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2016年11月23日(水)11:30 にてストック・ベイビーを撮影
花言葉:「愛情の絆」

 

 

第17回「貧困問題の克服」
(平成28年5月30日) 

 

 

「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」(古代ローマの哲学者セネカ)。

世界で一番貧しい大統領と呼ばれたホセ・ムヒカ氏(前ウルグアイ大統領)が講演でよく引用するこの言葉は、老子の「足ることを知る者は富めり」(知足者富)と同じ思想に立つものであろう。物質的な欲望を肥大させて欲しがり続けることの愚かさと不幸を説いていると思う。

しかし、物欲を批判し、精神の豊かさを称揚するだけでは解決できない厳しい現実が、いまの日本にはあるのではないか。子どもの貧困、下流老人、老後破産などという言葉がごく普通に使われ、足るを知るどころか、改善の見込みのない貧困に陥る人が大いに増えている。

これは、日本全体が貧しくなっている実情の反映でもあろう。民間給与実態統計調査(国税庁)によれば、正規・非正規を合わせて1年を通じて勤務した給与所得者1人当たりの年間平均給与額(男女計)は415万円(2014年)だが、ピークだった1997年に比べて52万3000円も減少している。そして、エンゲル係数(消費支出に占める食料品の割合)は、2005年に総世帯ベースで最低値22・7%だったところ15年には25%と上昇している(総務省)。また、生活保護受給者数についてみると、最低だった1995年度の約88万2000人からほぼ増加し続け、2011年度に過去最高を更新、今年2月分概数で2・5倍近くの約216万1300人となっている(厚労省)。給与所得が下がり、家計は苦しく、困窮者が増え続けているのである。

この4月に発表されたユニセフの報告書によると、子ども(0~17歳)のいる世帯の所得格差は、OECDやEU加盟の41カ国中、日本は8番目に大きく、最も所得の低い層の所得は中程度の所得層の4割ほどにすぎないという(各国所得のデータは主に13年)。親の貧困がストレートに投影される子どもの貧困問題の深刻さを思わずにいられない状況である。衣食足りて礼節を知るという言葉のとおり、貧困になればなるほどモラルは低下し、育児放棄のみならず親が子どものアルバイト代を奪う例まであると聞く。年老いた親の年金をあてにする無職成人と同じ“たかり”の発想である。

日本の15歳未満の人口は1982年以来35年連続で減少し、社会の活気が失われているが、これに子どもの貧困問題が加わると、日本全体を覆う沈滞ムードは倍増する。将来を担うべき子どもたちが、厳しい環境にあってもなお未来を信じて夢や希望や目標を持てる社会にしなければ、日本は消滅の危機に瀕するだろう。

私や私の親の世代は社会全体が貧しく、皆が必死で働き、家庭や近隣社会には温かさと愛情があった。子どもの貧困に関する法律が施行されたり、貧困対策が様ざまに議論されているが、実効性は未知数である。すべてが精神から始まるべしという摂理に照らせば、親や大人の心の貧困こそが貧困問題の根本であることを直視し、たとえ迂遠であろうとも、親や大人が自立心・自律心と責任感を持って働くための心の教育と、時代に合った仕事力を身につけるキャリア教育を施すしかない。

子どもは社会の宝である。子どもの貧困問題は国を挙げて取り組むべき最優先のテーマであることを、私たちは決して忘れてはならないのである。

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