「明るい高齢者雇用」

第1回 失業率5.7%にも―世界的視野から模索―

(「週刊 労働新聞」第2147号・1997年4月7日掲載)

※当時の文章のまま掲載しております。

 

 日本のみならず全世界的にも「明るい高齢者雇用」はないのだろうか。まずは日本の現況を確認してみよう。平成7年10月1日時点で日本の高齢者65歳以上人口は1,860万人と総人口の14.8%を占め(「平成7年国勢調査」より)、65歳以上の労働力率(各年齢層に占める労働力人口の割合)では、日本37.6%、アメリカ9.1%、ドイツ4.6%(いずれも94年男性の数値)と国際的には極めて高い水準にある。

 またいわゆる定年制に関しては、高年齢者雇用安定法等によって平成10年4月1日までに60歳定年制が義務づけられており、現在60歳定年企業の割合は労働省「雇用管理調査報告」によれば、88.3%と着実に定着しつつある。しかし65歳まで働ける何らかの制度(65歳以上定年制、勤務延長制度、再雇用制度)を有する企業は20.4%にとどまっている。総じて高齢者の雇用は厳しく、平成7年平均で全体の失業率3.2%に対し60~64歳は5.7%、有効求人倍率も全体の0.63倍に対し、同0.08倍と全く冷え込んだ状況にある。

 一方中国では法律上の定年は男子60歳、女子55歳だが、現実には国有企業においては30年間働き続ける(国有企業であれば同一企業である必要はなく勤務年数は通算される)と定年時の給与の6~8割の年金が支給される。また、国有企業で30年勤務すると、退職後も終身医療保険の適用を受けることができる(30年未満で退職し、職に就かなかった場合には医療保険の適用がない)。

 このような状況下で、30年勤続した人は“肩たたき”があり退職せざるを得なくなる。退職後の年金の額が840元(1元は約15円)を超えないものには所得税がかからない。ちなみに法律上は800元を超えると所得税が掛かることになっているが、控除が40元あるので、840元ということになる。

 さて実際の退職年齢についてみてみたい。文化大革命時の青年が現在壮年期にある。彼等の修学年限は中学校が2年間、高等学校が2年間と短縮されていたことから、大半は14歳もしくは16歳で労働についた。その大方の者は「下放」により農業に従事し、そのあと大学に進学し国有企業に就職した場合には44歳で退職する途が開かれることになる。

 かくして中国では極めて若くして仕事を離れることが多い。60歳以上の人は退職後専門職に従事できる人は別として、再就職できないといってよい。“一人っ子政策”の下、孫の世話をするのが一般的である。また40~50歳代で退職をした者は再就職を心掛けるが、45歳以上の女性の就職口は、現実にはまずないだろう。

 以上は中国北京の弁護士・王君氏の語るところである。希世軟件系統(上海)有限公司の社員、李国麗さんは、上海(北京に比して経済活動ははるかに好況)では男性は従来55歳が事実上の定年であったが、最近50歳に下がり、女性の事実上の定年は40歳ないし45歳であると語っている。これも中国の実定年年齢が下降していることを裏書きする証言である。

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