第10回 尋ねることの勇気

 

株式会社日本総合研究所
リサーチ・コンサルティング部門
青木昌一

 

1.質問力

高校時代、同じクラスにN君という秀才がいました。どの授業でもちょっと分からないこと、疑問な点があると「しつもーん!」と大きな声を出し手を挙げます。そして、自分が疑問に思っていることを遠慮なく質問するのです。

当時、私は彼のことが羨ましくて仕方ありませんでした。と言うのも、私はと言えば、分からないことが分からない。仮にここが分からないと思っても「こんなこと聞いたら頭がわるいのではないかと思われるのではないか?」あるいは「恥ずかしいからあとで調べよう。」などという考えが頭をよぎり、質問することができませんでした。

恐らく高校3年間で先生に質問した回数はゼロ。よく、「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」と言いますが、私は正に一生の恥を積み上げていた訳です。

こんな状況に至ったのにはいくつか理由があったと今では思っています。

(1) 何がわからないのか本当に分からない。

これにはいくつか原因があったと感じていて、大きな原因のひとつがそもそも疑問を持つだけのベースになる知識がない。言い換えると、日ごろの勉強不足が災いした結果だということです。

さらに、人の話を集中して聞いていない。だから重要なポイントを聞き流してしまっている。つまり、質問しようにも先生が何の話をしているのかが分かっていないから質問できない。

(2) 変なプライド

高校生に限らないと思いますが、人から「君はそんなことも知らないのか?」と思われたくないという心理です。実際にはよほどレベルの低い質問をしない限りは誰もそんなふうには思わないのですが、そこが私の浅はかなところです。

(3) 面倒くさい

今思えば大変もったいないことをしていたのですが、人にものを尋ねるという行為そのものを面倒だと思っていた記憶があります。

他にもいろいろとあるのかもしれませんが、以上のようなことだったと思います。

 

2.質問の効用

高井先生とお付き合いをさせていただくようになって感じたのは「よく質問する先生だなあ」ということでした。ここで高井先生と先述のNくんが私の中ではオーバーラップするのです。

高井先生と打ち合わせをさせていただいていて、例えば先生がご存じない言葉を使ったり、話に説明不足な部分があると「それどういう意味?教えてくれよ。」、「そりゃあ、どうしてそうなったの?」ということがしばしばあります。別に詰問されるわけでもなく、ごく自然に質問を投げかけてこられるのです。

 

質問にはいくつか重要なメリットがあります。まず、時間が大きく節約できる。

疑問に思ってもそれを尋ねることなく後で調べようとするとたくさんの時間が必要になります。今ではネットの普及で「言葉」に関しては昔ほどではありませんが、その場で疑問に思ったことを尋ねると一発で解決します。場合によっては数日もほったらかしにして結局分からないまま終わるなんてこともあります。

また、話の内容に関しては大きな広がりが生まれることもあります。例えば、事業の売却を担当していた頃、「●●社の人と話をしていてちっとも交渉が進んでいません。」という話をしたことがありました。「誰と話をしているの?」と尋ねられ、「●●取締役です。」とお答えしたところ、「●●さんならよく知っているよ。」とその場で電話をしていただき、我々では聞き出せなかった、先方で時間がかかっている理由が明らかになりました。

その時は我々が売却しようとしていた関連会社の事務所のひとつが、かつてその相手先とトラブルになったことがある別の会社の物件を借りていることがネックになっていることが分かり話が進まなかったのです。そこで、さっそくM&Aを仲介してくれた会社に仲立ちしてもらい、事なきを得ました。

このような形で質問しなければ触れることのなかった話に辿りつくこともある訳です。

 

3.優秀な人の特性

現在、こうやって多くのクライアント方々と接するようになって、この質問をする力が不足していることを猛省しています。こちらが質問しなければクライアントの方々はこちらが理解していないことを知らないまま話が進んでしまうことがあります。

クライアントさんからすると、質問がないのだから当然理解している、あるいは知っていると判断して話を先に進められます。

後で分かった時に、かなり以前に議論して結論付けたことを再検討しなければならないことさえあります。

例えばその会社あるいはその業界でしか使われていないことばが日常的に使われているケースがあります。そこで確認の質問をしないでやり過ごしていくと核心となる話に辿りつけずに終わってしまうこともあります。

そうならないために我々に限らず企業で仕事を進める場合には「これはどういう意味だろう?」とか「これはなぜなんだろう?」と感じたことは躊躇せずに相手に尋ねる力がとても大切だと思うのです。

私の周りでも優秀だと言われる人のほとんどが疑問をひとつひとつつぶすように質問する癖を身に付けています。

そういった質問を重ねる癖を身に付けていることで、知識の幅が広がり、結果として様々な課題に対する解決の引き出しが豊富なのだと感じています。

「で、お前はどうなんだ?」と訊かれると、「これが簡単なようでなかなか。。。。。」

 

以上

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