2016年3月11日のアーカイブ

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2016年2月27日(土)11:47 麻布十番2にて椿を撮影
花言葉:「控えめな優しさ、誇り」

 

 

第5回 青春時代
(『労働新聞』平成27年5月25日より転載) 

 

青春時代の特権は、大きな夢を抱いて遮二無二がんばり抜く熱意ではないか。やわらかな陽光を浴びて街を闊歩する新入生、新入社員の若者諸君の姿を見ながら、そんなことを思った。

 

齢を重ねたわが身の青春時代を顧みると、自分自身が何者たり得るのだろうかという不安もあったに違いないが、それをはるかに上回る夢と希望にあふれ、友情を育み、青雲の志を抱き、未来は光輝いていた。だからこそ、「志ある者は、事(こと)竟(つい)に成る」(後漢書)の意気込みで、リスクと失敗を恐れず、目標に向かって果敢に挑戦し続ける日々であった。また、当時の日本社会全体も、貧しくとも将来への夢と希望の信じられる良き時代であった。格差のめだたない時代でもあった。

 

大学1年生の夏休み、私は父の意向に従い、渥美半島先端にある曹洞宗・常光寺に1カ月間居候したことがある。自分の家と宗派の異なる寺をなぜ父が選んだのかは分からない。想像するに、人格者で勉強家のほまれ高かった先代の住職から、有形無形の影響を受けて成長してもらいたいと願ってのことだったのかもしれない。あるいは、大学入学以来、東京での初めての一人暮らしを経験して疲弊している心身を、静かな環境下で癒してやりたいという親心だったかもしれない。

 

そこでの生活で私は何か具体的な知識を得たわけではない。ただ、自分自身と向き合う恰好の時間を持てたことは確かである。私のかねてからの持論だが、人間の生き方にとって最上位にあるのは「志」であり、その下に「真・善・美」「夢・愛・誠」「道義・道理・道徳」があると思う。19歳の私が寺でこうした悟りを得たはずはないが、これに通じる何かをそのとき感じ取っていたのかもしれない。

 

大学を卒業して、新人弁護士として昼夜を問わず仕事に打ち込んだ。米国の映画会社13社の労使紛争問題について顧問弁護士のお手伝いをして得た経験は、現在につながる貴重な財産である。相当な激務であったが、やりがいがあり、希望にあふれ、楽しかった。その働きが認められて世界一周の航空券をご褒美にいただいたが、あまりに仕事が忙しく、結局ひとりでハワイに行ったのが初の海外旅行であった。何もかも目新しく、若い私は大いなるカルチャーショックを受けた。

 

江戸時代後期の儒学者・佐藤一斎は、「少にして学べば、則ち壮にして為すこと有り」(『言志晩録』第60条)と説いた。少年のときに学んでおけば、壮年になってから役に立ち何事かを為すことができるという意味である。若いときには、人生の土台となる様ざまな実体験から貪欲に吸収して学び取ることが何より重要である。

 

海外から日本を眺めて思索を深めるのも貴重な勉強の一つである。感受性の豊かな若いときこそ海外に行くべきなのである。

 

私は、若い人たちには、仕事から得る喜びを人生を豊かにするという実感を持ってもらいたい。現場体験を人材育成の端緒とすべく日本でも20年ほど前から始まったインターンシップは、資格に関係しないものに限っても大学および大学院の70%超で実施されているが、学生の参加率は2%程度という。これでは実効性が乏しいと指摘されても仕方あるまい。それでも、企業での就業体験を通して、夢と希望がいくらか現実になり成長する学生も必ずいると思う。良き人材を育むために、教育界と産業界と政治の連携による一層の制度改善を期待したい。

 

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