第5回 A社自力再建の指針に関する助言


 

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2015年4月12日(日)7:30 東京都文京区根津神社にてツツジを撮影
花言葉:「節度、慎み」 

 

※ 3月6日(金)より、数回に分けて、私が過去に顧問弁護士を務めたある会社の経営危機打開のため、私が社長宛てに提出した再建建白書「A社自力再建の指針に関する助言」を、掲載しています。3月6日(金)付記事からお読み下さい。

 

 

(2)黒字化へ向けて一路邁進すべし

  1. 利益を着実に確保するためには、確固たる目標を設定しなければならない。その目標は、最終的には構成員一人一人に具体的に割り付けられなければならない。またその達成度をなるべく細分化して、定期的に頻繁に公開するように配慮しなければならない(EDPの利用)。もちろん当初から赤字予算の計画を立てる等は論外とすべきである。石に噛り付いてでも、ときには蛮勇をふるってでも、昭和●年度には少なくとも収支の均衡を回復することを大命題として貫徹しなければならない。

     

  2. そのための具体的施策を直ちに、全社組織をあげて取りまとめ、実施に移すことが必要である。

    「3年後には黒字にする」とか「各部門の意見や事情をよく聞いた上で」とかいった悠長で容易な“官僚的”姿勢では、管理職者、社員の意識改革は容易に果たされず、赤字体質から脱却しきることは到底不可能となろう。親方日の丸の公務員ですら、今日そのような対応では生きのびられなくなってきているのである。どだい今後3年間に世界経済、日本経済がどのような変化を示すかは誰も予測できないところであり、ましてや将来に何らの保障もないのに、3年後に黒字化を期待するなどということを述べることは、無責任という範囲を超えて不真面目な計画といわれてもしかたのないものである。

    昭和●年度には必ずA社を黒字にすること、少なくとも収支均衡に持ち込む(例え僅かではあれ黒字になる)計画を直ちに策定する必要がある。このため、全社をあげて役員会に直結する「再建策策定委員会」を組織せしめ、1カ月後の答申を厳命して作業にかからせる(人選を誤らぬこと)ことが必要である。

     

  3. A社は従来商売上の“人間(信頼)関係”で勝負せずに、とかく安売りで勝負してきていると言われている。安売りで勝負することを旨とするから、安かろう悪かろうの評に繋がることも、又、そういわれることも当り前として感じてしまう。それではいけない。今日からは人間信頼関係を基調とする商売の道を歩むとする思い入れが必要である。安かろう悪かろうは単に商品にとどまらずA社の企業それ自体、社風をおとしめることになる。

    信じて頼られる関係は、相手の身になって商売するということである。単に商売の面だけで相手の身になっていたのでは、本当の信頼関係は生まれてこない。相手の身になって考えること、すなわち、相手の悩みや欲求に応えること、相手の全人格に配慮する思いやりがあってこそ、真に持続的な営業基盤が確立されることを忘れてはならない。

    商売においては商品を売ることを通じてA社という会社の精神を売るという思い入れが大切なのである。勿論、商売であるから、短期的であれ、長期的であれ利のないものへの思い切りも大切とすべきである。

     

  4. A社は現在、そして将来に亘って売上増を図り、利益増を図らなければならない。そのためには地道な営業努力、すなわち社会的信用を一歩一歩築き直していく営業努力を着実に積み重ねていかなければならない。

     

  5. それには、全社員が自ら率先してこれに当つてこそ、社員の士気をよく鼓舞することになる。また、A社は様変わりをしたと代理店やユーザーを感動させることにもなる。役員が社員の勤務時間中にゴルフに行ったり、遊びの話などで悦に入ったり、新聞を漫然と読んでいたり、ロータリークラブなどに出向いてエリート意識をひけらかしたり(ロータリークラブそのものがどうこういう訳ではなく、本業を疎かにしてはならないという意味である)、あるいは昼日中からうたた寝などをしていて、どうして社員が業務に真剣に取り組むことができるであろうか。

    儲けるとは信ずる者をつくると書く。社員を信じさせることができずしてどうして顧客をつくり、商品を信用して頂くことができようか。役員たる者、今日只今からA社の営業日にはゴルフはしない、社員に弛んだ姿勢はみせないといった極めて当り前の事柄を実践し、日々営業に対して全力投球をしている姿勢を眼の当りに社員に示さなければならない。仮に営業日にゴルフをする必要があっても、その見返りは仕事において必ず実現しているという実績がある者については、社内からとかくの批判は発せられないものである。

     

  6. 全役員が営業に従事しなければならないということは、何より経営は「販売即経営」そのものであることを体感する必要があるからである。販売のないところに企業は成り立たないのである。売り上げがあがるとは、A社の製品が社会の求めるニーズに応えることができたという証である。売上げをあげるには、一体社会のニーズがどこにあるかをA社の全社員が知らなければならない。自ら営業に当たって、その労苦を味わってこそ社会的なニーズを体感することができる。その体感の上に明日を目指すA社を再構築するのである。方向違いな感覚で再建にとり組む愚を重ねてはならない。かくしてこそA社の健全化への道も誤りなく築かれていくのである。

    斯かる点から、全役員が営業に従事することは、単に社員の士気を鼓舞するだけにとどまらず、自らの経営能力をより高めることにも繋がるのである。

     

  7. 社長、会長は率先して全国の代理店・取引先、末端のユーザーを、くまなく、黒字が定着するまで訪問し続けなければならない。世間はA社の社長、会長だからといって甘えを許してはくれない。ユーザーは神様であると思わなければならない。

    訪問先の始業時刻にあわせて、担当セールスマンと共に訪問し、A社の変わらぬ愛顧と新規取引を要請するのである。決して行きやすいところだけを訪問してはならない。叱られ、苦情を言われることに耐え、その屈辱や助言を経営改革のバネにしなければならない。セールスマンはそれを見て育つのである。

    取締役のうち近々退任させる予定の者とか、どうしても長期間席を外せない業務分掌をあずかる一、二の取締役を除いては、担当地域を必ず割り当てなければならない。(担当地域をもてない役員でも月何日かの短期期間出張は可能なはずである。)

    勿論それらの者は直接現地に赴き、販売第一線において陣頭指揮に当たらなければならない。役員が体を張ってセールス活動に徹すれば、顧客はその情熱に自ずと感じ入り、それが自然に営業成績につながり、黒字化へとつながるのである。セールスマンもその意気込みを体感し、多言を要しなくても夫々に活動しはじめるようになる。要するに役員は第一線のセールスマンたれということである。

    因みに、今までにこの方針を断行した再建会社の全てにおいて、陰日向なく実践した者と、要領を決めこんで逃げを打った者との間に、その後雲泥の差が生じた実績があると聞いている。

 

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