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2017年5月14日(日)7:10 港区南麻布2にてブラシノキを撮影
花言葉:「恋の炎、素直な気持ち」

 

 

第28回リストラの本質と手法ー恐慌下における諸現象を踏まえて―(4)
(2009年5月18日転載)

 

 

経営監督と執行の責任

企業のリストラは経営者の権利と捉えるのがこれまで一般的であったが、今では「リストラ義務」という言葉さえ登場している(2008年12月9日付朝日新聞)。これは、米国の自動車会社BIG3から補助金を要請された米政府が、経営者の責任として人件費削減策の実行を求めた際の報道である。米政府は公的資金を導入するに当たり、“リストラしてこそ企業は健全化する”との事実を経営陣に強く認識させるために「リストラ義務」を課したのであろう。

経営者のリストラ義務は、本稿第2回で述べたとおり、リストラの真の目的は企業の再建・再興であることに根拠があるだろう。特に私企業の救済のために公的資金を用いることは、国民に負担を強いるのと同義であるから、その導入に当たってはリストラを法的義務として扱わなければならないということである。このリストラ義務は、企業・国家間の公的関係のみならず、企業・株主間においても常に意識されなければならないテーマである。その際、株主の納得を得るためにも重要な役割を果たすことになる。

ところで、企業では例えボトムの従業員等を2割リストラしても組織は往々にして再生せず、正社員のリストラに及ばざるを得ないことがあるが、その際には、一般従業員に先立ち経営幹部・管理職から行わなければならないことになる。それは権限・責任の大きさからくる序列でもあり、従業員等を納得させ、事業の縮小に応じて組織を圧縮するために必要な手続きであるが、加えて高いサラリーに見合う働きをしない者を排することで人件費総額を縮減し、その結果、組織が若返りを果たすことにもなり、企業体質が強化されるのである。その具体的手順としては①まず余剰な役員を退任あるいは非常勤化して減員を図り、②次に役員報酬の大幅な減額措置を採り、③そのうえで管理職にも組織の縮小と減員そして大幅な人件費の減額措置を図るのである。

役員・経営幹部のリストラは、故意過失責任ではなくここに至った経営の監督と執行の結果責任の問題である。ここで言う結果責任とは、高位に就く者に固有の責任という強い意味のことである。それゆえの、結果責任を負う経営幹部は経営状況を理由に責任回避できず、「経営悪化は未曾有の不況が原因である」との自己弁護は全く無意味となる。

ドラッカーは「(働く者は)雇用と所得を失う恐れのある中では、仕事・作業集団・成果に責任を持つことができない」と述べている(『マネジメント』第22章参照)。しかし、現在の恐慌とも言える経済情勢では企業の存続自体が危うくなっているため、雇用の維持は不可能な事態と言ってよく、企業の存続こそが社会的責任であるということにならざるを得ない。「大恐慌のときには、何の保証も期待できない」(同書第22章)のであるから、社会的に企業の赤字が慢性化する中で雇用・所得を維持すべくさらなる赤字を求めることは自殺行為とも言え、企業には自救行為としてリストラが容認されることになる。

そして、企業の社会的責任としては、企業の存続に次いで「企業の成長」と「雇用の創出」が課題となる。雇用の新たな場を構築するためには、生産性の向上のみならず、「企業は常に陳腐化する」という危険を内包しているものとして、生き残りをかけた絶えざる智慧の研究・開発がより重要となり、企業内外のあらゆる場面でイノベーションが要請される。

 

求められる超大型投資

さて具体的な雇用対策としては、まずは大胆な超大型公共投資を推進すべきである。国として将来に向けた生産性アップに資する取組みを実施することが重要である。その具体策はいくつもあろうが、私は以下の4つを挙げる。

①都市の交通インフラ整備

今までの公共工事は僻地や地方にも非効率に展開されてきたことを反省し、費用対効果の面からも、今後は都市生活者の利便性を最大限追求した公共事業を真っ先に考えるべきであろう。例えば、乗車率の高い山手線・中央線・総武線等の複々線化や2階建て車輌の導入により、通勤通学ラッシュを解消するのである。あるいは、脱化石燃料高速交通であるリニアモーターカーで成田空港~羽田空港間を結んだり、三大都市圏(首都圏・中部・関西)を結ぶことも具体的に検討すべきである。その際、JRだけでなく航空業界に属する企業や圏内外企業にも資本参加させ、国家プロジェクトとして早期に開通させることにより、関連機器製作工場での要員の大量採用を可能とする。

②超小型エコカーの開発

自動車開発では、エネルギー消費を考慮し、まずは小型車の開発から着手すべきであろう。エコカーでも中型車・大型車ではエネルギーを使い過ぎるからである。例えばメルセデスの「スマート」のような超小型のエコカー開発を国策として行い、それと併行して電気・水素・バイオマス自動車の研究開発に投資する。また、新産業の育成として、自動車各社が推進している太陽電池車や電気自動車の事業化を期して、国としても推進するべきである。

③老人医療・メンタルヘルスへの新たな取組み

超高齢社会へと突き進んでいるわが国で、いま最も必要なのは老人専門の町医者の育成および支援である。介護の分野だけでなく、健やかな老年を送るための予防医学的な分野への国としての取組みが急務となる。

また、メンタルヘルス不全者の治療体制の確立も急がれる。西洋医学・東洋医学・心理学等の専門医療従事者および産官学の専門家の参画のもと、世界から人材を集めて「メンタル総合国立病院」を創設するのである。その際、ロシアの「ダーチャ」(別荘)を参考にした郊外型家庭菜園付メンタルヘルス支援施設の導入なども考えられる。

 

重要な英語力のアップ

④全国民の英語力向上へ

なお、雇用創出のためには公共工事も一手ではあるが、グローバル化や知識社会に対応するための必須条件である「全国民の英語力向上」に向けて1兆円を投入することも提案したい。この点、英語教育に熱心な韓国では、全ての高校卒業生が流暢な英語を話せるための計画に政府が4兆ウォン(約4500億円)を投入すると聞くが、わが国では、中学・高校・大学の英語教員を再教育し実力なき者を淘汰するための教育養成システムの構築に、まず重点を置くべきであろう。グローバルに活躍できる人材を育て産業力・国力を上げるためにも、国民の英語力向上への投資は極めて重要である。

折しも、政府は本年4月9日に「未来開拓戦略」を発表し今後3年間で140万~200万人の雇用創出を見込むが、単なる弥縫策ではなく長期的視点に立った大胆な戦略と緻密な計画が今こそ求められる。

 

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