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2017年5月28日(日)13:53 中央区銀座5にて紫陽花を撮影
花言葉:「移り気」

 

 

第6回 残業手当に思う


株式会社日本総合研究所
リサーチ・コンサルティング部門
青木 昌一

 

1.成果で測るべき仕事

20年ほど前でしょうか、「時間で給料が上下することはもう今の時代では通用しない。改めるべきだ。」という趣旨のことを高井先生から何度もお聞きしました。同時に「一人の人間の知恵でさほど時間を費やさなくても何億円も稼ぐような時代になった。だからこそ成果で報酬を決める必要がある。」ともおっしゃっていました。

 

2.賃金決定メカニズムのジレンマ

給与に関する「疑問」としてよく言われるのが「効率よく仕事を片付けて残業をしないで済む社員より、効率が悪く残業なしには他の人と同等の仕事ができないのに残業手当によって給料は効率の悪い社員の方が高いのはなぜか?なんとか改めることはできないか?」という話です。このことは企業の人事の方や企業経営者と話をしていても、しばしば話題になります。

残業手当すなわち時間外勤務手当は、今の法律では時間で支払うように定められています。ある程度定められた手順で定められた仕事をこなせば、一人前の人がやればほぼ同じ成果を出せるという仕事における給料の算定には適していると思います。実際には経済環境や会社の持つブランド力そのほかの要因で単純には語れない面も多いのですが、モデルを単純化してものを考えると上記のような仕事に関しては時間で報酬を決めることに合理性があると言えます。

また、かつては今のようなIT技術もありませんでしたから、手数がものを言う仕事も多く、誰がやってもさほど生産性に大きな差がつくことがなかったのだろうと思います。ですので、個人の生産性の差は賞与で少し報いてあげれば社員に対しても折り合いがつく。そんな状況だったのだろうと思います。労働関係の法律もそういった点に着目されてこのような賃金算定のルールが定められたのだろうと思います。

 

3.人の能力で大きな差がつく時代の到来

ところがビジネスがグローバル化し、IT技術も進化を遂げる中で1人の人が生み出す利益すなわち生産性も大きな差がつくようになってしまいました。

ここで私が西洋環境開発の新入社員として給与計算の担当をしていたときの例をご紹介します。

当時、西洋環境開発では15日締めで給与を計算していました。毎月16日から17日の間に私が担当していた東日本の事業所に勤務する社員の勤務報告書が届きます。私はここに記されている各社員の残業時間を集計用紙に手作業で個人別に書き込んでいきます。これを外注していた給与計算をしてくれる会社に18日くらいまでに提出します。

外注先の会社ではキーパンチャーをたくさん雇い、この方々が私の作った集計用紙に記載されている残業時間をコンピューターに打ち込みます。すると20日には給与が計算され、それがまだ袋が閉じられていない、かつ一人ずつ切り分けられていないつながったままの給与明細書と個人別の振込額が一覧になっている銀行への振り込み用紙となって私の手元に届きます。

振込用紙は振り込み日から中3日の営業日をあけて届ける必要がありましたから25日の支給日の場合、21日までに銀行に持ち込みます。これを各銀行では恐らくキーパンチャーの方々が入力しておられたのだと思います。

一方で、私は給与明細を事業所別に送るために、開いて届いた給与明細を袋とじにして1枚ずつ切り分け、あて名書きをして封筒につめて発送したり、本社内の各部署に渡すために輪ゴムで束ねる作業をします。

今、多くの企業では勤怠は各社員が直接システムに入力し、上司がシステム上でそれをチェックして勤怠が確定するとそのまま給与が計算されます。さらに給与明細はWEBで各人が見ることができ、必要なら印刷をすればよいという形になってきています。

これを当時の私の仕事に置き換えるならば、、、ないのです。私がやっていた仕事は見事にシステムに置き換わり完全に不要になってしまった訳です。

私が担当していた仕事はスピードや正確性については個人差はあれ、誰がやっても大きな差はつきません。ですから時間で給与を払ってもそこそこ合理的だと言えたのだと思います。

一方で、給与計算の業務が手作業からシステムに置き換わるとき、このシステムを発案した人たちの仕事は時間で測ることに合理性はあるのでしょうか?

給与計算の業務プロセスをシステムに置き換え、クライアントのコストの引き下げを実現すると同時にシステム会社としてもクライアントから委託料が入り続けるビジネスモデルを作ったことで、大きな成果を上げたと容易に想像がつきます。

 

4.成果主義に思う

上記の給与システムを作る仕事は新しいビジネスモデルを発明したと言えるでしょう。そして時給換算で給与を支払うよりも、その成果の大きさで処遇する方がなじむはずです。アイデアで莫大なコスト削減とそのシステム会社の利益を生み出しているわけですから。

1990年代後半から世間で言われ始めた成果主義は今では失敗だったのではないかと言われることも多くなってきました。どんな仕事でも成果で報いる人事制度に変えたのだけどもうまくいかないケースが数多く出たと言われています。しかし、それは「成果主義」が失敗だったのではなく、成果で測りやすい仕事と測りにくい仕事に対してすべからく成果主義を当てはめようとしたからだと私は考えています。

成果主義のあり方を考えることは、いま話題になっている「働き方改革」を考えることにもつながるのではないかと思っています。

以上

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