「花」第6回:さくら


 

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2013年3月13日(水)14:47
静岡県伊東市岡広町付近にてアザレアを撮影
花言葉:節制

 

 

2月1日(金)付記事から、私が撮影してきた花の写真とともに、花について私が思い・感じ・考えてきたさまざまなことをつづっています。もうすぐ花見のシーズンが到来しますが、私も、ひと雨ごとに近づく春を感じながら、毎朝の散歩でカメラを手に、満開の桜を、いまかいまかと待ち望んでいます。

 

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左:A.S技術士事務所 所長 角耀(すみ・あきら)様撮影の桜:2012年4月1日(日)新宿御苑にて(角耀様は、全日本写真連盟の監事を務められており、当事務所の行事の折々に、写真を撮影してくださっています。)

 

日本で「花」といえば桜を意味するほど、桜は日本を代表する花として親しまれてきました。桜の開花時期には、桜の木々のもとに人々が花見に集まりますし、この文化は、古くから山野に桜の花を訪ね求めて楽しむことを桜狩りと呼びます。単に「花」というだけで、平安時代後期以降の和歌では桜花を指すそうです。また、和歌だけでなく、日本画や陶芸等の美術作品にも、桜が多く描かれてきました(花と美術については、今後のブログで述べたいと思います)。

 

 

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これは、先日孫娘の誕生に際してプレゼントした、江戸時代末期から明治初期にかけて活躍した浮世絵師、二代目歌川国貞(1823年~1880年)の作品です。木々の緑と桜の紅、水辺の爽やかなせせらぎ、春の宵を楽しむ子どもたちの歓びの声が伝わってくるように感じます。

 

さて、アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C.のポトマック河畔の桜並木の桜は、明治の終わりごろに、大統領ウィリアム・タフト夫人の希望により、1912年に尾崎行雄東京市長が贈呈したもので、送られた桜の苗木は、東京の荒川堤の五色桜を穂木にしたものだそうです。いまでも、毎年のごとく、日本の新聞やテレビで報道されますが、日米友好のシンボルとして、開花時期の頃には例年「ナショナル・チェリー・ブロッサム・フェスティバル(桜祭り)」が開催され、「桜の女王」をはじめ、小さな子供から大人まで参加する華やかでいかにもアメリカらしい楽しいパレードなどが繰り広げられ、多くの人々に親しまれているそうです。

 

また、中国の武漢大学桜花園の桜は、1938年に武漢を攻略した日本軍が慰問のために負傷者収容施設の側に植えたものだと伝えられているそうですが、1972年の日中国交正常化によせて、田中角栄首相が周恩来総理に贈った150本の桜のうちの50本が、同地に植えられているそうです。武漢大学桜花園の桜は、日本軍侵略の象徴でもあり、同時に、日中友好の象徴でもあるのです。戦前から植えられていた桜とあわせると、1000本余の桜が満開になるシーズンには、多くの観光客が訪れるとのことです。なお、1997年には、青森にあるみちのく銀行が武漢事務所を開設したのちに、武漢市東湖風景区管理局と共同で10ヘクタールに5000本もの桜を植栽したと聞きます。

 

このように、日本の象徴である桜は、各国との架け橋としての役割を果たすかのように、春になると各地で春空を美しく染めています。

 

02.JPGのサムネール画像

(2011年4月4日(月) 朝8:16 東京都千代田区国立劇場にて撮影)

 

さて、「三日見ぬ間の桜」という言葉どおり、桜はあっという間に散ってしまいます。第二次世界大戦以前の日本の軍歌に、「歩兵の本領」という歩兵を謳った歌で「万朶〔ばんだ。多くの花、という意味〕の桜か襟の色 花は吉野にあらし吹く 大和男子と生まれては 散兵戔の花と散れ」(歌い手によっては、吉野を「隅田」と歌う場合もあります)という歌詞があります。不利な戦況になったとしても、最後は歩兵の突撃によって敵陣を占領し勝利を挙げろ、いう意味だそうです。まさに「死に花を咲かせる(死ぬ間際にはなばなしいことがあって、名誉を死後に残す)」の世界ですが、桜と同じようにいのちをはかなく戦場で散らした当時の若い兵士たちを思うと心が痛みます。

 

また、桜の花が散りゆくさまについては、「いつのまに 散りはてぬらむ 桜花 面影にのみ 色を見せつつ(凡河内躬恒・後撰集)」等、数多くの和歌に詠まれてきました。一夜の雨、一陣の風に散ってしまう桜は、人生のはかなさを痛感させるような、胸打たれる思いがしますから、先人たちは桜の姿を自分自身に照らし合わせ、和歌を詠んだのでしょう。

 

桜のほかにも、たとえば、ジャスミンの香りをやわらかく、清々しくした印象の強い香りがする月下美人の花は、白い大輪で、夜に咲き始め翌朝までの一晩でしぼみ、散ってしまうことで有名です。また、月見草は、その名のとおり、月が現れる夕方から朝にかけて咲き、朝になるとしぼんでしまいます。このほかにも、ドラゴンフルーツの白い花も一日花ですし、赤やピンク、黄色等の派手な色合いのアメリカ合衆国ハワイ州の州花でもあるハイビスカスは、夜の9時ごろに開花し、夕方にはしぼんでしまいます。

 

※ 一般に月見草と呼ばれる花は、「富士には月見草がよく似合う」と太宰治が『富嶽百景』で紹介したオオマツヨイグサ(大待宵草)を指すそうです。「月見草」という名前がつく「ヒルザキツキミソウ」は、白からピンクに変わり、日中開花する園芸種であるそうです。

※ ハイビスカスは、昨今の品種改良で、数日間開花し続ける品種も生まれたそうです。

次回のブログでは、花のはかない一生について、お話ししたいと思います。

 

~ 今回の記事執筆にあたり、ランドブリーズ 渡辺憲司様、株式会社浦上蒼穹堂 代表取締役 浦上満様、フラワーショップ華曜日 荒川智彦様、積水ハウス株式会社 常任監査役 久保田芳郎様にいろいろとご教授をいただきました。ありがとうございました。

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