2017年1月13日のアーカイブ

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2016年12月31日(土)12:27 新宿区山吹町で山茶花を撮影
花言葉:「困難に打ち克つ、ひたむきさ」


 

第20回雇用の未来(1)
(2009年1月26日) 

 

 

高井伸夫弁護士は、世界恐慌が深刻化するなか、「雇用の未来」を改めて問い直すべきであると提言している。柔軟な解雇法制と雇用の確保という、一見して相容れない要素を両立させる新しい労働概念の構築が待たれるという。

 

現下の厳しい経済情勢の中で、雇用の確保が最も重要かつ喫緊の政治的・社会的課題であることは言うまでもない。そこで、こうした状況を踏まえつつ雇用の未来を考えたい。

米国のサブプライムローン問題に端を発した金融不況は、瞬く間に100年に1度ともいわれるほどの世界恐慌に至ってしまった。これを単なる不況だと主張する者もいるが、物が売れず、ほとんどの企業が恒常的に赤字経営の状態に陥り、工場生産がストップし、人員削減が猛烈なスピードで進み、消費がさらに委縮するという悪循環に陥っている世界的状況を、恐慌と呼ばずして何というのか。

恐慌(panic)とは、経済用語ではなく、本来は心理学用語である。猛烈な不況の中で、社会全体が言いようのない不安や閉塞状態に陥り、先の見えない恐怖と闘う心理状態に追い込まれてしまうことである。私はこれまで経済を専門に勉強したことはないが、人事労務を専門とする弁護士として多くの企業経営の実態について現場の目から経済の動向を見続けてきた。だから雇用の問題を通してではあるが、恐慌についても私なりの見解を持っている。

恐慌とは、すなわち社会的に物やサービスが売れなくなる状態であると定義するのが最も妥当であろう。これは企業において固定費をまかなう収入すら得られない状態が広がり、赤字経営が一般化するという状況である。この状況に陥ると、消費が落ち込み、物が売れず、企業が在庫を抱え、在庫の保管場所さえなくなり生産を止めざるを得なくなる。そうすると従業員は解雇され、物を買う金もなくなり、悪循環が始まる。あちこちの企業から端を発して、全国的にかかる状態になると、国内恐慌といえる。さらに全世界的に物が売れなくなる状態を世界恐慌という。現在はその真っ只中に向かいつつある状態のなのである。

 

正規・非正規基準の行方

実体経済を支える製造業があっという間に前代未聞の著しい不振に陥った。例えば、自動車もデジタル機器も工場の操縦が大幅にセーブされたり工場建設が延期されたりしている。こうした実体経済に表れている事象こそが、経済を考えるに当たり、最も重要である。アメリカの自動車会社は「経済破綻しないよう金融支援をせよ」「資金繰りを助けよ」「救済法を制定せよ」という趣旨のことを言っているが、そういうことが世界的に広がると、日本においては単に自動車産業だけでなく電機産業等々すべての輸出関連企業に伝播し、貿易立国の日本は破産する。

すでに各企業はこうした経営不振に耐えきれず、人員削減を余儀なくされている。今は非正規社員が先にリストラの対象にされるのが普通であるが、次回以降に詳述するとおり、近未来においてはこの正規・非正規の判断基準はなくなると言ってよい。

そして、これまでは2年ほどのタイムスパンで雇用調整が行われてきたが、今は6カ月ぐらいで行われている。しかし、さらに迅速に3カ月ぐらいで瞬時に雇用調整を行わなければ、経営は大変な事態を迎えることになる。

この状況が現実となったことで、経営者や人事労務に携わる者すべてにとって、雇用の未来について考え、適切な施策を講じなければ生き残れない様相を呈してきた。

社会・経済が激変しているからこそ、未来への方向性をしっかりと踏まえた人事労務施策が求められるのである。即ち、施策をこれからの事業戦略の実現に貢献し得るものにするためには、未来を透視した先見性に富んだものでなければならない。私は、本紙でも機会あるごとに「事業戦略は人事政策に宿る」と述べてきたが、同様の言い方をすれば、「雇用戦略は企業の未来展望力に宿る」といえるのである。

 

「ユニークネス」追求を

いったい人事労務の未来について考えることは何のために必要かと言えば、人事労務は法律より少し先行して進めなければならないからである。法律が定められ、運用・適用されるのは、実は既に起こった事象を追認するという形で展開されていくのが実態である。人事労務の未来を見つめるのは、未来の方向性を推認するということであるが、そのことは実は法律を先取りして事態を改める手続きを進めるということになる。

企業の進歩は競争であるがゆえに、あるべき未来を明確に想定して、「戦略」の立案つまりユニークネス(独自性)を追求することが少しでも早ければ、企業間競争に勝ち抜くことができる。

未来を予測することは、今起きたことを確認する手続きではない。様ざまな兆候の中から、未来のあり方を透視して、それに基づいて施策を実施していくことであり、必要なのは、ユニークネスを追求するために、未来を予測したうえで「やるべきこと」を明確に定めると同時に「決してやらないこと」を明確に定めること、つまり「トレード・オフ」を実行することが求められるのであり、このことが企業戦線において勝利するために肝要と言ってよいのである。

先陣で走れば走るほど抵抗が強く、困難が多いものの、収穫も多いということになる。そのことから、何と言っても正しい展望をもって未来を見つめることが必要である。誤った方向で未来を見てしまったら、先陣を切って走ることが、後塵を拝することにつながることは言うまでもない。

雇用の未来は何であるかと言えば、労務提供のあり方の変化、あるいは報酬のあり方の変化、さらには雇用関係、能力強化のあり方を見極めることである。

そもそも、労働の世界は奴隷制から始まったが、やがて、労働時間制が採用され、労働のあり方が規制されることになった。そして、その先が何かと言えば、労働時間の規制を超えて、新しい労働の概念を構築することが必要であるということである。

その際には、フレキシキュリティー(flexicurity)という新しい政策目標も検討課題となるべきであろう。フレキシキュリティーとは、「flexibility=柔軟性。柔軟な解雇法制」と「security=安全を保障すること」をつないで作られた造語である。これは労働市場の柔軟性を維持することと雇用を確保するという矛盾しがちな2つの目標の両立の方向性を目指す言葉であり、近年EUで注目されているという(日本総研「Business & Economic Review」2007年6月号・藤井英彦氏「OPINION」等参照)。

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