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2016年8月28日(日)12:02 千葉市若葉区の風戸農園にて初雪草を撮影
花言葉:「好奇心、穏やかな生活」 

 

 

第12回 管理監督者問題の本質(4)
(2008年8月4日転載)

 

 

裁量性欠くとは言えず

「日本マクドナルド事件」(東京地判平20・1・28)は、店長職にある者が自らは管理監督者(労働基準法41条2号)に該当しないとして、会社に対して時間外割増賃金等を請求した事案であり、裁判所は「被告(=会社・筆者注)における店長は、その職務の内容、権限及び責任の観点からしても、その待遇の観点からしても、管理監督者に当たるとは認められない」として、過去2年分の時間外割増賃金等約755万円の支払いを会社に命じたものである。

管理監督者問題の「まとめ」を述べるにあたり、まずは、本判決は企業の実態を必ずしも捉えておらず適切でないとして、判決骨子とそれに対するコメントを述べたい。

企業では現場主義で経営しなければ生き残れないというのが今や常識であるが、現在の中央集権的な本社機構では現場の細かい事象まで監督できないのは明白である。事業所の数が増え、グローバル化によって把握する地域が広がるという状況のもとではなおさらである。

本判決は、基本的には本稿第2回・第3回でも言及した行政通達(昭和22・9・13発基17号、昭63・3・14基発150号)に則って店長の管理監督者性を、①職務内容・権限・責任、②勤務態様、③待遇の面から判断している。これらについて、ひとつずつコメントしていきたい。

 

①職務内容・権限・責任についての判断

本判決は「店長は…労務管理に関し、経営者と一体的立場にあったとはいい難い」「店長の職務、権限は店舗内の事項に限られるのであって、企業経営上の必要から、経営者との一体的な立場において、労働基準法の労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえ(る)ような重要な職務と権限を付与されているとは認められない」とする。

しかし、この裁判所の認識は(a)統一的協同体としての企業における現実の役割および(b)企業における現実の現場の重要性を正しく認識していないと言わざるを得ない。

(a)企業における現実の現場の役割

店長の権限が労務管理も含めて店舗内の事項に限られるのは至極当然のことであり、その上位組織が管轄している事柄については希望を伝えたり要請することならいざ知らず、くちばしを入れることなど組織の常識としてあり得ないし、あってはならないことである。もちろん、小なりといえども、店長は気掛かりなこと等を上層部に具申することはできるし、そうあらねばならない。

また、企業は統一的協働体でなければならないから、その意味において店長の権限は無限定とはなり得ず、裁量性に限界があるのは当然である。ことに大規模企業になればなるほど、企業としての信用を保持するためにも、店舗ごと・事業所ごとの運用に均一性を持たせる必要もある。問題は、より裁量性があれば店長・事業所長の働く意欲が一層強まるということであるが、他にも裁量性を大いに発揮すべき分野があるから、このことを以って裁量性を欠くとは必ずしも言い得ない。

つまり、しかるべき事業所であればあるほど、日々問題・難題が次々と生ずるから、当該企業の規則・運営方針に基づいて直ちに処理していかざるを得ず、それには店長・事業所長の幅広い裁量がなければ現実に迅速な展開はできない。店長・事業所長の腕次第という世界が現実に展開するのである。

(b)現実の現場の重要性

企業において現実に現場を知るのは店長等の各拠点の責任者であり、彼らは経営と一体であるがゆえに上位組織に対して報告・具申・助言等を行うべき立場にある。

企業は、本社だけで現場の細かい事象まで監督できないのは明白であり、現場主義でなければ成長はおろか生き残れないのは、常識であることは前述のとおりである。大規模企業・グローバル企業であればあるほど、現場の意見を尊重せざるを得ず、現場責任者の役割はより一層重要になってきている。現場を知り、現場のことを集約して本社により的確な情報を提供できるのは彼らしかいない。

このように、労務管理も含めた経営に関する事項の全てにわたり、何らかの形で店長の意見が貴重なものとして斟酌されているのは実態であるから、その意味で店長は経営と一体である管理監督者であり、極めて重要な立場にあると言える。裁判所は、企業におけるこうした現実の現場の意義を強く意識しなければならない。

なお、企業経営にとって「一国一城」と評価できるような重要な拠点の事業所長である店長には、この面でも一定の役割と権限を付与して然るべき裁量権を認めれば、経営に参画している認識が生まれる。そうすれば日々やりがいを感じて仕事に取り組むはずだ。そして所定の成果を上げれば、店長の責任の大きさとその功績の程度に応じて待遇する仕組みにすればよい。

即ち、いずれの企業であれ、然るべき事業所の店長・事業所長であれば、管理監督者性を認めるべきなのである。

 

②勤務態様についての判断

本判決は、「…被告(=会社)の勤務体制上の必要性から、…法定労働時間を超える長時間の時間外労働を余儀なくされるのであるから、かかる勤務実態からすると、労働時間に関する自由裁量性があったとは認められない」とする。

しかし、官民問わず、上司ほど長時間にわたって労働をすることが本来あるべき姿であり、例えば現代においては、社長といえども“重役出勤”するなど論外であることは言うまでもないし、一般上司においても同様である。

より本質的に言えば、現場重視という経営の本道からして、店長等の現場責任者は単なるマネージャーではなくプレーイングマネージャー化してきたことは広く企業一般の流れであるが、そうなればシフト勤務にも就かざるを得なくなる。

そしてそこで着実かつ瞬時に問題を覚知し、これに対する解を与えるのが現場責任者である事業所長としての店長の重要な役割となっている。そのような状況において日々どのような勤務に就くかは自らを律して決めるべきであることは言うまでもなく、まさに臨機応変の勤務姿勢が店長・事業所長には求められるのである。

 

実態とかい離した認識

このように、自分自身の1日の時間の配分即ち自らを差配すること、さらには部下の一日の時間の配分・差配等々、まさに店長は手腕・力量・裁量を発揮すべき重要な分野を当然抱えているのである。

事実、管理監督者の労働時間について、裁判所が言うような自由裁量が認められている企業など、現実にはほとんどないだろう。この点も、裁判所は実態と乖離した認識をしていると言わざるを得ず、勉強不足との謗りを免れまい。

 

 

来週9月15日(金)から、新連載「時流を探る~高井伸夫の一問一答」がスタートします。
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