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2017年2月4日(土)14:10 港区北青山にて白梅と紅梅を撮影
白梅の花言葉:「気品」 紅梅の花言葉:「優美」

 

 

第22回雇用の未来(3)
(2009年2月2日)

 

 

日本人の長寿化は進む一方である。平均寿命の推移を辿ると、1900年頃‥男性43・97歳、女性44・85歳→1950年頃‥男性59・57歳、女性62・97歳→2000年‥男性77・72歳、女性84・60歳→2007年‥男性79・19歳、女性85・99歳(厚労省生命表参照)であり長寿化に比例して勤労年数も長くなっていることは容易に推測できる。

 

キャリアこそ「資産」に

しかし、人間の寿命の伸びとは反対に、企業の寿命は短くなっているという現実がある。「日経ビジネス」誌は1983年9月19日号掲載の調査で、売上高や総資産を元に日本企業の寿命を「30年」と発表して話題となったが、同誌1999年10月4日号掲載の調査では、株式時価総額をもとに日本の企業が大きな影響力を持つ盛期は7年以下で、米国企業は5年以下と発表した。社会・経済の変化のスピードが加速度的に速まり企業環境が激変している現在では、この期間はさらに一層短くなっているだろう。企業の寿命が急速に短縮化する一方で、人間の寿命は伸び続けている現実は、企業・組織で働く労働者は、自ら絶えざるキャリアアップを期さなければ人生をまっとうできないことを示している。

ここにこそ、長寿社会における雇用の未来の変化の原点があり、「キャリア権」概念思想が生まれる所以でもある。

法政大学大学院の諏訪康雄教授が10年以上前から提唱されている「キャリア権」については、本紙2008年1月21日~2月4日号掲載の拙稿「注目すべき『キャリア権』」(上・中・下)で論じたとおりであり詳述しないが、「キャリア権」概念とは、今の時代は職業キャリアこそが働く者にとっての資産であり自己実現の重要な手だてであるという発想から、これを権利概念にまでに高めて雇用関係を見直そうとする考え方である。法文上は「職業生活」「職業生活設計」等の文言が職業キャリアを念頭に置いたものであり、個々の労働者の能力の向上なくして企業の成長も実現し得ないという点において、雇用の未来には人材教育の重要性と同様に「キャリア権」の視点がなお一層注目を浴びるようになるだろう。

さらに言えば、時代の変化に応じて人はキャリアを変えなければならない事態も起こる。ドラッカーは自らをマネジメントする必要性を説く中で、次の5項目をチェックポイントとして掲げている。即ち①自分は何か、強みは何か、②自分は所を得ているか、③果たすべき貢献は何か、④他との関係において責任は何か、⑤第2の人生は何か(P・F・ドラッカー著「明日を支配するもの」1999年)。

これらを常に念頭に置き能力・技術・技能を磨き続ける者であれば、今のような世界同時不況においても有為の人材として組織から必要とされ、活躍の場が得られるのである。

なお、キャリア開発や方向転換に当たっては、進路指導を行うキャリアカウンセラー等の専門家が必要となってくるが、その際に留意すべきは、前提条件として、本人自身が努力し勉強する資質と「学び方を学ぶ(Learning To Learn)」スキル・能力を身に付け、幅広の情報を身に付けたり的確な判断をなし得る資質に優れていることが必要となろう。そうした向上心あふれた人材を対象として、今後の人事部門においては職務能力開発室等の部署が重要な役割を担っていく。キャリア開発支援は優秀人材の囲い込み・リテンション策でもあるのだ。

職業キャリアの問題を考えるに当たっては、今後、急速に進むデジタル情報化・グローバル化の流れをも念頭に置かなければならない。私が言いたいのは、各人がIT技能や語学能力の向上に励むべきという当たり前のことではない。ここで強調したいのは、さらに高次元の問題として(私の造語であり恐縮だが)「ヒューマンワーク」を意識すべきだということである。

デジタル化の進行によって職場ではハートや人間関係のぬくもりが失われ始め、「お早うございます」の挨拶さえできない者が増えつつあり、また信じ難いことに、傍らの上司にさえ口頭ではなくメールで報告を済ませて何ら疑問を抱かない者もいる。その背景には、ハートを反映した口頭による報告の重要性等を教える上司も、温かくて厳しい上司も減っていることがある。人間の温かさや優しさが職場から失われ人との関わりを拒み、パソコンが我が唯一の部下となるような状況では、人は孤独でストレスも上手に解消できず、うつ状態に陥るであろう。

笑いはストレス解消につながり免疫力を高め病症の軽減にも資することが、医学的にも実証されてきているという(日本医科大学リウマチ科HP参照)、九段坂病院副院長の山岡昌之先生(心療内科)が、職場の誰もがよい関係でいるための3カ条として「挨拶」「雑談」「冗談」を挙げられるのも、人間のコミュニケーションにとって笑いの効能がいかに大きいかを指摘されていると思われる。

 

ヒューマンワーク時代

こういう時代であるからこそ、全人格・全人間性をかけて労を惜しまずに尽くすべきは尽くし、「血と汗と涙の結晶」としての労働=「ヒューマンワーク」をなし遂げることによって、相手の心を和らげるとともに自分自身の人間性をも豊かにすることが一層求められると言ってよい。

また、グローバル化が進むことで、労働の評価には、国籍や民族や文化の違いを超えて納得できる基準が必要となってくる。その場合にも、「ヒューマンワーク」は多様な価値観を超えて万人の旨に届く評価基準として重要になってくるだろう。

常に相手のことを思いやり全力を尽くし「本気」で「熱意」「情熱」を以って仕事をしている人にとっては、「ヒューマンワーク」は敢えて強調するまでもない至極当然のことと思えるかもしれない。しかし実際にはごく一部の限られた者しか「ヒューマンワーク」を実行できていないのであり、雇用の未来には、このことを日々為し得る者しか生き残ることはできない。その意味で、これからは「ヒューマンワーク」の時代と言っても過言ではない。そして今のような不況・大恐慌の時代には人の差別化や企業の差別化が求められるから、「ヒューマンワーク」はそこでも確固たる評価基準として機能することになるだろう。

2008年4月に施行された改正「パートタイム労働法」は、正社員とパートタイマーとの処遇等の均衡をめざすものであるが、「ヒューマンワーク」の概念は正規・非正規の身分とは全く関連しないことに注目して頂きたい。「ヒューマンワーク」を実行した者は、労働の身分と関係なく正当な評価を受けるべきなのである。全身全霊をかけて労働の成果を上げた者は、雇用の場において人間性の創出・発揮をしたことに対し正規・非正規の差異なく取り扱うことこそが均衡概念にもつながる。

「不患寡而患不均(貧しきを憂えず、均しからざるを憂う)」とはかの毛沢東の言葉であったともいうが、雇用の未来では、正規・非正規の区別なく労働の成果が均しく評価されなければならないのは言うまでもない。

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