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2016年10月23日(日)8:07 港区麻布十番1にてカランコエを撮影
花言葉:「幸福を告げる、おおらかな心」



第15回 人材グローバル化(1)
(2008年10月6日) 

 

 

アジア各国のグローバル化が猛スピードで進むいま、日本に時間的余裕はない―。高井伸夫弁護士は、欧米人と比べ人種的に劣位に立つ日本人がグローバル化を成し遂げるには、世界にはない繊細な商品、サービスを提供し続けることが不可欠とした。

 

私は弁護士として1973年に独立して東京に事務所を構えたが、さらに99年には中国上海、06年には北京にも事務所を開設し、ほとんど毎月中国に出張している。海外にも拠点を置くようになって一層強く感じているのが、グローバル化に視点を置く人材が、致命的に不足しているということである。

一般に、グローバル化における基本的要件・留意点は、①人材の多様性の許容・異文化への理解、②語学力を含むコミュニケーション能力の獲得と経営の現地化、③人事労務業務のグローバル対応―等々と言われている。

しかし、この問題は、そもそも日本人に「多様化」ができるかどうかという大前提から議論を始めなければならないと私は常々考えている。なぜなら、日本人は、国土が島国であるという地理的位置、単一の民族でひとつの言語を用いていること、そして連綿たる歴史や文化等を背景に、集団的かつ排他的行動をとりがちで、同一性価値観から脱皮しにくくなっている。これに天皇制や鎖国的心情からくる「妙な優越感と劣等感からくる変な自信」がないまぜになり、日本人は残念ながら集団主義であり、どうしても異なった価値観・思考・態度をなかなか容認しない。

 

劣位におかれる日本人

近世の歴史をみれば、明治以降、政治・軍事・経済面では西洋に拡大したが、日本人一般の世界はまだ本質的には西洋にまで至っていない。言葉・歴史・文化なども世界的な目で見るようになっていない。グローバル時代といえども、日本人伝来の価値観・視野は日本のままにとどまっている。シンガポール、インド、マレーシアなど旧植民地国の視野が広がっているのと対照的だ。このように、日本人は、グローバル化を図っても現地人に溶け込んで仕事をすることが得手ではないと思われる。

加えて日本人は黄色人種であるがゆえに現地化できない宿命を背負った民族でもある。グローバル化にはコミュニケーション能力が絶対的に必要で、日本人がこの点それほど劣っているわけではなく、この人種的問題こそ日本人が多様化や現地化を推進できない大きなハンディと思われてならない。

つまり、中国・ベトナム・インド等アジア各国で私がいつも痛感するのは、白人の如何ともし難い優位性である。アジアの人々では口ではいかに欧米人を悪しざまに言おうとも、実際には白人を崇拝し最大件の敬意を表し、服する。そして、日本人はアジアでは白人に対して劣位な立場に置かれるのが常である。アジア各国の人々は日本人に対する対抗意識を持ちがちで、ひどい者は反日感情を持つに至り、さらには日本人を屈服させようとする意欲すら持つ。黄色人種である日本人は現地の人が服する存在ではなく、それゆえに企業経営の実態を現地人に委ね得ず、真の意味で企業経営の現地化ができない。

こうしたアジアの人々の「白人崇拝の心理」及び「黄色人種である日本人に対する対抗心」の根本原因は何だろうか。ひとつは人種差別的な意味ではなく、欧米文化を享受する場においては、欧米人が生来有している彫刻的な美しさや雰囲気が、アジア人よりもカッコよくてさまになると感じられることが深層心理にあるからだろう。例えばジーンズの着こなしの違いやラスベガスとマカオのカジノでの光景の違いを見ても、如何ともし難い。洋装は欧米人の体型に合うもので、音楽やバレエ・ダンス等彼ら自身が育んだ文化や娯楽は、彼らを堂々と立派に見せる。また、もはや実際上の国際語となっている英語を母国語としていあるいは母国語同様に用いている彼らに、仕事のうえで服する気持ちが働くことも自然の成り行きかもしれない。

このように、白人の優位性は是認してしまうが、同じ黄色人種である日本人には優位に立たれるのを忌避するアジアの人々の心理的なレベルの問題として、日本人にとって、グローバル化は容易ではないことを肝に銘じて、現地化等に取り組まなければならない。つまり、日本人が現地で尊敬を集めグローバル化に成功するためには、勤勉で正直でよく働くという資質、さらには精神性の高さをも訴えなければならない。さらに他の国では決して真似できないような繊細できめ細やかな特質を持った商品やサービスを、世界の市場に向けて提供し続けなければならない。

このようにグローバル化がいかに困難な事業であったとしても、日本企業にとってグローバル化は必然である。なぜなら、日本の社会は人口減により年々市場が縮小するのは不可避であり、人材も市場もグローバル規模で考えざるを得ない。

 

全人間性備えた行動を

グローバル化は、大企業だけでなく中小・零細・微粒子企業にとっても生き残りを続けるために絶対的に必要である。むしろ大企業に圧倒される小規模企業こそ、海外に活路を見出さなければならない。

そこで、グローバル化に適する人材を確保することが課題となるのだが、小規模企業は限られた経営資源の中で人材育成しなければならないことになるため、経営者自身がグローバル化の実体験者として、海外で生活し現地の状況をよく知ることが必要不可欠になる。

グローバル化するとなれば、企業は様々な国籍の人材を擁して様々な国に市場を求めざるを得ず、それを可能にするには、第1に、日本人経営者に多様な価値観を許容し尊ぶ姿勢がなければならない。まず、アジアの歴史から学ぶことだ。その成果としてリーダーシップもマネジメント力の発揮の仕方も良い方向に向かう。多様な価値観を持つ人材を統御していくのはそうした地道な努力なしには不可能である。アジア各国のグローバル化が猛スピードで進む今、日本には時間的余裕はあまりない。

それでは、こうした多様な価値観を生かしながら複雑な組織を率いるに当たって、リーダーに最も強く求められる資質は何か。良心と善意と人間性である。良心と善意に基づく行動は、国籍・民族問わず全ての人間を納得せしめるのである。

ハートワークが旨とする「真・善・美」、良心・善意・成長というキーワードは普遍的であるが、さらにその上位にあるヒューマンワークは、人間らしさを基調とし、全人間性・全人格をかけて「夢・愛・誠」を育み続ける働きであり、これこそが人類共通のものである。これらのキーワードで示される価値観基準で日本人が行動するようになれば、グローバル化において新たな展望が開けるであろう。

 

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