(2012年2月24日(金) 午前10:09
東京都千代田区一番町付近にて椿を撮影
花言葉:「気取らない優美,魅力」)
2月10日(金)より「縁」をテーマにブログ記事を連載しておりますが、今回も引き続き「縁」に関係するお話をしたいと思います。
【心の時代】
さて、産業は幾多の変遷を繰り返してきましたが、それとともに人の労働の価値基軸や労働の質も変わってきています。
まず、人類最初の産業である農業では、足腰を使う肉体労働が人の労働の中心でした。これは「フットワークの時代」ともいえるでしょう。次に、工業化時代が到来しました。工業とは、モノづくりですから、手先の器用さが必要になりました。いわば「ハンドワークの時代」です。そしてその次には、商業・サービス業の時代が来ました。上手にメッセージを発信できる人が有利に仕事を進めることができるということで、口先が武器になりました。さらに、現代はソフト化時代であるといわれています。頭を使える人、つまり知識・情報を駆使し、智恵を使える人が高く評価されます。これは、頭脳労働・知的活動の価値が重んじられる「ヘッドワークの時代」といえます。
このような足腰→手先→口先→頭という変遷の次に来るのは、心の時代・ハートワークの時代だと思っています。そして、その時代は始まろうとしています。ITが発達し、内部告発が一般的となり、企業や経営者の私心に基づく活動は、すぐに明るみに出てしまう時代であるからです。良心に基づく生き方、企業活動が必要になっているのです。
心の時代・ハートワークの時代では、人の心に触れ、人の心を読み、納得させることが何より大切です。日本語には「理動」という言葉はなく「知動」という言葉もありませんが、「感動」という言葉があります。「感動」は、「感」情で人が「動」くと書きますが、人を感動させるためには、誠意が必要です。理論だけでは人は動かないのです。「ハートワークの時代」における社会では、「真・善・美」が求められ、「良心・善意・成長」を旨とする「心」を大切にすることに大きな価値が置かれます。
私は、1963年(昭和38年)に弁護士登録して以来、半世紀にわたり人事・労働問題を専門に取り組んでまいりました。私は、労使問題に取り組むこととは、人の心に触れること、人の心を読むことであると認識しています。人の心が読めなければ成功は望めません。そして、人の心に触れ、人の心を読むことを意識することは、私のような弁護士業だけでなく、どんな職業にも必要な態度ですし、仕事に限らず、人間関係を構築する上でも不可欠なことであると思います。
(付言すれば、近い将来には、「ハートワーク」よりもなお一層人間性が問われ、さらに上位に位置付けられる「ヒューマンワーク」という概念を意識しなければならない時代が到来するのではないかと思います。ヒューマンワークとは私の造語で、全人格・全人間性をかけて、無我夢中・一心不乱に人間の理想である「夢・愛・誠」を求め続ける働きというような意味です。これこそ、民族や国籍を超越した普遍的な「ワーク」であると思います。ヒューマンワークという概念が敢えて必要であると考えるひとつの理由は、企業のグローバル化の急速な進展です。グローバル社会では、労働について、多様性の壁を乗り越える普遍的な価値基準が求められるようになるからです。ヒューマンワークについては、また機会があれば述べたいと思います。)
【誠意】
さて、心の時代には誠意が必要と述べましたが、誠意とは何でしょうか。
広辞苑(第5版)には、「私欲を離れ、曲ったところのない心で物事に対する気持ち。まごころ」とあります。
誠意が大切なことは、頭ではわかっていても、実際は、さまざまな事情によって、誠意なしに物事に対処してしまうことがあります。それは、結果が先にほしいという欲があるからでしょう。しかし、誠意のない振る舞いは、その時はよくても決して長続きはしません。日本昔話に出てくる欲張りじいさん、ばあさんのお話を思い出してみてください。誠意を前面に押し出していかないと、仕事や人間関係は絶対にうまくいきません。
誠意・まごころはいつの時代も人が強く求めているものですが、特に心の時代では、一番の武器になります。そして、それがないと何事も成就しない時代になると思います。今一度、誠意・まごころを意識してみると、相手の感じ方、考え方、思い方を大切にすることが自然とできるようになり、これまで自分で築き上げてきた人間関係、ご縁を更に充実させることができるでしょう。
(リライト:加藤・宮本)