2011年4月22日のアーカイブ

アメリカの原発事故対策設備


  20110422.JPG

(2011年4月20日 朝6:35 東京都千代田区 ホテルニューオータニの前にて撮影)

 

【不良欠陥品の原子炉】

  高濃度の放射能漏れという事態に発展した福島第一原発事故の原子炉は、そもそも不良欠陥品であったのではないかという指摘がインターネット上で発表されているのをご存じの方も多いと思います。

  インターネット上でニュース記事を読んでいたところ、福島第一原子炉を巡っては、3月15日の米ニューヨーク・タイムズが、「米原子力委員会の専門家が1972年、この原子炉は水素がたまって爆発した場合、放射能を封じる格納容器が損傷しやすいため、『使用を停止すべき』と指摘した」と報じているようです。また、設計に携わった東芝の元技術者は、3月16日の外国特派員協会の記者会見で「(67年に)設計した当時は、津波は前提になかった。日本で事実上、初の原子炉設計だけに知識に乏しく、耐震設計基準についても判断できなかったと思う」という発言をしたそうです。

  今回、事故を起こしたのは「GEマーク1」という沸騰水型原子炉の一種で、60年代にGEが開発したものです。米国では同型の炉が23基、米国外にも9基あり、計32基が現在も運転中ですが、格納容器が小さいゆえに、水素爆発で損傷するリスクが高い型です。雑誌記事「今そこにあるフクシマ」(Asahi Shimbun Weekly AERA 2011.4.11号)によると、この型の原子炉については、「プリンストン大のアレクサンダー・グラサー准教授も(3月)24日のシンポジウムでその危険性を指摘してい」るそうです。

  つまり、もともと事故の危険性が高い米国製の原発が、地震・津波の危険を十分に考慮せず、建設・運転されてきたのです。日本は世界最大の原子力発電を誇っていたにもかかわらず、それに相応しい原子炉をそもそも備えておらず、更に、事故対策施設・設備を揃えていない等、安全に備える心構えと技術が立ち遅れていたのです。先(4月5日更新記事)に述べたとおり、日本語である「津波」が国際語化するほど、津波は地球上の中でも日本に特に多い天災であるということを考えれば、あってはならないことです。

 

 

【アメリカの原発事故対策設備】

  •  米軍無人偵察機「グローバルホーク」
    電子光学・赤外線カメラのほか、雲を透過する合成開口レーダーも搭載しており、リアルタイム映像に加え、30センチ四方を識別できる写真撮影や赤外線カメラでの温度計測もできる。隊員の被爆等避けるためにも、常時測定にはこの偵察機が不可欠。(2011年3月26日付産経新聞)

 

  • 無人ヘリコプター「K-MAX
    米政府が現場投入を日本政府と東京電力に打診している。「米航空・防衛大手ロッキード・マーチン社とカマン・エアロスペース社が共同開発した」、米海兵隊が所有しているつり下げ物資輸送ヘリで、「遠隔操作のため放射線量が高い現場での作業が可能」。(2011年4月17日付日刊スポーツ)

 

  • 米軍大気収集機「WC-135コンスタントフェニックス」
    採取した全サンプルを高圧力下で保存する圧縮装置を備え、大気中に含まれる微量の放射性粒子をリアルタイムに探知できる(2011年4月21日付毎日新聞)

 

 
 等々、米国が保有していて日本がまだ保有していない最新鋭の設備があること自体、いかに東電をはじめ電力会社各社と日本政府が怠慢であったかを物語っています。プレデター(中高度長時間滞空無人機システムで遠隔操作で飛行するため災害対策にも用いうる)とグローバルスカイクレーン(空中消火任務用に水投棄機材を搭載しているヘリコプター)に至っては、まだ導入の検討さえされていないのではないでしょうか。

  事故当初からこれらの機器などを開発し、発達している米国の支援を受けていれば、事故を最小限に抑えることができたにも関わらず、なかなか受け入れなかったのは、東電が面子を重視したがゆえのものであり、その責任は重大です。ましてや普天間基地等今後の米国との交渉を政治的に懸念した上での判断であったとすれば、これは失政と言わざるをえません。

 

 このような理由から、私は、この度の福島第一原子力発電所事故は、「天災」ではなく「人災」だと考えているのです。

 

高井・岡芹法律事務所
会長弁護士 高井 伸夫

 

(次回に続く)

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