2019年8月2日のアーカイブ

「AIと私たち」 第10回

AIをめぐる法的責任~著作権と法人格

 

 今回はAIの権利について、AIが生み出したコンテンツの著作権をテーマに考えたい。AIの発達は小説、絵画など様々な芸術分野での機械創作を活発化させている。AIの成果物は誰のものか、権利の帰属や利用のルール整備が追いつかなければ混乱しかねない。

 英国の著作権法は1988年の改正において、コンピューターによる作品の著作者は「創作に必要な手配をした者」と定め、コンテンツの創作過程にAIの介入があったとしても、AIを用いた人間が著作者であると明示した。一方、日本の著作権法は、著作者を「著作物を創作する者」、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義している(同法2条1号2号)にとどまっている。

 

 結論から言えば現状、AIによる「著作物」は存在しない。「著作物とはあくまでも人が思想や感情を創作的に表現したもの」というのが現在の政府見解であり、「人が関与して創作した」コンテンツでなければ著作物とみなされないためである。すなわち、既に多数発表されている、人間がAIを道具(プログラムソフトなど)として用いて生み出された詞・曲、小説、絵画等は、あくまでも人間の著作物であり、著作者も著作権者も人間となる。

 これに対し、AIが独自に生み出したコンテンツについては「著作物」とみなさず、よって著作者も著作権も発生しないとする。その理由としては、「人が関与していない」こと、あるいは、「思想や感情を創作的に表現したものとは言えない」ことが挙げられている。後者については、「AIの独自創作だから“人の”思想や感情を反映していない」と考えることもできるし、「AIには思想や感情がないから、思想や感情を反映していない」と考えることもできよう。

 しかし、現在のAIの創作の源がデータ収集と機械学習に基づいていることからすると、世界中の膨大な「人の思想や感情」データを集約して生み出されたコンテンツは、人の思想や感情を反映していないと言い切れるのだろうか。他方、過去にも述べたが、今後AIが感情を有する可能性は決して否定されておらず、将来にわたって「AIが生み出したコンテンツは、人が思想や感情を創作的に表現したものとは言えない」と断言することは難しくなるように思われる。著作権は人間に限って生ずる、とするならば、著作物の定義をより明確に設定することが求められるのではないだろうか。

 

 一方で、AIが独自に生み出したコンテンツが「著作物」ではないと認定された場合、そのコンテンツは著作権による保護を受けられないという点も問題視されている。AIに創作指示を出した人間は、そのコンテンツの使用料の請求や使用の差止めなど、何らの権利行使ができないし、そのコンテンツは世界中で転用され放題となる。この問題について政府は、「AI創作物を世に広めて一定の価値(ブランド価値など)を生じさせたこと」に対して権利を付与する方向性を打ち出しているが、具体的な結論は出ていない。

 

 では、AIに著作権を認める方向へ舵を切ることはないのだろうか。たとえば株式会社には法人格、すなわち、法律的には、権利義務の主体たる資格(権利能力)を与えられる。同様に、AIに人と同じような法的権利を与えることはできないだろうか。実は欧米では既に、こうした法律上の責任主体としての人格をAIに与えようとする動きが出ている。

 会社が法人格を持つ所以は人が企業を構成するからである。例えば経営者、労働者、株主等々の人間が関与してこそ会社が成り立ち、国民経済的に有用な機能を営んでいるからである。そのため、その形式的独立性を認めることが正義・衡平に反する結果をもたらす場合には、法人格は否認される。

 これに倣えば、AIに人格を与えるためには、AIが人間の道具でなければならないと思料されるところ、AIが人間とは別個の意思を持つ、増殖能力を持つ存在になれば、それはもはや道具とは言えなくなるのではないだろうか。これをどう工夫していくかがポイントである。無暗にAIに権利能力を与えれば、人間がAIをコントロールしきれなくなり、人間との協調が難しくなるかもしれないことにも留意が必要である。

 

 まとめ

 ・AIの創作物は著作物として認められず、著作権も生じ得ない

 ・欧米ではAIに権利義務の主体たる法的資格を与える動きがある

 ・無暗にAIに権利能力を与えれば人間によるコントロールを失いかねない

 

(第10回ここまで/担当 高井・團迫・宇津野)

 

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