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2017年3月17日(金)7:37 芝公園にてデージーを撮影
花言葉:「平和、希望」 

 

 

第22回 内部通報のあり方
(平成28年10月31日)

 

 

“blow the whistle”(警笛を吹く)とは、内部告発をするという意味で用いられることがあるという。2000年頃より国民生活の安全を脅かすような企業不祥事が内部からの通報を契機として相次いで明らかになったわが国では、06年4月1日に公益通報者保護法が施行され、公益通報が企業・組織におけるコンプライアンスの一翼を担う制度と位置付けられている。一方で、事実の反する不適切な笛を吹く通報者の存在も否めない。しかもこの問題は、消費者保護、労働者保護、企業機密の保護、企業の名誉、企業秩序の問題(懲戒権)、働く者の真理・感情の問題、経営者の統率力、グローバル社会において企業に求められるシステム等々、多面的に論じられるべきものなのである。法改正を視野に入れた消費者庁の有識者検討会が、公益通報者をより保護する方向での改正案の取りまとめを指向したものの成らず、専門家ワーキンググループでなお議論が続いている旨の報道があるが、これは真剣な討議が重ねられている証左である。

一般に、企業における内部通報等の動機としては、主に社会正義などもあろうが、私的怨恨によるものが多いのではないか。そして、企業・組織にとって、一度出回った風評被害を払拭することは難しい。仮に、通報者が法律によって不利益取扱いを受けないことを奇貨として通報すれば、企業は大きな損害を受ける。その意味で、要件を緩和して通報しやすくする方向の法改正等を是とする見解については、私も懸念を抱いている。公益通報者保護法は通報者保護を図る法律であるから、現行法でも、公益通報され企業の社会的信用が損なわれた場合であっても、当該通報が一定の要件を満たしていれば、公益通報を理由とする通報者の解雇等は無効であり、不利益取扱いをしてはならない(3条、4条、5条)。

企業としては同法とガイドラインを十分理解したうえで社内通報制度を構築し、不正を自律的に未然に防ぎ、あるいは早期に対応することで、損害を最小限に抑える自浄作用を働かせる以外に、通報に伴うリスクを減らす方途はない。

法も、報道機関等の外部への公益通報には、書面による内部通報後20日以内に調査を行う旨の通知がないこと等の要件を求めており(3条3号)、内部通報はまさに「予防医学」に通ずる性質のものであるといって良い。生活習慣の改善や健康教育等によって病を遠ざけ(一次予防)、疾病等に罹患しても検診等により早期発見し、対策を講じて重症化を防ぐ(二次予防)。予防医学になぞらえるなら、患者(通報者)、担当医(通報窓口)、院長(経営者)の三者が誠実でなくてはならない。そして、患者から申告を受けて病状を判断して対処する担当医の役割が最も重要であり、社内通報制度でいえば、通報先がより実効的なものでなければならない。社内窓口ではたとえば、正義感の強い従業員代表1名、心理カウンセラー1名という3名の構成で、ファーストオピニオンからサードオピニオンの合議を経た結論を出せば、経営者はこれに真摯に対応せざるを得ない。

外部機関への通報の要件を緩和する等の法改正がめざされるのであればなおのこと、消費者庁は、リスクを知らせる笛を経営者が的確に聞き分けて経営の糧とできるよう、専門家の導入をより促す方向での社内通報制度づくりのガイドラインを整備しなければならないのである。

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