胸騒ぎの解消法...『気づき』


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 (2011年6月30日 朝6時43分 東京都目黒区 中目黒公園にて撮影)

 

【「直感」「第六感」「霊感」とは?】

 

 前回6月24日付の記事で、「胸騒ぎ」の解消方法は、「胸騒ぎから逃げず、胸騒ぎに立ち向かって、それを克服する術をまさに直感的に悟ること」とお話しました。この「直感的に悟る」ことを私は「気づき」と呼んでいます。「気づき」とは、「気づくこと」ですが、「気づく」とは「ふと、思いがそこにいたる。感づく」(広辞苑第4版、三省堂)という意味です。

 

 直感は「説明や証明を経ないで、物事の真相を心で直ちに感じること」(同)を意味し、第六感とは、「五感のほかにあるとされる感覚で、鋭く物事の本質をつかむ心の働き」(同)を意味します。

 

 さて、第六感、直感の類義語としては「霊感」という言葉が挙げられています。「霊感」とは、なんでしょうか。「霊感」とは、「人間の霊の微妙な作用による感応。心にピンとくる不思議な感じ」(広辞苑第4版、三省堂)を意味します。中村天風(1876年~1968年、日本初のヨーガ行者)についての書籍「中村天風 銀の言葉」(岬龍一郎著、ワニの選著KKベストセラーズ、1995)によると、霊感は霊性意識の中でも「特に高度なもので、五感を超越しているところから『第六感』と呼ばれて」おり、「本来、人間として生命を得た以上は誰しも、この霊感を持って」(201頁)いるのだそうです。霊感とは、宇宙に存在する陽炎のごとき人間を、宇宙と結合させる、へその緒のようなものであると思います。つまり、霊感は、人間が宇宙と交信するための一端を担っているものだと私は考えています。

 

 なお、中村天風は、霊性意識という概念につき、「霊魂から生まれる意識で、簡単にいうなら『本心良心』を根源とする意識のこと」(197頁)と述べています。「本心」とは「良心」のことで、「良心」とは「何が善であり悪であるかを知らせ、善を命じ悪をしりぞける個人の道徳意識」(広辞苑第4版、三省堂)のことです。宇宙と人間との、見えない交信状態を指すものだと私は考えています。生物としての人間が、長い間生きながらえてきたのは、霊性意識があったからでしょう。

 

 そして、私はこの霊性意識を日本国憲法でいうところの「良心」のことであると理解しております。この「良心」についての解釈は『地震』の第10回(5月13日付)及び第12回(5月20日付)で明らかにしましたが、「真・善・美」を求める心と「夢・愛・誠」としています。その内実は霊感であって、宇宙に存在し続けるために、宇宙からはずれないために、それは人間として務めるべき核心ではないかと思っています。

 

 さて、五感を総動員して思考を重ねても、答えがでないということが良くありますが、その場合に、一度、その案件を思考から手放した時に、ふと思いがけない答えを得ることがあります。これはまさしく、宇宙にある「気(霊魂)」から生み出された霊性意識、霊感という第六感によるものでしょう。

 

 第六感から生み出された「胸騒ぎ」を解消するためには、五感を総動員するだけではだめで、第六感である「気づき」の感性をも磨くことが必要です。そのためには、例えば、弁護士たる私として引き受けた事案の推移とともに、「胸騒ぎ」が強弱する度合を意識して仕事を進めることが、「気づき」につながります。この感性が高まれば対応の必要性に迫られ、具体的な対応策が見えてくるのです。

 

 

【「気づき」の感性を磨いて「胸騒ぎ」を解消】

 

 ところで「胸騒ぎ」を的確に感じない人、また「胸騒ぎ」を感じても克服の術が全く思い当たらない人もたくさんいます。つまり、「気がつかない人」ということです。事の推移を見通すことが出来ない人によくみられる傾向のようです。これは何も弁護士の世界だけでなく、どんな業種にも言えることですが、仕事において優秀な人は「胸騒ぎ」を鋭く感じ、優秀でない人は胸騒ぎもせず気がつかない人のことをいいます。

 

 では、「気づき」の感性、すなわち第六感や霊感を高めるためにはどうしたらよいのでしょうか。私が提案する具体的な方法としては、下記の通りです。

 

  1. 「胸騒ぎ」という漠然とした不安感に苛まれているだけではダメで、気になることは必ずメモに書き留めて分析をし始め、解決を目指す手立てにつき優先順位を決める習慣を身につけることも、一つの方法でしょう。このように、メモをすることによって、胸騒ぎが自分から半ば離れて客体化し、新しい「気づき」を得ることが出来るのです。それは、「胸騒ぎ」すなわち不安な点をメモをすることによって、それから少し解放され、「気づく」ことになるのです。
  2. 思考を重ねても答えがでないとき、その場合に、一度あきらめて、その案件を思考から手放した時に、ふと思いがけない答えを得ることは先に述べた通りです。例えば、打ち合わせの途上で、一度トイレに立つと、ふとして新たな解決の手順や解決の方途に気づくことがあります。これは、一度考えを自分の頭から手放すことによって、無という状態に至ることが可能となり、この時に「気づき」に至るのです。
  3. 不明点等は、その場で直ちに調べる癖をつけると、自分のスキルの発揮度が広がることになります。これは、私が仕事に限らず生活上常に心がけていることですが、何事も「すぐ実行する」ことが大切だということにもつながります。
  4. どんな時でも、「仕事を前倒しに行う」こと、そして「一拍おく」ことが大切です。弁護士の仕事のひとつに書面作成がありますが、弁護士に限らずどんな書面であっても、作成者には責任が生じます。そこで、書面を作ったらすぐ発信するのではなく、まずは読み合わせをすることが必要です。読み合わせでは、ただ読み返すだけでなく、その書面を発信することでどんな責任が生ずるかを自ずから確認します。実務では、前日に書面を作成しておいて、一夜おいて朝になってから、書面を発信するのです。そうすることで、落ち着いた気持ちで、すなわち落ち着いた文面での文書を発信することができます。いつも追われて仕事をしていたのでは良い仕事はできません。また、さらに一夜おいて朝にそれを読み返すと新しいことを着想することがあります。朝こそ頭が冴える時間であるからです。「前倒し」で前日に仕事を終えているからこそこの効果が得られるといえるでしょう。このように、「気持ちに流されず、気持ちをもって(維持して)仕事をすること」、「気持ちを入れること」を旨として下さい。

  5. 全て順風満帆に感じられ、問題なく感じられるときには、「胸騒ぎ」につながりそうな材料を積極的に探すことが重要となります。つまり、アンテナ(「気」)を張り巡らせて、警戒信号を見つけ出すのです。これが「備えあれば憂いなし」ということになり、弁護士としての安堵を得ることになるのですが、依頼者に対しては、「気になること・苦になること・気がかりなこと」を確認するという手続きを毎度進めることもそれにあたるでしょう。そして自分自身は、「胸騒ぎ」がするか否か、またはその程度如何をたえず探り、もし感じなければ積極的に探すことが、状況の把握と、それを踏まえての問題解決・解消の近道なのです。
  6. 同じ考え方・感じ方・思い方をする人ばかりが集まって仕事をしていては、発展性や柔軟性に乏しく、様々な「気づき」を得ることができません。それでは組織としての力も弱くなるのです。かつて私が北朝鮮にお邪魔した際に、リンゴの苗木を送る約束をしましたが、それを果たすために青森県黒石市まで行って、株式会社黒石植物園という会社を訪ね、リンゴの苗木について色々教えてもらったことがあります。「同じ品種の苗木ばかりを並べて植えてはいけない。異品種の苗木も混ぜて植えることが、苗木を丈夫に上手に育てるコツです。」と教えていただきました。人間も同様で、異なる議論のできる異分子を入れることによってお互いに「気づき」が生まれ、成果を上げることが出来るでしょう。

 

 このように、物事を成功させるためには、第六感をフルに研ぎ澄ませ、「胸騒ぎ」と「気づき」をフルに発揮して、何らかの対策・対処方法を思いつく・考え出すという行為こそが大切なのです。こうした創意工夫をすることが、結果として懸念事項を少なく小さくし、トラブル解消につながるのです。

 

 主に弁護士について述べてまいりましたが、この「胸騒ぎ」とその解消方法である「気づき」は、先ほど申し上げた通り、どの業種・業界に属する方にも、同じことが言えます。「胸騒ぎ」に、的確に鋭敏に気づき、そしてそれを克服する術を備えることは、優れたビジネスマンにとっては必要不可欠なものです。

 

 次回以降も、引き続き、「気」に関係する実践的な記事を投稿していきたいと考えています。

(次回に続く)

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