「花」第7回:花の一生


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2013年3月28日(木)7:15
目黒区中目黒 中目黒公園にて源平花桃を撮影
花言葉:恋のとりこ、よい気立て


 

2月1日(金)付記事から、私が撮影してきた花の写真とともに、花について私が思い・感じ・考えてきたさまざまなことをつづっています。

 

 花は、こぼれおちそうな時間(とき)の経過のなかの、その一瞬一瞬で違う表情をみせ、その姿ははかなくも美しいものです。前回3月15日(金)付記事「さくら」でお話ししたとおり、人は、満開の花だけを賛美するのではなく、散りゆく花を愛おしく想い、いのちの尊さを感じます。

 

 そして、つぼみが徐々にほころぶ姿に自分自身の青年期の、満開の花の盛りをみて壮年期の、花が凋落を迎え散りゆく姿に老年期の姿を重ねて、自分自身の人生を振り返るのだと思います。西行(俗名・佐藤義清。1118年~1190年)が、常日頃から辞世句として詠っていた「ねかはくは 花のしたにて 春死なむ そのきさらきの 望月の頃」(山家集)がありますが(「きさらき(如月)の 望月の頃」とは、釈迦入滅の時節である陰暦2月15日、ちょうど満月の頃を意味し、新暦では3月下旬~4月上旬頃であり、ちょうど桜が満開の時期です)、西行は、桜が満開に咲く美しい情景を思い描きながら、そのなかで、みずからの残された人生、やがてくる死をみつめていたのではないでしょうか。なお、西行は1190年、陰暦の2月16日に入寂しましたので、この辞世句の彼の願望は現実のものとなりました。

 

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2013年3月9日(土)東京都港区麻布十番二丁目付近にて撮影

 

 「散る桜 残る桜も 散る桜」と誰かが詠いましたが、私も76歳を間もなく迎え、この歌が身に沁みるような思いがいたします。花曇りの空のもと、またたくまに花風に流されゆく零れ桜の姿に、年老いたわが身が抱える数々の病の疼きも相俟って、私が辿りゆく残された人生の行方を重ねてしまいます。しかし、私が散るのはいつになるかはわかりませんが、残された人生の中で仕事を続け、いささかなりとも社会に貢献し、散り際の花を、そっともう一花咲かせられればと願います。

 

 そして、散る花もあれば、咲く花もあります(これは、NHKBSプレミアムのBS時代劇「薄桜記」〔2012年7月13日~9月21日放映〕の台詞の一つでもあります)。桜が散ってしまったあとには、たとえば、ハナミズキが白やピンク、赤の花を満開に咲かせてくれます。

 

 ハナミズキといえば、私が、イセ文化基金理事長、イセ株式会社、イセアメリカ株式会社等々のイセグループ各社の会長を務められている伊勢彦信様とともに、ニューヨークで1989年4月に日米美術協会を立ち上げる際に、ご協力いただいたご縁でお知り合いになった、元米国三井リーシング社長の青木博様のニューヨークのハーツデールのOld Farm Lane(古い農家通り)に面したご自宅のお庭で、同年5月に見たハナミズキがとても美しかったのを憶えています。

 

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青木博様のご自宅のお庭のハナミズキ
二階の寝室の窓ごしから美しい花を見せてくれるとのことです

 

今回の記事を書くにあたり、青木様のご自宅のお庭に咲いていた美しいハナミズキの凛とした佇まいの光景とともに、青木様との遠い昔の思い出がふと甦ってまいりました。そこで、ご連絡をとりましたところ、3月2日(土)付で上記のハナミズキの写真を頂戴し、久しぶりに心の交流ができたことを大変嬉しく感じました。青木様は、現在、Japanese American Social Service Inc.という東部アメリカにすむ日本人援護団体のお仕事に従事されているとのことです。御令室様 壽子様は、2009年10月に山梨県の平山郁夫シルクロード美術館主催の「第1回絵手紙コンテスト」で、特別賞を受賞されたそうです。ご夫婦は、80歳をこえられたとのことですが、これからもご一緒にお健やかに、ますます充実した素晴らしい日々をお過ごしになられますようお祈りしております。また、壽子様の作品を一枚いただきたい旨と、次回、博様が訪日される際には是非ともお会いしたい旨、ご連絡いたしました。

 

 日米美術協会を立ち上げる際には、在ニューヨーク総領事大使閣下 英正道様にもご協力いただきました。英様は、当時、私と伊勢様が、日米美術協会には公的なご協力もいただかなくてはと思い、総領事館をアポイントもなしにお訪ねした際、応接室に通していただき、気さくに引き受けてくださいました。英様、青木様ご夫妻には、日米美術協会の発会式にもご出席いただき、司会は、当時JAL International Service Inc.の取締役会長でいらした藤松忠夫様にお願いし、英正道様には、主賓としてスピーチをしていただきました。当時親しくさせていただいたみなさまとは、ずいぶんと長い間ご無沙汰してしまっていますが、何かの機会に、またお会いしたいと願っております。

 

 なお、藤松様には、藤松様が「終の棲家にしたい」とおっしゃるほどのアリゾナ州のツーソンをご紹介いただき、「ローズ ベンタナ・キャニオンリゾート」というホテルに何度か(たしか2回だったと思います)宿泊したことがあります。同ホテルは、広いゴルフ場に面していて、大きなサボテンがたくさんあったのを憶えています。

 

 さて、青木様によると、ハナミズキはアメリカではドッグウッドと呼ばれ、ヴァージニア州の州花に指定されているそうです。私が青木様のご自宅を訪れた1989年の頃に比べて、お庭のハナミズキの勢いはなくなり、2本のうちの1本は大雪にやられ、昨2012年に百日紅に植え替えたそうです。しかし、最近、お庭の裏に流れる小川のなかに、小さなハナミズキの木が新たに育ち始めたそうで、これを水のなかからお庭に植え替えたとのことです。

 

 私の人生の盛りに出会ったあのハナミズキが残した新たないのちを、私が見ることは叶わないでしょうが、瞬く間に過ぎ去った私の人生など関係なく、ハナミズキは、いつの日か立派に成長し、見事な花を咲かせてくれるでしょう。

 

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2012年4月26日(木)東京都千代田区ニューオータニ前でハナミズキを撮影

 

 花が枯れたあとには、果実ができ、種ができます。その種がまた芽吹き、成長し、美しい花を咲かせてくれます。花の詩情豊かな一生が見せてくれる時々の表情に、美しいと感嘆するとき、わたしたちの誕生から死までのはかない一生のなかの、数々の幸せだった日々の情景や、悲しみの瞬間が、ふと呼び起こされるような思いがします。わたしたちは、花のように、つかの間の生を過ごし、たちまちに散ってしまいますが、四季はめぐり、わたしたちの子、孫たちによるあたらしい暦がはじまり、瑞々しい花を咲かせてくれるのでしょう。

 

~ 今回の記事執筆にあたり、青木博様、壽子様ご夫妻にいろいろとご教授をいただきました。ありがとうございました。

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