第10回 巨大台風の来襲から思いついた私的な組織論

 

あすか人事コンサルティング
代表 太田 正孝

 

 台風15号と同じようなコースで強烈な19号が襲ってきました。  今度は首都圏、中越、東北など広範囲で川の氾濫による大災害が起こってしまいました。犠牲者のご冥福を祈り、被災者の心と被災地域の回復を願うばかりです。

 

 私は昔シカゴ在住の時に豪雨による洪水の恐怖を味わいました。郊外の社宅でしたので割と広い庭があり、庭を下ると1m下に幅2mほどの小川が流れ普段は気持ちのいい場所でした。ある豪雨の日曜日、小川の水位がジワジワと上がって庭全体が川になっていくので恐怖に襲われました。あと10センチ弱水位が上がれば家の中にどっと浸水するといったところで上昇がとまり、将に「寸止め」でホッとしました。

 古来、怖いものとして「地震、雷、火事、親父=ヤマジ?(台風?)」といわれます。中でもじわじわ迫って来る台風と水害は本当に恐ろしく、私が経験した色んなイベント「パラパラ漫画」のうちの怖い一コマとして記憶に残っています。

 

 今回の大災害もしばらく時間が経つと行政の不手際などが取り沙汰されるかもしれません。特に大きな被害は本州の東半分という広大な地域に亘っているので国レベルの防災・復旧組織のあり方も議論されることでしょう。あとからタラレバ論が出てくるのは仕方ありませんが行政批判一辺倒ではなく事象を科学的に検証して今後の防災体制に反映してもらいたいものです。

 ということもあり今回は「組織」にまつわる話を少々書きたいと思います。

 

 私は人事コンサルとして会社の組織づくりに関ったことがあります。その折り高井先生からうまくいく経営組織についてのご高見を伺った記憶があります。組織と人次第で会社の盛衰が決まるので、まず無駄の少ない組織をつくりメンテし続けるのが前提ですが、現実はそう簡単なことではありません。日々変わりつつある環境に対応するために植物や動物と同様に組織も進化しないと生き残れないのは明白です。「茹でガエル」の例でよく揶揄される日本人ですが、何らかの大きなイベント、事件、事故に見舞われた時こそ進化するビッグチャンスと捉え、覚悟をきめて重い腰をあげ汚名返上していけばいいと思います。

 事件事故など大きな不具合が生じた背景に人事労務問題があるのではないかとされ、組織・人事・労務環境にメスが入る傾向があります。検証の過程でマニュアル内容、手順、人の熟練度、教育問題、労務問題の有無に加えて「ハインリッヒの法則」にある小さな不具合を見過ごしてきた理由が取り上げられます。

 やがて最終的に大きな不具合の原因は組織そのものの欠陥から、に収斂していき、再発防止対策として「左脳」で考えた組織変更がされるケースが多いのです。

 組織に原因ありと結論づけることで当事者や経営幹部の責任が薄まり曖昧になっていく効果があります。前任トップにまで責任が及ぶのを避ける目的もあるようですが。

 しかし、本当に再発防止のための組織変更をするには科学的・客観的・現実対応型に基づいて見直しするのが王道です。そのために集められた大量の情報の中のシグナルとノイズを峻別できる体制をとり原因としては事象の連鎖反応でありその流れを冷徹に解明することが大事です。経験上、組織の問題に収斂させるのは比較的楽なので経営トップが常に留意すべきところです。

 現実には広報のまずい対応などでマスコミ・世論が原因よりもトップ批判に集中しすぎるケースもあります。その場合本来組織編成そのものに潜んでいた大きな欠陥が見過ごされ進化の機会を失うこともあるのでこの事にもまた留意が必要です。

 

 組織について改めて人類の歩みからみてみると、古くは過酷な自然や捕食動物、他民族の侵略に備える目的で親族・同族間で役割分担する形で組織化が始まりました。以来数十万年もの間、一貫して自衛目的のための役割分担を決める組織作りが続き武器の進歩とともに組織も複雑化してきました。

 現在では、のべつ幕なしに戦争、紛争があった歴史を踏まえ先進国間では平穏な社会を維持する仕組みが定着してきていると思いますが、地球規模でみると宗教の違いなどからいまだに深刻なコンフリクト(摩擦)がある状況です。

 世界の政治組織をみると権力集中型の独裁組織や三権分立型の民主組織に大きくは大別されると思いますが、民主組織形態をとりながら実質は独裁者が統治しているなど多様です。

 国連の組織も、部分最適と全体最適の差を調整できず越えられない高い壁があるのが現実です。いまだ超人類(スーパーヒューマニティ)へ進化できない私達は高井先生がよく指摘される「心」の進化すらもできていないようです。お互いに譲りあって平和に過ごすという寛容さだけでも身につけたいと思います。会社組織でも参考にしたいものです。

 

 古い話ですが東西冷戦の末期、1987年の国連総会で当時のレーガン米大統領は「私は地球外のエイリアンが脅威をもたらしてきたら世界のイデオロギーの相違が急速に消滅すると考えている」という趣旨の演説をしました。これは人類共通の強敵が現れない限り世界は一体になれないという指摘でした。国連という組織は約200の国が加盟しているのですが、表面上は加盟国みんなが一票をもつ対等な社会なので全体最適の決議は幻想でしかないようで組織が機能しない実例です。最近いろんなアイデアによる組織論がいわれています。ティール組織とかがその例です。会社がまとう組織に「プレタポルテ」はありませんので、色んな組織論を参考に独自で「オートクチュール」を用意するのが自然です。

 

 「オートクチュール」作りの流れでいうと、まず明確な経営理念に基づいて経営戦略をたて、実行できる組織案を作る流れが始まりです。伝統的な組織の業務分掌、権限表を発展させて組織単位毎に役割と成果責任(アカウンタビリティー)を明確にしておくという方法をとるのがお勧めです。これは欧米の会社では普通に行われているやり方です。

 これにより予定成果の記載漏れや重複の検証がしやすくなり後のメンテにも役立ちます。そしてそれを担えるだろう人を選抜配置する、これが国際化にも適合できる流れです。

 高井先生も言うわれているように、組織はできるだけ階層を少なくシンプルであるべきですが、現実はベテラン層が余るので処遇のためだけの組織を増やすことがよく行われます。背景の一つは整理解雇しにくい日本特有の現象で一概に悪いとも言えないのが悩みでしょう。しかしこれにより組織間で共鳴しやすい「固有周波数」にノイズが混ざり早い意志決定を遅らせている原因の一つです。

 

 来年4月、大企業から順次「同一労働同一賃金」についての法律が施行されますので「同一労働とは何か」が課題になります。これを組織のことをも考える良い機会と捉えて社員のエンゲージメント調査を含め組織の点検・再編成をされるよう願っています。

終わり

ご利用案内

内容につきましては、私の雑感等も含まれますので、真実性や正確性を保証するものではない旨ご了解下さい。

→ リンクポリシー・著作権

カレンダー

2019年10月
« 9月   11月 »
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

最近の投稿

カテゴリー

月別アーカイブ

プロフィール

高井・岡芹法律事務所会長
弁護士 高井伸夫
https://www.law-pro.jp/

Nobuo Takai

バナーを作成