第5回 高井先生言行手控え


 

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2015年5月4日(月)東京都港区芝公園にて
芍薬を撮影(花言葉:「はじらい」)

 

 

 

第2回記事(2015年2月27日付記事)より、平成元年(1989年)、髙井先生の「就職情報誌の現状と今後のあり方」という演題でお話をいただいた折の講演録から、その示唆と洞察に富む提言を紹介しています。

 

■髙井先生との質疑応答

本講演の最後に、髙井先生と参加者との質疑応答が行われました。そのやりとりをご紹介します。

 

 


質問:
「就業規則と広告内容との整合性を検証することが必要である」とのことですが、営業の現実場面では就業規則の提示を嫌がる企業、それも大企業にありがちなのですが、どうしたらいいでしょうか。」

 


先生:
「私の事務所では、多くの企業から就業規則をいただきますが、“社外秘”と印刷されています。中小企業では就業規則と実態の乖離が目立つので提出をいやがることもあります。一方で、公共職業安定所や労働基準監督署は、職権で提出を求めることができます。正確な求人情報を求職者に提供するという目的は官民で共通であるわけですから、就業規則の提出について、求人広告を扱うすべての媒体が共同で労働省(当時)に問題提起を行うことが必要ではないでしょうか。」

 

 

■現場に行くことの重要性


質問:
「求人広告を制作しています。企業の魅力を伝える時に、『過度な誘致』にならないようにするには、どのようにしたらいいでしょうか?」

 

 


先生:
「あなたに本当にその気持ちがあるならば、広告制作担当者は社長室で社長に会わなければいけない。
その会社の職場に行き、その会社の空気を吸う。そこで初めて真摯な企業か、インチキな企業かを体感できます。デスクワークで、現場に行かないと、そこに美化があり、虚飾が入り込みます。魅力を伝えることに偏るとむしろ弊害が目立つことになります。客観的で正確な労働条件を基準にして、その上に如何に、知・情・意というソフトのオブラートをかけるか、そういうことが必要ではないでしょうか。」

 

 

 


質問:
「審査室は、どのように機能すればよろしいでしょうか?」

 


先生:
「どんな産業群でも、売上げを重視しがちです。その中で、どの程度に、どのように、どの時期に、審査室が機能していくのかを経営者とともに熟考し、事前審査の対象や事後審査の対象を明確にしながら進めていくことです。言うは易いが行うは難しです。求人広告というソフトウェアは、極めて優劣の判定が難しい世界です。
例えば、自動車の欠陥というのは極めてわかりやすい話で、動かなくなるという現象でわかります。ところが、求人広告の優劣というのはなかなかわかりにくい世界です。適否が判断し難い場合は、内部的な審査機能を充実させ、自らの良心に従って事業を運営し、誠意と努力、この一点に審査機能を集中させていかなければなりません。」

 

 

■社内制裁制度は創意工夫が必要

 


質問:
「社内制裁制度について詳しく教えて下さい。」

 


先生:
「一般的に営業上、不始末な行為をすると、例えば使い込みなどの場合は、懲戒解雇です。求人広告に関していえば、瑕疵のあるものを瑕疵のないような表示方法で売りつけて、当社の信用を毀損した。会社としては、キズのないものを売ろうと思っていたにもかかわらず、営業担当が、キズがあることに気づくべきであることに気づかないで、売りつけて当社の信用を傷つけた。こういう場合は、始末書つまり譴責です。制裁措置としては、この他に減給や出勤停止、ひどい場合には懲戒解雇になります。また、制裁措置は行為者本人だけではなく、監督責任も問います。行為者本人よりも軽度なものになりますが、管理職としての適格性を問われます。求人広告の営業・製作過程において瑕疵がある場合は、この制裁措置に創意工夫が必要です。求人広告を定期的にモニタリングして、不良な広告や違法な広告を見つけ出したり、苦情受付の広報を積極的に行うことが必要です。問題広告があれば、審査委員会で公平公正に懲罰を判断することが求められます。そして、一番大切なことは、原因を明らかにして対策を講じることです。求人広告の場合は、その殆どが求人者の情報提供がいい加減であったり、労基法の知識が不十分であることが多いと思います。そうなれば、労働条件の情報提供において、間違えやすいところを説明したり、労働関連法をわかりやすく説明するための啓発ツールの開発が必要になってきます。そこには大いに投資をすべきでしょう。皆さんが携わっておられる就職情報誌は社会的に多くの役割を担っていることを忘れてはいけません。」(講演終了)

 

 

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※ 上記は、講演後に当審査室でまとめた「就職情報誌の8つの社会的な機能(1989年)」です。

 

(つづく)

 

 

 

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