第13回 高井先生言行手控え


 

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平成27年12月24日(木)7:52 中目黒公園にてゼラニウムを撮影
花言葉:「男心、結婚相手」 

 

 

 

築地双六館 館長
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事
吉田 修

 

 

②仕事・職業・労働市場について気になっていること

働く人が誇りを持てる社会に

いまの時代は、働いている人が、何か誇りを失っているような気がします。それは、わが国が世界的に貢献できることが少なくなってきたことによっていると思います。今後、ロボット・AI等が発達するにともなって、これらが労働現場に多く進出し、より一層仕事に誇りを持てない人が増えるでしょう。

誇りを失った労働観、あるいは職業観、あるいは仕事観というものを克服するには、やはり自分の担っている仕事、労働が、社会に貢献しているということを、若者の時代、すなわち幼児、あるいは児童・生徒・学生に徹底的に教え込むことが必要だと思います。そうしてこそ初めて日本人は誇りを持ち得ることになります。

要するに、自己実現ができないという現状のなかで誇りを持たせようとするのは無理なことで、自己実現のあり方の方向性を変えることです。それは、社会貢献あるいは自己実現に代えて、社会実現、世界実現という思想(すなわち、日本あるいは日本人が世界から尊敬される存在になり、世界に誇れるような成果を上げること、そして親日国がどんどん増えていくこと。そのような思想。)を植えこむことが大切だと思います。

 

注目される社会企業家

ビジネスを通じて社会問題の解決を目指す「社会企業家」が途上国や新興国支援で成果を挙げているという記事がありました(日経新聞2015年5月25日朝刊)。30代の若者が多いようです。米国の「大学生就職先ランキング(文系)」(図1)を見ると、教育支援NPO「ティーチ・フォー・アメリカ(TFA)」が、グーグル、アップル、ウォルト・ディズニーらを抜いて1位になっています。

 

 

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(図1)

 

TFAとはアメリカ合衆国のニューヨーク州に本部を置く教育NPOです。アメリカ国内の一流大学の学部卒業生を、教員免許の有無に拘わらず大学卒業から2年間、国内各地の教育困難地域にある学校に常勤講師として赴任させるプログラムを実施しているそうです。5位のピースコープ(平和部隊)は、1961年にケネディ大統領により設立された政府主導の海外ボランティアプログラムの運営実施機関で、2年間アフリカや南米などに行って現地で英語や様々な技術を指導するというものです。

こうした志はまことにすばらしいもので、我々の世代とはまったく異なる価値観と行動力を持ちあわせている人材が米国や日本でも育ってきていることは、頼もしい限りです。この分野では、女性の活躍が目立つようにも感じます。「先進国では優秀な学生ほど社会性の高い仕事を好むなど、社会企業家の裾野は世界で広がっている」という野田稔教授(明治大学大学院)の言葉には、宜べなるかなという思いがします。国際貢献とビジネスを自然に融合させ、両方を成功させるには、真の意味での知性と教養が不可欠であると思います。

全寮制のインターナショナルスクールISAK発起人兼代表理事である小林りんさんも、広い意味で、日本を代表する社会企業家のおひとりであると、私は敬服しております。

 

 

③企業経営・経営者について気になっていること

新産業で攻めの経営を

日本の企業経営の多くは要するに「守りの経営」になっているのではないかと思います。もちろん日本の経済が落ち込んでいることに理由があることは言うまでもありません。企業経営・経営者にある「守りの意識」は、実は、日本の企業が成長性を失ったということに根本原因があります。

成長性を失った日本経済の現状を脱却するには、成長を取り戻す以外にないのであります。それには、新産業を起こすという方法が一番適当でしょう。ロボット、AI、航空機事業、宇宙事業というような新産業について、日本で必死に盛り上げる以外ないと思います。

ビジネスの主戦場が日本国内から世界へ移っているということも挙げられます。グローバル化ということです。さらに主戦場はインターネットという仮想空間にまで広がっています。経営者は、これを前提として対処していかなければならないと思います。ドメスティック、ローカルでとどまっていては発展性がないということです。

生産拠点および市場開拓の海外進出先の選定としては、親日国へ軸足を移すことが必要であると思います。日本の経営者は一般に臆病ですし覚悟がありませんから、まずは親日国ということが明確な国に日本企業の経営資源を移管するということです。もちろん親日国でなくても十分に対処できる可能性のある企業はたくさんありますが、何はともあれ親日国から始めることが大切でしょう。

ちなみに、『愛される日本~外交官に託された親日国からのメッセージを今すべての国民に贈る~』(日本戦略研究フォーラム編2012年ワニブックス)は、台湾、トルコ、インド、タイ、ブラジル、ベトナム、ミャンマーの大使経験者等が、それぞれの体験をもとに、日本が諸外国から愛され尊敬されている事実を語った本であり、「親日国との外交こそが日本にとって最大の資源である!」(同書より)と気づかされる良書です。たとえば、経済大国への道を邁進するインドの人々は、独立戦争を支援した日本への感謝を忘れていないこと、インド初代首相であったネルー氏による『娘に語る世界史』で語られる日露戦争に勝利した日本への賛辞がいまもインドの教科書で紹介されていることなど、ほとんどの日本人は知らないと思います。

 

厚労大臣としてなすべき施策

Q2:先生が仮に厚労大臣になったとしたら、真っ先に着手される施策ベスト5とその理由をご教示ください。

①女性の管理職の登用と教育

女性活躍推進法が成立し、301人以上の労働者を雇用する事業主は、本年4月1日までに、①自社の女性の活躍状況の把握・課題分析、②行動計画の策定・届出・社内周知・公表、③情報公表等を行うことになりました。いわゆるソフトロー(刑罰はないが、公表という形で制裁がある)であり、次世代法(次世代育成支援対策法)と同じ仕組みです。①の課題分析には、採用者に占める女性比率、勤続年数の男女差、労働時間の状況、管理職に占める女性比率の4つの指標の把握が求められています。

私はとりわけ、女性管理職の登用と教育を推奨したいと思います。というのも、管理的職業従事者に占める女性の割合の国際比較をみるとアメリカ(43.1%)、フランス(39.4%)に比べ、日本(11.1%)は極めて低い水準にあります(図2)。

 

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(図2)

 

そして、日本で女性管理職が少ない理由として企業側が挙げる断トツの1位は「現時点では、必要な知識や経験、判断力等を有する女性がいない(54.2%)」というものです(図3)。この回答にこそ課題解決の本質が見い出されます。一つは評価する側である企業自身の判断能力の問題です。公平公正な勤務環境や育成・評価制度の構築にいかほどの努力を払ってきたかということです。

 

 

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(図3)

 

もう一つは、女性自身の昇進モチベーションの問題です。一般従業員の昇進を望まない理由の1位は、「仕事と家庭の両立が困難になる」というものです。これは、配偶者の支援なくしては実現しません。つまり、女性管理職を数多く誕生させるには、職場の上司や配偶者、つまり男性の理解と意思ある行動が不可欠ということです。女性の管理職の登用と教育の浸透を目指して、女性と男性の意識改革と実践行動のための研修プログラムの開発を厚労省、各企業、民間教育事業者が創意工夫をして行う必要があります。

国が行う(委託する)啓発プログラムやイベントは、とかく一方的で面白くない、その結果効果が上がらないというのが通り相場です。それは、教育する立場の者が教育されていないからなのです。教え方が鍛えられていないからです。学校の先生と塾の講師の違いはそこにあります。

霞が関の役人のファシリテート力、パフォーマンス力、コーチング力から鍛える必要があるでしょう。

 

 

②同一(価値)労働同一賃金の法定化

「同一(価値)労働同一賃金」の法定化をすすめるとともに、これを実践化する第一段階、第二段階、第三段階というステージを明確に作り、それを法定化するということを進めましょう。そうすれば、社会の格差問題は大幅に縮減すると思います。ただし、これには労働組合が大反対すると思いますので、そこをどう対処するかが問題です。「連合」事務局長に就任された逢見直人先生にお会いするときに、そのことをお話ししたいと思っています。

 

 

③労働市場のAI化に備えよ

ITの発達に次いで、ロボット・AIの登場という時代になってきました。そうすると、職業も仕事も、当然大幅に様変わりすることを前提として厚労省は対処すべきだと思います。もちろん労働市場も同様です。

例えば職業安定法の改正にあたっては、AI時代を見越して、50年後も通用する内容であることが求められます。職業紹介の定義自体の見直しや許可等の規制範囲を縮小し、結果責任を問う事後規制に移行するなどの対策が求められるところです。

 


④コーチング力の強化

労働政策のひとつとして、「コーチング」を積極的に導入したらどうでしょうか。本人に気づきを与えるということです。本人の発意で仕事にあたっていくようにすれば、真のキャリアアップになるということです。

若い人は礼儀作法がなっちゃいないことにも留意すべきです。これは家庭の問題でもありますが、家庭の教育力が低下しているいまの時代にあっては、若者の礼儀指導の一環として、おもに文部科学省が、道徳教育や礼儀指導を推し進めるべきであると思います。お仕着せにならないように、日本古来のお茶・お花・武道などを通じて精神を学ばせるとよいと思います。

 


⑤高校生の就職活動の規制改革も

高校生の就職活動には制約が多く、その結果、自由応募が主体の大学新卒に早々と切り替えたという経営者の声を多く聴きます。その制約事例の一つである新卒高校生の就職活動における「ひとり1社制」は直ちに廃止すべきです。1社落ちた後の次の会社はグンとレベルが落ちるといいます。時間的な機会損失です。

若者の職業選択の自由(憲法22条1項)の侵害にあたると言っても過言ではないでしょう。自由意志のないところに努力は生まれません。努力がなければ能力は向上せず、自発的な探求心も向上心も生まれません。そして、競争を罪悪視する体制からは、抜きん出た者は絶対に出現しません。この制度によって、たとえば、手に職を得て、日本の製造力を支えようとする人材が多数生まれる土壌が阻害されているとしたら、これは日本社会全体の大きな損失でもあるのです。

 

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