2017年3月17日のアーカイブ

<働き方改革> 第1回 総論


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2017年2月11日(土)8:43 千代田区三番町にてジャノメエリカを撮影
花言葉:「休息、幸運」 

 

 

 

<働き方改革> 第1回 総論

 

1 働き方改革の背景

 

日本経済は現在、戦後の高度成長期、その後のバブル景気、そしてその崩壊を経て、生産性が低く成長が滞った状態が長く続いています。

さらに、日本の人口は、現在1億2600万人(2017年2月時点)ですが、2100年には8000万人を割るとの調査結果も出ており、このままいけば日本の財政が破綻するのは必至といえるでしょう。

現時点で、国債、地方債も含めた日本の借金は1,300兆円とも言われていますが、それを現在の人口である1億2600万人で割ると、乳幼児や高齢者も含めて国民1人当たり1,000万円以上の負荷、要するに債務を背負っていることになるのです。

今後、日本の人口が減少していき、4,000万人台に突入すれば、日本国民は1人当たり2,000万、3,000万円という借金を背負っていかなければならなくなります。そうなれば、日本の経済が立ち行かなくなるのは目に見えて明らかです。

そこで、この窮状を乗り越えるために、結婚・出産によって職場から退いた女性や定年退職後の高齢者、障碍や難病を抱える人たち等を雇用し、日本人全員の労働力を十全に活用する、つまり1億総活躍社会の到来が今求められています。 1億総活躍社会を実現するためには、従来の労働時間の長さに頼った企業の運営を見直して、労働時間や労働日数の規制を行うことで労働者の健康状態を心身ともに良好にし、生産性を高めて企業の成長を保っていくこと、つまり働き方の改革が必要になるのです。

 

そしてまた、人間の平均寿命が伸び続けている一方、少子化が進む今の時代においては、日本の人口の4割を65歳以上の高齢者が占めるという時代がすぐそこまで来ています。

このような社会では、大学を卒業し、新卒で就職した会社に定年まで勤め上げ、退職後は支給された年金で暮らす、というこれまでごく当たり前であった人生プランは成り立たなくなるでしょう。若年者が減少すれば、納税額も減り、日本の年金制度は危機に瀕することになります。そうなると、日本人は皆、人生においてかなりの長期間、場合によっては50年や60年にもわたって働き続けることになります。

人は、一般的に、若年期や壮年期のような働き方を一生続けられるような心身の強さを備えてはいませんから、こういった観点からも、働き方を改革することが求められるのです。

 

ただし、働き方改革はあくまでも日本経済を立て直すための手段、いわば目的地に到着するための乗り物であって、道筋そのものではないということを忘れてはなりません。

安倍政権は日本経済の建て直しの方策として打ち出したアベノミクスにおいて、「三本の矢」の一矢の成長戦略を実現する手段として、産業構造改革を唱えていましたが、現時点で目に見える結果は出ていません。

しかし、衰退している地方都市に、これまでのハード産業ではなく、ソフト産業を興すといったようなことでも、日本全体の活性化にはつながるのですから、産業構造改革は、どんどん試みるべきであると私は思います。

世界をリードする日本経済を実現するためには、まずは産業構造改革の成功、つまり歩むべき道筋を明確にすることが必要不可欠で、これができてこそ働き方改革という個々の労働力の運用も正しく機能するようになるのです。

 

 

2 新しい視点、システム

 

しかし、労働時間の規制といっても、生産性の向上と両立し、企業ひいては日本経済が成長するためには、今までと同じような働き方のままで個々人がただ労働時間を短縮していたのでは意味をなしません。

労働時間を規制するということは、人間が成長するために欠かせない「尚、尚」とか「さらに一歩」という心境であり続けること、チャレンジし続けることの足枷になります。人が向上心を持つことが困難になれば、生産性も自ずから下がってしまいます。

この点、中国では、従来、多分に労働者寄りであった労働契約法を、企業寄りに改正しようという動きがあるなど、日本とは逆の方向に進んでいるようです。

中国という大きな国が、労働の質を向上させることになれば、中国経済はより発展していくことになり、日本にとっては今以上に脅威となるでしょう。

さらに、働き方改革によって雇用を増大した場合、それはとりもなおさず賃金政策とも関連することになります。原資が増えない限り、雇用を増やせば賃金が低下するという恐れがあることも留意しなければならないのです。

私の青年時代には「3S運動」や「5S運動」というものがありました。これは製造業やサービス業において職場環境の整備・改善のために使用されたスローガンで、5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾を表し、3Sはこの内の整理・整頓・清掃を表しています。こういった運動を通じて、人々や企業は働き方を刷新し、生産性の向上を図ったのです。

働き方改革においては、この「3S運動」や「5S運動」を超える新しい視点、あるいは新しいシステムの導入が必要不可欠なのです。

 

① 賃金体系の見直し

 

この点、生産性を向上させる手段の一つとして、賃金体系の見直しという方法が考えられます。

日本では現在、年功序列給、職能給、という制度を採用している企業が主流ですが、これを成果主義賃金、職務給に転換するのです。

成果主義になれば、賃金を長時間の労働により裏付けるという図式が崩され、無駄な長時間労働が駆逐されます。そして、競争力が増すことにより、企業全体の生産性の上昇につながるのです。

しかし、成果主義も行き過ぎると、より高い成果を挙げるために、労働時間の規制を無視して働くという傾向が強まりかねないので、注意が必要です。成果主義を採用するのであれば、労働時間に規制を設けて、生産性を一定の水準に落としこむシステムの構築が必須といえるでしょう。

この成果主義賃金への移行は、働き方改革を実現し、日本のGDP600兆円を実現するための手段として専ら謳われていますが、しかし、これはある意味では刺激策として実施されるものだということを忘れてはなりません。

成果主義は、本来の日本人の協調志向・安定志向に沿わないものです。また、年功序列給から成果主義賃金体系に移行すれば、日本で従来採用されてきた終身雇用制度を破壊することになるでしょう。

これらのことに配慮せず成果主義をただひたすらに推し進めれば、ストレスによるメンタルヘルス不調者が急増する可能性は極めて高くなるでしょう。

 

② 仕事量の減少

 

また、働き方改革における生産性向上のためには、仕事を少なくすることがポイントだという説もあります。しかし、仕事というのは作業過程においては、何が結果に結びつくかは分からないものであり、どうしたって結果的に無駄になる仕事をせざるを得ないものです。無理に仕事量を少なくしようとすれば、真に仕事の成果を挙げることの妨げにもなりかねません。

つまり、仕事の減少による生産性の向上というのは、仕事の骨格において何が屋台骨になるかを見極めることができる能力があってこそ初めて実現可能になるもので、この能力がなければ仕事を減らすことはできないし、ひいては働き方改革も実現しないことになります。そういう意味において、教育こそが働き方改革の基盤になるのです。

 

③ 勤務体系の見直し

 

現在、長時間労働を規制すべく、既に特別条項付36協定の見直しが図られていますが、過重労働によるストレスを軽減するためには、労働時間の減少に留まらず、勤務体系から見直しを図ることが必要です。

この点、欧州連合(EU)では、1900年代初頭から、加盟国に最低でも11時間の休息確保を義務付ける「勤務間インターバル規制」を導入しています。

これは、日本には存在しない「休息時間」という概念に基づいた制度で、疲労の蓄積を防ぐためには24時間につき最低連続11時間の休息時間を必要とするという考え方に基づいたものです。

日本でインターバル制を導入しているのは、現在ごく僅かな企業に留まっていますが、今年1月30日の参院予算委員会で安倍首相がこの制度の導入を検討する考えを示したことから、今後導入する企業が増えていくことが予想されます。

 

 

3 まとめ

 

このように概観しただけでも、働き方改革はいくつもの大きな問題を内包しています。

しかし、冒頭に述べた通り、日本経済が行き詰っている現在、働き方改革は政府の呼びかけを待たずとも、国民全体で取り組まなければならない課題なのです。

本ブログでは、これから24カ月にわたって24社を取り上げ、各々の企業の働き方改革への取組みと、企業の担当者の方々が考える問題点について提示していきたいと思っています。

読者の皆様が、働き方改革の在り様を見つめ直すための一助となれば幸いです。

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