2015年5月9日(土)12:30
長野県北佐久郡軽井沢町にてヤエヤマブキを撮影
花言葉:「気品」
(1)日頃からの営業活動の重要性
恒常的に仕事を維持するためには、日頃からの営業活動が重要である。営業ができない弁護士は、独立した事務所を経営することはできないだろう。
弁護士の営業活動は、不特定多数による広告活動よりも、第三者に評価してもらい、その人に推薦してもらう方が、客観性を帯び、信頼性が高まり、効果的である。それゆえ、お客様は、弁護士にとって、最大の営業マン、宣伝マンだということを忘れてはならないのである。また、人脈をつないでもらうばかりではなく、自分の人脈もお客様に紹介し、ギブ&テイクの関係が成り立つようにすることもポイントである。
また、弁護士は専門的職業人であるがゆえに、自らの専門性、信頼性について、一部の人だけではなく、広く世評を勝ち得なければならない。
世間で評価されないときもあろうが、それを乗り越えるだけの不断の努力をしなければならない。単に広告だけ大々的にうっていても大きな営業効果は得られないであろう。
では、世評を勝ち得るためには何が必要かといえば、まずは地道な講演活動、執筆活動であろう。これにより世評を得ることができれば、既存のお客様は、安心してその弁護士を他の方に推薦できるようになる。そして、何より重要なことは、営業活動は、繰り返し継続的、持続的に行わなければならないということだ。例えば、講演は毎週1回やらないと新規のお客様の獲得にはつながらない。セミナー会社の講演であれ、あるいは個別企業の講演であれ、毎週1回行わないと営業効果は出ないのだ。本も同様である。6ヶ月に1冊書かないと営業活動にはならないし、少なくとも3冊は出さないと本を出しているという世評は得られない。日比谷パーク法律事務所代表弁護士 久保利英明先生は、昭和46年の弁護士登録から平成24年5月までの41年間に、62冊の書籍の刊行に携わってこられた。この62冊目のご著書を贈呈いただいた際に、「これから、エイジシューターならぬエイジライターを目指します。年齢と同数の書籍を刊行する覚悟です。年2冊としても72歳になるまでかかります。年1冊では永久に追いつきません」とのレターをいただいた。久保利先生の書籍刊行に対する熱意にふれ、何事も継続性、持続性が力の源泉なのであるということを再認識した次第である。
①講演活動
講演活動においては、自分が作成した資料、自分の執筆した書籍に沿った講演をすることで、一貫性をもち、専門性、信頼性をもたなければならない。雑談のような一過性の話をしても意味がない。また、何よりも、迫力のある講演を意識する必要がある。ぼそぼそと話しているだけでは、新たにお客様を獲得することは難しいだろう。お客様が弁護士の講演を聴講する際には、話の内容はもとより、弁護士の人柄や姿勢、熱心さなどに関心を持つという。弁護士は常に考課されているということを強く意識しなければならないのである。
また、管理職研修等、お客様である企業が主催する講演の依頼を受けることがあるが、その講演のテーマを選ぶ際は、企業が望んでいるテーマを選ぶことが大切だ。まずは、企業の希望を確認してから講演しなければならない。そして、企業の研修は、毎年のごとく継続して行われるから、講師として引き続き、依頼されれば引き受けるという姿勢でいなくてはならない。リピートするということが大事である。そのためには、依頼した企業の満足度だけでなく、その研修を聴講した人たちの満足度も高くなくてはならない。そして、10年、20年とリピートして講師を引き受けられれば嬉しい限りである。なぜなら、それは、その研修での講義が、企業と聴講生の琴線に触れたことになるからである(なお、管理職研修等の講師に選ばれるということは、管理職は非組合員であるので、企業の在り方を説く一端を弁護士が担うということであり、非常に重要なポジションに就かせていただいたということでもある)。
②執筆活動
本を出版することは、非常に時間がかかるのでそれによるロスは大きいものの、専門家としての信用を得るためには必須といえる。本を出版することは、自分の精進・勉強の成果を定期的に発表し、「十分な専門知識を持っていて、信頼できる人物」「じっくりと課題に取り組む姿勢」を世間にアピールできる最良の手段であるのだ。執筆活動は将来の大きな財産となるのだから、産みの苦しさを乗り越えて取り組んでほしい。
そして書籍の広告、宣伝は、弁護士の営業活動に大きな効果をもたらすだろう。執筆によりネームバリューが上がることで、講演の依頼や、取材を受ける機会も増えてくるだろう。そして、講演、取材、執筆が増えることで、更に、講演、取材、執筆の依頼が増えるという好循環で、ネームバリューの強化につながり、新規・大手のお客様の開拓につながるだろう。ただし、まずは第一歩からである。事務所と関連のある出版社や雑誌社に、地道な営業活動を続けていくことである。
(2)書籍を出版する際に気を付けるべき点
弁護士の出版した書籍の内容が自分の問題解決に直に役立つだろうと考えるお客様がいる。そのような場合に、お客様の抱える問題が複雑であり書籍に載っている案件と細部少し異なっていても、書籍に書いてある内容が一般論としてお客様の問題の内容と同じように見えることがあるが、詳細を聞いてみると、肝心なところが違っていて、お客様の問題の答えをその書籍では解決できないことが往々にしてあるものだ。弁護士として、勉強して書籍を出版するのは良いが、それを読んだお客様の問題解決が上手くいかなかった場合には、お客様の責任による判断ミスか、著者である弁護士の判断ミスであるかが、はっきりしないという場合も起こり得る。
このようにトラブルを招かないように、出版する際には、例えば本の冒頭に「この本は具体的な事案について語っているのであり、一般論について語っているわけではないので、読者の方の抱えている問題と一致しない場合もあります」という注意書きを入れるなど、推敲に推敲を重ねて、慎重に行わなければならないのである。
(3)新聞社からの取材
新聞記事の解説欄に弁護士の名前が登場すると、信頼のある弁護士という評価になるのは言うまでもない。ところが、新聞記事というのは、弁護士の解説の部分も新聞記者が書くため、とかく誤解を招く表現になっていることがある。だから、新聞記事に載る前に、原稿ができたらチェックする必要があることは言うまでもない。さらに、私は、取材を受ける前に取材テーマを十分に勉強して、書面化するようにしている。新聞記者が質問するのはどこか、必ずしも事前にはっきりと分かるわけではないが、下準備をしっかりして話をすれば、誤解は少なくなる。事前に勉強して書面化したメモを、取材後に相手の記者に渡せば、齟齬が生じる確率はさらに減るだろう。
最後に、初めに述べたように営業は継続なので一度会っただけで成立することは、まずありえない。二の矢、三の矢、四の矢、五の矢と続けていかなければならない。例えば、書籍を出版したり、雑誌に取り上げてもらったりしても、そこで終わりではない。書籍であれば、書評などで紹介してくれそうな方にお送りする、また、書籍や雑誌をつながりのある方々にお送りして次につなげる、といったことが必要である。書評で取上げられることは、第三者に評価されるということであり、客観性が担保されるので、良いことである。
常に次の手を考えて行動しなければ、営業の成果は上がらないのである。
以上