2015年9月のアーカイブ

第9回 高井先生言行手控え


 

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2015年8月9日(日)15:17 紀尾井町6にてヘメロカリスを撮影
花言葉:「とりとめのない空想」

 

 

築地双六館館長
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事
吉田 修

 

 

■共感を呼び起こすつ6つの方策

「人間関係の充実は労働契約上の要請である。労務管理を推進するにあたっては、婚姻法に見られる人格結合的要素である合意(納得)、相互協力、信頼、協働、扶助といった情況を、顕在化させることを目標の一つとしなければならない。それは企業構成員間の精神的結合をまって初めて可能となる。」とする髙井先生は、職場で共感を呼び起こすための6つの具体的な方策を述べておられます。

 

①挨拶を交わすこと

挨も拶も語源はピッタリくっつくことである。総じて、精神の共鳴、同心化、共感を求めることが挨拶の意味である。目を見る。声をかける、肩を叩く、握手するといった五感の触れ合いから情感の交流が始まり、信頼感が醸成される。この信頼感の本質は、信念、情熱、雄々しさ、悲壮感、正義感等であり、思いやりである。

 

②トップと管理職の意思統一

経営のトップと管理者、いわゆる使用者間において、一体感と意思統一が形成されていなければならない。さもなくば、企業構成員全体の精神的結合は求め得べくもない。

 

③社長は現場を回れ

組合のない企業あるいは労使がうまくいっている企業の共通の特徴の一つは、代表者が現場にたびたび姿を現していることである。従業員に声をかけ、相手の考えていることに同調するよう努め、担当する仕事のこと、部下自身や家族の健康のことなどを話題にすることが肝要である。

 

④褒め上手・叱り上手なれ

叱るより、褒めろと言われている。叱ること即ち邪心に対して牽制することが、むしろ気重で、歓迎されない傾向にある。褒めるだけでは、甘え、放縦、身勝手が蔓延る。競争力を強化していくためには、叱ることが人事労務管理の標語とならねばならない。叱りながら人間関係上の摩擦や軋轢に葛藤し、克服していくことで上司も部下も鍛えられるのである。

 

⑤管理者は人間的であれ

企業における人間らしさとは、怠惰ではなく、勤勉で直向きであることである。困難・危険に直面して真っ向勝負する上司こそが人間的である。

 

⑥業績アップが最良の策

企業における良好な人間関係を樹立するためには、企業は業績を上げることが最も肝要である。

 

■四半世紀前から派遣労働者の教育を提唱

ここで時事案件を入れたいと思います。去る9月11日、189回通常国会において「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、9月30日に施行されることになりました。労働者派遣法の改正については、労働市場に関わる多くの人が注目しており、髙井先生の論と併せて紹介したと思います。今回の改正の付帯決議も含めて詳細は厚労省のHP

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386.html

をご覧いただくとして、平成5年(1993年)の本書にはこうあります。

「人材派遣はここ数年間20~30%の成長を続けているが、それは必然的に人材育成をないがしろにする傾向となっている。人材派遣業界は専門性を育む・育成する・教育するといったシステムをなおざりにしては業としての意味合いを欠くに至り、専ら単純なマンパワーの補給基地になるにとどまることになる。それは、人材派遣業あるいは派遣労働者の社会的評価を低めることにもなるであろう。(中略)派遣事業は派遣元企業がプロ中のプロ集団になる企業努力を怠らないこと、具体的には(……)

派遣労働者の質的向上に務めること、換言すれば有能極まりない派遣労働者にその将来ヴィジョンとしてコンサルタント等に従事し得る可能性を見出し得るとの希望を与えてこそ、その将来が保障されるといってよい。」

髙井先生は、使用者側に立つ労働法・労働問題の専門弁護士です。

そのお立場で、四半世紀も前から人材派遣業界に警鐘を鳴らし、派遣労働者の育成と評価の向上の大切さを説いておられたわけです。今回の法改正では、「専門性を育む・育成する・教育するといったシステム」の法制化を、派遣元・派遣先に派遣労働者のキャリアアップの措置・支援の実施を義務付けるという形で実現に至りました。

 

<改正労働者派遣法における派遣労働者のキャリアアップの措置>

 

①派遣元は

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②派遣先は

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③派遣労働者は

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(以上は厚生労働省ホームページより抜粋)

 

派遣法が成立した1985年に派遣対象として認められていたのは、常用代替のおそれの少ない専門的知識等を必要とする13 業務のみでしたが、その後数回の改正を経て、1996年には26 業務にまで拡大され、

1999 年には建設・港湾・警備、製造業務などを除いて、派遣対象業務が原則自由化されていました。

この当時、先生は「安に居て危を思う」という春秋左氏伝の故事を引用し、「派遣業界は急成長の今こそ、規制緩和の要望だけではなく、労働市場の適正化のために何ができるかを考えなければならない。己の喉元に法律の切っ先を当て、派遣労働者のためにどのような規制をすべきかを提言すべきだ。世論を味方につけた主張でないと業界エゴとしか映らない。政治家はなんの役にも立たない。社会の成熟とはそういうものだ。」と力説しておられました。この洞察の鋭さを今日改めて感じるところです。

 

 

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2015年8月13日(木)7:52 中目黒公園にてキバナコスモスを撮影
花言葉:「野性的な美」

 

 

(9)気を付けるべきこと

弁護士間の競争が激しくなっている今の時代において、事務所でお客様の獲得のために、事実上の営業マンを雇うことも必要となってくるだろう。弁護士も待つだけではなく、積極的に営業活動を行わなくてならない時代になったのだ。

 

(10)ITツールを使った方法

私の事務所では、HPに加えて、Facebookでも情報を発信しているが、FacebookやTwitter等はHPなどへの入口に過ぎないため、HPへ誘導した後、どのようアプローチし、クロージングに持ち込むかの誘導経路の構築ができていなければ、顧客開拓にはつながらない。

これらのITツールには、有象無象があるが、事務所との関わりを検討されている方々が、事務所の素顔に触れ、事務所を知ることが出来るので、顧問先の開拓を目的とするならば、ある程度は有効だろう。しかし、ファーストアプローチとしては、「労多くして効少なし」と判断される場合が多い。しかし、時間が無駄かもしれないけれども、それでもやらなければならない。営業はコストだけでなく、心理学でもあるから、事務所内外を説得、納得させなければならないので、一般的に普及しているITツールも使わなければならないのである。

また、お客様が法律事務所を選ぶポイントは、”実績””安心感””面倒見の良さ”や”権威”、更には”名前が売れているか”であろうから、陰に陽に忙しいことをアピールするのも1つの手だろう。

ただし、昨今、コンプライアンス重視の傾向が強いため、ITツールの使い方は慎重に考える必要がある。単なる「情報」の発信ではなく、「事務所の内容を良く分かってもらえる情報」の発信が有用なのだ。

 

(11)後継者の育成

事務所を継続発展させていく上では、後継者の育成も重要となる。後継者を育成することは、事務所のさらなる発展にも繋がることとなる。反対に、後継者不在で自分の引退とともに事務所を閉めることになれば、往々にして信頼関係を築いてきたお客様に迷惑をかけることになる。お客様が、以前頼んでいた事件に絡んで再度問題が起き、その事件を担当した事務所がなくなったため当時の担当弁護士を訪ねたところ、「自分は引き継いでいないし、資料も残っていないため分からない。」と言われたという話は珍しくない。お客様と長く付き合い、安定したサービスを提供するためには、後継者を育成し、自分の引退後も事務所を存続させなければならない。ただ、後継者と前任者との考え方に相違があってはならない。考え方の相違があると、引継ぎ後、やはりお客様に迷惑をかけることになるからである。

後継者への引継ぎにあたっては、長期的に周到な計画をたてる必要がある。まず、後継者候補を選ぶことから始まるが、後継者選びのポイントは、事務所の方針や理念を十分に理解し、経営能力にも長けた人物を探すことである。次に、後継者を育成するにあたって、円滑に事業を承継するために、長期的な計画をたて、じっくりと育てることが肝要である。特に身内以外の勤務弁護士に引き継がせる場合には、お客様にとっては、「先代=後継者」とは見えず、知名度や信頼度が大幅に下がる可能性があることには十分に注意すべきである。後継者と十分意思疎通した上で事業内容や経営理念をじっくりと引き継いでいくことは勿論、経営のノウハウを養うために、早い段階から経営に参画させたり、弁護士業務のみならず他部署とのミーティング等に参加させたりすること等も必要となる。さらには、後継者一人では成り立たないため、引継ぎ後の体制を強化すべく、ブレーンの育成も重要課題となる。

自分よりも優秀な人物が後継者になれば、すこぶる幸せなことだ。ここで言う優秀とは、他の弁護士が憧れるような弁護士のことである。

 

 

おわりに

 

弁護士の営業は、時代の流れを意識しながら長期的な視点も含めて取り組まなければならない。今日のことだけを頑張っていても、弁護士事務所としては長続きしないだろう。今日のことだけではなく、明日のこと、来週のこと、来年のこと、5年、10年先を頭において営業に取り組まなければならない。一日単位の綿密な営業計画を立てても、計画どおりにいかないことが常であるが、時代の流れを意識した長期的な営業計画・目標を念頭におけば、それが指針となり、励みとなる。

目標があれば、それに向かって努力し邁進することができる。目標とは、人が情熱を傾けることのできる対象であり、また、困難にぶつかったような時に乗りきる勇気を与えてくれるものである。私は事務所を設立した当初、人事労務問題を専門としたグローバルな事務所にしようと決め、その目標を達成するために邁進してきた。

営業活動を続けても、すぐに効果はでないかもしれない。しかし、時間がかかっても、評価は後から必然的についてくるものであるから、途中で投げ出さない姿勢がなによりも大切である。

明けない夜はない。朝が来ると信じるからこそ、我々は苦境を切り抜けるための努力ができる。まさに「継続は力なり」なのである。

 

最後に、弁護士とは、文字通り人を弁護する者であるが、弁護される人がいて初めて成り立つ仕事である。即ち、弁護士は代理人であって当事者ではない。弁護士は、自力では十分に戦うことのできないお客様の代理人として、お客様の利益を保護するために法廷等に立つ。お客様は弁護士に自分の運命、問題の成り行きを委ねるしかない。弁護士は、勝っても負けても代理人に過ぎないが、しかし、お客様の運命を握っているということも肝に銘じておくべきである。そして、それだけに、弁護士はお客様に救いを与える存在でなければならない。

お客様が弁護士に相談する時点で、お客様自身では既に問題を解決できない深刻な事態に陥り、問題に悩まされるだけでなく精神的にも追い詰められた状況にあることが多いため、救いの存在としてお客様の心に安堵感を与えられなければならない。救いの存在となれるか否かで弁護士の真価が問われる。

 

どんな人であれ、結局、自分の力を発揮するということに尽きる。「自分の力」を発揮するとは、人としての力を発揮することであり、弁護士も、忍耐力や連帯心、向上心など人としての力を発揮しなければならない。人としての力を最大限に発揮しようとすれば、現状に満足することなく、自分の周りの変化に即対応する姿勢をもち、時代の流れに取り残されることなく進化していくことができるのではないだろうか。

 

弁護士は利他主義、つまり自己の利益より他人の利益を優先する考え方を持つ必要がある。それは、お客様の悩みに寄り添い、一緒に解決していくという気持ちがなければ、他人の利益を尊重することはできないからである。お客様との関係において、弁護士は常にこれを心しておかなければならない。

人は、どんな状況でも生きる意味を見つけ、内面的に成長するという心構えが必要だ。弁護士は、お客様との関係を通じて生きる意味を見つけ、内面的な成長を実現することができる。お客様に尽くすことで、私の後輩であるあなた方の、生まれてきたことの意味や弁護士としての役割を知ることとなるのである。

 

<新人弁護士道13訓>

1.         あすなろう、の思いを強くもって生きたい。

2.         心の中に、理想の自画像を刻みたい。

3.         この仕事は必ずやり遂げる、という確信を持ちたい。

4.         手当たり次第、書物を乱読したい。

5.         心で怒って笑みを絶やさぬ態度でありたい。

6.         より多くの信頼できる友人を持ちたい。

7.         エチュードを重ねるトレーニングをしたい。

8.         頼られる人間の魅力を研究したい。

9.         いつも到達目標を掲げたい。

10.       隣の仲間が敬礼してくれる日を夢見たい。

11.       後進が重宝がってくれる先輩になりたい。

12.       読む、聞く、覚える、考える習慣を忘れない。

13.       よその畑は荒らさないが、手をつなぎたい。

 

以上

 

 

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2015年8月10日(月)7:57 中目黒公園にて百合を撮影
花言葉:「純潔、威厳」

 

9月6日(日)の朝、門前に出ると秋の虫が鳴いていました。
私は虫に詳しくないため、はっきりとは分かりませんでしたが、
鈴虫のようでした。
虫の鳴き声で秋の訪れを感じた清々しい朝でした。 

 

 

7月24日(金)から、2011年5月~2012年4月にかけて、計12回、『月刊公論』(財界通信社)にて私が連載いたしました「高井伸夫のリーダーの条件」を転載しています。 

私の半世紀にわたる経営側の人事・労務問題の専門弁護士としての経験もふまえ、リーダーのあり方について述べた連載です。 

これからは、自分一人の信念で周囲をひっぱっていくというリーダーの時代ではありません。優れたリーダーには必ず、”股肱(ここう)の臣、頼れる参謀”が付いているものです。もはや”孤高の人”では、リーダーにはなり得ないのです。 

ブログ読者の皆さまに、現代におけるリーダーシップ論を考えていただく一助となれば幸いです。

 

「私心がないことの重要性」
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ
(『月刊公論』2011年8月号より転載) 

 

いま日本は、掛け値なしに危機的状況にあります。放射線被害による身体の安全の危機、電力供給の不確実さがもたらす生産活動の危機、被災地における人心の危機、そして、政治家のリーダーシップの危機―。大震災のためにこれらの危機がもたらされたというよりも、あるいは、大震災が起きたことで、これまで見えにくかった日本の危機があぶり出されたと表現したほうが正しいのかもしれません。こうした状況であるからこそ、経営トップをはじめとする組織のリーダーは、我欲を離れ、進むべき方向を見定めなければならないのです。私は、特に若い世代に対して、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」というリーダーの覚悟を説きたいと思います。

 

「リーダーは、関連企業が被災し、資材が入らない窮地を、いかにリーダーシップを発揮し、乗り切るか。」

トップ営業という言葉がありますが、資材関係が窮地に陥った場合には、トップがこの困難に対峙して「トップ仕入れ」に奔走しなければなりません。トップは単に指図をするだけでなく、トップ自身が相手方の企業に出向いて、今までの不義理をわびて資材の提供を懇願するのです。

その際には、自社が早急に資材を仕入れる必要性に迫られている大義名分を明確にして、説得に当たらなければなりません。そして、相手方から何らかの前向きの言葉を引き出し、あるいは約束してもらえたならば、それを面談後に速やかに書面あるいはメールで再確認すべきでしょう。「詞は飛び、書は残る」という法諺があるように、口頭の約束を現実化するためには、書面化することが必要なのです。

しかし、「被災した」「部品が入らなくなった」という状況があるからといって、経営トップ、幹部、資材購入の責任者などが、日頃は関係のうすい取引先に突然お願いに行ったとしても、ほとんど効果はないでしょう。危機のときこそ、結局は、日頃からの人間関係、コミュニケーションがものをいいます。平常時には傲慢でふんぞり返っているくせに、苦境に陥ったからといって、手のひらを返したように土下座するなど笑止千万のこととして、嘲笑を受けるだけです。あたりまえのことですが、経営トップも幹部も、取引先とは、損得勘定だけにとらわれず、日頃の人間関係や対応を大切にしなければならないということです。

なお、経営者は、資材を国内で調達するだけでは会社がまわらなくなる危険が大きくなっていることを覚るべきでしょう。なぜなら、国内市場がますます冷え込み、倒産が相次いでくるからです。今回の震災のことに限らず、中長期的な課題として、資材は、国内だけでなく海外からも輸入するという観点から取り組まなければなりません。

 

「社員の不安をいかに鎮めるか」

ある有名ファーストフード企業の社長は、この度の大地震が起こった直後、社員を残して、自分だけ本社のある東京から大阪に逃げたと言われています。彼は、まさに自らの身の安全の確保だけに走った人物として、業界のなかでも評判になったという話を仄聞しました。この人物は、「メールがあれば大丈夫だ」と弁解したとも聞きますが、とんでもない話です。トップは、いかなるときであっても現場に姿を見せることが重要であって、ましてや組織が危険にさらされているときには、なおさらのことです。危機に遭遇してトップがうろたえ、オロオロして自らの職場を放棄して逃亡するなど、もってのほかです。リーダーたるものは、危機にあっても、決してそのような醜態をさらしてはならないのです。

東北地方の被災者の状況を伝える報道を見ているとわかりますが、町長・市長ら各地方自治体のトップは、自らも被災者であることを乗り越え、住民ら避難民とともに行動しかつ現場の指揮をとっています。この姿は大変立派で、胸打たれるものです。前述の社長のように、危険が生じたときに、部下のことを考えず、自分だけが遠方に逃げてしまう者にはリーダーとしての資格はないことは言うまでもありません。

天皇皇后両陛下が大地震でも皇居にとどまられ、東京の中心部分から一切動かれることなく、被災者に対して精一杯のことをされたことが、日本国の立派なリーダーの姿としてわれわれ日本人の心の支えになったことを、私はここで敢えて申し添えたいと思います。

両陛下にわれわれが感動するのはなぜでしょうか。それは、おふたりに私利私欲がまったくないからです。

このことは、組織論にもそのままあてはまるでしょう。組織が危機的状況であればあるほど、リーダーは何事にも私利私欲を離れて取り組まなければ、説得力がありません。

部下はバカではありませんから、リーダーの邪心をすぐに見抜き、本心を察知します。同じ行為をしても、私利私欲があるかないかは、まわりの者にすぐにわかるものです。私利私欲にまみれたリーダーは人望を失い、次のステップでは、この人物をいかにして追放するかということが組織のテーマにされることを、リーダーは自覚しなければなりません。

リーダーは、日頃から、我欲を捨てて、苦しいこと、困難なことに立ち向かっていく姿勢を示さなければまわりの信頼を得られず、大阪に逃げ出してしまった前述の社長のように、物笑いになるのです。

 

「人事に常についてまわる風評が、情実人事。これにどう対処するか。」

トップがなぜ情実人事を行いがちかと言えば、そうすると気がやすまるからです。社長やリーダーは強いストレスを受けて、非常に孤独な仕事で疲れているため、つい情実人事に走ってしまうことがありますが、それは、社長の精神力の弱さのあらわれとも言えます。要するに、自分が苦しいから、一層かわいさ・親しみやすさを求めて、つい情実人事に走ってしまう。そこで、番頭たる者がこれを牽制して社長を支えることが必要になります。リーダーは、いまのような苦しい時代こそ、番頭役からの諫言を謙虚に受け止めなければならないのです。

では、情実にならない人事を行うにはどうすればよいのでしょうか。

まずは、「人をみて法を説け」を実践し、トップの重要な役割のひとつである人物鑑定・人物評価のための能力を磨くことです。「人をみて法を説け」とは、釈尊が相手の能力や性質に応じてわかりやすいように真理を説いたということからきた言葉です。上に立つものは、何より部下の本質を即座に見抜く目を持たなければなりません。相手の言動のなかからその特性を感じ取り、対応しなければならないのです。こうした鍛錬を経て、人を見る目は確かなものになっていきます。

人事が情実に基づいて行われているという風評はとかく発せられがちなものですが、「わが社のトップは人を見る目が優れている」ということを社員に意識させること自体が、情実人事でないことを裏付ける事実となります。そして、人事が情実ではないことを示すためにも、部下をほめるだけではいけません。ほめるだけでは、まさに情実人事に陥っているという風評を招きかねません。部下を適切に叱ることの意義を、トップは意識しなければならないのです。

部下への指導・注意は蔭で行うこともありますが、厳しく対処して、懲戒処分や懲戒解雇にすることも、ときには必要です。「厳しい人事を行う社長」という評判を得るキャラクターでなければならないのです。ニコニコ笑っているだけでトップが務まると思ったらとんでもない話です。厳しさがなければ、情実人事に走る社長と受け取られてしまいます。

レピュテーションリスク(風評被害)という言葉がありますが、これは、風評を立てられる側の責任でもあることを知るべきです。トップが情実人事をしたという風評を立てられるときには、本人の側の責任も決して看過できません。

ところが、世の中は不思議なもので、風評をことさらに流す者がいます。リーダーにとっては、そうした悪意ある者をいかに整理整頓していくか、そして、悪意ある者の発言の効果をいかになくしていくかということも課題となります。それは、本人の絶えざる規律ある態度による以外ありません。つまり、風評を立てる者との関係において、スキがあるところを見せてはならないのです。そして、情報が瞬時に伝わるいまの時代は、誰もが現実にさまざまなレピュテーションリスクを負っていると言っても過言ではないのです。

 

 

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2015年8月10日(月)7:51 中目黒公園にて芙蓉を撮影
花言葉:「繊細な美」 

 

(4)他士業による紹介

弁護士が、他の弁護士を紹介することがある。特に、以前、相手方になった弁護士から紹介されることは嬉しいことだ。そのためには、常日頃正々堂々と弁護士活動をすることが基本である。勿論、相手方の弁護士は色々な主張をしてくるが、それをクリアして勝ち抜くという結果を示してこそ、相手方の弁護士からも信頼を得ることができる。それと共に、味方を増やすことも必要である。相手方にいる沢山の人を当方に心理的に動員できる、そういう弁護士が、相手側に推薦されるようなことになるのである。

弁護士に限らず、他の士業、たとえば公認会計士、税理士、司法書士、弁理士、行政書士等との繋がりも作らなければならない。弁護士も人脈を太くすることが大切である。

他士業の人とはとかく、縁が切れる可能性がある。それは、弁護士の世界も競争社会だから他士業の人がより優秀な弁護士に遭遇する可能性が充分あるからである。だから、弁護士が他士業の人に紹介してもらおうと思うならば、例えば年賀状を出すとか、暑中見舞いのお手紙を出すなどのほか、より実力を身につけてこれを喧伝したりして何らかの形で縁作りを強化することが弁護士として必要である

 

(5)海外進出

弁護士がグローバルな弁護活動をするためには、それぞれの国の民族性の特色を把握しておかなければならない。たとえば、中国は法治主義ではなく「人治主義」である。要するに、個人主義の延長線上に家族愛、仲間意識、地方保護主義があり、さらにこれらが合わさって人治主義に至っているのだ。だから、ことのほか人間関係を重視することが必要である。

また、中国の民族性の特色は「個人主義」である。孫文の言葉に「中国人は砂の民である。石にも、まして岩にもなり得ない民族である」とある。日本の契約書には「甲と乙は…この契約に定めのない事項が生じたとき、または、この契約各条項の解釈につき疑義が生じたときは、甲乙各誠意を以て協議し、解決する」等といった条項があるが、この条項は中国人には意味がない。中国人、中国企業との契約書が米国式に細大漏らさず規定されなければならないのは、「個人主義」に根差しているからだ。また、契約意識がそもそも日本とは違う。日本では、契約締結とは権利と義務とを確定する作業であるが、中国では、権利と義務の限界を確認する、つまり権利を極大化し義務を極小化する作業となる。

このように、民族意識の異なる外国人を相手に弁護士業務を行う際には、その国それぞれの民族性の違いをもしっかりと認識しなければならないのである。弁護士の本職は法的問題の解決だが、グローバル化社会においては「相互に民族性を理解することこそがトラブルを避ける上で不可欠」とお客様にも理解していただくことが大切である。そして、海外における営業活動でも、会食の場をこまめに設けるなど人間関係を重視することは必須である。

社会経済が着々とグローバル化している中で、弁護士だけがドメスティックではどうしようもない。弁護士もグローバル化しなければならないが、その第1の視点は、日本人は集団主義であって外国人は個人主義という民族性の違いに気が付かなければならない。日本人の弁護士は世界の弁護士と互角に勝負できないといわれているきらいがあるが、それは日本人の弁護士がドメスティックにこだわっているからであろう。

 

(6)講演からお客様を募る方法

講演の終了時には、拍手喝采で終わることが必要である。なぜなら、そのような反応が得られるということは、聴講者の的を射た講演をしたことの証明となるからである。講演後の拍手がまばらだったり、盛り上がらなかったら失敗だと思うべきである。

単に講演をするのではなく、営業としてその後につなげるための、二の矢、三の矢等々を準備することが必要となる。

 

私が講演に関して心がけていることの具体的な内容は、以下の通りである。

①   持続する努力を怠らないようにすることが大切だが、そのためにもセミナーを開催して、プレゼンスを高めることが大切である。そういう趣旨で講演会等を継続開催すること。

②   講演(小セミナーを含む)は、少なくとも春夏秋冬年4回行うようにする。これは営業活動としてやるものであるから、出席者が悩んでいたり、疑問に思っていたり、分からないところにお答えするのが常である。したがって、講演に先立って、先にアンケートをとることが肝要だ。これが一の矢である。

③   ニの矢は、出席者にお礼状を出し、講演を聞いても分からなかったところを確認することだ。第二弾のアンケートを取るのである。そして分からなかったことに親切に回答するのだ。

④   三の矢は、もう一度講演なり小セミナーを開催することだ。そうすると、話を聞きたいというファンが自ずと決まってくるだろう。

⑤   四の矢は懇談会を開くことだ。一度だけ講演会を聴いたからといってお客様になるわけではないのだから…。

⑥   小セミナーの方は、日ごろから接触して問題を抱えているという企業の担当者を中心にして行うのだから、顧客の確保の確立は高いだろう。勿論こういう講演会は、すでに顧問になっている担当者をお招きするのが定着性を高めるのに寄与する。

⑦   何はともあれ、講演するということは、自分が学ばせていただくという気持ちを意識し続けることが必要である。

 

(7)講演以外にも、お客様やお客様候補と触れ合う機会が必要

講演以外にも、昼食会を開くなどしてお客様やお客様の候補となる人々と触れ合う機会を設けることは必要だろう。弁護士としての当方の人柄を知ってもらうためである。

講演では、通常講師が一方的に話をするが、会食会であれば、相互に本音で話すことが可能であるからだ。

そして忘れてはならないのが、会食会後にお礼状を出すことである。この手間を省いては、広がるべき縁も広がらないのだ

 

(8)常に情報発信を心がける

・事務所報等

ご縁を大切にしてこそ、成果は上がる。私はご縁を大切にするいろはの「い」として、お礼状を書いている。2番目は、縁が続くように定期的に当方のニュースを発信するようにした。それが私や事務所の弁護士、また親しくしている方々のコラムを掲載している事務所報である。

縁については、いろいろな格言があるが、それを紹介していきたいと思う。

縁に関して私が特に大事にしているのは、柳生家家訓(柳生宗矩による)の「小才は縁に逢って縁に気づかず、中才は縁に逢って縁を活かさず、大才は袖触れ合う他生の縁もこれを活かす」という言葉である。この中で特に、「袖触れ合う他生の縁もこれを活かす」の意味は事典によると、「道で知らない人と袖が触れ合うようなささいなできごとでも、単なる偶然ではなく前世からの因縁によるもの。だから、どんな出会いも大切にせよということ。」とされている。それほどに、縁とは大切にすべきものであり、私も縁を円とすべく、人と人とを引き合わせることを常に心がけているのである。

以上

 

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