2015年10月23日のアーカイブ

 

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2015年9月12日(土)8:37 千代田区九段北4にてニチニチソウの蕾を撮影
花言葉:「楽しい思い出」 

 

 

7月24日(金)から、2011年5月~2012年4月にかけて、計12回、『月刊公論』(財界通信社)にて私が連載いたしました「高井伸夫のリーダーの条件」を転載しています。 

私の半世紀にわたる経営側の人事・労務問題の専門弁護士としての経験もふまえ、リーダーのあり方について述べた連載です。 

これからは、自分一人の信念で周囲をひっぱっていくというリーダーの時代ではありません。優れたリーダーには必ず、”股肱(ここう)の臣、頼れる参謀”が付いているものです。もはや”孤高の人”では、リーダーにはなり得ないのです。 

ブログ読者の皆さまに、現代におけるリーダーシップ論を考えていただく一助となれば幸いです。

 

 

女性経営者・女性管理職について考える
組織の活性化のために女性を敢えて登用する実務の重要性
(『月刊公論』2011年12月号より転載)

 

女性の活用をいかに推進するかは、古くて新しい問題です。企業側にも女性側にも努力をする責任がありますが、消費者の半数が女性である実態からすれば、女性経営者・女性管理職を増やす努力を怠っている企業経営者は、およそ顧客満足度・消費者満足度を軽視していると言わざるをえないのです。

 

「仕事に関する男女の違い」

私は、漢字の成り立ちにまで遡り、発想のヒントを得ることがあります。漢字のルーツを探ると、興味深い発見があるからです。たとえば、「男」「女」という漢字の成り立ちは以下のとおりです。「男」は、「田」と「力」(もとは農具のスキを表す)が合わさってできたものです。つまり、男性がいにしえより農耕=力仕事に精を出す存在であったことが改めてわかります。一方、「女」は、女子がひざまずいて座する姿から生まれました(白川静『新訂・字統』平凡社2007年刊参照)。このように、男性と女性の本質的な違いが、漢字の成り立ちに示されているのです。

私は中国にも法律事務所を置いて16年になりますが、中国企業の経理担当者はほとんどが女性であるということに気づいたのは新鮮な感覚でした。その理由は、女性のほうが男性よりも正確に業務を遂行することに加えて、女性は不正をしないということが挙げられます。女性はひざまずいて大地に根を生やしているからでしょうか、どっしりと落ち着いて仕事を処理していくので、経理の仕事に適性があるのでしょう。

技術の進歩により、仕事のうえでの男女の違いは一切なくなったと断言する人もいますが、私は現実にはそうはいかないと思います。女性には妊娠・出産もありますし、男性より体力が劣りますから、力仕事や身体に悪影響を及ぼす仕事は向いていないのが一般です。ただ、技術のさらなる発達にともない、性差はますます小さくなっていくでしょう。

 

「女性の特性」―粘り・華やかさ・しなやかさ・細やかさ

2011年のノーベル平和賞は、アフリカと中東の女性3人が同時に受賞しました。同賞が常に政治的な意図を有していることを割り引いても、すばらしいと思います。こうした女性の活躍をみると、女性も男性に伍して働くようになったという表現では不正確で、むしろ、生来的に能力の高い女性は男性を凌駕する成果を出しているし、出していくべきであると思います。

わが国では、確かに溌剌と働く女性が以前より増えていることは実感します。ただ、少子高齢化社会に突入し人口減少が始まっているにも拘わらず、女性の労働力が発揮されなければ国も社会もたちゆかなるという切迫感は、まだ社会全体にあまり強く感じられません。

政府は、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%程度に上げるという目標を掲げていますが(内閣府男女共同参画局)、実態は、企業における女性管理職比率は約10%で、そのうち部長担当職は3%しかありませんし、女性国会議員比率は11.3%です(厚労省・内閣府)。

女性はもっと活躍すべきだというのが私の考えです。仕事のうえで女性ならではの力が発揮されている実例を、これまで数多くみてきた経験があるからです。

第一に、女性は目標への貫徹力が非常に顕著です。女性はひたむきに脇目もふらずねばり強く、与えられた仕事に邁進します。これは、逆の見方をすれば視野狭窄に陥りがちで幅広い判断力に欠けるともなりましょうが、専門性を尊ぶ世界では、女性がもっと活躍して然るべきです。

第二に、女性はコミュニケーション能力にたけていて、華やかさがあります。女性が存在すればチーム・職場が活性化するのも、華やかさの所以のひとつです。しかも、女性ならではの、しなやかさ・細やかさ・繊細さを発揮して仕事を完遂します。

こうした女性の特性は、総合的にみて営業職に適するものです。女性の高学歴化が進み、男性営業職の補佐だけでなく、女性営業職自身が好成績を収めている例も多いのです。私が存じ上げている朝倉千恵子さん(株式会社新規開拓 社長)は営業職の指導・教育活動に活躍されていますが、営業こそ女性の適職であるというお話しをされています。

 

「女性が登用されない理由」

統計上、日本は諸外国に比べて女性活用が遅れています。文化や社会的背景の違いがありますから、数字だけを単純比較することはできませんが、組織の上層部の女性の人数が伸びないことを私たちは真剣に受け止め、これを克服する具体的な方策を考えなければならないでしょう。

重要ポストにつく女性が少ないことの第一の理由は、企業においては、女性経営者はもちろん、女性管理職を念頭においた採用がほぼ行われていないことです。これは、企業側の努力不足・認識不足、そして怠慢です。消費者の半数は女性であり、CS(顧客・消費者満足度)の観点から女性を意識した企業運営をすべきであるという当然の結論からすれば、女性経営者・女性管理職をイメージしない人事施策は、CSを無視するものです。これからは女性パワーがないと組織は活性化しません。女性の活用は、企業経営にとって極めて重要なことなのです。

第二に、パワフルな女性は組織で排除されやすい実態があります。エネルギッシュに仕事に没頭している男性は頼もしいと評価され次々と仕事が与えられるのに対して、女性の場合は「女性らしくない」と疎んじられます。残念ながら、この風潮は一朝一夕には改善されないでしょう。

第三に、女性は「好き嫌い」で仕事や人物を判断しがちであることが挙げられます。

第四に、女性の側の努力不足も挙げられます。女性の側に男性と対等に仕事をする意識が乏しいことも、女性が然るべき立場になれない原因です。専門職志向が強く管理職になりたがらない女性が多いという傾向もこの点を示すもので、「責任をとりたくない」と考える女性が多いと言われていますが、実は若年労働者には責任を忌避する傾向があり、女性にはそれがより強く浮き彫りにされるということではないでしょうか。女性の側もこの点を反省して大いに努力しなければなりません。

第五に、女性には財務感覚が欠けることが挙げられます。女性は概ね会計意識しかありません。会計・経理を超えた新たな知恵による計数管理ができてはじめて財務管理といえますが、女性は社会的にどうしても劣勢であるがゆえに、財務面での創意工夫が不得手な傾向があります。

 

「女性活用の具体化を」

女性の活躍を促進する制度として、一定割合の女性の確保を法的に定める方策(クオータ制)等もありますが、こうした環境整備を待っていては、女性経営者・女性管理職の育成は実現できません。環境整備を乗り越える経営者の姿勢が必要なのです。

ここに、私のいくつかの実行例のなかから2点ほど紹介します。私の事務所では実力主義を徹底し、管理職は女性も男性も区別なく取り扱い、能力のある者を優遇しています。事態を立体的にバランスよくコントロールできない者・相手の心を読めない者は、男女に関係なく管理職として役に立ちません。また、永守重信氏(日本電産㈱社長)の言による「築城3年、落城3時間」のスピード社会への現実的適応能力があることも不可欠な資質です。女性のほうが男性に比べてはるかにスピード感覚があります。また、私は女性の育成概念として、ある業務の担当者が3人であれば、女性を必ずひとり入れることを自らのルールとしています。そうすることによって女性の活用が具体化するからです。もちろん将来は一対一の比率を目標にしています。

こうした工夫を経営者側が積極的に行わなければ、女性の育成は実現できません。これからは、男女の違いを踏まえた職務分担が自ずと行われることはそれはそれとして、あえて女性を登用するという経営者の姿勢が重要になってくると思います。

 

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