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2014年11月16日(日)東京都港区芝公園にて千日紅を撮影
花言葉:「色あせぬ愛」

 

※「労働新聞」2011年3月28日 第2818号「髙井伸夫弁護士の<人事労務の散歩道>より転載

 

「ボスの条件」(1)「補瀉(ほしゃ)の法則」―企業の有限性

 

宇宙物理学では、宇宙の終焉をビッグクランチ(big crunch)と言うようだが、生きとし生けるものが、誕生して成長・成熟して枯れて黄昏れて、そして死ぬという経過をたどるのと同じように、宇宙にも終わりがあることは、新約聖書「ヨハネ黙示録」のハルマゲドン(世界の破滅・終末)のごとく、直感的に理解できる。この直感を論証することが、宇宙物理学の使命であろう。人類はもちろん、宇宙の生命体には全て寿命があり、有限であるということを前提に存在する以上、宇宙もまた当然有限であろう。

 

寿命に抗おうとした秦の始皇帝(前259年~前210年)は、不老不死の妙薬を求めて蓬莱の国(日本)に徐福ら数百人(一説には3000人)を遣わしたというが、結局はその薬は発見されなかったというのも、人間そして宇宙は有限な存在であることを無視した企てであったと言うほかはない。

 

企業も人によって組織されるものゆえ、有限なる存在として「廃業」「倒産」を当然予測していなければならない。こうした厳しい現実を乗り越えて存在し続ける長寿企業・老舗は極めて稀であり、青雲の志(設立の趣意)を生かして社会に貢献し続ける非常に立派な企業として、賞賛される。生命力を維持し続けること自体、企業が社会に貢献する所以だからである。

 

「ボス」と呼ばれる者すべてが、とりわけ企業の有限性を強く意識して、活動し続けなければならない。その場しのぎの経営ではダメで、「企業は有限なる存在である」という厳しい前提のもと、社会という小宇宙に存在し続けるためには、自らの生命のあり様(よう)をどうすべきか絶えず考えることが、肝要・喫緊の課題なのである。我われ弁護士の世界でも、絶えずイノベーションを図らなければならないし、それがひいてはクライアントの生命力を保持することにつながるのであるが、立法についても絶えざる変革を迅速・果敢・的確に行う必要がある。

 

では、企業が生命力を維持し、社会性をもって小宇宙に生き続けるためには、何が必要か。それは、企業創立の使命を生かすべく絶えずイノベーションを続け、エネルギーを補完することである。時代の流れとニーズに即した事業展開ができて初めて、企業の存続は可能になる。しかし、ただ単に新規なものを追い求めるだけでは企業の寿命は保てないことを、私は強く指摘したい。「補う」ばかりではなく、時代に合わなくなったものを「捨てる」ことを断行しなければならない。

 

東洋医学ひいては東洋哲学の基礎には、生命体を維持するに「補瀉(ほしゃ)の法則」という考え方がある。これは、身体に不足しているものを補い、余剰なものを的確に排出する流れができていないと、身体に不調をきたし、生命力(自己成長力・自己治癒能力)を喪失するという条理であり、要は、人間の心身の健康は、「入り」と「出」のバランスのうえにあるということである。この点、西洋医学は、生命体の根源である自己成長力・自己治癒能力を軽視しがちであるから、およそ“古典医学”と言われてもやむを得ないであろう。

 

「補瀉の法則」は、企業論・組織論・指導者論にもあてはまる。現代の経営の神様とも言えるドラッカーの経営・経営者論も、同じことを論じているに過ぎないのである。

 

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