高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~
【第1回】「心の時代」になった…(1993年5月27日)
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明治初期までの農業社会(第1次産業)では、土地という生産財のうえで足腰を武器にした産業が主流であった。だから、変化は非常に遅かった。そして、その時代は人間の足腰の能力格差があまりなかったのである。
男子陸上100m競争の世界記録は9.8秒台。ここ10年変わっていない。私は56歳の今でも30秒で走れるだろう。世界のトップと3倍しか能力格差はない。だから農業の時代は優劣・格差があまり激しくなく、仲良く夕涼みで将棋をさしていたのだ。
明治初期に軽工業社会(第2次産業)になったが、「手工業」という言葉があるとおり、それは手先の時代ということだ。その次の第3次産業、商業・サービス産業の時代は口先の時代となる。意思疎通、契約、取引きという世界。
これは偶然ではなく人間の発達史と同じである。考古学によれば人間の先祖は440万年前には4本足で歩いていた。それが太陽の光が眼を射て人は立ち上がり前足が手になり始めた。そしてだんだん対面するようになって言語が発達し、遂には第3次産業、口先産業・契約社会に至るわけだ。
そして人間に直立するにつれて脳が発達した。それが第4次産業・ソフト化時代に至る。今これが花咲こうとしているわけだ。第4次産業は、頭脳労働の時代、ソフト産業の時代になった。考える、思う、感じるという知的社会になった。
この能力格差は3倍でもなければ3,000倍でもない。「できる、できない」という格差、質の格差、絶対的格差の世界になったわけだ。
そしてこれからは「心の時代」である。第5次産業は、心を武器にした経営でなければならない。心の経営のポイントは、良心を中心に据えて、自律心、連帯心、向上心を刺激する必要がある。良心、自律心、連帯心、向上心は、企業にも社員にも、また商品にも要求されてくる。