高井伸夫の社長フォーラム100講座記念~1講1話・語録100選~

【第10回】内部告発をどう抑止するか(1994年5月11日)

 

 企業機密は漏洩してはならない、という形で日本の就業規則は成り立っている。これは忠実義務という世界。内部告発はそれに違反する行為としてとらえられてきた。それが、良心経営の時代に変わることで、不正を糾すという観点から内部告発も認知され始めた。

 内部告発するのは、落伍した者や不平不満の持ち主である一般社員だけではない。管理職や役員にもいる。不遇をかこつあまり、それを自分自身で慰める手段として、即ち報復として内部告発をするわけだ。

 日本の企業は、機密管理になじまない体質がある。それは、情報の共有化が企業活力の源泉になっているから。どうしても情報は拡散する。

 だから、内部告発の抑止は、経営者への信頼、感服の世界を構築する以外にない。言い換えれば、心をひとつにする社長の言動だ。社長自ら勉強する、話を聞く、討論する、共感する瞬間を多く持つ、三手先を読むなど、「あらゆる局面に手が打ってあった」と感服させる力量だ。

 さらに、処遇に不平不満が起こらないように公正を旨とし、恣意性を排除することも大切なことだ。

 内部告発の内容が誹謗中傷のたぐいであれば、徹底的に責任追及しないといけない。大げさに調査を進めることである。犯人探しに血道をあげているフリをしなければいけない。些細なことだとして放置すると、どんどんエスカレートする。「内部告発ぐせ」に陥る。

 企業機密の漏洩防止には、「誓約書」をとること。誓約を結んでも一見、価値がないように思えるが、極めて有効である。何よりも署名捺印したことが心理的に機能する。そして、最初の違反者に手厳しく対処することが現実的な実効性を担保する。誓約書は、まず入社時に出させる。ついで管理職・役員に就任する時に出させる。そして退職時退任時には必ずとる。そのことを退職金・退任慰労金と連動させる。具体的には、誓約書を出さないと退職金を支給しないという規定をつくることである。

 

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