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2014年12月7日(日)東京都大田区西馬込にてシコンノボタンを撮影
花言葉:「平静」「謙虚な輝き」

 

 

※「労働新聞」2011年4月25日 第2822号「髙井伸夫弁護士の<人事労務の散歩道>」より転載

 

「ボスの条件」(2)「補瀉(ほしゃ)の法則」―捨てる勇気

 

 

『日経ビジネス』誌で「企業の寿命30年」説が紹介されたのは、1983年のこと。それから30年近くが経ち、状況は一変した。企業が継続することは非常に難しい。

 

長寿企業が世間でなぜあがめられるかというと、どこの国・地方でも一番の長老が皆の尊敬を集めるのと同じで、長寿であるというだけで、半ば不可能を十分に現実のものとしているからである。これは「長寿がいかに難しいか」ということを意味する。企業も長い年月存在し続けるということ自体が非常に難しく珍しいことなのである。

 

私がよく知る(株)セラリカNODAは、創業180年を迎えようとする正真正銘の長寿企業である。同社は現在の福岡県八女市で1832年に産声を上げ、終始一貫して、植物・昆虫等から採取される生物系のロウの研究・開発・生産に取り組んできている。時代の流れとともに、社名も変わり、会社も福岡から東京、そして神奈川へと移ったが、同社は、常に時代の変化に対応した新製品の開発により、新しい市場を創造し続けているのである。同社の製品は食品からハイテクまでさまざまな分野で応用されており、特に、「石油の世紀から生物産業の時代への転換」という明確なビジョンを打ち出しながらリーダーシップを発揮し続ける現在の野田泰三社長の功績によるところが大きい。野田社長は、時代の流れを的確によみ、企業のDNAを守りながら、捨てるべきもの、取り入れるべきものを見極める力が卓越している。

 

既に本紙平成23年3月28日号本欄でも紹介したが、東洋医学の「補瀉(ほしゃ)の法則」は、身体に不足なものを補うと同時に余剰なものを排出する流れがあってはじめて人間の健康は維持できるという考え方である。この法則の真骨頂は、取り入れることと捨て去ることのバランスを重視している点である。

 

真のイノベーションは、新しいものを取り入れる(補う)と同時に、捨てることをしなければ決して達成できない。また、これと同様、企業や組織も、理念や事業内容、人材、設備等の新陳代謝・入替えがうまくいかないと、活性化されずに沈滞する。そうなると、陳腐化はとどめようがない。

 

ボスも管理職も、彼ら自身が「補瀉の法則」をよく身に付け、よく勉強して、自分を鍛えて、新しく取り込むべきもの、捨て去るべきものを意識して、果敢に時代の流れに即したバランスを保ち、生命力・エネルギーを発揮し続けなければ、よい指導、よい仕事、そしてよい社会的貢献もできないことになる。そして、ボスや管理職者についても、能力の劣る者は辞めさせて人の流れを良くすることが、企業・組織を活性化させる重要な「補瀉」である。

 

このように、企業の成長には、取り入れることばかりでなく、捨て去ることが重要であることに、「ボス」は気づかなければならない。いまの時代は、あらゆる分野でスピードが要求され、新陳代謝も一日・一刻きざみでなされなければ、競争に打ち勝つ最適のバランスを保つことはできない。企業トップも、個々の管理職も、一般従業員も、このことをそれぞれの立場で強く自覚しなければならないのである。

 

あなたは「取り入れ、そして捨てる勇気」を持っているだろうか。自問自答してみよう。

 

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