2012年11月のアーカイブ

「リーダーについて」その7


IMGP2799.JPG2012年11月25日(日)朝9:35
埼玉県行田市丸墓山古墳にて洋ギクを撮影
花言葉:「高貴、高潔」

 

 10月5日(金)付記事より、「リーダーについて」をテーマに連載を開始しております。本連載は、私が、50年間にわたる経営側の人事・労務問題の専門弁護士としての経験もふまえ、感じ・考えたことの一部です。ブログ読者の皆さまに、リーダーのあり方について考えていただくための一助になれば幸いです。

 

 さて、ビジネスシーンで、メールや、クラウドでの決裁システム等ITを駆使してより効率的に業務を推進する姿勢は、経営のスピードが急加速しているいまの時代において、あたり前に求められています。

 

 しかし、2月10日(金)付「縁(その1)」でも触れましたが、IT時代においては、アナログなものの価値が逆に高まるという側面もあります。手書きの手紙やはがきのやりとりが、ひとつの例でしょう。手書きという「ひと手間」をかけてもらえたことへの嬉しさや、文字から感じるあたたかみは、メール等のITツールにはないアナログのよさです。

 

 また、IT時代において、日々決裁や指示出しに追われるリーダーは、指導や指揮命令をすべてメールや電話で済ませてしまうことも多く、肉声を聞く機会が少なくなっていると思います。肉声とは、「マイクロフォンなどの機械を通さない、人間の口から出る生(なま)の音声」(広辞苑)のことです。

 

 リーダーには、組織に属する者の士気を高めるという任務があります。しかし、熱意や情熱などの感情は、肉声でないとなかなか伝わりにくいものです。肉声は、人の感情、感性の部分を、デジタルよりも巧みに伝えて相手の心に直接訴えかける力を持っていますから、リーダーはこの点をよく心得て、肉声でのコミュニケーションを図る機会を意識して設ける工夫が必要です。

 

 工夫の一つに、「膝詰め」があります。膝詰めとは、一対一で直に面談することです。私自身も、事務所の弁護士の指導において一番心掛けていたのは、短時間でも時間を作り、直接、膝詰めによる打ち合わせや指示をすることでした。対面して話せば、相手の顔色の変化にも気づきやすいですし、声色もより鮮明に伝わります。膝詰めの場の雰囲気・空気を五感で感じながら、肉声でやりとりすることで湧き出るアイディアや、気づきもあるでしょう。これこそが、アナログなコミュニケーションの強みです。

 

 現代における必須の能力としてのITを使ったネットワークコミュニケーション力と、手書き文字や声掛けで相手の五感、心に直接訴えかけるような昔ながらのコミュニケーション力を兼ね備え、この2つを臨機応変に適切に使いこなす能力が、リーダーに求められています。うわべだけの言辞では、人の気持ちは決して動きません。結局のところ、リーダーには人間性如何が問われることになるのです。

 

(リライト 加藤・宮本)

「リーダーについて」その6


IMGP2746.JPG2012年11月18日(日)午前9:53
埼玉県川口市グリーンセンターにてコスモスを撮影
花言葉:少女の純潔

 

10月5日(金)付記事より、「リーダーについて」をテーマに連載を開始しております。本連載は、私が、50年間にわたる経営側の人事・労務問題の専門弁護士としての経験もふまえ、感じ・考えたことの一部です。ブログ読者の皆さまに、リーダーのあり方について考えていただくための一助になれば幸いです。

 

 大正から昭和初期において活躍した社会思想家、経済学者である河合栄治郎(1891年~1944年)は、「われわれを成長させるものは、人生における悪戦苦闘である」と述べています。業績をあげているビジネスリーダーであれば、この言葉に大いに頷くでしょう。

 

 企業や組織をめぐる国内外の厳しい競争を生き抜くためには、構成員が一丸となって、迅速かつ的確に取り組めるように、彼ら彼女らを統率する優秀なリーダーが求められますが、リーダーの統率力の根本である判断力、決断力、実行力等は、場数を踏むことで身につくものです。

 

 リーダーたる者は、場数を踏み、修羅場の体験のなかで、自らのアイディアで困難を乗り越え、これらを的確に処理しなければなりません。こうした数々の経験を重ねることこそが、精神的成長につながります。

 

 悪戦苦闘や修羅場の体験は、率いるべき規模の大小にかかわらず、それぞれの規模なりに重要なものです。少人数のグループやチームなど、小規模グループのリーダーとしての働きであっても、その段階を経ることが次のステップへとつながります。たとえば、より高品質の製品・サービスを、消費者・利用者により迅速に提供することが企業には求められますが、新製品・サービスの開発プロジェクトを実行に移す際には、不安がつきものです。プロジェクトチームのリーダーは、こうした不安に打ち勝ち、問題点等をよく検討し、分析し、強い精神力のもと勇気をもってこれを実行に移さなければなりません。

 

 ただ、根本的に、横並びや集団行動を尊ぶ傾向のある日本人は、競争原理に対応しにくく、そのため、競争に疲弊し、落伍の不安や淘汰の恐怖にさいなまれ、メンタルヘルス不調に陥ってしまう人が増えていることには留意すべきです。労働政策研究・研修機構による全国の従業員10人以上の民間事業所14,000カ所を対象とした「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査」(2012年3月30日発表)によると、6割弱の事業所で、メンタルヘルスに問題を抱えている正社員がいると回答し、そのうちの3割強(31.7%)の事業所は、3年前に比べてその人数が増えたとしています。減少傾向であると回答した事業所は約2割(18.4%)で、増加傾向を見て取ることができます。また、メンタルヘルス不調者が現れる原因として、事業所がどのように認識しているかについて、「成果がより求められることによる競争過多」とする回答が全体の12.6%を占めています。こうした実情からみて、リーダーは、単に仕事の進捗のみに心を砕くのではなく、自らの心身の健康保持に留意するとともに、配下の人たちの心身の状態にも十分な配慮をつくす必要があります。

 

 なお、悪戦苦闘や修羅場の体験を乗り越えて厳しいグローバル競争に勝ち抜く強い人材を育成するのは、個別企業の努力だけでは限界があります。国の明確な政策の一環として、小学校・中学校という早い時期から職業教育を実施することが必要であると思います。これは、換言すれば、職業キャリアの意識を、学生から社会人になってゆく者に上手にリレーするための社会基盤の構築の必要性という問題でもあります。キャリア教育をめぐる問題については、新しいテーマとして、改めて論じることができればと思います。

 

(リライト 加藤・宮本)

IMGP2689.JPG2012年11月11日(日)朝7:08
高井伸夫撮影「ランタナ」(東京都目黒区中目黒公園)
花言葉:「協力」「厳格」「心変わり」等

人間関係を深めていくのは畑を耕すのと同じ、とよく言われます。

畑において、何度も鍬や鋤を入れて耕していく作業は、一回やればそれで終わりという性質のものではありません。

何度も何度も、繰り返し鍬や鋤を打ち込むことによって、盤根錯節した木の根っこやら石やらを取り除いて深く掘り、土壌を柔らかくしていくものです。農作業においてはそうやって堅い畑を耕し、作物を作付けできる状態にしていくのは大切なことです。その状態を保ち続けるために、定期的に何度も何度も耕していく必要があるのだと思われます。

 

そしてこれは人間関係においても同じで、一回会えばそれでおしまい、というものではなく、繰り返しの接触を心がけ、関係性を深堀っていくことこそが肝要なのではないかと思います。

 

その点で高井先生はブログを拝読していても分かるとおり、あるいは直接接している方はなおご存じのとおり、地層が積み重なるように、あるいは年輪が刻まれていくのと同じように、長期間、時間をかけて耕してこられた数々のご縁が非常に広く、深く、続いているようです。

 

その相当に深いご縁の裾野を見聞きするたび、40年前、30年前、20年前、10年前、5年前、3年前、去年、あるいは先月、先週会った人とのつながりが重層的に重なり合い、ときに友人、知人同士をご紹介しながら、豊かな人間関係の生態系が形成されているようにすら思われます。

 

一人の人と出会い、その人の人となりや、なされていることに、ひと度、興味を持てば、定期的に、あるいは不定期的な出会いを蓄積していき、さらにメールや電話、そして事務所報といったツールを用いながら、

「出会いをご縁やつながりに転換していく」

ことを習慣化されているように見受けられます。まさに冒頭に記したように「大切な畑を耕すように、人間関係を耕されている」と思わずにおれません。

 

私もそのような高井先生の姿勢に触発された一人ですし、その姿を見習い、出会いをご縁・つながりにかえてきたいといつも思っています。

「リーダーについて」その5


IMGP2645.JPG2012年11月4日(日)朝7:22
東京都渋谷区代々木公園にてゴンズイを撮影
花言葉:一芸に秀でる

 

10月5日(金)付記事より、「リーダーについて」をテーマに連載を開始しております。本連載は、私が、50年間にわたる経営側の人事・労務問題の専門弁護士としての経験もふまえ、感じ・考えたことの一部です。ブログ読者の皆さまに、リーダーのあり方について考えていただくための一助になれば幸いです。

 

 さて、リーダーの最大かつ重要な役割は、その組織に属する者たちにヴィジョン・方向性を指し示すことです。そして、リーダーには、方向性を指し示すだけではなく、組織に属する者たちが一丸となって、迅速に、かつ的確にこれを実現できるように統率することが求められます。リーダーは、問題が生じた場合は、すぐに的確な指示を部下に示さなくてはなりません。

 

 そのために、リーダーが日頃から実行すべきことのひとつは、事実関係の把握にむけた現場主義の実践です。私は、依頼を受けた時に、まずその企業へ訪問することを心掛けていました。その際には、受付で挨拶をし、従業員の皆さんが勤務している傍らを歩き、案内された応接室で深呼吸してから、現場の担当者の話を直接聞くようにしていました。そして、お聞きした話を書面化したうえで、担当者を含む関係者に何度も確認をして事実関係の把握につとめました。こうすることで、企業の持つ独特の雰囲気・空気を五感で感じて、生の声に接してはじめて問題の真の全体像を見ることができるのです。現場の様子を私自身がよく体感したうえで、依頼者に対して、「気がかりなことは何ですか。心配なことは何ですか」と尋ねれば、依頼者も率直に不安材料を吐露できます。これが人の心というものだと思います。

 

 ホンダの創業者本田宗一郎氏が「現場」「現物」「現実」の重要性を提唱した言葉は、「三現主義」として人口に膾炙していますが、改めて申すまでもなく、「三現主義」は、製造業に限らずどのような分野についても念頭に置かなければならないキーワードです。ちなみに、「三現主義」の「現場」「現物」「現実」に「現状」「現金」を加えて、ビジネスで重要な「五つの現」と説いている経営コンサルタントが私の知り合いにいます。ことほどさように、物事の本質を理解するうえで「現場」は重要なものです。

 

 上に立つ人のなかには、決裁する書類の数に追われていることを理由に、現場に赴かず、自分の執務室にこもって仕事を進めてしまいがちな人もいるかもしれません。また、部下が提出した報告書に目を通して事実関係を把握したつもりになっている人もいるかもしれません。リーダーが現場をよく知らなければ、部下は自分に都合のいい報告をするようになり、そのためにリーダーの理解は現場から遠くなり、判断は歪んでしまいます。リーダーが問題解決のための的確・明瞭なヴィジョンを部下に指し示すためには、リーダー自身がしっかりと現場を理解していることが必要なのです。

 

(リライト 加藤・宮本)

「リーダーについて」その4


20121102.JPG

2012年10月31日(水)朝7:46
東京都千代田区三番町にてペンタスを撮影
花言葉:希望は実現する

 

10月5日(金)付記事より、「リーダーについて」をテーマに連載を開始しております。本連載は、私が、50年間にわたる経営側の人事・労務問題の専門弁護士としての経験もふまえ、感じ・考えたことの一部です。ブログ読者の皆さまに、リーダーのあり方について考えていただくための一助になれば幸いです。

 

 リーダー、上司に要求される役割は多様ですが、そのひとつとして、部下の指導・教育があるということは、10月12日(金)付のブログでお話ししました。人の指導・教育は非常に難しいものですが、中国最古の歴史書『書経』に「教うるは学ぶの半ばなり」という言葉があるように、人に教えることは自分にとっても非常に勉強になります。教える立場にある者は、どのような質問にも対応できるように、事前に十分に資料を調べて勉強を重ねなければなりませんし、また、教えることによって自分の未熟さや不勉強な点を改めて知るという側面があります。この言葉は、リーダーに必要な心構えを端的に表わしており、上司たる者が常日頃から自らに言って聞かせるべき言葉であると思います。

 

 人は、深い自省によって欠点を自覚します。部下が仕事の失敗をしたときに、全てが部下の過失であると責めるのではなく、まずは、上司たる自分の指導・教育が十分であったか省みる努力が必要です。自分に不足していた点があれば、その反省を次回に活かすことで、進歩し、成長します。こうして上司が進歩することは、上司を間近で見ながら自然と教育を受けている部下の成長をも促すでしょう。

 

 また、リーダーや上司は、自分がよい結果を出したときには、その結果を出すためにサポートをしてくれた部下や周りの人々への、感謝を忘れてはなりません。2012年のノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学iPS細胞研究所所長 山中伸弥教授は、受賞が決まった日の記者会見で、「一言で表現すると、感謝という言葉しかありません」と、研究費等の資金面で支援した国や大学、研究を支えてくれた人々に、まず感謝の意を述べました。あわせて、研究の苦労をともにしてきた一番弟子にあたる高橋和利さん(同研究所講師)の名前を挙げ、その労をねぎらいました。高橋さんには、彼が中心となって山中教授の研究を支えた点などが評価されて、「ニューヨーク幹細胞基金・ロバートソン賞」が贈られたという報道がありましたが(日本人として初めての受賞)、この栄誉は、あるいは、部下の功績をフェアに賞揚する山中教授の姿勢が反映されたものかもしれません。人は皆、自負心・自尊心を持つ存在ですので、よい結果を出せば出すほど自惚れや慢心を抱いてしまう人も少なくありませんが、これは厳に慎まなくてはなりません。

 

 部下の失敗に対しては自らの指導・教育を素直に反省し、かたや、自分の成果に対しては功名心にとらわれず周りに感謝をするというリーダーの姿勢が、組織内に人間的な温かみをもたらします。このようにして、仕事を通して育まれた円滑な人間関係・信頼関係こそが、組織の発展の基盤になるのです。

(リライト 加藤・宮本)

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