2015年7月17日のアーカイブ

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2015年6月15日(月)東京都目黒区中目黒公園にて撮影
チョコレートコスモス
花言葉:「恋の終わり」 

 

 (5)証人尋問

証人尋問の準備は大変である。相手側の書面も証拠資料も読み、もちろん当方の書面、証拠資料も読むのだが、大事なことは相手の答弁を予測することである。もちろん、予測した内容通りに証言が行われるわけではない。だからこそ、相手側の証人の内容をいくつも考えることが必要となる。そのためには、複眼的な視点から検討する必要がある。加えて、決定的証拠をもって、すなわち書証をもって粉砕する準備も必要である。となると、予め想定問答を作り、それも2通り、3通りと準備しておくことが大切である。

 

私の実感としては、反対尋問よりも主尋問の方がはるかに難しい。主尋問は、相手側の反対尋問を予測しなくてはいけない、すなわち攻撃が相手に移るので、よほど準備をしていないと対処できない。準備の大切さは証人尋問において一番意識されなければいけないことである。客観的資料、物証、書証の収集が大切である。証言内容に直接関連した事柄だけでなく、間接的に関連する事柄、背景事情の検証もすべきである。些末な事項も手を緩めると、それが証拠となって思わぬ結果を招くこともあるので、適宜当方の証人で潰しておくなどの気配りが必要である。大局観と事実を踏まえた緻密な構想がマッチングしなければ、証人尋問は成功しない。

 

そして、当該事件の核心について、簡明直截に反対尋問することが大切であり、事実を詳細に語ること、論理的に構成すること、情感をこめる技術も要求される。

 

(6)詞は飛び、書は残る

裁判では、弁護士は自分の証拠を裏付ける証拠を提出しなければ勝訴できず、責任を果たすことはできない。証拠は主に証言と書証(書面になった証拠)であるが、証拠価値は書証が証言に勝ると評価される。

古来のヨーロッパの格言「詞は飛び、書は残る」にある通り、書面の効果は抜群である。特に、事実が発生した時点で作成された書面の証拠価値が最も高い。そうであるからこそ、弁護士はお客様の主張を鵜呑みにしてはならず、自らも証拠集めに熱心でなければならない。あらゆる資料を点検し、有用な資料を探し出すのである。弁護士に取って、関係書面を見つけ出した時の嬉しさは何にも代えがたい。そしてこの過程は、お客様その他関係者の主張の真意を検証する過程でもある。裁判は、「書証で勝ち、書証に負ける」ものであることを忘れてはならない。

 

(7)下見

下見とは、ある事をする前に予め見ておくことを言う。例えば、集団で登山をするとき、リーダーたる者は下見をしなければならないと言われる。これは、安全を確認し、登山を成功させるためである。弁護士も同様である。証人尋問があれば、事前に実際の流れを想定してロールプレイングを行うことで、成功の確率を高めることができる。講演であれば、リハーサルが必要となる。ロールプレイングとは、実際の仕事上の場面を設定し、そこでの役割を演じることで実務上のポイントを体得する訓練法であるが、実際の流れを想定して疑似体験をすることで、ある事が実際に起こったときに適切に対応できるような経験を積むことと近い効果があると言われる。このように、実際に目で見たり、体を動かしてみたりすることは、物事を成功させるための必須条件なのである。

必要最大限に準備することが必要である。お客様の意向に沿って事案を解決するためには、時間が許す限りの必要最大限の準備が欠かせない。なぜ、必要十分ではなく必要最大限の準備が必要かといえば、必要十分では想定外の事態が起こった時に対応し切れないからである。必要最大限とは、あらゆる事態を想定して、それぞれの対応を寝ても覚めても考え続けるということだ。これで十分だろうと考えることは、自らの限界を設けていることに他ならない。予想は時として裏切られるものであり、お客様の利益を第一に優先するのであれば、弁護士は、書面にしても、尋問や答弁の準備にしても、必要最大限の準備を目指さなければならないのである。

 

(8)人を見て法を説け

弁護士が、お客様、裁判官、相手方、相手方の弁護士と対するときに、性善説あるいは性悪説のどちらをもって、即ち人の本性を善・悪どちらと捉えて対すべきであろうか。

まず、お客様に対しては、弁護士はお客様と信頼関係を築くことが何より重要なことである。しかし、お客様には各々事情があり、正直な胸の内全てを弁護士に話しているとは限らない。弁護士には、何が事実で何が事実ではないかを見極める力が求められる。要するに、性善説、性悪説を超えたところでお客様を見つめなければならない。

次に、裁判官に対してであるが、憲法76条3項「裁判官は、その良心に従ひ」という文言に表される通り、良心をもって法廷で判断を下す存在である。だからといって、裁判官の「善」の部分が、生来生まれ持ったものなのか、努力によって後天的に身に付けたものかを一概に判断することは困難だが、裁判官の「良心」は善であると考えて、裁判官の人間性に訴えかけるような主張を心がけるべきであろう。

最後に、相手方および相手方弁護士は、当方を打ち負かそうとしている存在であるため、性悪説的に捉え、相応の準備と対応を心がけるべきであろう。

弁護士としては、相手によって善・悪の前提をかえ、事実を見極めていくことが大切である。それが、人を見て法を説け!ということである。

 

(9)弁論

次に弁論の重要性を指摘していこうと思う。日本の裁判所では、従来、書面の提出で弁論をすることが圧倒的に多かった。しかし最近では弁論が大変重要な役割を訴訟において果たすようになった。そうなると弁護士は当意即妙な表現で対応しなければならない。要するにこれは、弁論の直前の状況を踏まえて、臨機応変に弁論をしなければならないということだ。それは弁護士の日常的な知識や知恵によっても生まれるものだ。書面によって弁論に代えるということは実は易しいことである。なぜならばいろいろな参考書籍を見ながら、そして資料を見ながら書けば足りるからだ。しかし、先程話したように弁論が重要視されると、直前までの状況を十分反映した、当該訴訟等の終結にあたってふさわしい話をしなければならなくなるのだ。

 

最後に、いかなる訴訟であれ、精神・原理といったものを正面から語らずして、即ち錦の御旗を掲げずして、決定的な勝利を得ることはあり得ないのである。小手先の技術論ばかりでなく、企業のよって立つ精神・原理・方針といったものを、大胆かつ率直に語るべきであるということを、念頭において裁判に臨むことが弁護士に要求される。

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