「リーダーについて」その11


20130110.JPG2013年1月9日(水)17:32
東京都港区虎ノ門ホテルオークラ東京にて撮影

 

新年おめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。

 

 10月5日(金)付記事より、「リーダーについて」をテーマに連載を開始しております。本連載は、私が、50年間にわたる経営側の人事・労務問題の専門弁護士としての経験もふまえ、感じ・考えたことの一部です。ブログ読者の皆さまに、リーダーのあり方について考えていただくための一助になれば幸いです。

 

 さて、リーダーの最大かつ重要な役割は、これまでも繰り返し述べてきたとおり、その組織に属する者たちにヴィジョン・方向性を指し示すことです。リーダーは、組織全体が一丸となって、迅速に、かつ的確にこれを実現できるように指示しなければなりません。それゆえ、沈思黙考だけではリーダーは務まらず、反対意見を表明する者も含めて関係者全体を粘り強く説得し、物事を推進する力が求められます。

 

 異なる価値観をもつ多様な人材が集まる組織においては、リーダーに抵抗する者も少なからず現れるのが現実です。組織のさまざまな対立や軋轢を超えて合意形成にこぎ着けるためには、リーダーには、たとえどんなに小さな合意点であってもそれを見つけて絶えず拡大する努力が求められます。リーダーは、仕事が進まないことを反対勢力のせいにしてはならないのです。これらの者を諦めずに粘り強く説得することがリーダーの務めですから、この点は常に自戒しなければなりません。

 

 相手を説得するためには、その言わんとするところにも一定の共感を示しながら、自らの主張を堂々と粘り強く伝え、良い関係を構築するコミュニケーション能力が必要です。つまり、「人を見て法を説け」ということです。また、説得にあたっては、ときに数字の裏づけも含めて十分論理的でなければなりませんが、もちろん論理だけでは説得力は生まれません。論理によって納得感をもたらしたうえで、情や感性、ムードなどで相手の腑に落ちる「解」を与える能力がリーダーに求められます。

 

 この点、私が実務の経験の中から編み出した重要な方途の一つに「大義名分書」(物事の大義名分を書面化したもの)があります。大義名分書において、相手に、いま取り組んでいる仕事は、本人のためになることはもとより、それだけでなく、同僚のため、組織全体のため、ひいては、世のため人のため、社会全体に貢献するものであるという将来に向けての意義、大義名分を明らかにするのです。さらには、「想定状況」「想定問答」「スケジューリング」等々の資料も精緻に作成することも肝要です。こうした努力によってはじめて説得力が生じ、反対勢力との軋轢やしがらみのなかでも組織をまとめあげるリーダーシップを発揮し、ミッションを成し遂げることができます。

 

 このように、リーダーは、組織の多様な人材の主義・主張、傾向、性向を的確に把握してそれを活かし、組織の目的を実現するという困難な課題に挑戦し続けなければならないのです。

 

(リライト 加藤・宮本)

 

※ 「リーダーについて」をテーマに、10月5日(金)付記事より計11回連載をしてまいりましたが、本記事をもっていったん終了いたします。

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