2017年5月1日のアーカイブ

  • 今、話題のテーマについて各界で活躍している方々と対談をする一問一答形式のブログの第13回目です。
  • 第13回目は速水林業代表速水亨様です。

 


 

■ ■ ■ ■ 時流を探る~高井伸夫の一問一答 (第13回)■ ■ ■ 

速水林業 
代表 速水 亨 様 

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[速水亨様 ご紹介・プロフィール]

速水様お写真速水林業代表。株式会社森林再生システム代表取締役。 

1953年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、東京大学農学部林学科研究生を経て、家業の林業に従事。森林経営の機械化を行うと共に国内の林業機械の普及に努める。2000年2月には所有林1070haについて世界的な森林認証システムであるFSC認証を日本で初めて取得するなど、先進的な経営で知られる。2001年朝日新聞「明日への環境賞」森林文化特別賞受賞。2007年から株式会社森林再生システムで、トヨタ自動車所有のトヨタ宮川森林1700haを管理している。 

現在 の公職等:

日本林業経営者協会顧問、財団法人岡田文化財団理事、NPO法人日本森林管理協議会副理事長、FSCジャパン副代表、日本文化デザインフォーラム会員

著書:

日経出版「日本林業を再生する」、日本林業調査会「スギの新戦略2」共著、朝倉書店「森林の百科」共著、産業調査会「森林と木材を活かす事典」共著、林業改良普及双書「機械化林業への取組み」共著

 

[今回のインタビュアーは以下の通りです]

  • 高井伸夫 
  • 高橋真希子(秘書) 

取材日:2016年10月4日 於:東京 芝 とうふ屋うかい

 


 

高井

学問としての林業に対するオーソリティは誰ですか。

 

速水様

そうですね。岩手大学にいらして今は富士大学学長をされておいでの岡田秀二先生もそのお一人です。もし、現在の林業の分析をお聞きになりたいのだったら、「日本木質バイオマス協会」の熊崎実という先生がおいでです。日本の森林に関する分析では、右に出るものはないです。彼の分析は以前から素晴らしいといつも思います。

私と熊崎先生が主催して筑波の森林総合研究所で若い人達を集めて「林業イノベーション研究会」という勉強会をやっているんですよ。

 

高井

今、学者は熊崎先生が分析としては一番とおっしゃいましたが、若手ではどうですか。

 

速水様

若手は、優秀な人は結構たくさんいます。私は東大にお世話になっていますが、若手と言えるかどうか、東京大学の白石則彦という教授は秀才肌で、例えば白書なんかを読むと見事な分析をされていますね。その分析をもとに解決策を提案するというのは中々難しいようですね。様々なアイディアを参考にさせていただいて、いろんなことやってみればいいと思っています。

 

高井

誰か提言している人はいるんですか。先程、なかなか難しいと言っていましたが。

 

速水様

私は林業経営者協会の時に2回ほど提言しました。日本林業経営者協会というHPの「提言集」という項目に掲示されています。時代が変わっているので、私の提言がそのまま今に適用できるかは分からないですが。

 

高井

ところで、今、日本の国有林はどれくらいあるのですか。

 

速水様

だいたい270万~300万haくらいですね。日本の森林は2500万~2700万haくらいかな。今の国有林の管理というのは、担当者が4年~7年くらいでみんなどんどん異動してしまうんですよ。そうすると山全体を見る機会がないです。その状況下で、伐採計画を立てたり、上から木をこの数量伐れという命令がきたり。これでは森林に適した伐採という配慮をする暇がないです。担当者個々は能力がある方々だと思います。ただし、その能力を森林の適切な管理に向かって発揮するチャンスがないですね。

同じ樹齢の木でも状態はそれぞれ違います。例えば「この木は70年だから、もう伐ってもいい時期だ」と言っても、実際見に行ってみれば、「これは全部伐るよりも、強めの間伐をして次に待った方がいい」とか「これはもう風に当たってしまって、これ以上おいても価値は出ないから今伐っちゃえ」とか。私たちならば状態を見てそういう判断をするんですね。そういった状態を考慮せずに、「これは70年だから」、「上から伐れと言われているから」と、意志なく作業せざるを得ないんですね。そういう意味で、国有林は本当に今のような組織の在り方でいいのかって思いはありますね。

 

高井

今、林野庁には人材はいないのですか?

 

速水様

私は基本的にはチャンスと能力を発揮する場さえあれば、活躍していただける方々は多いと信じています。


高井

先程の話ですが、日本は70年たったら伐るんですか。150年とか100年といった期限はないですか。

 

速水様

そんなわけではありませんが、今だったら70年くらいの木だったら伐ろうかなと思ってもおかしくないです。私自身は80年から100年で伐っています。一部は150年とか200年にしているんですけど。既に日本の森林を形成している木の樹齢はだいたい60年くらいになってきています。国は、白書などでも「成熟した」という表現を使っていて、この20年程の間に概ね伐ってしまう計画なんです。

ただし、私どもの考えでいうならば、そういう樹齢になってきた今だからこそ、生物の多様性や、人工林であっても環境負荷が非常に少ない、環境の多様性が高い森林に変質させるチャンスなんです。それに、伐ることができる樹齢になってきた、ということは間違いないですが、それを「成熟した」と表わすのは誤解が生じると思っています。例えば、ヒノキや杉の場合、概ね数百年から1000年ぐらいが、もうそろそろいつ枯れてもおかしくないという樹齢なんですね。もちろん土壌や気候の違いで、200年とか500年で枯れてしまう木もありますけれど。だから300年とか500年とかいう森林を管理していても、おかしくはないんですね。それなのに、たかだか60年くらいの木に「成熟した」という表現を使うのは、生物的には問題だと思います。

 

高井

話が変わりますが、原始林とか自然林などと言いますが、日本にはどのくらいあるんですか。

 

速水様

原始林という言葉よりは、もし使うなら「原生林」ですね。原生林の定義というのが色々難しいですが、簡単に言ってしまえば「商業的にその森林を切ったことのない森林」だと個人的には思います。どういうことかと言えば、シベリアやアラスカの原生林や東南アジアに広がる原生林など、どこも先住民が住んでいれば必ず木は伐っています。船を作る為とか、家を建てる為とか。それについては私は「原生林」としていいだろうと思っているんですね。ただそこに商業資本が入って、森林全体を見て太い木だけ伐ってしまうとする。それは、もう手を付けた森林だと判断してもいいと思います。そういう違いで見るならば、日本は本当の意味での原生林はほとんどないのではないかと。白神も一回伐っているようですね。

 

高井

白神原生林と言うでしょ。木曽はないんですか。それこそ三重県は。

 

速水様

三重県もないですね。一部あまり手を付けてないような森林はありますが、日本で「原生林」と位置づけるのは難しいような気がします。原生林に近い状態の森林というのは、白神も含めて沖縄のヤンバルなどありますが。

私は実は原生林好きでして。2年に一回、ヨーロッパの原生林を訪ねています。ヨーロッパって原生林はほとんどないんですよ。ましてや立ち入り禁止なので貴重なんです。それをコネを使って入れてもらっています。(笑)この2回はスロバキアの森林を訪ねました。原生林に入ると空気が変わるんです。雰囲気というか、木の一本一本の姿もなんとなく違いますし、太さも違いますし。

 

高井

速水さんの所で、一番いい木はどこで採れるんですか。

 

速水様

どこもきちんと管理すればきれいな木が採れます。私が育てているヒノキも、いろいろありますが平均すれば、世の中に流通しているヒノキのベスト10くらいには常に入っているんです。例えば、厳島神社は全部朱に塗ってしまいますよね。ところが能舞台だけは「あらわし」なんですね。塗っていない。そこは全部私のところの木なんですよ。

 

高井

高く売れるんですか?

 

速水様

安くはないですね。直径1mくらいの特別な木ですから。昔は、10mの丸太で、細い所が直径70cmくらいで節の無い真っ直ぐな木を、ちょうど立方数でいうと5立方くらいありますが、それを立方200万円、1本分を1000万円で売ったことがあります。これが私の人生で一番高く売った木ですね。今は同じ木でも100万円いかないかな。今、もう大規模な林業家はみんな赤字ですよ。

 

高井

もともとは林業は豊かだったけど、今は全然ダメだと。林業を放棄する人もたくさんいるのですか。

 

速水様

います。私の知り合いにもいます。やっぱり森林を持ち続けられなくなってしまうんですよ。他の商売をしているのならともかく、林業だけだったらフローが無くなっちゃったらもう資産は増えていかないです。だいたい日本で4大林業森林所有会社が全部赤字だっていうのが問題なんです。彼らがビジネスマタ―で森林を見ないから、政府も同じく見ないんです。ましてや一番大きな国有林も延々赤字です。

 

高井

速水さんの所は何haなのですか。

 

速水様

私の所は概ね1000haです。1000haの面積というのは、全国的に見ても森林所有面積としては大きいです。ただし、林業経営という視点で見ていくと小の上か中の下くらいですね。

 

高井

出口は何があるんですか。アイディアとして。

 

速水様

1998年に京都議定書で、日本は90年度に比べて温暖化ガスの6%削減を約束した。6%というのは先進国の中で比較的大きな数字でした。ところが日本は既にいろいろな配慮をしていたので、その時点でかなり減少していたんですね。物の単位生産あたりのCO2の排出量は世界最小でしたから。そこで、議長国の日本が小さな数字というわけにもいかず6%としたのですが、結果的にその6%の内の3.8%は森林が担うことにしたんですね。この数字は平方キロという森林の面積単位での二酸化炭素吸収量では52.0炭素トンとなり、ロシアの4.1、カナダの3.9、ドイツの11.3などと比べると如何に多くの量が認められたかがわかります。あえて言うなら科学というより、政治的な数字でしょう。

この森林吸収は、過去50年間森林ではなかった土地への植林、1990年時点で森林でなかった土地に対する再植林、1990年以降持続可能な方法で管理されている「森林経営」。これらの3つの条件のいずれかを達成している森林を吸収対象森林としたのですが、この時点で前者の2つの植林は日本ではほとんど可能性が無く、林業経営の1点だけで、3.8%の吸収を担うこととなったのです。

「森林経営」は森林を適切な状態に保つために1990年以降に行われる森林施業(更新(地拵え、地表かきおこし、植栽等)、保育(下刈、除伐等)、間伐、主伐)が行われている森林としたのです。つまり一般的な森林の手入れは全て含まれていたのですが、林野庁は「間伐」のみに光をあてたのです。その後、2001年に森林法を改正しまして、森林管理の目標を、木材生産から多面的機能の発揮に変えたんです。それは実際には3.8%を確保するためのCO2の吸収源としての森林という視点が強かったのです。

この結果、間伐作業に多額の補助金が投入され、世間に「間伐は環境維持に必要な作業だ」と日本独自の理屈で説明をして、間伐材を使うことは良いことだと思わせたのです。それ自体は決して間違いではなかったのですが、市場は木の需要が減っている時に国内の間伐量が増えて、供給過多になり市場が暴落したんです。極端に影響が出てきたのは2003年くらいです。

今は様々な国産の木材利用が始まっていますが、あくまでも安い材価が前提で、少しでも価格が上がる動きがあっても、補助金が作業自体に出て木材価格が安くても伐採を担う森林組合などは労働対価は受け取れますから積極的に伐採します。すぐ木材価格は下がり始めるという山側にとっては悪循環、使う側にとっては国産の木材を使うことがこれほど良い時代はないでしょう。

だからここで、木材を使いやすくするような、例えば木造住宅の固定資産税の評価方法だとか、税制の面で木材を使いやすくする仕組みだとか、あるいは伐ったら必ず植えるサポートとか、そういう面で国が補助をしてくれたらと思いますね。あるいは環境管理に努める森林経営をサポートする補助などが大事です。

間伐や皆抜に今後も補助が出続けると思うんですが、木材流通はある程度は市場経済に任せないと、木を伐ることに関してどんどんとお金を入れている限り、つまり国が関与している限り、木材価格は高くならないと思うんですね。

それから、森林組合っていうのが全国にありますが、私は森林組合の改革を唱えていた1人だったんですよ。森林組合は作業するための作業員を持っているんですね。私は、森林組合が事業計画を立案して、発注するのは間違いではない、そうすべきだと思いますが、作業をするのは民間に任せるべきだと思っているんです。だから作業班を持つのを禁止したらどうかと。そして森林組合の作業員が独立するときに、地方創生の予算を少し使わせて頂いてサポートしていけたらと。大事なのは森林組合から独立していく過程で、作業員だけでなく、そこに必ず安全管理や営業、経理といった専門職が一緒について行けるような資金繰りですね。そういう仕組みを作って作業班が独立していけば、そこに継続的に仕事がつくでしょう。

森林組合は、来年一年はこのくらいの仕事を出しますよ、という仕事量を提示する。すると独立した作業班はその何割を自分達が仕事として取れば、事業が成り立つんだという計算ができる。入札の時に一円でも安く取り合ってくる、という状態になれば地域も仕事も活性化もしてくる。

 

高井

速水さんの夢は何ですか。

 

速水様

小さな森林所有者も、一生懸命育てれば、最終的にはいくばくかの収入がきっちりあって「ああ、木を植えて育てて良かったな」と思える状況を作り出したいですね。大きな森林所有者も、努力しない人は利益が出なくても構いませんが、一生懸命やった人はそれなりに利益を出せるという状況を目標の一つとして、補助金等も含めて、政策をもう一回練り直したいですね。

 

 

髙橋

新聞記事の中で夢で「法隆寺の修正にうちの木を使ってくれたらな」とありましたけど。

 

速水様

法隆寺を世界遺産にするのに、非常に尽力された伊藤延男という先生がいらっしゃったんですよ。イコモス(国際記念物遺跡会議)の副会長を務めていらっしゃいました。法隆寺は1300年の間に1/3の木を取り変えている訳ですが、最初、海外では世界遺産として、それでは真実性が確保できていないという評価になりました。日本の木造建築物は世界遺産に値しない、と。それを伊藤延男先生が木造建築物の維持補修に関しての論文を発表されて、その内容が認められて、そのまま木造の世界遺産の基準になったんです。その先生が私に、「法隆寺は1000年で1/3の木を取り替えているんだけど、このままの割合で行くと今後2000年かかって全部取り替えることになる。君、2000年先までヒノキをちゃんと供給できるかい?」っておっしゃるのですよ。2000年先に日本があろうが無かろうが、世界遺産というのは未来の子供達に人類が残すって約束したんだから、と。

法隆寺であれば300年とか400年の木でしょう。新聞記事にあった夢の記述は別に法隆寺に限った事ではなく、文化財としてそういう木が必要ならば提供できるようにしたいという思いです。

法隆寺の場合は1cmに7本の年輪が入っている等、やはり世界遺産の補修に求める木材の条件が厳しいですね。全く同じ産地のヒノキで、全く同じ工法で、直した箇所が明確に分かる、というのが木造の世界遺産の条件の一つなんです。同じ産地というのは日本国内であればいいとしても、同じような材質となるとそれを目標に木を育てないといけません。

300年先、次の世代がどうするかなんてわからないですが、誰かが最初に始めなければと思ったんですよ。

 以上

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