「花」第5回:季節を彩る花々(3)


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2013年3月3日(日)11:00
神奈川県川崎市麻生区 ホテルモリノ新百合丘にて凛凛花を撮影
 ※ 凛凛花はアネモネの新品種
   アネモネの花言葉:はかない恋、清純無垢、可能性

 

 

 2月1日(金)付記事より、私が撮影してきた花の写真とともに、花について私が思い・感じ・考えてきたさまざまなことをつづっています。今回は、前回前々回に引き続き、私の好きな花の香りと、花についての和歌、俳句も少し織り交ぜながら、秋、冬の花についてお話します。

 

  秋は、冴えわたる空と月、そして趣のある美しい草花の多い季節であると思います。たとえば、10月頃に開花する金木犀や銀木犀は、秋の到来を感じさせる甘く強い華やかな香りを放ちます(金木犀の方が、その香りがより強いそうです)。香りも印象的ですが、オレンジの金木犀、白の銀木犀の小さな花びらが、はらりはらりと散り、地面を鮮やかに染める様は正に秋の風物詩といえるでしょう。また、ドライブの道すがら、漢字で「秋桜」と書くコスモスの花が、秋風にたおやかに靡く風景をよく目にしました。コスモスは、花びらが星々のように美しく整然と並ぶ様子から、秩序、宇宙と同じ名前の由来を持つのだそうです(日本経済新聞2012年11月10日夕刊「あすへの話題」)。

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2011年10月10日(月)千葉県若葉区小間子町 風戸農園付近にて撮影
※ 風戸農園については、2011年10月18日(火)付記事【交友録その14】もご覧ください。

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2012年10月20日(土)東京都渋谷区代々木公園にてコスモスを撮影

 

  冬の寒々しい冬枯れの印象から花をイメージする方は少ないかもしれませんが、冬に美しい花をつける花もあります。晩秋から冬にかけての寒い時期に、華やかな色の花を咲かせる山茶花は、そのとりどりの色だけでなく香りも魅力的です。山茶花の花は、赤や、白、ピンクなど様々ですが、香りはそれぞれ違い、白はふんわりと淡く優しい香りで、赤やピンクの山茶花は白のものに比べるとやや濃い、ジャスミンのような甘い香りがするそうです。なお、山茶花は、日本原産の樹木であり、英名も「Sasanqua」で、「サザンカ」と読んで通じるのだそうです。山茶花の花びらが、艶のあるその濃い緑の葉の上に、1枚、また1枚と散るさまは、冬枯れのもの淋しい季節にあっては数少ない貴重な彩飾のひとつといえるでしょう。

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 2013年1月27日(日)東京都八王子市南浅川町うかい竹亭にて山茶花を撮影

 

 また、山茶花とよく似た花木に椿(中国で山茶花と書くと、椿を指すそうです)がありますが、椿の花は山茶花とは異なり、散るときには花首(はなくび)ごと落ち、そのさまは「落ち椿」と表現されます。そして、介錯を連想させることから、古来、武家社会では忌み嫌われ、武家屋敷には椿の木を植えられることは稀であったそうです。現在でも、武家の家系の家では、庭に椿の木を植えない家庭は多くあるそうです。しかし、茶の湯では、椿の花は冬の茶花の代表格でもあります。武士(もののふ)の茶人は、冬の茶事の折には床の花入れにどのような花を生けていたのだろうか、と思うことがあります。

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2012年2月24日(金)東京都千代田区一番町付近にて椿を撮影

 

 そして時はめぐり、また花の咲きほころぶ春が訪れます。春の花については先週、先々週のブログに書きましたが、早春(2月頃)、まだ寒い時期に満開を迎える椿寒桜(つばきかんざくら)は、私の好きな曲のひとつである1949年(昭和24年)に発売された藤山一郎さんと奈良光枝さんのデュエット曲『青い山脈』に登場します。

 

 戦後間もない昭和22年に発表された石坂洋次郎氏の青春小説を原作とする映画の主題歌であったこの曲は、「若く明るい歌声に 雪崩は消える 花も咲く 青い山脈 雪割桜(※椿寒桜の別名)」というフレーズにあるとおり、まだ極寒の2月頃、ちらちらと、ひとつ、ふたつとつぼみがほころびはじめる椿寒桜を、冬の(戦争の)時代の終わりと、戦後の希望に満ちた時代への幕開けを告げる花として歌われています。

 

 3回にわたって、季節ごとに咲く種々の花々について書くにあたり、いろいろと調べてみると、その花々の個性にあらためて魅了されます。花は、うつりゆく季節に寄り添うように、咲き、何気なくとも愛おしい日々の背景に、そっと彩りを添えてくれます。

 

 そして、花は、季節のうつりゆくさまとともに、芽吹き、成長し、開花し、そして満開に咲き誇り、くずれおちるように散り、朽ちていきます。花だけでなく、植物、動物、わたしたち人間、地球、宇宙に生き死ぬすべてのいのちも、いずれも生まれては消えていく、はかない存在です。

 

 「巡りくる 去年〔こぞ〕に変はらぬ 花の季節 うつろひゆくは わがこころなり」
(江口君子「追憶」より:『足利文林』第76号)

 

 春夏秋冬、朝な夕なの花の姿のなかに、時のうつろいをふと感じるとき、私は些かの感傷をもって、これまでの人生を思わずにいられません。

 

~ 今回の記事執筆にあたり、川口彩子様、石草流生け花 家元後継 奥平清祥様、冷泉流歌壇玉緒会 伊藤幸子様、草月流師範 栗生世津子様、ランドブリーズ 渡辺憲司様にいろいろとご教授をいただきました。ありがとうございました。

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