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2017年2月12日(日)7:21 港区六本木にてチューリップと牡丹を撮影
チューリップの花言葉:「思いやり」牡丹の花言葉:「富貴、恥じらい」

 

 

第21回 働き方改革(2)新しい成長主義
(平成28年9月26日) 

 

 

私は、人事・労務問題を専門とする弁護士として様ざまな経営者の方々と半世紀以上お付き合いをしてきた実感から、アベノミクスの繰り出す政策に違和感を抱き続けている。最近では、担当大臣まで新設した働き方改革だが、長時間労働を是正するとしても画一的に時間の長さにのみ着目することに合理性はあるのか。安倍首相は「働き方改革実現推進室」の開所式で、「モーレツ社員の考え方が否定される日本にしていきたい」「長時間労働を自慢する社会を変えていく」「世の中から非正規という言葉を一掃する」と訓示したというが、企業規模や業種によって事情は異なるし、どのような仕事であれ、その真髄を知るには寝食を忘れて没頭すべき時期が必ずある。労働時間規制が“ゆとり社員”を生み出し企業や組織の活動を阻害するようなことがあれば、本末転倒である。

ところで、アベノミクスの旧・第三の矢は「民間投資を喚起する成長戦略」であったが、未だ有効な施策が講じられたという話を聞いたことがない。

私は、日本ではもはや成長主義は成り立ち得ないと考えている。なぜなら、日本の総人口は2100年には5000万人を切ると予測され、国全体が急激に縮小しているからである。

具体的意は、農業は荒廃農地面積が高止まりし、私の知っている工業団地はいずれも活気を失い、さらにはシャッター通りが増加し、空き地も増加している。また、一般労働者の賃金は、2015年に持ち直したものの01年をピークにほぼ減少し続け(厚労省)、1年間を通じて勤務した給与所得者のうち年収300万円以下の層が、約40%を占めている(国税庁)。これでは消費や教育等に支出する余裕はなく、経済成長は見込めない。そして、海外に活路を見出そうとしても、最後のフロンティアであるアフリカを除いては、世界経済全体に伸びしろがなく(佐伯啓思京大名誉教授『週刊新潮』2016年9月8日号記事等)、外実を求めての投資は無駄な努力であり、内実を追求すべきなのである。

エコノミストの中前忠志先生は、「長期的に物価が下がる状態をデフレだとすれば、いったんその傾向が定着すると100年程度は持続するのが通例である」と以前より論じ(『目覚めよ!日本』より)、また斎藤一人氏は実業家の立場から、世界で同一労働同一賃金が実現しなければデフレは終わらないと指摘している(ユニクロが目指す世界同一賃金はこの先駆けであろう)。

少子化・人口減少社会での働き方改革は、量的成長を断念し、質の向上・内容の充実にシフトする覚悟を持つことである。そのひとつのヒントは、「匠の精神」にある。日本、スイス、ドイツなどの技術の精巧さや職人気質を念頭に置くこの言葉は中国で3年ほど前から流行し、この3月の全人代の政府活動報告(李克強首相)にも盛り込まれて話題となった。日本の労働生産性はOECD 34カ国中21位(2014年)である(日本生産性本部)。働き方改革では、労働生産性の低さを指摘する議論が必ず出てくるが、匠の精神により質の高い丁寧な仕事をすれば、統計上の生産性が下がるのは当然のことで、この点はあまり気にする必要はないと思う。むしろ、労働時間の規制に縛られて匠の精神を実現できないことのほうを危惧する。安倍政権には、新しい成長主義を真剣に検討し国民に説いてもらいたい。

 

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