20110603(2).JPG20110603(1).JPG(2011年5月27日 午後1時13分 北海道苫小牧市 ノーザンホースパークにて撮影)
                                             ノーザンホースパークホームページはこちら

 

 

 

 さて、4月1日より、今まで計14回、この度の東日本大震災について記事を投稿して参りましたが、今回より2回にわたって、ブログへのご質問に対するご意見・回答及び被災地の皆様からの生の声をご紹介し、ひとまず地震・原発事故に関する記事の結びとさせて頂きます。

 

【ブログ記事本文ご質問への回答】

 まず、今回は4月8日付記事「東電国有化についての所感と方針~やはり民営企業で」のコメント欄に寄せられた、森山雪子様からのご質問に回答させていただきます。

 

<森山様からのご質問>

高濃度の放射性物質混じりの水を、海に放出したことでロンドン条約に触れて、今後、多くの賠償金を求められるだろうといくつかのメディアで聞いたり見たりしました。

もしも、海外から訴えられた場合、「国外に対する保証」は、新東電が受け持つのでしょうか?それとも、国がやってゆくものですか?3兆〜30兆の試算の中に、この保証は含まれているのでしょうか?

 

 私の4月8日付記事では、もっぱら今後の東電のあり方という国内的な問題にしぼって意見を述べましたため、森山様からのご質問の点には触れておりませんでした。この点については、概略以下のとおりご回答申し上げます。

 

 報道等では、確かにロンドン条約の名前が取りざたされておりますが、これは国同士の取り決めであって直接東電の責任を定めるものではない上、この条約を見ると、「投棄」については、船舶等から廃棄物を海洋へ処分することと定義されておりますので、今回のような陸上にある原発からの汚染水の放出がこれに当たるかどうかは問題もあるかと思います。

 

 森山様のご質問のご趣旨としましては、東電という私人の不祥事に国が責任を負う場合があるのかという違和感にあるのではないかと思料致しますが、条約は、法律とは異なり国家間を規律する法規範であり、条約違反に基づく賠償責任ということになれば、それは国家間の問題であり、私人の行為について、原則的には国がその責任を負うことはありません。しかし、国が指示をした場合や、国が私人の行為に関連した自らの国際義務に違反したような場合には、国が金銭賠償等を含む責任を負わなければならないこともありましょう。

 

 なお、補償額につきましては、巷で3兆円ないし30兆円と言われているにすぎず、その内訳については試算を行う人によって異なると思われます。これについては、本ブログ記事内でも申し上げましたとおり、誰も未だ正確な数字は分かっていないということでご理解頂ければと存じます。

  

 

【ブログに関するご意見・ご質問】

 私が4月1日よりブログを始めてから、知人ら等ブログ読者の皆様から様々なご意見・ご質問を頂いておりますが、ここでお寄せ頂いたご意見・ご質問につき2~3をピックアップし、ご紹介したいと思います。

 

  1. 「ブログの写真はどなたが撮られているのですか?」というご質問をよく受けますが、写真は、私が散歩先や訪問先等で目にとまった風景や花々等を自分でカメラを構えて撮影しています。ちなみに私が写っている写真は、ドライバー等々同行者が撮影しています。

  2. 5月13日付記事「福島第一原発事故~所感統括」に書いた、【福島県元知事佐藤栄佐久に対する有罪の判決「収賄被告事件、収賄、競売入札妨害被告事件」】の「最高裁判所は上告を受理しなかったと伝えられています」という記述についてですが、「最高裁に受理され、係属中」とのご指摘を頂きました。記載に誤りがございましたことを、お詫びして訂正致します。なお、「その判決の行方はどうですか?」というご質問も受けますが、私は次のようにお答えしています。

    東京高等裁判所平成21年10月14日判決(事件番号 平成20年(う)第2284号)は、要するに「無罪であるけれども有罪である」という大変不思議な、言ってみれば検察庁あるいは国に阿った(おもねった)判決になっています。このことは、誠に遺憾でございます。そして最高裁では、「有罪であるけれども無罪である」という庶民を納得させられない論理で無罪とする可能性があります。要するに佐藤栄佐久氏は国策への反逆者・謀反人としての所為に及んだとして起訴されましたが、このことをネグレクトした上、有罪に値する証拠が十分ないとして推定無罪という形で判決を出すことを私は予測しています。

    また、「無罪判決が確定した場合に、佐藤栄佐久氏は刑事補償請求をするでしょうか?」というご質問も受けました。刑事補償請求訴訟を提起するかどうかは、本人及び弁護団の意向次第ですが、私は佐藤栄佐久氏が、無実の罪で監獄に送られ復讐に生きたモンテ・クリスト伯爵のようには、検察官にも裁判官にも復讐の念を起さず、正々堂々と、再び福島県知事選挙に立候補すべきではないかと考えています。もちろん、立候補の結果、落選ということもありうるでしょうが、命ある限り、自分の信念を貫くためにはそのことが必要ではないかと存じます。もちろん、あの世では認めていただけるでしょう。(ちなみに現在の福島県知事佐藤雄平氏は、民主党の大立者である渡部恒三議員の甥と伝えられていますが、佐藤雄平氏が立候補するかどうかも見物です。)

    なお、この事件を担当して有罪判決を出した裁判官は、佐藤栄佐久氏に対し、深甚なる謝罪をするべきだと思います。そして、裁判官は、福島県民に対しても、遺憾な点があったと明確に表明すべきでしょう。また、検察官については、最高検察庁検事総長が、佐藤栄佐久氏に対し、深甚な謝罪をするべきでしょうし、さらに福島県民に対して、反省の態度を明確に示すべきでしょう。過去の例としては、足利事件の再審(事件番号平成14年(た)第4号)で、宇都宮地方裁判所が2010年3月26日に無罪判決を言い渡した際、裁判長および二人の陪席裁判官が謝罪しております。裁判官も人の子ですから、このような人倫に基づいた態度を鮮明にすべきでしょう。

  3. 小生がメンタルヘルスに関する著書等を発表しているため、「この度の震災・原発事故につき、メンタルヘルスについてもブログで書かれますか?」というご質問もよく頂きます。メンタルヘルスについては、あまりにも難しい問題なのでブログで取り上げ兼ねますが、最近私は、山田真美著『死との対話』(2004年11月30日株式会社スパイス発行)を読み、感銘を受けました。山田真美氏ホームページはこちら

    山田氏は、『死との対話』の「16 世界で最も自殺しやすい男と女」の章で、「思うに、人間というものは概して『安定志向』の強い生き物ではないだろうか。」(p159)「急激な変化。この先の生活がどうなるかわからない、先行きの見えない毎日。そうした不安にさらされ続けた人々が経験するであろうストレスの大きさは、想像に余りある。」「こうした状況が長く続けば、肉体的にも精神的にも相当なストレスを強いられることだろう。」(p157)と述べられています。

    私は次のように思います。人間は向上心があると共にそれが故に不安定になりがちですから、安定性を求める動物でもあります。だからこそ人間は生き残り、万物の霊長という地位を得るに到ったのです。それにも拘わらず、今回の震災・原発事故を通じて多くの方々が配偶者や子供、両親、祖父母等の親族を亡くすという痛恨の極みの不祥事に遭遇し、また、人生の努力の結晶ともいえる家を失ってしまうという異常で悲劇的な事態に遭遇し、不安定極まりない喪失感に満ちた心境に至っています。気が張っているうちはよいのですが、気が抜けた瞬間に心身の顕著な疲労が顕在化し、精神障害者が様々な所で発症するだけでなく、自殺者が多発するのではないかと私は心配しています。精神科医、心療科医、カウンセラー等がこれにどう手助けをするかが大切な課題であると考えます。

    各種報道では、被災地で救助等を行っている自衛隊員のメンタルヘルスが非常に大切であると報じていますが、私は、実は、被災者自身のメンタルヘルスこそが大切な課題であるということを声を大にして言いたいと思います。

    私は現地に行って取材するだけのルートや時間がございませんので、生の声を聞いておらず、事実をふまえた十分な論述をし得ないので、問題点のみを指摘するにとどめます。

 高井・岡芹法律事務所
会長弁護士 高井伸夫

(次回に続く)

ご利用案内

内容につきましては、私の雑感等も含まれますので、真実性や正確性を保証するものではない旨ご了解下さい。

→ リンクポリシー・著作権

カレンダー

2011年6月
« 5月   7月 »
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

最近の投稿

カテゴリー

月別アーカイブ

プロフィール

高井・岡芹法律事務所会長
弁護士 高井伸夫
https://www.law-pro.jp/

Nobuo Takai

バナーを作成