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2015年9月26日(土)11:29 軽井沢町長倉727にてホトトギスを撮影
花言葉:「秘めた意志」

 

 

7月24日(金)から、2011年5月~2012年4月にかけて、計12回、『月刊公論』(財界通信社)にて私が連載いたしました「高井伸夫のリーダーの条件」を転載しています。 

私の半世紀にわたる経営側の人事・労務問題の専門弁護士としての経験もふまえ、リーダーのあり方について述べた連載です。 

これからは、自分一人の信念で周囲をひっぱっていくというリーダーの時代ではありません。優れたリーダーには必ず、”股肱(ここう)の臣、頼れる参謀”が付いているものです。もはや”孤高の人”では、リーダーにはなり得ないのです。 

ブログ読者の皆さまに、現代におけるリーダーシップ論を考えていただく一助となれば幸いです。

 

 

異業種の多様な人との交流の重要性
飛躍的思想こそ新規事業のカギ
(『月刊公論』2011年11月号より転載) 

 

法律家はひとつひとつの具体的事実を積み上げ、分析・検討し、法的な結論を出します。ただ、ときにまったく異なる角度からの視点や考え方が一挙に物事を解決に向かわせることもあります。これは企業経営においても同様で、経営者・リーダーの飛躍的思考が、企業に成長と発展をもたらすことに留意すべきです。

 

「本業回帰の陥穽からの脱出」

ひところ、「本業回帰」ということが盛んに言われた時代がありましたが、私が1993年5月から2007年7月まで毎月出講し続けた「社長フォーラム」の講義録を見てみますと、1999年5月26日開催分において、私は「本業回帰は決して日本の発展のためになるものではない」と明言しています。それから12年後のいま、この考え方に一層確信を深めています。

本業回帰という言葉には、善解すれば、基本に立ち戻るという意味が込められているのかもしれませんが、単に本業に戻るだけでは、企業は萎縮経営となり発展性は見込めません。

発展とは変貌することであり、成長とは変わることですが、自分にとってよく知る世界、手慣れた仕事である本業回帰だけをメーンテーマとしていては、何も変わらず、成長も発展もありません。

人が日々成長し続ける存在であるべきことと同様に、社会の構成員である企業もまた、成長し発展しなければならないと思います。社会が激しく変遷するなかで、企業も変わらなければ、社会から取り残された存在になってしまいます。それが、新規事業を興さなければならない理由なのです。

日本の経済はまさに斜陽化しています。そして、この事態を招いたのは、本業回帰という誤った方向性を示した経済界にこそ、責任があるのではないかと私は思います。

主に国内市場を念頭に置けばよかった時代が過ぎ去ったいま、企業がグローバルな社会で生き残り、さらには発展を遂げるためには、本業だけに固執していてはならず、新たな事業にチャレンジすることがどうしても必要になってきます。

この新たなチャレンジにあたっては、本業を土台として、そこから飛躍する事業を展開するというスタイルを貫くことが肝要です。新規かつ独自の事業を構想するためには、既存の事業の単なる延長線上の発展策では独自性を発揮できず、競争力の強化となる保障はありません。

その一方で、本業と突拍子もなくかけ離れた分野の事業に取り組むことは、長年にわたり蓄積してきた本業の力を無駄にすることになります。つまり、本業のノウハウを効果的に活用し、そこから意味のある飛躍をすることが、企業のリーダーには求められているのです。

単なる本業回帰ではなく新しい事業を興すには、まさに経営力が必要になりますが、この経営力の本質とは何でしょうか。それは、目標と時間軸を設定して具体的に明示すること、つまり方向性を明らかにすることです。このことが、実は社員を糾合するにあたって一番大きな決め手となります。

経営者・リーダーの目標設定能力は、利益を生む金の落ちているところを見極める嗅覚を伴うものでなければならないことはもちろんですが、それだけでなく、先見性にあふれたものでなければなりませんし、また、将来の夢を語るものであってほしいものです。経営者・リーダーが夢を語るとき、社員の心はやる気に満ちて、強く結束できるからです。

こうした的確な目標設定に裏付けられた新規事業への飛躍を実現するためは、一見したところ無関係にみえるようなヒト、モノ、カネ、そしてテーマなどをうまく結びつけて、アイデアを生み出すひらめきを持つことが必要になります。このひらめきの根源になるのが、資質や専門の異なる人々との交流です。

ビジネスの手掛かりを見出すための異業種交流会は、20~30年前より盛んに行われていますが、これからはより進んで、共同開発・共同研究といったレベルまで押し上げ、さらには共創(きょうそう)=共に創る=という意識までも持つことが必要になると思います。

また、社外取締役を採用する場合にも、むしろ企業経営者以外の人を積極的に社外取締役として迎える必要があるということも重要です。企業活動についてあまりにも無知や無理解な人材であってはなりませんが、企業の発展を目指すのであれば、やはり、発想の違う人、違う世界で生きてきた人を迎えるべきであると思います。

 

「グローバル化のなかの多様性」

ダイバーシティ(diversity・多様性)という概念は米国から入ってきたもので、10年ほど前より日本でも聞かれるようになりましたが、いまではかなり浸透していると思います。

ダイバーシティは、もともとは米国の公民権運動の流れで、人種・性別・年齢・国籍等の差別なく多様な従業員を活用すべきであるという「機会均等」の趣旨で提唱されました。

しかし、実際に多様な構成員のグループのほうがより創造的な成果を出し、企業に利益をもたらすことから、米国では以前より経営戦略のひとつとされています。つまり、異なる資質を持つ多様な人材が集まって共同で業務をおこなえば、新しい質的変化と飛躍と成長が見られることが、実務のうえでも実証されているのです。

では、どのような資質の異なる者を交流させて成長・発展につなげるかということになりますが、いまの時代に一番大切なことはグローバル化ですから、まずは、異なる民族・国籍の人材を融合すべきことになります。そうすることによって、日本人だけで物事を考えると同質性の思考しか生まれないという弊害を、除去するのです。

このように、グローバル化のなかでは、人事管理上も、異なる思考を可能にしていかなければならない要請が生まれてきています。つまり、日本ではグローバル企業しか将来性がないといってもよいでしょう。

現に、新卒採用でも外国人を採用する動きが急速に増えています。3年以内に新卒採用の8割を外国人にするというファーストリティリング(ユニクロ)、来年の新卒採用の約3割を外国人にする楽天は、その代表例です。

株式会社リクルート・柏木斉社長によれば、海外から新卒を採用する日本企業は「圧倒的に増え一年前から様変わりした」といいますが(2011年8月31日付日本経済新聞「人こと」)、前年に比べ大幅に伸びており、今後も継続する見通しであるとのことです。

先見性のあるグローバル企業で既に行われているこうした人材の現地化及び民族・国籍の多様化は、これからどの企業でも取り組むべき第一の課題になるといえるでしょう。

 

「多様な世代、専門家との交流」

人材のダイバーシティの実現に向けたもうひとつの方途・視点は、組織内の世代間の交流です。年金支給年齢が引き上げられることに伴い、企業は早晩70歳定年に対応せざるを得なくなるでしょう。そうなれば、企業には親子の世代格差にとどまらず、三世代が存在することになりますから、意識的に世代間交流を進めなければならないことになります。

また、経営や事業体の運営を社会の動きに合わせるためには、若い人の感覚を探り、若い人の思いを知り、若い人の意見を聴くことが重要になってきます。社会の変化を知るために、若い人のセンスに学ぶのです。

そして、その若い人の意見を集約して事業展開をしている異業種の方の意見をよく聞いて、自らの事業経営・事業運営のあり方との違いを見て、そこから新しい発想を得ることも必要ですし、さらには、専門に勉強している学者・研究者に学ぶことも重要になります。

学者は専門分野に特化して学んでいますから、当然のことながら、一般の経営者よりはるかに先進的な知識を身につけています。その先進的知識を自らの経営と事業運営のデータ・知識・知恵と掛け合わせて、新しい知恵を構築することが経営者の務めなのです。

 

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