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右上から
2015年12月19日(土)7:11 青葉区青葉台1にてマムを撮影 花言葉:「高貴、高潔」
2015年12月5日(土)9:35 千代田区六番町6にて山茶花を撮影 花言葉:「困難に打ち克つ」
2015年11月29日(日)7:56 芝東照宮にて冬桜を撮影 花言葉:「冷静」 

 

 

第2回 必要性と大義名分
(『労働新聞』平成27年2月23日より転載) 


朝日新聞に昨年10月から106年ぶりに再掲載されている夏目漱石「三四郎」の連載を、毎回読んでいる。大学入学を機に東京での下宿生活を始めた頃の私自身のことなども思い起こされ、感慨深い。連載第47回(2014年12月8日)の欄外コラムには、本文とは関係なくゲーテ(1749~1832年)の「法律は有力なり。必要は更に一層有力なり」(当時の邦訳)という言葉が紹介されていた。これは、彼の代表作「ファウスト」第2部5797節からの引用であるという(現在の訳は「掟の力は強いが、現実の否応なしの力はもっと強いのだ」等)。この大作は、彼が20代の頃から83歳で亡くなる直前まで書き継がれたというから、その意思の強さと無尽蔵の創作意欲には恐れ入る。法律家でもあったゲーテによるこの警句を明治時代の訳を前提に私なりに解釈すると、前段の「有力」とは人々を動かすという意味で、後段は、法律よりも必要性が人を動かすというような意味だと思う。「法律」は命令と禁止の世界であるが、「必要性」は、してもよい・しなくてもよいという本人の選択に委ねられた世界である。したがって、内発的・自発的な意思を基盤とする「必要性」のほうが、「法律」よりも人間を動かす強い起爆剤となる。必要性に突き動かされるとき、そこに道は開けるのだ。

 

労働法の分野ではどうだろう。かつて民間による人材派遣業は、職業安定法44条が禁じる労働者供給事業に当たるとして処罰の対象とされていた。しかし、1970年代半ば以降には、技術革新の進展やサービス経済の発達、女性労働者の増加、そして企業が人件費負担に耐えられなくなった等の社会経済の変化を背景に、労働力の需要・供給双方からの必要性に基づき、実態として人材派遣業は増加していった(思えばここに制度的格差問題の萌芽があった)。こうしたニーズの高まりを受けて、一定の業務については労働者派遣事業が適法化され、派遣労働者の保護を図る労働者派遣法が新しく制定されたのである(1985年6月)。

 

また、必要性といえば、いわゆる整理解雇の4要素のひとつ「人員削減の必要性」も挙げなければならない。人員削減の実施が企業経営上の十分な必要性に基づいていること、ないし「企業の合理的な運営上やむをえない措置」(「東洋酸素事件」東京高判昭54・10・29)と認められるときに、人員削減の必要性があるとされるが(菅野和夫『労働法』第10版567頁)、私が企業経営者の皆さんに説明するときには、単なる必要性では不十分であり、「大義名分」がなければならないと指摘している。なぜなら、単なる必要性では、人員削減に向けて大方の人を十分に説得できないからである。経営者自身が、人員削減措置を講じた先に実現したいと考える未来に向けた構想までも含めて具体的に明示しなければ、反対派を説得しきれない。大義名分とは、「道義」「道理」「道徳」をも包含する理念であり、法律よりも高次元で、単なる必要性よりも強い概念なのである。

 

こう考えると、大義名分の内容とともに、大義名分を語る者自身が絶えず自己刷新し続ける存在であることが極めて重要であると思えてくる。日々漫然と生きている者には、大義名分を語る資格がない。自分自身を常に更新する必要性を敏感に感じ取り、“自己革命”を起こすような努力なしには、他者を説得し動かすことなど到底できない。

 

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