2012年11月25日(日)朝9:35
埼玉県行田市丸墓山古墳にて洋ギクを撮影
花言葉:「高貴、高潔」
10月5日(金)付記事より、「リーダーについて」をテーマに連載を開始しております。本連載は、私が、50年間にわたる経営側の人事・労務問題の専門弁護士としての経験もふまえ、感じ・考えたことの一部です。ブログ読者の皆さまに、リーダーのあり方について考えていただくための一助になれば幸いです。
さて、ビジネスシーンで、メールや、クラウドでの決裁システム等ITを駆使してより効率的に業務を推進する姿勢は、経営のスピードが急加速しているいまの時代において、あたり前に求められています。
しかし、2月10日(金)付「縁(その1)」でも触れましたが、IT時代においては、アナログなものの価値が逆に高まるという側面もあります。手書きの手紙やはがきのやりとりが、ひとつの例でしょう。手書きという「ひと手間」をかけてもらえたことへの嬉しさや、文字から感じるあたたかみは、メール等のITツールにはないアナログのよさです。
また、IT時代において、日々決裁や指示出しに追われるリーダーは、指導や指揮命令をすべてメールや電話で済ませてしまうことも多く、肉声を聞く機会が少なくなっていると思います。肉声とは、「マイクロフォンなどの機械を通さない、人間の口から出る生(なま)の音声」(広辞苑)のことです。
リーダーには、組織に属する者の士気を高めるという任務があります。しかし、熱意や情熱などの感情は、肉声でないとなかなか伝わりにくいものです。肉声は、人の感情、感性の部分を、デジタルよりも巧みに伝えて相手の心に直接訴えかける力を持っていますから、リーダーはこの点をよく心得て、肉声でのコミュニケーションを図る機会を意識して設ける工夫が必要です。
工夫の一つに、「膝詰め」があります。膝詰めとは、一対一で直に面談することです。私自身も、事務所の弁護士の指導において一番心掛けていたのは、短時間でも時間を作り、直接、膝詰めによる打ち合わせや指示をすることでした。対面して話せば、相手の顔色の変化にも気づきやすいですし、声色もより鮮明に伝わります。膝詰めの場の雰囲気・空気を五感で感じながら、肉声でやりとりすることで湧き出るアイディアや、気づきもあるでしょう。これこそが、アナログなコミュニケーションの強みです。
現代における必須の能力としてのITを使ったネットワークコミュニケーション力と、手書き文字や声掛けで相手の五感、心に直接訴えかけるような昔ながらのコミュニケーション力を兼ね備え、この2つを臨機応変に適切に使いこなす能力が、リーダーに求められています。うわべだけの言辞では、人の気持ちは決して動きません。結局のところ、リーダーには人間性如何が問われることになるのです。
(リライト 加藤・宮本)