- 今、話題のテーマについて各界で活躍している方々と対談をする一問一答形式のブログの第31回目です。
- 第31回目は、イシハラクリニック 院長 石原結實先生です。
■ ■ ■ ■ 時流を探る~高井伸夫の一問一答 (第31回)■ ■ ■
イシハラクリニック
院長 石原結實先生
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[イシハラクリニック 院長 石原結實先生 プロフィール]
1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部(卒)及び同大学院博士課程(修了)。医学博士。長寿地域として有名なコーカサス地方(ジョージア共和国)やスイスのB・ベンナー病院などで最前線の自然療法を研究。現在イシハラクリニック院長のほか、伊豆にニンジンジュース断食・玄米食・温泉等で健康を増進する保養所(サナトリウム)「ヒポクラティック・サナトリウム」を1985年に開設、運営する。
著書は1979年の『病気はかならず治る』(善本社)の処女出版以来300冊。ベストセラーになった『生姜力に』『体を温めると病気は必ず治る』『医者いらずの食べ物事典』他、10万冊以上のベストセラーが11冊。米国、ロシア、ドイツ、フランス、中国、韓国、台湾、タイ、インドネシアなどで計100冊以上が翻訳出版されている。 自身の提唱する超小食生活(朝は人参ジュース、昼は生姜紅茶、夜は和食)を続けながら、年間365日休みなく診察・講演・執筆・メディア対応を行う。その合間に週5日、1日に約10kmのジョギング、週2回のウェイトトレーニングを習慣とし、「運動」「少食」を鍵に、69歳で病気知らずの健康体を保っている。
[今回のインタビュアーは以下の通りです]
- イシハラクリニック 副院長 石原新菜先生
- 株式会社ことば未来研究所 代表取締役 鮒谷周史 様
- 高井伸夫
写真は石原新菜先生(左)、石原結實先生(中央)、高井(右)撮影日:12月15日
(取材日:1回目 2017年11月10日(金)於;銀座びいどろ、
2回目 2017年12月15日(金)於;鮨武蔵)
高井
「ニンジンジュース健康法」は先生の代名詞にもなっていますが、先生が食生活で心掛けていることは何ですか?
石原先生
食べる“量”を心掛けています。私の食生活は実はこの20年間変わっておりません。朝はニンジンジュース、昼は生姜紅茶、夜だけ好きなものを食べる。1日1食です。質もさることながら、少々悪食しても、量が少量なら健康で生きられると考えています。1日1食、これが健康食です。
高井
私なんか失格ですね。3食しっかり食べていますから・・・。1日1食の提唱者はいますか。
石原先生
秋田藩の藩医の息子で明治5年生れの二木謙三という人がいたんです。この人は体が弱くて3年遅れて小学校に入学していますが、玄米食をはじめたら元気になった。小学校を3年遅れて卒業して、秋田の旧制秋田一中、一高、東大医学部を卒業して東大内科の教授、駒込病院勤務を歴任して、二木基金という基金を設立し、文化勲章を受章しているんです。玄米食の先生で、すでに亡くなられていますが、「生命なき食物は生命の糧にならず」という名言を残しています。玄米を撒くと芽が出るけれども、白米を撒くと、腐る。卵も有精卵なら命がでるが、無精卵はあたためると腐る。なんでも命のあるものを食べなさいと。体が弱かった二木先生は、昭和41年4月に94歳で亡くなるんです。先生の死後、今の東大の医科学研究所の前身の伝染病研究所で、弟子たちが、涙を流しながら解剖したらどこにも病変がなかったそうですよ。一日一食、玄米に味噌汁に煮物、日本酒が好きで一日2合、それで94歳まで生きたんです。
高井
先生の著書「体を温めると病気は必ず治る」を拝読しました。先生が、現代人の体の冷えに着目するようになったいきさつを教えてください。
石原先生
内科として診療をしていますが、子どもが診察に来ることもあるんです。子どもの体温というのは、本来大人の体温に比べて、0.5~1度高いんです。それが、体温が36度しかないような子どもがいる。低いんですよ。おかしいなと思って気になりましたので、それから、大人でも、発熱患者以外も体温を測るようになったんです。そうしたら、みんな思いのほか体温が低いんです。それで体温に注目しました。
病気をすると、熱が出て体温が上がり、体温が上がると免疫力が上がるんです。逆に体温が下がると免疫力が下がるんです。それで、体を温めるといいんじゃないかと思いました。そのころ漢方を勉強していたら、漢方というのは、だいたい体を温める漢方薬が多いということを知りました。葛根湯も体を温める。葛根湯は、風邪、肩こり、頭痛、乳腺炎、咳・中耳炎などなんでも効きますが、いずれも温めるから効くんです。だから、温めると免疫力が上がるという結論になりました。体温とナチュラルキラー(NK)細胞(注1)や免疫細胞(注2)の研究、ヒートショックプロテイン(注3)の研究を長年続けている伊藤要子先生とも対談をしたことがあります。動物は病気をすると、食べないか、熱を出すかどちらかです。神様が私達に与えてくれている病気治癒力というのは、食べない、熱を出す、これしかないんです。
- 注1:ナチュラルキラー(NK)細胞とは、文字どおり生まれつきの殺し屋で全身をパトロールしながら、がん細胞やウイルス感染細胞などを見つけ次第攻撃するリンパ球
- 注2:免疫細胞とは、抗原を認識し、特異的に反応する能力をもち、免疫に関与する細胞の総称
- 注3:ヒートショックプロテインとは、熱ショックタンパク質のこと。傷ついたタンパク質を修復し、元気な細胞に戻す作用を持つ
高井
動物に備わった自然治癒力は、「食べない」と「熱を出す」の2つなんですね。
石原先生
キーワードは、空腹と発熱です。
2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典博士のオートファジーという理論は、おなかがすいたときに、細胞の中の有害物、老廃物、ウイルスを、その細胞自身で消化してしまうという理論です。2000年には、アメリカのマサチューセッツ工科大のレオナルド・ガランテ教授が、空腹になると長寿遺伝子のサーチュイン遺伝子が活性化するという論文を発表しています。そのほかにも、エール大学の教授が、空腹になると胃からグレリン(ホルモン)が出て、これが脳の働きをよくするという論文を発表するなど、色々なことが分かってきました。
空腹時には、正常細胞が病気の細胞を食べて、病気がよくなる。いくら医学が発達しても、そこをないがしろにしては、今の医学では慢性病は治せないと考えています。糖尿病や高血圧の患者が同じ薬を10年も20年も服用していても、治療と言わない。“治”、治すというのは「直す」ですから、もとに戻るということでしょう。ある一定期間薬を飲んだら、もう飲まなくていいようにする、これが医療であり治療ではないでしょうか。
高井
先生は自由診療をしておられますが、保険適用範囲内では、先生の推進する医療の実現は難しいのでしょうか。その理由も教えてください。
石原先生
実は保険診療を2年間くらいやった時期もあるんです。私は漢方を処方するのですが、保険診療をしていた当時、漢方を3種類以上処方して東京都から行政指導を受けたことがありました。西洋医学も医療費が高額ですが、漢方もかなり高額で、3種類も出すのはよろしくない、という指摘を受けたんです。それで、保険診療では自由な診察ができない、と感じて保険診療を辞めました。平成4年の1月から自由診療です。私は漢方だけで勝負しています。自由診療ですから、効かなかったら患者さんは来ません。
今日本は、医療費に1年間で42兆4千億円使っているんです。この医療費は1年で1兆円ずつ上がっています。約40年前、僕らが医者になった頃、癌死者数は年間約13万人、医者の数も全国で12~13万人でした。今は医者は31~32万人います。この40年間で癌に対する治療法はどんどん進化しました。医者も増えて、医療もよくなっているにも拘わらず、去年の癌死者数は38万人、つまり、癌で死ぬ人が減らないんです。おかしいと思いませんか。それをおかしいと思わないのがいけない。ちなみに日本は、昭和35年から9月は癌征圧月間といって癌のキャンペーンをやっています。もう、57年間やっています。医者の数が増えても医療が進歩しても、何にも役に立っていない。今までのやり方は間違っていたんだと、ここで方向転換をしないといけないと強く思います。今は、ジェネリック医薬品を使わせたり、3週間以上入院するなと言ったり、色々と対策しています。それももちろん大事ですが、それは枝葉のことで、抜本的に、病気をしないような医療に変えないと、日本は医療費で破綻するでしょう。
高井
いずれ日本は医療費で破綻しかねない。では、年間42兆円の医療費を減らす解決策はありますか。病気をしないような医学に変えるとはどういうことですか。
石原先生
栄養学者や医学者は、3食きちんと食べましょうと言います。そうやって指導した結果が今の状態、医療費が年間42兆円に膨れ上がり、病気も全然減っていない。今の病気は高コレステロール・高血糖・高体重・高血圧、全部「高」がつきます。この指導が誤っていたと悟らなければなりません。
医療費の削減は、簡単にできると考えています。まずは底辺のレベルで例を挙げれば、今の医療は若い人も年をとった人も同じ基準で考えていますが、これを変える。例えばコレステロールの正常範囲については数値がいくつまでとか、中性脂肪はいくつまでとか基準があるわけです。年を取ると誰だって皺はできるし、歯も抜けるし、誰でもどこかに異常が出てくるんです。血圧に関して言えば、2000年までは160以上95以上を高血圧といっていたのに、2000年から突然140以上90以上が高血圧と言われるようになったんです。基準が変わって、今までなんともなかったような人にも薬を出すようになったんですよ。もちろん血圧が高ければ動脈硬化のリスクがありますから、血を回すため薬が必要です。ですが、正常範囲を年齢とともに緩くするだけでも薬はかなり減ると考えています。
また、生活習慣病という言葉を作られたのは7月(注:2017年)に亡くなられた日野原 重明先生ですが、自分自身の生活習慣で糖尿病・高血圧・痛風になるならば、生活習慣病になった人は、保険の3割負担のところを5割にするとか7割にする。そういった対応も可能だと考えます。
新菜先生
国民皆保険というのは素晴らしい制度ですが、健康意識を下げているかもしれませんね。アメリカみたいにとまでは言いませんが、自分の病気をカバーするためには1か月20万~30万円のお金がかかるんだということ、それが分かれば、食事を気にしたり、運動したり、気を付けますよね。
石原先生
アメリカでは救急車を呼ぶと1回200ドル、約25万円かかるそうです。アメリカは自分の健康は自分で守りなさいという姿勢です。
では遺伝で病気になる人はどうしたらいいのか。私の考えでは、遺伝で病気になるというのも、それが発現するかどうかは、生活習慣だと考えています。例えば、人間の遺伝子の種類は20万ありますが、癌の遺伝子は約100種類あるんです。誰でも癌になる、誰でも糖尿病になる可能性があります。いい加減な生活習慣では糖尿病になる。それで腎不全になる。透析を受けている人は約30万人いて、医療費が1年でおよそ1兆5千万円かかっています。極端な話をすれば、生活習慣病というのであれば、生活習慣を見直す、自身の生活が悪い結果ならば、保険は使わない、もしくは自己負担割合を上げる、それくらいしないと、医療費の削減にはつながらないと考えています。
私の本で「食べない健康法」という本がありますが、20万部くらい売れました。皆さん、潜在的意識で、食べ過ぎだっていう認識があるんだと思いますよ。
ちなみに、私はこの45年間一回も病気をしたことがありませんが、これでも、小さい時は虚弱体質だったんです。今は風邪を引きかけたら葛根湯を飲みますが、西洋医学の薬は飲みません。病院なんか45年間一度もかかっていません。私は今年70歳になりますが、私みたいな高齢者が増えれば、医療費は半分以下になるでしょう。極端なことを言っているようですが、ガリレオにしても、ニュートンにしても、異端者が時代を作ってきているんです。オーソドックスなことを言っていても発展はしません。今までの考え方、方法ではだめだっていうことを悟らないと、この国は医療費で破綻してしまうでしょう。
高井
今までの医療のままでは日本が破綻するとは穏やかではありませんね。先生のような健康な人が増えれば医療費はかからなくなる、どの時代も異端者は時代の開拓者でもありますよね。本日はありがとうございました。
以上