2018年12月13日のアーカイブ

<イッピン> 日本酒「三千盛(みちさかり)」-岐阜県多治見市笠原町


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事務所の近く、靖国神社南側の路地にある蕎麦の名店「大川や」でこの酒に出会った。

もちろん、蕎麦を楽しみに行ったのである。とはいえ差向き蕎麦前で何気なく一口、

しかし、その一口に驚いた。

洗練された含み香と、広がるやさしい甘み。しかしさらりと後味が切れ、食事の味を全く邪魔しない。なんと上品な余韻だろう。スパッとした辛口だが、風味も香りも豊かな酒はそうそうないと感じ入る。

 

聞けば、江戸安永年間の創業より約250年、辛口一筋、甘口全盛の時代にも方針を曲げず、かたくなに「理想の辛口- 旨味と切れ味の両立した酒」を求める姿勢を守り抜いてきた蔵元なのだという。

雑味なく水のように喉元を通り抜けて酔い覚めのよい、しかし酒独特の旨味が溶け込んでいるその味は、作家の永井龍男氏をも魅了したそうだ。

「岐阜に旨い酒あり、先祖伝来の辛口を守って、まやかしのない、正直一途の商売を通してきた酒造りである。この頃、いろいろな品に『手づくりのよさ』というが、この酒こそ手づくりの味だよ。」とは、氏の残した談話である。

辛口党のファンを魅了し続け、「辛口といえば三千盛」と知られるようになったその酒は、そうした一途な情熱こそが作り上げてきたものなのだろう。

 

感動した酒の話をしたところ、実は、小生の知人にも「三千盛」の愛飲家がいた。JPアセット証券株式会社 代表取締役社長の志村仁氏、元東京12チャンネル人事部長の武井良夫氏である。

お二人は大の愛好家らしく、「吟醸酒はもちろんだが普通酒もなかなか。燗でもきれいな味わいそのままに、甘みが膨らむ。」と口を揃え、「三千盛」愛を語ってくれた。特に御年83歳になられる武井氏は、40年ほど前、この普通酒に巡り合ったとき、「やっと恋人を探し出した」ような気持ちになったそうだ。今も365日、燗で愛飲されており、氏の長寿の源、百薬の長、だそうである。

 

お二人のような通をもうならせる、伝統の技でつくられたイッピンの日本酒。

「毎年、同じことを繰り返す。緻密に厳格に、同じことを繰り返す行為のすごさ・むつかしさ」とは、杜氏の方の言だが、その中で技術が磨かれ、また新たな「三千盛」が育まれていくのだろう。

岐阜多治見、山々に囲まれた水清らかな盆地で生まれた酒は、今や、イギリスをはじめとしたヨーロッパやアジアへも羽ばたいているそうだ。

 

「イッピン」に出会うたび、その伝統を守り続け、また、そこから新たな創造を生む努力をされていることに尊敬の念を抱く。「三千盛」も、まさにそうした「イッピン」であった。皆様も、迎える新春に一献、いかがでしょうか。

 

「三千盛HP」http://www.michisakari.com/

 

※なお、お写真の掲載、上記HPアドレスの掲載に際しましては、株式会社三千盛様よりご許可をいただきました。ありがとうございました。

 

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