2016年9月2日のアーカイブ

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全て2016年8月28日(日)12:00頃千葉市若葉区の風戸農園にて撮影
右から時計回りに
落花生 花言葉:「仲良し」
タマスダレ 花言葉:「便りがある、期待」
オクラ 花言葉:「恋の病」

 

 

第13回「コンプライアンス」
(平成28年2月1日) 

 

 

「道徳を忘れた経済は罪悪であり、経済を忘れた道徳は寝言である」「道徳なき経済は経済に非ず。経済なき道徳は道徳に非ず」―前者は二宮尊徳、後者はその思想から大いに影響を受けた日本資本主義の父、渋沢栄一の言葉である。これらが指摘するのは、資本主義経済において経営者が最優先で取り組むべきは、より良い物やサービスを生み出し消費者や社会に貢献しようとする良心的な創造・生産活動であり、利益は結果としてもたらされるのだという戒めであろう。この思想こそが企業の社会的責任の本質なのである。

 

2015年は企業の社会的責任を改めて考えさせる重大事件が目立った。フォルクスワーゲン社の排ガスデータ改竄事件、東芝の不正会計事件などの報道が連日なされ、これら不正が長期にわたり組織的に行われていたことを知るに至っては、まさに言葉を失う。特に、歴代3人の社長らの責任が糾弾され、過去最大5500億円の赤字(2016年3月期連結純損益)が見込まれる東芝は、従業員1万人をリストラし複数事業の統合・譲渡・売却を断行せざるを得ず、さらには経済産業省などが支援に乗り出したとの報道をみれば、企業として存続さえ危ぶまれる状況である。自ら退職する優秀な人材も続出するだろう。私の経験からすると、全体の3分の1が流出すると、その企業は倒産の危機を迎えるといって良い。

 

私が最も憤りを感じたのは、東芝が設置した第三者委員会の報告に従い、東芝の監査委員会が現旧役員98人のうち経営責任を5人だけに認め、彼らへの3億円(連帯債務)の損害賠償で幕引きを図ろうとしたことである。経営陣の責任によって多くの利害関係者がどれほど損害を被っているか理解していないといわざるを得ない。東芝は、商法改正以前の98年に執行役員制度を導入するなど、日本の企業統治改革のリーダーだったという。法令を遵守した外形的に立派な企業で経営陣が不正を行っていたとなれば、仏作って魂入れずどころか、仏そのものをないがしろにしたことになる。

 

コンプライアンスは、一般に法令遵守とされるが、法律さえ守っていれば良いという考えは根本的に間違っている。私は、コンプライアンスとは、企業に利益をもたらす人々との信頼関係を仕組み化することであると考えている。これをかみくだいていえば、良心に基づく経営こそが企業の原点であり、コンプライアンスそのものなのである。良心を核に私心を排し邪心を削いで、自立心・自律心・連帯心・向上心を発揮する良心経営を原点にしてこそ、企業は大衆に支持され業績を伸ばすことができる。経営者が良心に恥じる言動をとれば、その企業は社会的に糾弾される。そして、真の意味でのコンプライアンス=良心経営を行えない企業には、社会的制裁という突然死があるのみである。

 

企業活動に携わる皆さんには、二宮翁、渋沢翁の教えをかみしめてもらいたい。経済活動の土台は道徳と良心なのである。そして私たち弁護士は、法曹倫理を厳守し、真のコンプライアンスの牙城たる社会的責任を負っていることを肝に銘じなければならない。東芝の第三者委員会は、役員らに対して3億円ではなく300億円請求すべしとするほうがまっとうな見解であろう。同委員会の委員の半数が弁護士であるが、法曹倫理の点からみても、彼らは自らの判断に極めて重大な責任を負うことをあえて指摘しておく。

 

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