上から時計回りに
2016年10月16日(日)8:13 千代田区永田町2にて浜菊を撮影 花言葉:「逆境に立ち向かう」
2016年10月15日(土)16:15 上総中野駅にてブーゲンビリアを撮影 花言葉:「情熱」
2016年10月26日(水)14:04 千代田区二番町4にてパンジーを撮影 花言葉:「物思い」
第16回「エリートの抜擢とAI」
(平成28年4月25日)
非正規労働者が雇用者の約4割を占める現状では、格差問題解消への取組みが叫ばれるのは当然である。しかし、社会の健全な発展のためには、格差問題だけに着目しては不十分であり、エリートの抜擢・育成が極めて重要であることを忘れてはならない。人間は競争社会に生きているのであり、競争こそが個人を磨き、組織の質を高めていくといっても過言ではない。
「人事の本質」とは、優秀な者を引き立てて、無能な者を排除するシステムということになるだろう。つまり、競争のなかでの抜擢と淘汰を繰り返し、ひとりで3人分の仕事をする人物への切替えを進めるのである。
本来、正社員は非正規社員と異なり、管理職候補・役員候補として採用された存在だが、有名大学出身者でも役員になれない者が多数いる。正社員は、抜擢の対象となるエリート社員と一般社員に二分され、年次を経るごとにその差異が明確になる。このプロセスでエリート社員はますます才能を開花させ、能力を高めていくのである。これが、人事のヒエラルキーの中で公然となっているのが官庁や裁判所の人事であるが、すべての職域でも行われていることである。
抜擢の基準は、まず人望を集める人間性があるかをみる。そして、知恵があるか、情感が豊かであるか、意思が明確かという「知・情・意」が基本となる。その上で、良心に従った先見性・判断力と勇気を発揮し、リーダーシップに溢れた人物かということになる。時代のリーダーを育成するには、なるべく早い時期から対象者の能力を見極め、選抜・抜擢を行う必要がある。リーダーシップは能力開発が難しい行動特性とされているため、若い頃からリーダーとして頭角を現している者を選抜・抜擢して、その中から候補者を選び出すのが効果的である。
ところで、リーダーシップとマネジメントの違いは何か。前者は未来を指向し、後者は現実を直視する力である。リーダーは組織の方向性と目標を創造し、果敢に実行する。マネージャーは与えられた目標を達成するために行動する。私の経験でいうと、マネジメント力だけの者は経営者にはなれず、リーダーシップを発揮できる者はマネジメント力も備え、経営者としての資質も有している。
抜擢された者が能力を発揮するには、働きやすい環境に置く配慮も重要である。先輩社員に指示しなければならない場面は非常に難しいが、前任者が補佐し、リーダーを先輩が邪魔しないような体制を構築しなければならない。
さて、新しい問題がある。近未来の社会ではAI(人工知能)が仕事の担い手として存在感を持ち、多くの職域で人間に勝るようになる。AIが人間を負かす現象が様ざまな場面で展開されていくのであるから、人間はAIに負けないよう精進することが求められる。とすれば、社会における競争はさらに激化せざるを得ない。
近未来のエリートは、AIとの協調を絶えず考えなければならず、エリートやリーダーに求められる「知・情・意」の質も、AIの存在を前提とするものに自ずと変化する。新たなエリート像・リーダー像の誕生である。これまで私は、企業・組織には同業他社から引き抜かれるような価値ある優秀人材が100人規模当たり3人はほしいと皆さんに話してきた。近未来には、この3人のなかにヒトが何人入るのか、働く者はまさに正念場を迎えるのである。