2019年11月20日のアーカイブ

 

前回より、若手中国人の米留学生による米国所感を連載しております。

 

第2回 アメリカのスポーツ

~アメリカ三大スポーツについて~

 

 筆者がアメリカで四年間生活する中で最も関心したのがアメリカのスポーツ市場の大きさだ。Netflix(アメリカのオンラインDVDレンタル及び映像ストリーミング配信サービス)やHBO(アメリカの衛星およびケーブルテレビ放送局)など、動画ストリーミングサービスまたはOTT(Over The Topの略。動画・音声などのコンテンツ・サービスの意。)の先駆者であるアメリカでは、着実に若者のテレビ離れが進行している。そんな中で依然と厚い支持を得て、ケーブルテレビを支えているのがESPN(ウォルト・ディズニー・カンパニー傘下のスポーツ専門チャンネル。衛星およびケーブルテレビでチャンネルを提供している。)のようなスポーツ番組だ。

 土日の街では私服として選手のユニフォームを着た人を頻繁に見かけ、バーやレストランに足を運んだら必ず店内のどこかでスポーツ中継が行われている。アメリカは多くの国と比べたらスポーツと深い関わりを持つ国だ。日本では正月にお茶の間に集まり、紅白を見るのと同様に、アメリカでは2月になると家族でテレビの前に集まり、スーパーボウル(NFL[ナショナル・フットボール・リーグ。アメリカで最上位に位置するプロアメリカンフットボールリーグ]の優勝決定戦。アメリカンフットボールの最高の大会であり、アメリカ最大のスポーツイベント。)を見る。今は強く根付いた文化により視聴率を保ってはいるが、アメリカスポーツ業界にとってもメディアコンテンツのテレビ離れは無視できない問題となっている。以下本文ではアメリカの三大スポーツにそれがどのような影響を与えるのかを考えていきたい。

 

 新しい世代の若者たちは年々加速するコンテンツ消費になれていることから、長時間スポーツを見ることに飽きやすい。これにより最も打撃を受けているのが野球である。ラジオが人気のメディアだった時代ではアメリカで最も人気のスポーツだった野球は、近年、その試合進行の遅さから若年層ファンの獲得がしづらくなっている。これに対し、MLB(メジャーリーグベースボール。アメリカ所在の29チーム及びカナダ所在の1チーム、合計30球団により編成される、世界で最高峰のプロ野球リーグ。)は一球ごとにピッチャーが待てる持ち時間を減らすなどの施策を打ち出している。ただし、そんな逆風の中でも、MLBは他のメジャースポーツとシーズンが被らないという強みを持っている。特に夏の間はフットボールもバスケットボールもオフシーズンであり、夏休みによる家族での観戦が多いなど、野球はアメリカではファミリーフレンドリーなスポーツとして位置付けされている。

 それに対し、NFLの市場は年々拡大傾向にある。フットボールは性質上、時間との戦いとしての側面があることが人気の理由と思われる。数秒で逆転が可能なことから、目を離せる時間が少ないことが新しい時代のコンテンツ消費に合っているのだろう。さらにこれは他のスポーツにも言えることだが、フットボールでは特に地域愛が強く、もはや地域のローカルチームを応援することは地元愛を主張することと同義のように思われている。フットボールの人気は絶大で、プロのシーズンが行われていない間でも大学リーグのフットボールを見るファンが多数いる。

 NBA(北米で展開する男子プロバスケットボールリーグ)は個人の選手が最も自身のブランドを確立しやすいのが特徴だ。野球やフットボールのように大人数で行うスポーツとは対照的に、バスケットボールは1チーム5人だ。さらに帽子、またはヘルメットで表情が見えにくいといったこともなく、フィールドが比較的小さめであることからプレイ中でも選手一人一人の表情が見える。そして、バスケットボールではパスができるため、理論上では全てのオフェンス(攻撃)を一人のプレイヤーが始動することが可能だ。実際、NBAの試合で最後の数分に入った時、チームのスター選手が単身で敵陣に切り込むことが一般的だ。そのため、バスケットボールは他スポーツに比べ、スーパースターを産出しやすく、選手が自身のアパレルラインやスニーカーを持つことが多く見られる。フットボール同様、最後の数秒で逆転劇が可能であり、コンテンツ消費の高速化による人気の衰えはない。近年ではヤオミン選手(姚明。中国のプロバスケットボール選手。NBAではヒューストン・ロケッツで活躍。身長229cmとNBAの中でも非常に身長が高く、リーグを代表するセンタープレーヤーだった。)の活躍から根付いた中国での厚い支持に規模拡大の可能性を見出している。

 

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