2014年4月11日のアーカイブ

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弁護士にとって大切なこと、弁護士本人の「人間性」、「丁寧さ」、「明快」について、2回に分けて説明していく。

 

[1]人間性

誰にでも長所・短所があるが、営業ができる弁護士になるためには、長所のうちの少なくとも3つを探し出して、それらを伸ばさなければならない。ところが、探し出した長所があまりクライアントに求められていないものであった場合は、どうしたらよいだろうか。

 

私は、クライアントから求められ共感を得ることのできる人間性を身につけるためには、自分をさらけ出して、より本音で語り合い、談笑することが必要であると考える。要するに、人間味という醍醐味を互いに味わうこと、味わわせるということである。そして、本音で語り、談笑するためには、クライアントである企業・本人の業績、経歴、当面の関心事、趣味、嗜好等について十分な予習が必要である。そのようにして人間としての深みを醸成することが、営業のできる弁護士として成長していくコツであろう。人格・識見・手腕・力量に加えて、多芸・多趣味であることが必要になるのである。

 

その代表例が、当事務所の客員弁護士をお務めくださった吉村德則先生であった(2012年3月7日ご逝去。享年74歳。1964年に検察官に任官され、2000年に名古屋高等検察庁検事長で退官。当事務所の客員弁護士として2004年3月~2012年2月までご在籍)。

吉村先生は、専門外のありとあらゆる分野にも精通された、まさに博覧強記の方であった。話題が豊富で、とにかくお話が楽しかった。先生は、法律家の自己研鑽のひとつとして、世の中の動きや考え方などあらゆることを日頃からデータとして頭に取り込んでおくことの重要性を指摘されていたので、法律とは一見無関係の事柄でも、形を変えて検事の仕事・弁護士の仕事に役立てていたのであろうし、また、万般にわたる幅広い知識と体験が、仕事にも一種の深みを与えていたと思う。

硬軟取り混ぜて、社会のいろいろな階層の人びとに通じる知識を血肉にされていた吉村先生の域にまで達することは難しいが、法律家は社会の動向に常に鋭敏なアンテナを張り巡らせるべきである、という先生の考え方を良きお手本とし、その志を受け継いでもらいたい。(2012年新緑号(No.94)『経営法務情報 Management Law Letter』掲載 巻頭言<博覧強記の人 逝く~吉村德則先生のご逝去を慎んで~>/2012年5月7日発行(43号)『髙井・岡芹法律事務所 市ヶ谷だより』掲載 巻頭言 千種秀夫先生<客員弁護士 吉村德則先生 追悼文>参照)

 

[2]丁寧さ

宇江佐真理の小説に『恋いちもんめ』という作品がある。その中に、「丁寧にちくちく縫うんだよ。いい加減にするといい加減なものになっちまう」という言葉があるが、弁護士もまさにその通りである。依頼された事件に対していい加減に対処したら、成果もいい加減になってしまう。だから、どんな手続きでも用意万端であるよう充分に努めて、丁寧に1つ1つ仕事をしていかないといけないことは言うまでもない。

それだけではなく、裁縫は着物を作ることでもあるが、着る人の立場に立って、そのサイズに合わせて裁断するという想像力も必要だ。想像力を持って地道に仕事をすることは弁護士も変わりはない。

 

併せて、物事に的確な判断を下すためには、そのものの細部にこだわっていてはいけない。物事を全体的にとらえ、様々な視点から眺めて検討することが必要となる。「大局観」という言葉がある。事典によると、「碁で盤面を全体から見たときの形成」と説明されているように、1点だけを見ていては、別の角度から切り崩されていたとしてもそれに気づかず、気づいた時には手の打ちようがない、ということにもなりかねないのである。

 

これは、弁護士の仕事においては、常に心がけておかなければならないことである。相手が考えるであろうことを全て予測したうえで対策を考えなければ、問題の的確な解決にはつながらないのである。その意味で、相手が考えるであろうこと、起こり得る事態などを全て予測して手を打っていくという丁寧さが求められる。いい加減な仕事では、クライアントを納得させることなど到底できないのである。

 

一方で、弁護士は、常に時間との勝負であることも忘れてはならない。時間との勝負があるからこそ、全てに対して丁寧に手を打っていくことは不可能である。そこで、大切になることが、「いい加減」の反対の意味である。「いい加減」の中でも、「過不足のない頃合い」という意味が重要であり、事態を網羅的に予測し、かつ、その中で必要なもと不要なものを振り分け、優先順位をつけ、必須の事柄から手を打っていかなければならない。

この、手を打つべきこと、優先順位を間違えると、いくら手を尽くしても、事態の収拾に全く役に立たないことすらある。このことを、胆に銘じておかなければならない。

以上

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