 地湧社 2007 ▶ 出版社ウェブサイトはこちら)によると、「日本の原発地下は、破砕帯や活断層だらけ」で、「“原発震災”を回避するドイツ基準なら、日本のほとんどの原発は、即時、閉鎖命令が下る」そうです。日本における原子力発電所の建設基準は、どうやら相当甘いもののようです。

 

 私の手元には、以下のような情報があります。2009年11月に東電本社(千代田区内幸町)にドイツの電力会社の社長らが来訪され、ドイツと日本の電力供給事情の現状における意見交換会を催した時の情報です。

  その会において、ドイツ電力会社の社長は、「これだけ地震の多い土地に、原発を中心に電力を供給することはいかなるものなのか。太陽・水力・風力発電、今では波力発電等もあるのだから、原発よりもそちらに変えていくことの方がいいのではないか?」という質問をされたそうです。これに対して、東電側の出席者4名は「我が国の原発は世界で最も安全である。」と豪語し、意見交換はできぬまま早々と話は終わってしまった一幕があったようです。

 この情報が示すように、東電は、「原発は絶対安全である」という神話のもとに行動していたのです。しかしどのような機器であれ、人間が作り出したものである以上、欠陥があるという前提に立ち、慎重な姿勢で臨まなければなりません。それにも拘らず、ドイツの電力会社社長の意見を一顧だにしないような、およそ謙虚を欠く、あえて言えば傲慢不遜な態度に出たことは、今回の福島原発問題が起こった根本理由を如実に示しているように思われます。

 原子力発電所を作るだけ作っていた東電、これを認可した政府など、ともに経営責任・政治責任などの社会的責任はもちろん、法的責任も問われ、大がかりな住民訴訟に発展する可能性があります。

 

 

【東電の対応についての疑問】

 東電の問題を考えるにあたり、気になる雑誌記事を見つけました。「東電『原子力村※』の大罪」(Asahi Shimbun Weekly AERA 2011.4.11号 ※原子力部門のこと)です。この記事の一部を以下に引用・要約させて頂きます。
▶ AERAーNETはこちら

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  • 原子炉が自動停止したものの、津波で非常用ディーゼル発電機が故障したことが判明し、「電源が失われればメルトダウンが進む」と幹部たちは危機感を持った。
  • (3月11日)午後10時すぎに電源車が到着したものの復旧はできなかった。武藤(栄)副社長は会見で、「つなぐところが冠水したため」と釈明したが、実際には「ケーブルが短く、プラグも合わなかった」と東電の中堅は言っている。
  • 菅総理が福島第一原発を訪れたときにはすでに緊迫した状況であったにもかかわらず、武藤副社長が総理に深刻な状況を報告・相談した形跡はない。
  • 11日あるいは12日に、菅総理が海水注入を東電に指示したところ、「炉が使えなくなる」と武藤副社長が激しく抵抗した、と幾つかのメディアが報じている。経産省のある幹部の一人は、東電の企画部門の元幹部に、廃炉を前提に海水注入すべきだと言ったところ、「株主代表訴訟を起こされるリスクがあるので、民間企業としては決断できない。政府の命令という形にしてくれないと動けない」と言ったという。
  • 1号機で海水注入を始めた際に、2、3号機でも同様の措置を講じていれば、相次ぐ爆発は防げたかもしれないが、武藤副社長はそう決断しなかった。おそらく、廃炉による経済的損失を忌避したかったからだろう。
  • 自身の責任が問われそうな重要な質問には、(同副社長は)「手元に資料がございません」「記録をもう一度整理して確認したく思います」と役人答弁を繰り返していた。

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  もしもその記事に真実が含まれるならば、とてもやりきれない思いになります。東電の唯我独尊的な謙虚さを欠く利己的な対応によって引き起こされた事故のために、避難指示で避難所を何度も移動させられたり、深刻な風評被害が起こったり、原発事故の被害者が増え続けています。

  国内には事故が起こった福島第一原子力発電所を含めて17箇所に原子力発電所があります。生命の存続にも拘わる核を扱う以上、その関係者には危機管理の鉄則である「最悪に備えよ!Prepare For The Worst」を改めて肝に銘じ、全てのシステムについて再検証をした上で安全・安心を保証してもらいたいものです。
▶ 東京電力ウェブサイトはこちら

高井・岡芹法律事務所
会長弁護士 高井伸夫 

(次回に続く)

 

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