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2017年7月29日(土)7:28 中目黒公園にてアガパンサスの蕾を撮影
花言葉:「恋の訪れ、知的な装い」

 

 

第8回 リストラの攻防


株式会社日本総合研究所
リサーチ・コンサルティング部門
青木昌一

 

1.初めての高井先生の著書

ご案内の通り、これまで高井先生は数多くの著書を出版されています。私がそれらの著書の中で最初に読ませていただいたのは「リストラの攻防」(1994年民事法研究会)でした。

前職西洋環境開発がいよいよ尋常ではない状態だということで、密かに管理部門で再建策を練らなければならなくなりました。そのことが当時の人事部長から私の上司であり先輩であった課長と私の二人に知らされ、人員を減らすことまで含めて検討しなければならないところまで逼迫していることを告げられました。

ですが、本連載の第一回目に書いた小さな関係会社撤退に関しては高井先生の指導を受け、なんとか対応しきれたものの、本体および他の関係会社をどうすれば良いのかさっぱり分かりません。そのとき「これを読むと良いよ。」と教えてくださったのが、最初に高井先生をご紹介下さった西武百貨店の人事部の課長でした。

その本が「リストラの攻防」でした。このブログの読者の方の中にはご存知の方も多いと思いますが、この本、並みの本ではありません。

 

2.大きな衝撃

まず、タイトル。

「リストラ」などという言葉がタイトルに入っている本など、当時は見たことがありません。このタイトルだけで十分衝撃的でした。

さらにカバーが真っ黒。これから学ぼうとする中身を暗示するような黒いカバーでおおわれています。

そこには後々高井先生から口を酸っぱくして叩き込まれた「短期集中、中央突破」で企業の苦境を脱するための人的リストラの方策が記されていました。

今も高井先生は「原則倒産の時代」であるとおっしゃいます。この本は誰しもが今所属している会社に倒産の危機が訪れる可能性があることを前提に企業人、とりわけ企業経営者や企業の幹部、人事担当者に向けて書かれています。

特に印象深かったのは、リストラを進める際に「神棚にお参りをしなさい」といった趣旨のことが書いてあることでした。そこまで腹をくくる必要があることなのか。私にとっては大きな驚きであり、覚悟をするきっかけにもなりました。

そして内容はというと、率直に言って、最初は意味が分かりませんでした。もちろん言葉は理解できます。ですが、そこに書いてある、しかもかなり平易な言葉で分かりやすく書いてある文章なのに、私の脳みそが勝手に拒否反応を示すのです。「そんなこと無理、とてもできる訳がない。」そうした潜在意識が邪魔をするのです。

後で考えると、もちろん限られたページですからすべてを書き記してあるわけではありません。しかし、逼迫した企業が何をすべきかは、その方策と具体的な方法が丁寧に紹介されているのでした。

 

3.人事権の法的展開

「リストラの攻防」に加えてもう一冊、先生の著書の中で人事担当者としての私が極めて実務的に参考にさせていただいた本があります。それが「人事権の法的展開」(1987年有斐閣)です。

これは当時頻繁に訪ねていた西武百貨店の人事部の方から1995年頃にたまたま

二冊あるからあげるよと頂いたものです。

この本は出版が有斐閣というということからもお分かりいただけるように、極めて専門的な書籍です。労働判例を紹介しつつ、法的な論点を挙げながら高井先生が解説をされている本格的な労働法務の本です。

労働法務と書きましたが、労働関係の問題は法律通りにはいかない部分が数多くあります。とくに解雇関係の問題は民法や労働基準法通りに定められている通りで良いと思ったら大変な問題になりかねません。

そのあたりの法律家でも恐らく分かりにくいと思われることを、丁寧に解説されています。人事担当をしていた当時、この本を読み込みいろいろな問題を想定しながら問題解決の方策を練る、そういうことで大変役に立った本でした。私にとっては人事実務の教科書でした。

西洋環境開発で人事部から異動になったとき、人事部の本棚に置きっぱなしにしておいたために手元に残っておらず、また、すでに絶版になってしまっていたために20年間目にすることができなくなってしまいました。

コンサルタントの仕事をするようになり、労務的な相談を受けたときに、「あの本があれば、似たような事案が紹介されていたよなあ」と思ったことが幾度もありました。

余談になりますが、それがこの4月にたまたまAmazonで検索してみると古書ですが、入手できることが分かり一も二もなくクリックをしました。

こうして改めて「人事権の法的展開」を読んでみると、紹介されている判例は、30年前の本ですから古くはなっています。しかし、その内容は今でも十分に参考になるものです。その一方で昭和50年前後の裁判では今ではとても考えられないようなことが起きていたことがよく分かります。

企業で人事労務を担当されている方には古書でもぜひ入手して参考にしていただきたい一冊です。

以上

 

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