2019年5月3日のアーカイブ

「AIと私たち」 第7回

AIと人事労務(4)育成・経営・労務管理

 

■AI時代の人材育成

 第一に、AI時代の人材育成には、AIが発達する速度が激しい分、より一層のスピードが求められる。AI周りの技術進歩は加速度的であり、小学校で教わった基礎知識が中学校を卒業する頃には化石扱いとなる可能性も決してゼロではないのである。将来の発展性まで見極めた上で育成しなければならないのだから、教育者・指導者には極めて高い知識と情報収集力、予見力、柔軟な姿勢が求められよう。

 

 第二に、AI時代の人材育成は長期にわたって行われなければならない。第3回第6回でも触れたが、まず、学校教育による長期育成が必要である。また、社会人育成においても3、4日の研修によって新しい仕事をこなすことができる時代は去った。成果を上げるためには一定の年月が必要で、かつ、それを迅速に展開しなければならない。

 そのためには、人事労務の専門家が積極的に人材育成に当たらなければならない。AIの機能拡充に伴って先を見通した人材育成、人事配置をしていかなければならないからである。未来を見通して職種を決定するという人事配置に繋がる人材育成は、教育だけではなく、AIについての理解が深い人材が当たるべきである。同時に、労働移動もよりスピーディーに行われなければならない。

 

 第三に、若者の人材育成に注力することはもちろんであるが、中高年層の人材育成も大いに心掛けるべきである。平成の終わりになってもパソコンが扱えない大臣がいたように、AI時代に取り残される中高年層が大量に生まれることは容易に予見できる。これを克服するには教育、人材育成に依るほかあるまい。

 AIが発達し、人間の仕事へ参入すると、ベテランであることがかえって重荷になる。新進気鋭の人材がどんどん伸びていくのに対して、中高年層は伸びが遅く、AIの攻勢に晒され、担当職務がこなせなくなるからだ。人材育成の在り方を根本的に変えなければならない。若者中心から、中高年中心も抱き合せたダブルデッカー(2階建て)の人材育成へ変えなければならない。

 AIによって担当職務が陳腐化し、その職務に就けなくなった者は、新しい職務に対する理解を深め、現実にそれを実施して成果を上げる必要がある。すなわち人事労務担当者はまず、対象者が新しい職務を理解できるように落とし込まねばならない。新しい職務がインターネットやITに関わる内容である場合、それらに疎い世代にいかに短時間で本質を理解させ、苦手意識を払拭させ、むしろ好意的に受け止め、実施し、成果を上げてもらえるように導くかが、人事労務担当者の腕の見せ所である。

 

 AI時代の労働者は、AIを作る人、使う人、使われる人、そして、使われることも出来ない人の4つに分化する。我々はAIを使う人に、更に言えば作る人にならねばならないし、そういう人材を育てなければならない。

 

■労務管理にもAIの活用を

 AIによるデータ分析の特徴に「客観的」という面がある。これは個人の感情を抜きにして公平な分析や見解が欲しい場面で役立つ。そこで近年では、AIを人事労務管理に活用する企業が増えてきている。

 これまでは上司や経営者が勘と経験などの主観で行ってきた評価や配置を、AIであれば膨大なデータを基に、客観的かつ網羅的に全社員を把握し、的確にかつ驚異的な速度で処理できる。退職リスクが高まった社員を検知し、アラートを発することも可能である。

 歩行パターンや行動データをAIで解析することで、組織内の人間関係を推定して効率よく仕事をこなせる組織づくりを行ったり、職場でのコミュニケーションや時間の使い方などの組織活性度の向上につながる行動に関するアドバイスを各人ごとに配信したりするサービスもある。

 これらは言うまでもなく企業の競争力向上や働き方改革につながる。組織マネジメントの根幹にこそ、積極的にAIを活用していくべきである。これによって人事労務担当者の仕事がなくなる、と危惧するのであれば、それは自身が「AIに使われる人」あるいは「使われることも出来ない人」であるということである。

 

まとめ

・AI時代の人材育成キーワードはスピード・長期・中高年

・AIを作る人、使う人、使われる人、使われることも出来ない人の4つに分化

・労務管理にもAIを積極的に取り入れよ

 

(第7回ここまで/担当 高井・團迫・宇津野)

 

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