2016年10月28日のアーカイブ

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2016年10月15日(土)16:16 千葉県夷隅郡大多喜町上総中野駅にて撮影

 

 

 

株式会社開倫塾
代表取締役 林 明夫

 

「心の経営体を目指して」

 

1.はじめに

高井伸夫先生から教えて頂いたことは数知れないが、最も参考になった教えは、経営者や経営幹部が心がけなければならないことは「心の経営体」を目指すべきだということだ。

 

2.では、目指すべき「心の経営体」とは一体どのようなものか。10年ほど前から、江戸時代の中期の思想家で石門心学の祖である石田梅岩(1685~1744)先生の主著である「都鄙問答」を少しずつではあるが岩波文庫で読むようになり、「心の経営体」とは何かを考える上で大きなヒントを得るようになった。

 

3.ただし、岩波文庫版の「都鄙問答」は1935年の初版本が再版されたものなので、漢文の素養に欠ける私にとっては難解なため、次のような本を手元に置いて読み進めた。

(1)柴田実著「石田梅岩」人物叢書、吉川弘文館1962年9月1日刊

(2)石川謙著「石田梅岩と『都鄙問答』」岩波新書、岩波書店1968年6月20日刊

(3)寺田一清著「石田梅岩に学ぶ」致知出版社1998年7月30日刊

(4)森田健司著「石門心学と近代―思想史学からの接近―」八千代出版2012年5月11日刊

(5)山岡正義著「魂の商人 石田梅岩が語ったこと」サンマーク出版2014年8月5日刊

(6)森田健司著「なぜ名経営者は石田梅岩に学ぶのか?」ディスカヴァー・トゥエンティワン2015年10月25日刊

 

4.以上に加え、本年2016年9月25日に致知出版社から「いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ」の最新作として城島明彦著「石田梅岩『都鄙問答』」が刊行された。

(1)城島先生の最新著は、漢文の素養の少ない私にとって難解極まる石田梅岩の主著「都鄙問答」の全文をわかりやすく現代語訳したものだ。「都鄙問答」に出てくる漢文も、すべて書き下し文にした上で現代語訳し、現代人にとり難解と思われる語句には、すべて親切この上ない解説が加えられている。

(2)高井先生の教えである経営者が目指すべき「心の経営体」とは何かを考える上で、石田梅岩の「都鄙問答」は欠くことのできない古典であり、この全文を正確に読み解く上で、城島先生の最新著はまさに「天の助け」と言える。

(3)是非、重版なった岩波文庫版「都鄙問答」の全文を、城島先生の最新著を用いて精読し、「心の経営体」とは何かをお考え頂ければ幸いである。

 

5.石田梅岩先生の考えを城島先生の現代語訳で少し御紹介させて頂く。

(1)私が拠って立つ信念は、「孟子」(尽心上篇)の最初に出てくる次の言葉だ。

「孟子曰く、其の心を尽くす者は、其の性を知る。其の性を知れば、則ち天を知る」

*「其の心」とは、「四端」と呼ばれる①惻隠、②羞悪、③敬愛、④是非の4つの心を指す。

*「其の性」とは、「仁義礼智の本性」を知ることをいう。

*つまり、「本性は天が命じるものであり、仁義礼智の本性を知るとは、即ち天を知ることになる」という意味。P.41~42

(2)「士の道は何をおいても、まず心を知って志を決めることだ」P.60

「心が正しく愚直な生き方を貫いているなら、ほかには少々の不足があっても志と呼んでかまわない」P.61

(3)学問の道というのは

①まず自分自身の行いをよく慎み

②義の心で主君を尊び

③仁愛の心で父母に仕え

④信の心で友と交わり

⑤人を分け隔てせずに愛し

⑥貧窮した人には同情し

⑦功徳があっても決して誇らず

⑧衣服からさまざまな道具に至るまで倹約を心がけ

⑨華美を求めず

⑩家業をおろそかにせず

⑪家計は収入に合わせて支出を抑え

⑫法をきちんと守って、家をよく治める

―学問のあらましは、このようなものである。P.68

(4)「道を知る」ということは、今の自分が置かれた立場に不満を唱えず、高望みをしないように自分を戒めること。P.71

自分の今の境遇は天命だと考えなければならない。P.72

(5)「心を知る」と志が強くなり、「義理」(義の道理)がよくわかるようになるので、学問は上達する。P.73

(6)仁者は、天地万物と心が一体となる。だから、目に触れるものが自分の心と異なることはないのだ。P.74

(7)立派な儒者は、常に学ぶ者の心を正し、徳ある人間を導くことに目的を絞っている。自分の文才を自慢せず、欲得とか世間の評価なども念頭に置かず、ひたすら人としての道を志している。P.75

(8)学び続けるならば、ついには聖賢の域にたどり着ける。われわれのような凡人は、欲を抑え、悪いことはしないようにして、刻苦勉励し続けるならば、少しずつそこに近づいていることがわかるはずだ。P.79

(9)生まれ持った「本性」を自覚して自身を濡している者を真の儒者という。

(10)心を求め、心を会得して教える儒者が真の儒者である。

(11)孟子(告子篇)は、「貴くなりたいと願う心は誰でも同じだ。誰もが自分の中に貴いものを持っているのに、それに気づかないだけだ」(貴からんと欲するは、人と同じ心なり。人人己れに貴き者有り、思わざるのみ)といっている。P.79

この言葉の意味をじっくり噛みしめてほしい。

 

6.おわりに

「心の経営体」の意味をこれからも考え続けたい。

以上

2016年10月23日(火) 

 

 

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